其れは、永遠に繰り返す、輪廻の地獄。
生贄同然の身でありながら、彼は総てを呪う事はなかった。
彼は同然のように、宣った。
「ほら、やっぱ周回は大事だし。でも、終わりはあるはずだから。
……きっと…………たぶん…………あー、自信なくなってきたぁ」
サルバドールには残された力はもうない。
ギルガメッシュに自身の奥義、霊装投影を繰り出した挙句、その後の殴り合い。
スカサハ戦では、脚が疲労を訴えるまで全力で動き回って翻弄し、真名解放もない一時的に行った乖離剣エアの展開は、疲労が蓄積していた全身をさらに痛めつける結果となった。
結果的には、それがセイバーをいつのまにか救う事になっていたのだから驚きではあったが。
ルーラーにとって、サルバドールの相手こそやりづらいものはない。
サーヴァントではなく、
英雄でない。
サーヴァントの調停を務めるクラスである自分には、実力行使でしか彼を止められない。
ましては、彼がどんな方法で召喚した彼らを倒したのかなど、想像が出来ない。
それ程に、ルーラーにはサルバドールの情報がない。
ルーラーのスキルである『真名看破』は、あらゆる英霊の真名を知ることが出来る。しかし、そんなものがマスターであるサルバドールには通用しない。
だが、それだけだ。
ルーラーは目の前の敵を睨みつける。
もう、お前に用はない。
消えろ。
『睨みつけてるヒマがあんなら、攻撃の手を緩めんじゃねぇ!!』
サルバドールが挑発気味に唾を飛ばし、日本刀を掻い潜って拳を叩きつける。たたらを踏むルーラーに追撃を掛けるべく迫るが、刀を横薙ぎされたために避ける事が出来ないと判断、咄嗟に後ろに下がった。
「なんなんだ……! お前は……!」
サーヴァントに生身で肉薄するサルバドールに、そう吐き捨てる。
『何の変哲のない、ただのカルデアマスターなんだが。……といっても、世界を救ったぐらいしかやってねぇけど』
「貴様が……!?」
『驚いた? こんなんでも救えるんだぜ。まぁ、俺一人ならのたれ死んで終わるのがオチだがな!!』
『セイバー! 大丈夫!?』
「うぅ……。マスター、か?」
藤丸立香が、上空から赤のランサーに抱えられながら降り、セイバーに駆け寄る。
セイバーの安否を心配する藤丸立香にランサーが口を挟んだ。
「マスター。ここいらの敵が城が崩れた衝撃から立ち直り始めたようだ。
すまないが、俺は辺りの雑魚を掃討しよう」
『ランサー。サルさんの救援には行けない?』
「魔力はアルジュナとの戦いで、ほぼ全て使い切ってしまった。今も、現界するのがやっとでな。このままの俺では力不足だ」
「アルジュナ……。お前が以前言っていた、宿敵か……」
「そうだセイバー。……なんの因果か、こうして戦う事が出来た。俺はつくづく幸運な男だろう。……本来のマスターの方は、マスター。お前がなんとかするべきだ」
『……え? ランサー、どういう事……』
問いを投げる間も無く、ランサーは神槍を持って走っていった。
「ええい、不敬が!! 陳腐な石扉が我の前に立つか!! 貴様らが幾ら集まろうと、我が宝物庫よりも劣らぬ事などないわ!! 《
「……この腕、数が多いな……! 我が弓でも……いや、捉えきる。この程度で時間を取られるならば、私はあの男に勝てはしない……! 一人たりとも!!」
「何の事はない。また儂を殺せぬ。それだけの事か、それとも……。良いだろう。手加減する余裕があるのなら、後で彼奴をこの槍で刺すまで。それとだ……儂にも扉には一つ、覚えがあるぞ……?」
「けっ、あの野郎……。俺ごと吹き飛ばしやがったな。 後で心臓に穿ってやる、あの元腕野郎。……まずは目の前の腕共で憂さ晴らしと行くかねぇ!!」
そこで藤丸立香は見た。
味方ではなかったサーヴァント達が、それぞれの思いで共に戦ってくれている。
金色のサーヴァント。
白い服を纏った黒い肌のサーヴァント。
紅い槍を二本持つ、女性のサーヴァント。
初めてこの世界に来た時に会った、青タイツのサーヴァント。
そして、ランサー。
逸話なども知らない、けれども頼もしい彼らがただ一つ、ルーラーとサルバドールの戦いを邪魔させないように足止めをしてくれている。
あっ、ランサーが黒人のサーヴァントに近づいた。
……なんか話してる。
ん? 二人が戦い始めた。
多分、見間違いだろう。完璧に協力し合う展開ではなかったのか。早速の仲間割れなんて起きてない。藤丸立香は即座にそう思い込んだ。
『……セイバー』
「どうした、マスター」
『サルさんを助けたい。頼みたい事がある』
「なんだ……!? それは!?」
『ギリギリだが……! やらせてもらうっ……!《
藤丸立香の考え。
サルバドールの決死の投影。
ルーラーの思惑。
次回、決着。