英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話   作:夢見 双月

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頑張った。
でも、ちょっと遅れた。すいません。

久しぶりに四千字まで書いたけど、少ない文章を書く癖が抜けきれてなくて苦労してます。

最終回、どうぞ。


英雄である為に腕を狩る男の夢のような話

 九つの螺旋のそれぞれが破壊力を生む一つ一つの武器である印象を、藤丸立香は素人ながら抱いた。

 

 さらに言えば、一瞬で消えたサーヴァント達とのパスはまだ繋がっているのだが。

 パスの先はあの槍とも言える乖離剣の中に存在していた。

 

「最後の決戦の時には、形までは変わらなかったんだけどな……。でも、あの時と変わらない感覚で助かった」

 

 そういう彼は、雰囲気が変わっている気がした。

 どことなく悟ったような表情を浮かべている。

 

『みんなはどこに……? それにその剣は……?』

 

「言うなら、俺の神話礼装、かな? 安心してくれ、みんな此処にいる」

 

 サルバドールは藤丸立香に背を向けながら続ける。

 

「これがあの英雄王が俺にこの剣を託すに値する証だ。赤い模様の全てが、あらゆる世界の英雄と呼ばれる名前を示している。地球上の文字ではないからなんて書いてあるかは知らんけど、なんとなく分かるんだ。これは英雄の物語の全てだ、って」

 

 イマイチ要領が掴めず呆然とする藤丸立香に、サルバドールは遂に苦笑した。

 

「だから、安心してくれ。今の俺はこの世全ての英雄譚だ」

 

 そう言って振り返るサルバドールの隣に、気付けば誰かがいた。

 

『え?』

 

 

 驚きのあまり硬直する藤丸立香を他所にサルバドールはエアを起動させ、第三回転軸のみが回転し始めた。

 

槍の英雄よ(ランサー)

 

 徐々に空に上昇しながら、エアを投げる構えを見せるサルバドール。

 

 

 

クー・フーリン(ゲイ・ボルク)

 

 

 

 告げた名は宝具の真名解放の引き金となり、投擲されたエアは光を纏う。一瞬で朱い槍に変化したエアが、敵の軍勢の全てを貫く紅き棘を放出する。

 

 間違いない。青いタイツのランサーが持っていた朱槍と同じ宝具。

 形こそ少し異なるが、同じだ。

 

 

 サルバドールが着地したと同時に、藤丸立香は更に驚かされる。

 

「思った以上に動きやすいな。自分の体じゃねぇみてぇだ。……実際、そうなんだから当たり前か」

 

 目の前にいるのはサルバドールじゃないと気づく。

 青のランサーその人の人格はおろか、外見すら変わっていた。

 

『ランサー……?』

 

 そう呼びかけた途端、サルバドールの姿に戻る。

 ついでに、服も草で不器用に編まれた腰ミノだけに戻った。

 

「んん?……前にコレやった時はサーヴァントそのものになるなんて事はなかったが……。この力が本来の俺の姿、なのかな?」

 

『一体、貴方は……?』

 

「あー、そうだな。説明したいのは山々なんだが……昔にコレを使ったのが結構死ぬ直前でなぁ。……もしかしなくても制限時間が過ぎたら多分俺は死ぬ。だから、その前にさっさと聖杯を確保、お前の帰る手段を確立させなきゃならんのだが……待っててもいいけど俺について来るか?」

 

『行きます。今は、俺が貴方のマスターですから』

 

「言うねぇ。まぁ、まさか他のみんなまでもがエアと融合するなんて思わなかったから、俺たちしか残ってない。その分、雑魚が残っているが……戦力差としてはこちらに分がある。なんてったってこっちは英雄を背負ってんだからなぁ……! さて、手早く行こうか……ッ!」

 

『はい!』

 

「んじゃあ、今いる奴らだけでも消しとこうかぁ!!」

 

 エアが再び起動したが、第三回転軸ではなく、第一回転軸。つまりは先端のみ回転を始めた。

 

剣の英霊よ、集え(セイバー)

 

 赤の暴風が収束し、先端部が紅く輝く。

 

 先程の様に、サーヴァントが現れるのかと思う藤丸立香だが、その様子は見当たらない。

 

 そのままサルバドールは横に薙いだ。

 

 

剣の英雄達よ、断ち切れ(サーヴァント・セイバー)

 

 

 斬る。この言葉の概念が放射されたかのような感覚を覚える。

 

 

 それほどまでに、視界に映った敵全てが両断されている景色を見たならば、そう思うのも無理はないだろう。

 

