エリナ「ファイー?スープ作って来たよ!食べてみて!」
ファイ「おっ、どれどれ、うまそうじゃねーか!」
その後……
エリナ「どうしたの?ぼーっとして、もう!口から出てるじゃない!……あらっ?ファイ?」
ファイ「………ウワッ!?一瞬意識飛んでた…。」
エリナ「もう、ぼーっとしてんじゃないわよ。それで、どうだった?」
ファイ「ああ……、いいんじゃねーか……?」
そして現在に至る。
なぜか宿で死にかけた勇輝はその後特に何もせず、ゆっくり休むことにした。
さっそく買った服に着替えてベッドで寝そべっている。
カナは椅子に座って居眠りをしている。
その姿に癒されながらあることを思い出した。
・・・そういえば、神さまに頼んだ補填で確か物の名前や詳細が分かる能力があったな。完全に忘れてた……ちょっと試してみよう。・・・
収納していた果物をいくつか取り出してじっと見つめてみる。
すると頭の中に文字が浮かんで来た。
[リンゴ:一般的な果物/新鮮]
・・・なんか変な感じだけどこんなもんかぁ。これはどうだ?・・・
別の果物を持って見つめてみる。
[フォレストベリー:街はずれの森で自生する固有種/熟れ過ぎ]
・・・マジかっ!食べないでおこう。・・・
暇な時間を潰すために貯蓄した食材の選別をやっていたら日が暮れた。
腕時計を見るとそろそろ夕食の時間だった。
勇輝はカナを優しく起こして食堂に行った。
食堂で出された料理をじっと見つめてみた。
[野菜のスープ:エリナの母が作ったスープ/美味]
その情報を見て勇輝はホッとした。
「勇輝さん、さっきは大丈夫でしたか?」
エリナが勇輝に声をかける。
「なんかたまーに料理を食べたお客さんが倒れるんですよね。なんでですかね?」
エリナさんの料理だよと言いたいが、周りのお客さんがやめとけというように首を振っていたのでやめた。
「いやー、なんででしょうね。私もわかりません。」
適当にごまかした。
食事の後はすぐにベッドに入った。
・・・今日はつかれた。決闘でボロ負けするわ、料理で死にかけるわ、散々だった。・・・
明日からガーラとの特訓があることを思い出し、早めに寝た。
次の日の朝にいつのまにかくっついて寝ていたカナを見て眠気が一瞬で吹き飛んだ。
二人がギルドの地下に行くとガーラさんが木の剣を2本持って立っていた。
「おはようございます、ガーラさん。さっそくお願いします!」
そういうとガーラは木剣を一本投げて勇輝の足元に刺さった。
「今日はこれで基本を叩き込んでやる。しっかり付いて来いよ。」
そして勇輝が木剣を取り、構えると打ち合いが始まった。
「違う!そこはこうだっ!」
「ーッ!」
打ち合う中で適宜指導が入る。
戦いながらなので対応するのが難しいが、手加減してくれているのか、ギリギリで対処できるようにしている。
「ハアァ!」
「おっ、やるじゃねーかっ!だが、詰めが甘いぞ!」
すぐさま剣を弾かれて勇輝の胴体に一撃を食らう。
勇輝が膝をつくとカナが駆け寄ろうとしたが手を上げて制止した。
「まだまだ……。」
「おう、その調子だ!」
そんな特訓が4時間ほど続いて昼になったので休憩に入った。
受付のお姉さんが差し入れのサンドイッチを持って来てくれた。
鑑定したが問題なさそうだ。
「そういえば、お前がたまに見せる剣さばきなんだが、どこで覚えた?」
サンドイッチを頬張りながらガーラが尋ねる。
「昔別の街で見た人の動きを見よう見まねでやってるだけです。」
・・・ほんとはアニメとか映画で見たやつだけど……。・・・
そう心の中で呟きながら答える。
「まあ、それならいいんだが、今のままじゃ付け焼き刃感がひどいからな。基本ができないと効果を十分に発揮できんぞ。」
「はい。」
「よし、食い終わったら再開だ!」
その後も特訓が続き、終わって外に出る頃には夕暮れになっていた。
「また明日も来いよ!」
「……はい。」
体中の痛みを堪えて返事をした。
結局一度も攻撃を当てることができなかった。
宿に戻ったら部屋でカナが体中の痣やキズを治してくれた。
「勇輝さん、あんまり無茶しないでください。見ててずっと心配してるんですよ。」
ちょっと頬を膨らませてカナが言った。
怒っているのだろうが可愛かったのであまり耳に入らなかった。
「あまり怪我しないようにもっと上達するよ。」
軽く返事をする。
「それで怪我したら意味ないです!」
再びカナが突っ込む。
「そうですね。気をつけます。」
食事の時間が来たので食堂に降りて席に着いた。
運ばれて来た料理をじっと見つめてみた。
[???:エリナが作った煮物?/食材不明/危険]
・・・………うん、ヤバイ………。・・・
神の祝福をもってしても解析不能のエリナの料理を他のお客さんと協力してなんとか完食した。
ちなみにその後はトイレがかなり混んだ。
勇輝は部屋に戻ってまた明日に備えて早く寝たが、すぐに寝付けられず、しばらくしてカナが潜り込んできたので余計に眠れなくなってしまった。
勇輝の記憶では確実に1時くらいまでは眠れなかった。
次の日も一日中特訓に明け暮れた。
