英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話   作:夢見 双月

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黎明の名を持ちし体。

其れは、永遠に繰り返す、輪廻の地獄。

生贄同然の身でありながら、彼は総てを呪う事はなかった。

彼は同然のように、宣った。

「ほら、やっぱ周回は大事だし。でも、終わりはあるはずだから。






……きっと…………たぶん…………あー、自信なくなってきたぁ」


黎明の腕を持つ男 その一

 

 サルバドールには残された力はもうない。

 

 ギルガメッシュに自身の奥義、霊装投影を繰り出した挙句、その後の殴り合い。

 スカサハ戦では、脚が疲労を訴えるまで全力で動き回って翻弄し、真名解放もない一時的に行った乖離剣エアの展開は、疲労が蓄積していた全身をさらに痛めつける結果となった。

 

 結果的には、それがセイバーをいつのまにか救う事になっていたのだから驚きではあったが。

 

 ルーラーにとって、サルバドールの相手こそやりづらいものはない。

 

 サーヴァントではなく、

 英雄でない。

 

 サーヴァントの調停を務めるクラスである自分には、実力行使でしか彼を止められない。

 ましては、彼がどんな方法で召喚した彼らを倒したのかなど、想像が出来ない。

 

 それ程に、ルーラーにはサルバドールの情報がない。

 

 ルーラーのスキルである『真名看破』は、あらゆる英霊の真名を知ることが出来る。しかし、そんなものがマスターであるサルバドールには通用しない。

 

 だが、それだけだ。

 

 ルーラーは目の前の敵を睨みつける。

 

 

 もう、お前に用はない。

 消えろ。

 

 

『睨みつけてるヒマがあんなら、攻撃の手を緩めんじゃねぇ!!』

 

 サルバドールが挑発気味に唾を飛ばし、日本刀を掻い潜って拳を叩きつける。たたらを踏むルーラーに追撃を掛けるべく迫るが、刀を横薙ぎされたために避ける事が出来ないと判断、咄嗟に後ろに下がった。

 

「なんなんだ……! お前は……!」

 

 サーヴァントに生身で肉薄するサルバドールに、そう吐き捨てる。

 

『何の変哲のない、ただのカルデアマスターなんだが。……といっても、世界を救ったぐらいしかやってねぇけど』

 

「貴様が……!?」

 

『驚いた? こんなんでも救えるんだぜ。まぁ、俺一人ならのたれ死んで終わるのがオチだがな!!』

 

 

 

『セイバー! 大丈夫!?』

 

「うぅ……。マスター、か?」

 

 藤丸立香が、上空から赤のランサーに抱えられながら降り、セイバーに駆け寄る。

 セイバーの安否を心配する藤丸立香にランサーが口を挟んだ。

 

「マスター。ここいらの敵が城が崩れた衝撃から立ち直り始めたようだ。

 すまないが、俺は辺りの雑魚を掃討しよう」

 

『ランサー。サルさんの救援には行けない?』

 

「魔力はアルジュナとの戦いで、ほぼ全て使い切ってしまった。今も、現界するのがやっとでな。このままの俺では力不足だ」

 

「アルジュナ……。お前が以前言っていた、宿敵か……」

 

「そうだセイバー。……なんの因果か、こうして戦う事が出来た。俺はつくづく幸運な男だろう。……本来のマスターの方は、マスター。お前がなんとかするべきだ」

 

『……え? ランサー、どういう事……』

 

 問いを投げる間も無く、ランサーは神槍を持って走っていった。

 

 

 

「ええい、不敬が!! 陳腐な石扉が我の前に立つか!! 貴様らが幾ら集まろうと、我が宝物庫よりも劣らぬ事などないわ!! 《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》ッ!!」

 

「……この腕、数が多いな……! 我が弓でも……いや、捉えきる。この程度で時間を取られるならば、私はあの男に勝てはしない……! 一人たりとも!!」

 

「何の事はない。また儂を殺せぬ。それだけの事か、それとも……。良いだろう。手加減する余裕があるのなら、後で彼奴をこの槍で刺すまで。それとだ……儂にも扉には一つ、覚えがあるぞ……?」

 

「けっ、あの野郎……。俺ごと吹き飛ばしやがったな。 後で心臓に穿ってやる、あの元腕野郎。……まずは目の前の腕共で憂さ晴らしと行くかねぇ!!」

 

 そこで藤丸立香は見た。

 

 味方ではなかったサーヴァント達が、それぞれの思いで共に戦ってくれている。

 

 

 金色のサーヴァント。

 

 白い服を纏った黒い肌のサーヴァント。

 

 紅い槍を二本持つ、女性のサーヴァント。

 

 初めてこの世界に来た時に会った、青タイツのサーヴァント。

 

 そして、ランサー。

 

 逸話なども知らない、けれども頼もしい彼らがただ一つ、ルーラーとサルバドールの戦いを邪魔させないように足止めをしてくれている。

 

 

 あっ、ランサーが黒人のサーヴァントに近づいた。

 ……なんか話してる。

 ん? 二人が戦い始めた。

 

 

 多分、見間違いだろう。完璧に協力し合う展開ではなかったのか。早速の仲間割れなんて起きてない。藤丸立香は即座にそう思い込んだ。

 

 

 

『……セイバー』

 

「どうした、マスター」

 

 

『サルさんを助けたい。頼みたい事がある』

 

 

 

 

 

「なんだ……!? それは!?」

 

『ギリギリだが……! やらせてもらうっ……!《霊装投影開始(フル・トレース・オン)》ッ!!』




藤丸立香の考え。

サルバドールの決死の投影。

ルーラーの思惑。

次回、決着。
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