 居合の構えすら無かった。詠唱を一小節挟んだだけで彼は横に得物を薙いだだけだ。それも、ゆっくりとなぞっただけにも見える程である。

 

 

 たったそれだけで、敵戦力の半分以上を持って行った。

 それでも巨腕が崩れなかったのは、対英雄の耐性故に。相当に厄介な性質を持っているが、こちらもこちらで規格外だ。

 

 

「さて、道は拓けた。どうした? 来るんだろう?」

『もちろん、一緒に進む』

 

「いい返事じゃないか。行くぞっ!」

 

 

 藤丸立香は軍神の剣を。サルバドールはエアを両手で持ち上げるようにしたまま駆け出した。

 

 

「『うおおおおおおああ!!」』

 

 

 

 

 お互いに当たりさえすれば必殺の武器となっている為に、技量や経験が足りずとも雑魚を薙ぎ払う事は容易であるが、その数が問題であった。

 しかし、その点は全てサルバドールが事あるごとにエアを通じて宝具を解放していく事で打開に成功する。

 稀に、エアを通してでしか宝具を解放できない為か、エアの部位が回転するまでに発動直前のラグが発生する。そのサルバドールの小さな隙だけは弱点に気付いた藤丸立香が護り続け、確実な真名解放によって周りの敵を蹴散らしながら進んでいく。

 巨腕の攻撃すらも、サルバドールが完全に防ぐか発射する前に対処するために、まるで歯が立たないようだった。

 

 だが、決してこちらの優位という事にはならない。

 

 先程から、サルバドールの口や鼻から血が垂れて止まらないのを確認出来ているだけでなく、明らかに走り方や戦い方がぎこちなくなってきている。微細な変化ではあるあったが、藤丸立香は観察眼に秀でていた。彼の身体が単純に追い付けていないのが原因だ。

 

 宝具というのは、英雄の逸話が昇華したもの。

 そんなものを使い分けながら連続使用するのだ。身体の限界が来るのは当然の話だ。

 

 それでも彼は、サルバドールは笑う。

 愉しいと言わんばかりの晴れやかな顔を見せて、目の前の障害を屠る。

 

 藤丸立香はその背中を見る。

 ならば、彼に劣る訳にはいかない、と己を鼓舞して。

 歯を食いしばって、軍神の剣を叩きつける。

 

 

 

 

 ああ、愉しい。愉しいなぁ。

 思えば、初めてかも知れない。

 

 こうして。

 誰かと共に戦うのは。

 

 ずっと護り続けてきた。ずっと頼り続けてきた。

 がむしゃらに頑張って、最高の結末を求めた。

 

 でも、今なら。泣かせてしまったあの人の気持ちが分かる。

 一緒に、歩みたい。

 共に、進んでいたい。

 

 貴女はそう、思っていてくれたのか。

 

 

 

「だからぁ……! 無茶はこれっきりだ! 生きて、お前にまた会えるなら! 今度は間違えない!! 引きずってでも同じ道を行ってやるからよ! 覚悟しろよぉ!!なんせ俺は……」

 

 

『これからが俺の旅なんだ!! お前なんかに足止めを食らってるようじゃダメなんだ!! だから、容易く超えてみせる!! 俺は……ッ!!』

 

 

「『人類最後のマスターだぁ––––––!!」』

 

 

殺の英霊よ、集え(アサシン)ッ!!」

 

 遂に巨腕にたどり着いたサルバドールは骨が響くぐらいに叫び、第六回転軸が回転する。

 

『邪魔はさせない!!』

 

 

「真名解放ォッ!!殺の英雄達よ、闇に潜め(サーヴァント・アサシン)––––!」

 

 

 藤丸の後ろにいた青年が突如、消失する。

 

 それを知って尚、藤丸立香は足を止める事はなく。

 あらゆる妨害を紙一重で切り抜ける。

 

 紙一重、というのは達人の域という事ではなく。当然ながら、回避は出来るものの疲労によってそこまで動くことが出来なくなっていることを指す。藤丸立香はただの人間、英雄の兆候こそあれ今は雛鳥に等しいのだ。

 

 限界まで腕に近づく。それは変わらない。

 少しでも切り抜ける為に身体をフル稼動させる。少しでも、どこかの身体の部位を休ませれば、死ぬ。

 

 だから今は醜く、生き汚く、足掻くしかない。

 自分に綺麗な戦いは出来ない。執念を以ってこのエネミーの波に抗う。

 

 

「俺を忘れてんなよオラァン!!」

 

 

