ちょっと神様をぼこってくる   作:名無しの権左衛門

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がんばるぞ~


はじまり

「あー今日も部活終わったな~。帰ってゲームしよ」

 

 彼はごく普通の最近15歳になったばかりの少年、佐藤一郎だ。

部活が終わったらしく、ルンルン気分で帰宅中だ。

 

 

<貴様、そこにいたか>

「!? な、なんだ? 幻聴かな?」

 

 突然一郎に、何者かが語り掛けてくる。

周辺を首を振って確認してみても、全く誰もいない。

 

<殺してやる……殺してやる殺してやる殺してやる……殺ス……!!>

「お、おい、どういう事……!?」

 

 脳内で響き渡る何者かの殺意に、一郎は動揺し足を止めた。

その瞬間、景色がただの住宅地から森に変化した。

 

「へ? は? な……」

 

 いつの間にか変化した境遇に、目を白黒させる一郎。

 

「……~~……」

 

 そんな時森の奥から、何かの声が聞こえた。

一郎はその声を聴いて、人だと思いその方向へ駆けていった。

しかしなにやら様子がおかしい。

 

 声が大きく、確実に人間よりも高い位置から声が聞こえる。

 

 悪寒を感じたのか、木の後ろに隠れてその声の正体を覗き見る。

 

「――今日も森は青々しいぞ~鳥は歌い花は咲き誇る、こんな日は~――」

 

 竜だ。

 

 それも大きな竜。

 

 鼻歌なのか楽しそうにルンルン気分で、周辺を散策している。

 

(まじか……に、逃げよう……)

 

 勝てないとか以前に、どうしようもない。

どんな世界でも竜は、絶対的存在として表現または崇められている。

 

 そろぉ~っと、踵を返す一郎。

 

「――やっきにく~がーしーたくーなる~♪――」

 

 一郎は竜の歩いていく方向を確認するため、振り向き確認する。

すると目と目が合った。

 

(き、気のせいだって、こんな森何か――)

 

 竜が一郎の方へ、頭を振り向かせる。

 

「――もちろん食材はお前だああああ!!」

「ひいいいい!!?」

 

 一郎は東洋の竜に一気に距離を縮められてしまう。

彼は逃げる。

 

「死ねえ!」

 

 竜が爪でひっかいてくる。

 

「うわああああ!!!」

 

 一郎は脱兎の如く、森を駆け抜けようとする。

ただその目前にある死から免れようと、必死にもがく。

だが徐々にそのリミットが近づいてきていた。

 

「終わりだ!!」

 

 そういって、大きく爪を振りかぶった。

 

「ひっ!(死にたくない!!)」

 

 一郎は無駄だと感じながら腕を交差し、目を強くつぶった。

 

 

 

――カィン

 

 

 唐突な金属音。

何時までも来ない衝撃、風、痛み。

目を開けると、そこには純白な羽……いや、翼。

 

一郎を余裕をもって包み込めるほど大きな翼が、彼を爪から守るように防御し爪を弾いた。

 

「なっ!?」

 

 驚く竜。

 

「はっ…はっ、ざ、ざまあねえぜ……!」

 

 明らかに強がりで、不敵の笑みを浮かべる。

 

「ふむ。お前、わしと同じような奴よのぅ」

(へ? だ、駄目だ! 話を合わせて、逃げよう!)

 

 必死に生き残る為、考え抜く一郎。

 

「ふ、ふふ、そうだ。俺はお前と同じような奴だ」

「そうか……神が言って居った邪神じゃないのか。

ならば、わしと共にその邪神を探してくれるかの?」

「(邪神? 邪神って何なんだ?)ああ、いいぜ」

「なら、わしは向こうをやる」

「じゃあ、俺はこっちな」

 

 話をうまく合わせて、竜を追っ払った。

そして一郎は全力で逃げた。

 

 

 しかし翼は、人間でいうと本来使わない筋肉を長時間使う。

よって、一郎は痛烈な筋肉痛を浴びてしまう。

 

「この高度はまずい! すぐに下りて、町に……!」

 

 そのまま滑空……なんてできるはずもなく、地面に落ちて翼を解除。

なんとなく使い方を覚えたので、快復すればいけるはずだ。

 

「ハァ……ハァ……(痛いっ! でも、死にたくないっ!)」

 

 肩を抑えて、森の中で開けたところに出る。

開けたところは、幅が狭く長く続いているような場所。

地面には、轍[わだち]があり、何か交通機関があるという事がわかる。

 

「竜がいるならば、中世ヨーロッパスタイルが基本。ならば、ここは馬車か……」

 

 精神的に結構来ている為、独り言をしないともうだめかもしれない。

 

「くっそ、どっちに行けばいいんだ。東西南北はわかる。でも……」

 

 そんな時、何かガタゴトという音と木が軋む音が聞こえた。

しばらく待っていると見えたのは、見た目通りの馬車。

 

「(うっ、恥ずかしい。けど、ここで引けば、死ぬ。嫌だ。絶対に……!)

すみません! 載せてくださーい!!」

 

 

 道を阻んで言葉が通じるかわからないけれど、停止させて懇願するつもりだ。

 

「すみません、お願いします。

載せてください、魔物に襲われてしまって何もないんです!」

 

 法螺は時に必要。

 

「そうか……」

 

 馬主が一郎の懇願を聞く。

 

「なら、金はあるのか」

「え、あ、いや……何も……」

「故郷は?」

「す、すみません……何もないんです……でも、この身をもってお金を稼いで、

出世払いするんで……!」

 

 そういって全力で土下座と根気の説得をする。

 

(まずいまずいまずい!!)

 

 馬主の訝しむ表情が深くなっていくたびに、一郎は泣きそうになる。

 

 

 

「仕方ねぇ。この先にある都に送ってってやるよ」

「ほ、ほんとですか!? あ、あり――」

「だがな、静かにしといてもらうぞ?ほかの客さんもいるんだ」

「――ありがとうございます!」

 

 最敬礼をして、そのまま後ろの荷車に乗る。

乗った瞬間、冷ややかな目をしてくる乗客。

しかしいろんな経験をしてしまった一郎にとって、そんなもの気にするものじゃない。

 

 

「ねよ」

 

 そういって、一郎は精神的・身体的な疲労も相まって、ガタゴトと跳ねる床で寝た。

本来ならば苦痛な木の床も、ベッドから転げ落ちて冷たくかたいフローリングで寝ている為慣れっこだ。

更にガタゴトとリズム間隔で揺れる振動は、彼を夢の世界へ誘った。

 

 

 

「ぅ、ううん――お母さん……」

 

 

 ふいに寝言をつぶやく一郎。

その時の涙で、床をぬらす。

 

「「……」」

 

 冷ややかな目で見ている一部の乗客。

そんな時、乗客の一人の子供が筵を持って、一郎にかけた。

そしてその子供は何を思ったのか、一郎と背中あわせで寝る。

 

 この光景を見て、一部の人はため息をついた。

そしてほぼ全員、睡魔に襲われ寝ていった。

 

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