「お、やっと見えてきたぞ」
「都だー!」
(あれが都か……。ついたら、すぐに就職活動をしよう!)
ガタゴトと馬車に揺られながら、ようやく辿り着いた。
「じゃ、最後の飯だ。坊主。遠慮なく食え」
「わかりました。遠慮して食べます」
襲撃された翌日。
お腹を空かした一郎は、皆から食料を分けてもらった。
襲撃対処の功労者に対して、ではない。
ただたんに、困っている者同士の助け合いみたいなもんだ。
「不思議なパンですね」
「パン? これはリニャっていう、ワムナのすりつぶしを使った料理だ」
「そうなんですか(へぇ、小麦をすりつぶしただけでできるんだ。すげぇ)」
口いっぱいに広がるうまみに感謝しながら、旅路を楽しむ。
森を抜けた先は、奇麗な小川が流れ橋が多くかかっている草原。
その先にうっすらと見える巨大な建造物。
「えーと、就職活動できる場所ってあるんですかね?」
「あるわよ? まあ、まずは関所を通って、身分証明ね」
「ないんですが?」
「そこはデッドウルフの毛と爪を渡せば、いいだろう」
「翼にこびりついてましたもんね」
おばさんと傷跡が沢山ついているおじさんが、それぞれ教える。
「デッドウルフはここら辺に本当にいないんですね」
「竜神様の怒りを恐れず、こっちまで来た度胸は認めてやろう」
「死にかけたんですが」
初老の人が腕を組んで答える。
「わー、ふかふかー」
「こーら、羽で遊ばないの」
片翼を出して、普段使わない筋肉を鍛えている一郎。
何かあった時のためだ。
「大丈夫ですよ。ほれほれー」
「きゃっきゃ」
翼を操って子供をもふもふする。
これだけで背筋が悲鳴を上げる。
(あー、背中の筋肉が攣りそうだー)
そうやって和やかに過ごしていると、徐々に商隊や移住する人が増えてくる。
「さて……坊主、その翼をしまうんだ」
「あ、はい(あ、ここらへんで駄目な感じか。覚えた)」
「一応警告しとくが、俺たちは坊主を認めている。
だがな、坊主をしらないこいつらは、お前の特異性を認めない。
むしろ珍しがって、奴隷にしてくるだろう」
「(奴隷?)流石に奴隷はいいすぎじゃ?」
「馬鹿もん。この都こそ、貧富の差が激しく人種差別が激しい、人間の国だ。
ましてや、坊主は人間と獣人のハーフ。賢い獣人など、貴族にとって格好の餌だ」
人間は知能に勝り運動能力が低く、獣人は知能がかなり低く運動能力が極端に高い。
馬鹿な獣人は奴隷にされやすく、肉体労働が多い。
賢いとなれば……よくない事が起こるだろう。
「(なるほど、だから俺の姿を見て動揺しなかったんだな)
忠告ありがとうございます。私もこの国から人間として、再度のし上がってみましょう」
「ああ。奴隷にはなるなよ?」
心配してくれる初老の人に、一郎は笑顔を見せる。
そして関門を通り、デッドウルフの素材を使って身分証を発行。
馬車の停車場に来て、一郎と傷ついたおじさんが下車する。
「じゃ、坊主。またな」
「またね、お兄ちゃん!」
「じゃあな、少年!」
「がんばんなよ、くじけんな!」
「辛かったら笑えばええんやで、わっぱ!」
「はい、ありがとうございます! また会いましょう!」
全員都を通過点として、別のところにいくようだ。
別れは惜しいが、生きるためここで別れになる。
手を振って、馬車が見えなくなるまでそこにいた。
「よし、あんちゃん。吾輩についてこい」
「お願いします」
一郎はこの都で下車する人を聞いていた。
一人該当しその人に、就職活動ができる場所に連れて行ってもらえるようお願いしたんだ。
(城?)