 瞬間、巨腕の目の前に現れたサルバドールが、左手でその腕の奥まで抉った。

 気配遮断。全てのアサシンの保有スキルでありながら、乗算してサルバドールに付与されたそれは、気配だけでなくその存在もを陰に隠す。

 

 基本的に近接以外が英雄耐性の為にまともなダメージを与えられないのに対し、近付けば念力擬きを使用されてやられた時の二の舞になるのは想像に難くない。

 であれば、使用させなければいい。

 

 気配遮断をする事は事前に藤丸立香に伝えた訳ではない。

 しかし、剣戟の間の僅かに目を合わせた時。

 藤丸立香には、これから何をするか察したのだろう。その上で、しばらく一人で戦う状況でも歯を食いしばって耐えきったのだ。

 

「流石、だな」

 

 そう零したサルバドールは第一回転軸を回転させながら藤丸立香を回収。

 セイバーのサーヴァントのスキル『縮地』を用いて距離を一気に離した。

 

 自身を抱えたのが女性だった事で動揺する藤丸立香だが、すぐにサルバドールが元に戻ったために、仲間であると安堵した。

 

 

 

「聖杯は奪取した。早速だが『聖杯に願う。マスターを元の場所に還せ』」

 

『……!? サルさん!!?』

 

 サルバドールの行動に、藤丸立香は驚愕した。

 

 

『待ってください! なんで俺を逃すんですか!?』

 

 

「……急なのはすまん。だが、お前はもう十分だ。正直、世話になり過ぎて感謝しかないんだが、元々、俺が勝手に呼びつけたんだ。先に行っててくれ」

 

 

『アイツはまだ生きてる! まだ戦わないと……!』

 

 

「大丈夫さ、お前がいなくなれば俺の抱えている憂いはなくなる。俺が全霊を以って奴を倒そう」

 

 

『なんで……?』

 

 

 力のない藤丸の問いかけに、サルバドールは笑う。

 

 

「ありがとう。お前がいてくれて助かった」

 

『そんな……。まだ何も……出来て……』

 

「気にすんなって……代わりに、よく聞け」

 

 

 

「これから俺が見せるのは、お前の一つの可能性……その果てだ。俺と同じ道を行く事になるかは分からない。だが、世界を救う意思は等しく美しいものだ」

 

 その青年は、少年に言う。

 

「君の旅路に栄光を。先導者の証を。未来の遺産を置いていく。刮目せよ、これこそ俺が歩んだ軌跡を描く英雄譚である!!」

 

 九ツ螺旋乖離剣を天に掲げる。

 

 

 

剣の英霊よ、集え(セイバー)

 

 

 

 先端から。

 

 

 

弓の英霊よ、集え(アーチャー)

 

 

 

 徐々に動き出し。

 

 

 

槍の英霊よ、集え(ランサー)

 

 

 

 紅く光り始め。

 

 

 

騎の英霊よ、集え(ライダー)

 

 

 

 やがて。

 

 

 

術の英霊よ、集え(キャスター)

 

 

 

 全てが廻り。

 

 

 

殺の英霊よ、集え(アサシン)

 

 

 

 全てが紅く輝き。

 

 

 

狂の英霊よ、集え(バーサーカー)

 

 

 

 世界が揺れ始めた。

 

 

 

特異なる英霊よ、集え(エクストラ)

 

 

 

 乖離剣と融合したもの。それは、英雄の座であり。

 

 

 

聖杯に導かれし魔術師よ、掲げよ(マスター)

 

 

 

 この世全ての英雄譚である。

 

 

 

 攻撃などサルバドールに届くはずもない。今この状況で近付けば、どんなものだろう破壊することが出来る空間に放り出される事になる。

 

 

 

 

 

 これは不幸にも転生した人間の、慟哭。

 されど、その身はサーヴァントでなく、マスターでもなく。

 

 

「待つのは飽きた。そろそろ、自分の道を決める時だ」

 

 

 正しく、英雄だった。

 

 

 

 

 

誰かが語り継ぐは英雄のものがたり(オリジン・オブ・ジ・エア)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界が、砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて最終回ですー!
いやぁ、お疲れ様でした!!

読んでくれた方。感想、評価、お気に入りなどしてくれた方。

本当にありがとうございました!!

良ければ、他の作品も見てくれると嬉しいです。

それではみなさん! またどこかで会いましょう!











……とでも言うと思ったかぁ!?

『特異点』の最終回を迎えただけだからな! 完結なんてひとっことも言ってないわぁ!!

残念!
もうちょっとだけ続くんじゃなぁー!!


次回、エピローグ!! お楽しみに!!
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