相変わらず一撃も与えられないが、勇輝が怪我を負うことは少なくなっていた。
「少しはマシになってきたじゃねーか!」
「私だって負けません!」
「まあ、一太刀も食らってないけどな。」
この日もボロボロになって特訓を終えた。
ずっと見ていたカナに小言を言われたが、心配故のことなので真摯に受け止めた。
・・・カナさんの怒ってる顔が可愛い……。い、いや!最近たるみすぎだ!このままじゃ間違いを起こしてしまう。気を引き締めなければ。・・・
動揺するがなんとか気持ちを落ち着かせる。
幸いこの日の夕食は美味しかったので生き返るような気分だった。
そしてベッドでカナにくっつかれるのを耐える苦行をこなす。
そのような日常を過ごしていると宿に宿泊する最後の日になった。
特訓でもやっとまともに戦えるようになってきていた。
「くらえ!」
「なっ!?」
ガーラの木剣が宙を舞って地面に落ちた。
「やるようになったじゃねーか。合格だ!」
「やった!今までありがとうございました!」
木剣を拾って戻ってきたガーラにお辞儀をする。
「まあ、オレは本気じゃなかったけどな。ここまでやれれば後は自分の力で上達するだろう。オレは基本を教えただけだ。」
「マジですか……。でもこれからもっと頑張ります!」
「勇輝さん!やりましたね。」
カナが駆け寄ってきた。
「カナさんも、今まで付き合ってくれてありがとうございます!」
・・・実際ずっと見てくれてたし、キズも治してくれたからね。・・・
「そんなお前にちょうどいい依頼がある。これで自分の腕を確かめてみるといい。」
ガーラがそう言うと丸められた依頼書を取り出して勇輝に渡した。
「コボルトの群れの討伐…?数は…7体!?Cランクですか!?」
「大丈夫だ。今のお前にならやれる。」
ガーラが力強く頷く。
勇輝とカナは馬車に乗って渓谷へと歩いていた。
・・・今度こそ僕一人でやり遂げてみせる!・・・
無意識にその歩みは速くなっていた。
渓谷に辿り着き、周囲を警戒しながら進む。
すると崖下に差し掛かった時に進路上を塞ぐようにコボルトが現れた。後ろを振り返ると逃げ場を塞ぐように隠れていたコボルトが出てきた。
「前方に4、後ろに3体か…。カナさん!」
「はい!」
カナは勇輝から離れて距離を取った。
コボルトの何体かが、追おうとするが勇輝がそれを防ぐ。
「僕が相手だ!」
まずは2体が向かってきた。
勇輝はじっくりと観察して攻撃を予測し、1体目の攻撃を受け流しながらすり抜けてもう1体の前に躍り出て横一閃を食らわせた。
すかさず体を回転させて1体目の背後から斜めに斬りおろして一瞬で2体を倒した。
・・・すごい…思ったとおりに体が動く。これなら!・・・
仲間をやられて動揺していたがすぐに立ち直った1体が向かってきた。
しかし、攻撃を容易くかわされて心臓付近を刺し抜かれた。
剣を抜くとコボルトが力なく倒れた。
「今度はこっちからだ!」
勇輝がサーベルを構えて低い姿勢で突進して先頭のコボルトを下段から振り上げて切り捨てた。
残りの3体が慌てて勇輝を囲む。
後ろにいたコボルトが斬りかかってきたのを察知してかわすと隣のコボルトが続けて向かってきたのをステップで一気に接近して懐に入り、サーベルを突き刺す。
サーベルを抜きながら最初に斬りかかってきたコボルトを切り捨てる。
最後の1体は自暴自棄になったのか剣を前に突き出して突進してきた。
勇輝はタイミングを見計らってサイドステップでかわし、隙だらけの背中を渾身の力で斬り下ろす。
斬られたコボルトは突進の勢いのまま前に倒れた。
「……やったぞ。よっしゃーー!」
勇輝は自分の成長に感嘆の声を上げてガッツポーズをした。
「カナさん、もういいですよ。」
サーベルを振って血を払い、剣を収めながらカナを呼んだ。
「勇輝さん…、すごかったです。あんなに鮮やかに7体も倒すなんて…。」
「さっさと帰ってご飯を食べましょう!」
「はいっ!」
二人が馬車に乗って街に帰った時には日が暮れかけていた。
ギルドに戻ると入り口でガーラさんが待っていた。
「おう!その様子だと、上手くいったみたいだな!」
「はい!ガーラさんのおかげです!」
「その調子で頑張れよ。」
ガーラが近づいて肩を叩いた。
「自分に惚れてる女をしっかり護ってやるんだぞ。」
ガーラがこっそり耳打ちをした。
「なっ!?ガーラさん!」
「じゃあなー。」
ガーラは手を振りながら街中を歩いていった。
カナは首を傾げている。
「依頼達成ご苦労様です。上手くいったんですね。あんな楽しそうなガーラさん久しぶりに見ましたよ。……これが報酬です。」
受付のお姉さんがにっこり微笑んで報酬の入った袋を渡す。
Cランクなだけあって多めになっていた。
「お姉さんも差し入れありがとうございました。」
お姉さんにお辞儀をして礼を言う。
「いいんですよ。こうして新人が成長するのを見るのが楽しみなんです。」
そう言うと受付のお姉さんは笑った。
・・・もしかしてお姉さん結構年上?・・・
そう思っていると謎の寒気を感じたのですぐにギルドを出て宿に帰った。