「ここがこの都の政治の中心の協会だ」
城にみえるが、協会を大規模にしたものだ。
神官の服を着た人が沢山いる。
「聞いているとおもうが、法王様が世界を治めているのに等しい。
よって足りぬ人材は、全て協会から決定される」
そういって、就活窓口っぽいところに連れてこられる。
「就活ですか?」
「え、あ、はい」
「ではこちらへ」
神官は一郎をとある部屋に案内しようと移動。
一郎も移動しようとするが、傷跡がたくさんついている人に呼び止められる。
「あんちゃん、俺はもう行く。安い宿屋等は、このベニヤ板に書いた。
もし吾輩を頼りたいときは、東にあるギルド本部に来てくれ。
それと奴隷は物扱いされている。くれぐれも、気を付けるように」
「ありがとうございます」
「ああ。ちゃんと生きろよ」
そういって、彼と別れる一郎。
今だに来ない一郎を心配して戻ってきた神官に謝辞をして、面接に向かう一郎。
「では、読み取り試験です。これを読んでください」
「え、あの、どうして日本語?」
「?」
出されたのはこの国の標準語と日本語(古代語)。
一郎は苦も無く、母国語を読む。
「す……素晴らしいッッッ!!」
神官は絶叫ににた歓喜を口にする。
「!?」
「あ、ああ、すまないね。興奮してしまった」
ついでてしまったよだれを裾で拭う神官。
そして一郎にいろんな紙や羊皮紙を見せてくる。
「えーと……」
全て日本語(古代語)。
さらさらとなんの遠慮ももったいぶらなさに、面接神官は鼻血を噴き出す。
「ぶっふ……こ、これは……採用ですぞ! 長官!長官ーーー!!」
テンション↑↑[アゲアゲ]な面接神官は、ダッシュでどっかいった。
するとすぐさま片手に酒瓶をもつ上司を連れてきた。
「ウィ~……で? おめぇさんが、これを全部解読したと? ヒック」
「そうなんです、そうなんですとも! この人物は、古代語を全て解いたのです!
このような人材、百年、いや、今世紀最大といえるでしょう!
これで神代の時代におきた出来事全て、解読できますぞ神官長!」
赤面し酔っている神官長に、一郎の重要性を説く面接神官。
テンション↑↑な説明を、ちゃんと聞いているのか不明。
「ん~じゃあ、採用」
「あ、はい。佐藤一郎です、お願いします」
「これからよろしくな、一郎!」
面接神官は、一郎を熱く迎え入れる。
「ヒック……でえ~仕事に関してのこったぁ、こいつ(面接神官)にきけぇ~」
「はい! わかりました!」
一郎もこの不思議テンションの中、少しでも自分を売り込もうとテンションを↑↑にさせる。
「っしゃあ! なんでもこいだ! 標準語読めないけど!」
「その意気だ、一郎! まずはその服を脱いで、神官服を進呈しよう!」
というわけで、着替える。
「まずは一日一枚、これ(古代語で書かれた羊皮紙)を呼んでくれればいい!
後の雑務やお使いは、新入りとして当然のことだ!
まずは神官として、神様の威光を民に布教するのだ!」
「わかりました! 神様の偉大さを国民に、知らしめることが大事なんですな!?」
「よくわかってるじゃないか! では、行くぞ!」
「はい!」
一郎はテンションが高い面接神官が上司となって、羊皮紙の解読やお使いをすることになった。
その先でこの世界の事を少しでも知ろうと、前身姿勢となって耳かっぽじって聞く。
「ここから向こうが一般市民で、こっちは貴族の街。あっちは傭兵とかギルドのまちで、そっちは奴隷とか市場とか、憩いの場所だな!」
「へえ! すごく広いんですね!」
「人間の国の中で、かなり大きいからな! だが、世界はかなり広い。
我々の知らない歴史が、土の中ダンジョンの中、色々あるに違いない!
神様の威光で、不幸に見舞われる民を導くのが我々神官の役目だ!」
面接神官は、前向きな青年。
色々おかしいところがあるが、熱血で何事にも全力だ。
一郎も彼に感化されて、行動を開始する。
「さあ、最初は、奴隷商にこの荷物を届けるんだ!」
「はい!」
一郎の神官としての生活が幕を開けた。
因みに神官の月給は、100万である。
(高すぎなんだよなあ!)
タイトル詐欺じゃないよー、徐々にそういう空気になるよー。
というか、そうしないと終わらないよー。