士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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ちょっと息抜きで回想のつもりです。



(外伝)士官候補生の追憶

勇輝が異世界に漂流する一年前の春……

寮の全体に放送が流れた。

[伝達っ、銃貸与式があるので1学年は作業着で各中隊武器庫前に集合せよ。]

・・・ついに銃を受け取るのか……楽しみだ。・・・

士官学校の生活に慣れきっておらず、時間に追われる毎日だった勇輝はギリギリで集合に間に合った。

すでに同期が並んでいて正面の武器庫の前に長机が置かれていて、側に陸自の制服を着た教官が立っていた。

長机には緑色の毛布が敷かれてその上に64式が並べられている。

同期の先任者が指揮をとる。

「1学年気をつけっ!短間隔、右へー習えっ!」

すぐさま号令に反応して左腕を腰に当てて顔を右に向けて列を整頓する。

「直れっ!」

指揮者の「な」の音に反応して一斉に手を下ろして正面を向く。

指揮者は軽く見回して回れ右をして教官に敬礼した。

「1学年総員35名、事故なし!現在員35名、集合終わりっ!」

「了解。列中につけ。」

もう一度敬礼すると指揮者が回れ右をして列の右端に移動した。

教官が前に出てくる。

「お疲れさん。」

「「「お疲れ様ですっ!」」」

「本日はこれより銃貸与式を行う。えー、名前を呼ばれたものから前に出て銃を受け取って負い紐に付いている名札の番号を大きな声で言え。銃を受け取る時は「銃っ!」と言いながら奪い取れ!」

「「「ハイッ!」」」

「休め、それでは○○学生!」

1人ずつ呼ばれて前に出る。

見ていると、教官が「銃!」と行って突き出してきたのを受け取るようだが、強く掴み取らないといけないようで苦戦していた。

勇輝は後半だった。

「永遠学生!」

「ハイ!」

前に出ると教官が銃を持っている。

「銃!」

「銃っ!ーッ!」

力強く銃を掴んで引っ張ったが教官も強く持っていて離れない。

「ーッ!」

もう一度思いっきり引っ張るとやっと取れた。」

すぐさま番号を確認して大声で言う。

勇輝は回れ右をして列に戻った。

そして数名が銃を受け取って全員が列に並んだ。

「ご苦労さん。諸君らが受け取った銃は武器である。有事の際はこれで人を殺すこともあるかもしれない。その覚悟を持って扱うように!」

「「「ハイッ!」」」

 

 

時は少し流れて夏………

勇輝たちは銃を支えながらトラックの荷台の中で簡素な台に座っていた。

ガタガタと揺れるが、ただの板の上に座っているだけなので尻が痛くなる。

ホロに覆われて薄暗いカーゴの中で同期たちは雑談をしていた。

20分ほどで目的地の射場に到着した。

「準備ができるまではしばらくここで待機しろ。」

教官がそう言って射場の扉の中に入っていった。

「おい、勇輝、あそこ見てみろよ。アイツ携帯持ってきてる。」

同期に声をかけられ、指差す先を見た。

「本当だ。うちの班は禁止されてたのに。」

そいつはしゃがみこんで携帯をいじっていた。

・・・みんな禁止されて持ってきてないのに……。どうなっても知らないぞ。・・・

しばらくするとその班の教官と思われる人が現れてそいつの頭を思いっきり叩いた。

そいつは気づいていなかったので突然のことに茫然としている。

教官がその手から携帯を奪い取って歩いていった。

・・・やっぱりな。自分勝手なことするからこうなる。・・・

そう思っていると勇輝達の教官も来た。

射場に入ると硝煙の臭いが充満していた。

「この射場は200mある。はじめに5発撃って照準を調整してから10発を2回撃って、その点数を訓練の成績とする。」

教官が説明している間にも他の班の人が射撃をしていて、密閉空間に響く音に気が散っていた。

「今回はこの曳光弾を使うので、それで弾道を確認しろ。」

教官が銃弾を手に持ってみせるが、その弾頭の先端はオレンジに塗られている。

・・・曳光弾かぁ、楽しみだな。・・・

「今回は実弾の射撃となる。空砲でも十分危険だが、今回はそれ以上だ。

腕とかなら簡単に千切れるからな。弾が入ってなくても絶対に同期に銃口を向けるな!人殺しの武器だと言うことを自覚して扱え。」

その後射撃に移った。

弾薬を受領して弾倉に弾薬を装填する。

弾倉は缶ペンケースみたいな音とともに弾薬を納めていく。

そして寝撃ちで射撃した。

曳光弾がオレンジの閃光を引いてレーザーのように見えた。

・・・すげぇ、きれいだな。・・・

自分で双眼鏡で着弾点から照準を調整する。

しかし、その結果はイマイチだった。

外でしょげていると全員が揃って教官が話を始めた。

「諸君らは的がどうして人のシルエットなのかわかるか?…それは人の形をしたものを撃つことに抵抗をなくすためだ。訓練は慣れるために行うものだ。人を撃つことに何も感じないように近づける。まあ、海や空に進む者は今後銃を撃つ機会はほとんどないが、それだけは覚えておけ。何であろうと実感のない殺しは直ぐに慣れる。」

その言葉が印象的だった。

 

 

さらに時は流れて秋……

視界の奥には富士の嶺がはっきりと見えている。

勇輝達は背嚢と64式を背負って地図を広げてひたすら山道を歩いていた。

時折休止点で弾帯に付けた水筒を取って水を飲む。

誰も休憩中にまともに動かない…いや、動けない。

肩が痛みだして、足も悲鳴を上げ始めたがそれでも進み続ける。

「永遠学生、今はどこを歩いている?」

後ろから教官が質問してきた。

「先程の休止点がここで、今は緩やかな曲がり道なのでここです。」

防水処置された地図を指差して答える。

「うん、良好だ。」

そう言って前に進んでいく。

・・・教官さすがだな。僕らよりも重い荷物を持ってるのに全く辛さを感じさせていない。・・・

教官は64式は持っていないが背嚢に加えて大型の通信機を背負っていた。

長く伸びたアンテナがたまに木の枝に引っかかる。

「○○学生、今どこだ?」

「えと、……………ここです。」

「はっ?違うだろ。お前ちゃんと見て歩いてたか?」

「前の人に付いていけばいいと思って地図は見てませんでした。」

「ふざけるなよ。お前はただ付いていくだけの羊かっ!」

勇輝の少し前を歩いていた同期がシバかれていた。

・・・ちゃんと地図を見ててよかったー。・・・

そんなこんなでついに25kmを踏破したがそのまま10分間のハイポートをやらされたのは辛かった。

 

 

そして現在………

・・・なんか懐かしいことを思い出したな。ちょっとは役に立ってるかな。・・・

「勇輝さん、どうしたんですか?早く行きましょう!」

カナが勇輝の手を軽く掴んで上目遣いで見てくる。

・・・なっ!?どこでこんな事を!?いや、ただちょっと身長差でそうなってるだけだよな。そうだよな?・・・

「そうですね。あの店から見てみましょうか。」

「はい!」

その返事は士官学校で聞き慣れたものと違って生き生きとしていた。

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