士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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設定解説
獣人・・・所謂亜人属の一種で耳や尻尾があり、嗅覚などの一部の身体能力がヒトよりも優れているがほとんどはたいして変わらない。どの動物の獣人になるかは遺伝である程度固定されるが稀に違うものも生まれる。さらにヒトとのハーフではヒトか獣人かもランダムに発生する。

それでは本編をお楽しみください。


パーティー

「カナさんはいつから冒険者をやっているんですか?」

街の中を歩きながら勇輝は振り向いてカナに尋ねる。

「ひゃいっ!先月からです…。」

急に話しかけられたので驚いたのかおどおどしている。

・・・怖がられてるのかな?それとも、もともと控えめなのか?・・・

「そうなんですか。私は昨日なったばかりなんですよ。旅をしていてこの辺りに来たのも初めてで…わからないことばかりです。そういえば、カナさんはどういった魔法を使うのですか?」

「えと…私は水属性の魔法が得意で特に発展系の氷魔法が中心です。あと、少しですけど回復もできます。他の属性はあまりできないです…。」

話の後半で杖を両手で抱きしめてうつむきがちに話した。

帽子でその顔は見えない。

・・・一般の魔法ってこういう感じなのか。あんまり色々な属性を大っぴらに使わない方がいいようだな。わざわざ教える必要はないし、切り札は多い方がいい。・・・

「いいですね。私はそんなに使えないので十分ですよ。それより、怪我をした時には頼りにさせていただきますね。」

「はっ、はい!」

自身なさげだったのがちょっと元気になったように見えた。

「勇輝さん、もうすぐ門に着きます。い…一緒に頑張りましょう!」

カナが勇輝の後ろを指差した先を見ると街の門がそびえ立っていた。

「そうですね。頑張りましょう。」

 

 

・・・またこの森か。因縁でもあるのか?・・・

勇輝の依頼の目標である暴れイノシシは街のすぐ外にある森に出没しているようだが、この森は勇輝がこの世界で初めて来た場所である。

「私はこの森の方から向こうから来たのですが街の近くにこれほどの森があるというのも物騒ですね。」

「ですからこの街は冒険者の存在が欠かせないんです。」

・・・せめて道の周辺くらいは安全を確保するべきだよな。ちょっと森を切り開くとかしないのかな?・・・

「でも、冒険者の仕事を奪うことになるかもしれないですが、道の周辺だけは森を切り開いて安全にした方がいいんじゃないんですか?」

森の入り口で聞いてみた。

「そういう意見もあるんですけど、この森は周辺のマナの循環を担っているみたいで傷つけてしまうと、農作物とかの不作にもつながってしまうらしいですよ。」

・・・そういうことか、それじゃあ街も渋々残してるってことか。・・・

「それでは行きましょう。」

二人は森に入っていった。

 

 

森に入ってしばらくすると奇妙な光景を発見した。

表面が大きくえぐられていたり、倒されている木がちらほらでてきた。

「この匂い……さっきまでこの辺りにいたみたいです。周辺の状況を見るとかなり気が立っているみたいですね。倒されてる木を見るとかなり大きいみたいです。」

今までのカナの雰囲気とは違って冷静に情報を集めている。

・・・さすがだな。やっぱり嗅覚がいいのかな。・・・

「すごいですね。そんなことまで分かるんですか?」

「…はい!じゅ、獣人なので………。」

勇輝が話しかけるとカナははっとしたようにおとなしくなった。

・・・カナさんはもしかして……。・・・

勇輝はカナに正面を向いて呼びかけた。

「嗅覚での推測以外は獣人かどうかは関係ありませんよ。それはあなた自身の素晴らしいところです。もっと自信を持ってください。私は差別をするつもりはありませんし、すごいと思ったらすごいと言います。」

「…………ありがとう…ございます。」

まだぎこちない返答だったが、その声には喜びが感じられるような気がした。

・・・これが正しかったらいいんだけど。・・・

気を引き締めて、さらに森の中を進む。

 

 

