時間は数刻前まで遡る。
と言っても、俺が死にかけっつーか気を失ってたっていうか……とにかく、割とやばかった時さ。
気が付いた、と言ったら厳密には違う。
俺だったら気付いてみんなにも言っていると思うが、俺は黎明の腕。
サルバドールという身体を聖杯で叶え、右手の中にある意識として眠っていた方の俺だ。
分かるか? なんていうか……右手の意識と身体全体の意識は異なってる、みたいな。そんな状況になっていた事を思い出していただけたろうか。
つまり、今気絶してる方の俺は今まで勝手に俺を強く握りしめ、あらゆる相手に向かってぶん殴っていたはずだ。肉体としての俺にとってはただの右ストレートかも知れないが、本体の腕である俺にとっては頭突きに等しい。
そんなん、見てるだけで痛々しいだろ!? 腕だけの存在である俺に痛覚がないから痛みはないけど、気付いたら「あ、ちょっと凹んでるわ」とか冗談じゃねぇぞ!!
そんなわけで、覚醒したのは腕である俺だけ。
多分だけど、人間の身体の方の俺が覚醒すれば、自然と俺もまた腕の中に消えていくだろう。
まずは情報収集だ。俺には今までの状況が理解出来ていないからな。ルーラーにぶっ刺されて、うぎゃー、ってなったぐらいやもん。覚えてるトコ。
というわけで、状況を知るために辺りを見回す。うわ、動きづらっ。肉体とくっついてるから、引っ張るように動かなきゃいけない。足に鎖を付けられてる気分だわ。めっちゃストレスやん、こんなん。
……って、えっ、何アレ? でっかい俺? 何、俺が相手なの? 俺の負の感情とかが膨らんであんな感じになったん? え、なんかごめんなさいっ!
かなり遠いけど、空間把握はお手の物だ。目がないから、自然とこういう事が出来る。……あっ、こっからだと豆粒みたいに小さく見えるが、藤丸クンとセイバー、ランサー、槍ニキ……なんでギルガメッシュいるん?
はっはっは。これが我ら黎明の腕の力じゃあ!!
無惨にやられていくがいい!!
……。
…………。
……………………。
まぁ、でも。いつか俺は言っただろ?
別に俺が死ぬ事は苦しくないんだ。なんてったって復活出来るし。
サーヴァント達の事を知っている。人理の危機も知っている。
そんな人間がどうして、殺しに来る彼らを恨めるだろうか。
そんな馬鹿がどうして。
サーヴァント達を蹴散らしたいと願うのか。
そんな事は断じて思った事がない。ならば、あの大きい腕は種族は同じであれど、敵だ。
それに、あいつを中心に世界に翳りが見えている。それはおかしい。
黎明とは、夜明けの意味を持つ言葉。
その矛盾だけでも、俺が黎明の腕として敵対するには十分だ。
なら、どうするか。
全然分からない。
少なくとも、こんな機動力クソ雑魚の今の状況では間違いなく足手まといだ。ロクに戦えもしない。
だったら、今寝てる方の俺を起こす方が断然いい。
早速起こすか。
おーい、起きろー。
……人が見たら目を疑うような光景かもしれん。なんせ気絶した人間がひたすら自分の腕で、自分の顔をビンタしているのだから。
起きないな。仕方ない。これでどうだ!!
『ウッ』
うわっ。一瞬ゴリラみたいな顔になった。ブサイクだなぁ。
うーん、やっぱ金的もダメか。なんかもう、今コイツ白目剥いちゃってるし。悪化したかも知れない……たぶん。
それにしても全然起きる気配がないなぁ。どうするか……。
というか! 今気付いた! コイツ魔力不足じゃん!? 確か、魔力不足になると身体的にもよくないなんて事はどこかで聴いたけど……。もしかして、だから目が覚めないのか?
それにしても、なんで魔力不足に……。そこまで魔力面はショボくはないし、わざわざ無茶をするような事もないぞ?
ん? 俺からなんか出てきた。……結晶? ってか、種火じゃねぇか。なんでコイツが?
よく見ると、種火の魔力の内包量が分かる。コレのせいで魔力不足になってたのか。
どうするか。『融合』を使っても種火が身体にくっ付くだけで、中に存在する魔力は取り出せないし、これだけじゃなんとも……。
うおわっ!? 何!? 爆発!?
あのでっかい奴がなんかしたのか。
爆発したために飛んだ瓦礫や何かの破片が俺の周りにも散らばっていく。
いてっ。……ん? これって……QP!? なんで魔力リソースがこんなところに……。あっ!!
もしかして、あの城の中……!?
「宝物庫の扉を開け」だったか? の扉達がいたのか!?
そうだっ、これなら魔力リソースと種火を同時に取り込めばイケる!
ふと、考える。
この世界に来て、セイバーやランサーと過ごした時間。
ちょっと今回の大騒ぎ。
楽しい事ばかりだった気がするけど。
『随分長い夢だったが……いつか目覚めるものだ』
小さな太陽の一つ一つが青く粒子化したQPとともに身体に取り込まれていく。周辺全ての種火を吸い取った。
『敢えていうなら、レベル50までしか上がらなかったが。それでも、十分な強化だ』
右手にいる彼が俺に道を示したのだろうが、生憎今は眠ってしまっている。お礼ぐらいは伝えたかったところだがなぁ。
脚に力を入れて、ロケットのように飛翔する。
前方には、魔力不足の要因となった黒い球。
それに対し、相殺するための万能の宝具を放つ。
完全に回復した俺に隙はねぇ。
今の俺なら。全力を尽くして、あの巨腕を屠ろう。
心配かけてすまないな。
これは詫びだ。
後ろにいるであろう後輩に凛として告げた。
『藤丸立香、一度だけだ。––––俺を使ってみろ、マスター』
自分は音楽を聴きながら、その曲のイメージでキャラを作るんですが、サルバドールにも参考にした曲……というか、歌があります。
『晴れる道〜宇宙人に合わせる顔がねぇ!〜』/次長課長
(ケロロ軍曹OP)
この曲を聴きながらキャラ付けをしてました。他の曲にも影響を多少受けましたが、根幹はコレです。
セイバーがいるのも……まぁエクステラ的な意味です。題名っぽいという、大分後付けに近いですが。
明るい曲なので機会があれば、是非聞いてみてくださいね!