英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話   作:夢見 双月

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最終局面も佳境に来ました。

ここまで読んでくださっている方!
感謝と共に、あともう少しですのでお付き合いください!

それではどうぞ!


黎明の腕を持つ男 その二

 サルバドールの体に電流のようなものが走る。その魔力の奔流はやがて、体外に稲妻のようなものが放出される。

 

 体内と融合しているカルデアスに、世界との照合を要求。

 

 受理。

 

 

 あらゆる歴史への観測を制限。

 

 魔力供給量減衰。よって、近代過去の歴史のみを観測。

 

 

 人物指定、衛宮士郎。

 

 観測、及び情報提示。

 

 

『《霊装投影開始(フル・トレース・オン)》ッ!!』

 

 

 基本骨子、カルデアスに情報提示を要求。

 

 構成材質、カルデアスに一任。

 

 憑依経験、要らず。

 

 

 最小限の魔力で戦闘可能なレベルの投影を行う。

 投影するは、かつて共に戦った赤い外套の正義の味方、その原点とも言える人物。

 その正義の味方は近代に生きていながら、英霊となる頃には今よりも未来であるという。しかし、近代の英雄という点で彼以外の英雄を知らない。

 カルデアスにとって現代に近い時代の観測ならば神代や未来よりも少ない魔力で運用出来る。

 

 しかし、当然英雄になる前の彼を投影するのだから、未熟である。

 だが、それでもいい。

 

 後は、技量を以って目の前の敵を越えればいい話だ。

 生憎、英雄となった正義の味方から、戦い方は既に叩き込まれている。

 

 

投影、開始(トレース・オン)ッ!!』

 

「……ッ!?」

 

 ルーラーに向かって駆けながら、かの少年の詠唱–––––正義の味方から借り受けた一小節のオリジナルを口ずさむ。

 

 手に呼び起こすもの。決まっている。

 

 その夫婦剣の名は、干将と莫耶。

 

 陰陽を模した二つの短剣をその両手に顕現させ、ルーラーに斬りかかる。

 

『はあ!』

 

「くっ! お前は……!?」

 

『どうした!? 雰囲気が変わったように見えるかい!? こちとら、魔力がそんなにないから能力の一部しか投影出来てないがな!!』

 

「投影……だと……!? まさか、他人の人格を投影したのか!?」

 

『ご名答ッ!! 当てた褒美だ、死に去らせ!!』

 

 中華の夫婦剣と日本刀がぶつかり合い、時折火花を散らす。

 

 天草の持っている『三池典太』と、サルバドールの『干将・莫耶』。

 二つとも業物でありながらも神秘性は五分であり、今までの経験が鍵を握る戦いである。

 そのため、優位に立ったのは……サルバドールである。

 

 投影の影響により、目の色が翡翠から琥珀に変わったサルバドールは二刀の基本的な戦法、片方で受け止めてからもう片方で斬るという二刀の利点を存分に活かしていた。

 ルーラーはその戦い方を悟ってから、距離を離し始める。日本刀の方が夫婦剣よりも射程距離が長いため、一方的に攻撃出来る距離を測り出したのだ。

 

 投擲された黒鍵に対し、サルバドールは、『干将・莫耶』をそれぞれ投げつける事で軌道を逸らすか弾く。術式によって再度狙われたとしても、すぐに投影で贋作の剣を用意、そのままもう一度弾き返した。

 

 

『うおああああ!!』

 

「負けるかぁ!!」

 

 

 奇しくも、二人のシロウがぶつかり合う形となったこの戦い。

 

 藤丸立香は静かに機を見る。

 先程、セイバーに何の力にもなれなかった。そんな過ちは二度も繰り返したくない。

 

 静かに、両手で持っている手に力を込める。

 

 

 不意に、藤丸立香は動き出した。

 

 

 ルーラーとサルバドールの剣戟は収まるところを知らず、より苛烈にエスカレートしていく。

 互いにかすり傷が増えるなか、遂に勝機が光る。

 

 

 ルーラーの方に。

 

 

 理由は明白。サルバドールの持っていた夫婦剣の耐久が限界を迎え、呆気なく砕け散ったからである。

 

 その隙を逃すルーラーではなく、そのまま日本刀で横薙ぎにする。

 

 それに対してサルバドールはもう一つの短剣を用いて耐えるも、その短剣にすら罅が入っていた。

 

 投影し融合したら身体での、さらなる投影である。

 どんなに正確な投影魔術でも、劣化品になるのは当然の事ではあった。

 しかし、彼がまともに打ち合える方法は最早これしかなく、これですら勝利を掴むには届かない。

 

「もらった……!!」

 

『……!?』

 

 だが、それはサルバドールが一人で戦っていたらの話。

 

『うわあああああああ!!』

 

 サルバドールが身体を横に傾ける。その隙間から、藤丸立香が現れた。

 藤丸立香の両手に持った軍神の剣は、ルーラーの胴体を捉え。

 

 考えてもいなかったマスターからの奇襲は、ルーラーの胴体を刀身が貫く事で、やっと実ったマスターの勇気である。

 

 

 

「ぐぅ……!? こいつ、……」

 

 

 ルーラーがそう言って、藤丸立香に注意を逸らした。

 故の、一分の隙。

 

 それを逃す人間は、目の前にいない。

 

『縮地……!』

 

「……っ!? しま……!?」

 

 

 

『一気五打・正拳突きィ!!』

 

 一息の間に繰り出される五連撃が、ルーラーを背後の瓦礫の山まで吹き飛ばしていった。




次回は休みを挟んで、明後日に投稿します。
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