「ーッ!勇輝さん!」

ゆっくり歩いているとカナが突然立ち止まった。

勇輝も足を止めてカナを見る。

カナは被っていた帽子を取って耳をピンと立てる。

「近くにいます。」

どうやら音でわかったらしい。

「どの方向か分かる?できたら移動してるかどうかも。」

少し声量を落としてカナに聞く。

「あっちの方角です。少しずつ離れていってますけどすぐに追いつけます。」

カナは目を閉じながら音が聞こえる方角を指差した。

「それじゃあ追跡しよう。何か変化があったら教えて。」

「はい。」

二人は大きな音を立てないように慎重に進んでいった。

「勇輝さん!今度はこっちに向かってゆっくり向かってきます!」

「なっ!?とにかく身を隠そう!」

勇輝は近くの茂みを指差し、隠れた。

「うまく隙を突いて仕留めます。今のうちに言っておきますけど、大きな音がしますので私が言ったら耳を塞いでください。」

そう言って対人狙撃銃を取り出して弾を装填する。

「分かりました。………もうすぐ見えます!」

カナがそう言ってすぐに木の向こうから大きな毛むくじゃらのイノシシが歩いてきた。

・・・デカイ……。あれが暴れたら厄介だな。・・・

「カナさん、耳を塞いで。」

「はい!」

カナは両手で耳を押さえている。

その仕草は可愛げである。

勇輝はスコープを覗いて目標を視界に捉える。

・・・どこを狙うか……やっぱり脳天か?外したらあまり効かなさそうだな。

結構タフそうだし、一撃でやるか。・・・

ゆっくりとこめかみと思われる場所に狙いをつける。

「喰らえ!」

轟音とともに7.62mmの弾丸が放たれた。

しかし、引き金を引いた瞬間にイノシシが顔を横に動かしたのを見た。

・・・マズイッ!・・・

弾丸はイノシシの右目に命中した。

スコープの向こうで目標は大きな鳴き声を上げながら頭を振り回している。

・・・しくじった!もう1発だ!・・・

すぐさまスコープから目を離して次弾を装填するがその時に隣を見るとカナが必死に耳を塞いで震えていた。

・・・カナさん、ごめん!・・・

もう一度スコープを覗くとイノシシは怒り狂ってキョロキョロと敵を探していた。

もう一度轟音が響いた。

隣からカナの怯えた声が聞こえる。

2発目は肩の上に当たった。

あまり効果がなかったようで怯まずにこちらの方を向いた。

敵を見つけたのか大きな唸り声を上げて突進してくる。

・・・これはヤバイ!もう狙撃は無理だ!いったん逃げないと。・・・

カナはまだうずくまって震えている。

「カナさん!」

勇輝は狙撃銃を収納し、カナの手を引いて茂みから出て走る。

カナは耳をパタンと倒して青ざめた顔をしているが、なんとか付いてきている。

後ろから駆けてくる音が大きくなってきている。

「クソッ!ここに隠れよう!」

二人が隠れられる大きな木の後ろに隠れる。

カナは木に背中をつけて座り込んでしまう。

後ろから鳴き声が聞こえた後に木をなぎ倒す音が聞こえた。

姿が見えなくなって手当たり次第に木に突進しているようだ。

二人が隠れた木は倒されはしないだろうが、安心はできない。

・・・どうする?とにかくやるしかない!・・・

勇輝は64式小銃と予備マガジンを取り出してマガジンをポケットに放り込んだ。

「カナさんはここに隠れてて。」

「えっ?どういうことですか?まっ……」

勇輝は最後まで聞くことなく64式を持って飛び出した。

 

 

「こっちだ!」

飛び出した勇輝は最初に単発で2発撃ったが特に効果はない。

射撃してすぐに隠れていた木から離れるように走った。

それを片目で見ると鳴き声を上げて追いかけてきた。

・・・ダメージは与えられなかったけど陽動はできたみたいだな。・・・

ある程度走って一瞬止まって振り向き射撃する。

イノシシはなおも追いかけてくる。

「タフすぎるだろー!」

嘆きながらも走って木の後ろに隠れる。

そして突進する足音が聞こえてきてもうすぐ接触するというところで勇輝は横に飛び出した。

イノシシは突進の勢いで勇輝が隠れていた木をへし折ったが、敵の姿を一瞬見失った。

勇輝はその隙に側面の位置について残り数発のマガジンを交換してセレクターを[タ]から[レ]にしてしっかり構えた。

「倒れろーーッ!」

イノシシが振り向いて突進しようとしているところに怯まずフルオートの20発を正面から叩き込んだ。

顔や頭に次々と命中して血を吐き出して突進のスピードが若干落ちたが、勇輝の目の前にたどり着くと勢いよく立派な二本の牙を振り回した。

勇輝は小さなバックステップをしたが、間に合わず空中で牙に振り払われて近くの木に背中から激突した。

「グハァッ…」

朦朧とした意識の中イノシシが呻き声を上げて力なく倒れていくのを見た。

イノシシも限界だったようだ。

勇輝はよろよろと立ち上がった。

左手はどうやら骨が折れているようで膝から先が動かない。

64式を離して右手でホルスターから9mm拳銃を抜いてふらふらとイノシシに近づく。

イノシシはまだ息があり、足をばたつかせてもがいている。

勇輝はしにかけのイノシシの目の前に立って安全装置を解除してハンマーを起こし、頭に向ける。

パン!パン!パン!

素早く3発の銃弾を叩き込むとイノシシは息絶えた。

その後勇輝も後ろに倒れた。

身体の感覚が薄くなっていく。

・・・Dランクで相討ちかぁ…将来の国防を担う幹部候補生失格だな。・・・

呟くことも出来ず、心の中でそう思う。

「勇輝さーーんっ!」

カナの声がかすかに聞こえた。

「勇輝さん!しっかりしてください!私が傷を…………」

そこまで聞こえたところで勇輝は意識を失った。

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