勇輝とカナは町長の屋敷から出てギルドへと向かっていた。
・・・本当に獣人が普通にいるな。・・・
少し歩いただけでも店や通行人の中に耳や尻尾がある人がたくさんいた。
「いいですね、この町……。」
カナが呟いている。
カナは帽子を被っていないので尖ったフサフサの耳がよく見えた。
道中でいくつか食べ物を買って収納した。
・・・そうだ、あれも用意しよう。・・・
ふとある事を思い出した勇輝は家具を売っている店に入った。
「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」
店員の男性が出てくる。
「手頃な大きさのテーブルとかを見たいのですが。」
「それでしたらこちらに置いてあります。ごゆっくり選んでください。」
案内されて付いていくと色々な家具が置いてある。
「カナさんは何か気に入った椅子があったら買っておいてください。」
「あ…はい!わかりました。」
そう言って椅子が置いてあるスペースへと歩いて行った。
・・・さてと、どれがいいかな。…こいつはちょっと重いな。これは…小さすぎる。・・・
旅の途中で休憩や食事をするのにぴったりのテーブルはなかなか見つからない。
・・・どれも作りがしっかりし過ぎて外で使いにくそうなんだよな。もっと気軽に使えそうなのはないかな。・・・
時折唸りながら商品を物色する。
「おっ、これは。」
勇輝はとあるテーブルに目をつけた。
大きさも2人で使うのに十分で持ち運びもしやすい。
・・・これなら旅先で使える。こいつにしよう。…あとは椅子かな。・・・
椅子のエリアにいくとカナがいた。
「勇輝さん…テーブル決まりましたか?私はまだ決められないところです。」
「そうでしたか、一緒に探しましょう。」
カナと2人でいろいろな椅子を見た。
「できたら座り心地の良いものがいいですよね。疲れている時に硬いと嫌になっちゃいますから。」
「そうですね。勇輝さん、これとかどうですか?」
カナがとある椅子のところに駆け寄り手をのせる。
手頃な大きさで、座るところには革が張られていて触ってみるとかすかな反発ごある。
・・・綿か何かを詰めていてクッション性があるみたいだな。・・・
「いいですね。これにしましょう。カナさんは?」
「私も同じものにします!」
カナが笑顔で小さく跳ねた。
「すいません、これを2つください。」
近くにいた店員に頼み、テーブルも合わせて購入した。
そんなに安くはなかったが町長からの謝礼でびくともしない。
さっそく椅子とテーブルを収納して店を出た。
てっきりどこかの家に運ぶつもりと思っていた店員が驚いていた。
「ここがこの町のギルドかー。」
[コヨースカ]のギルドよりは小さいが石造りで年代を感じさせる。
これまた古そうな木の扉を開けると中は大体同じ作りをしていた。
2人は受付に行った。
「あの、[コヨースカ]から来たんですけど、依頼って受けられますか?」
勇輝が受付の若い男性に話しかける。
頭には犬っぽい垂れ耳があった。
「もちろんできますよ。まずはギルドカードを出してください。」
2人がカードを渡す。
「確認しました。これからはこの町でも活動できます。」
「ありがとうございます。」
カードを受け取ってすぐに掲示板のところに向かう。
・・・どれにしようかな。……結構ランク高いのが多いな。・・・
ちょうどいいのはないかと探していたらカナに袖を引っ張られた。
「勇輝さん…先に宿を確保した方がいいと思います。」
ちょっと控えめに言った。
「すいません、ちょっとはしゃいでましたね。そうしましょう。」
まだ掲示板が名残惜しいがカナに続いてギルドを出た。
町の人に聞いた手頃な宿を見つけて入る。
「いらっしゃいませ、お泊まりですか?」
「はい、3日で部屋はふた………。」
2つと言おうとしたらカナが袖を引っ張りジト目で見ていた。
「……1つでお願いします。」
部屋に入ると椅子に座って休んだ。
勇輝が取った部屋は広めでベッドが2つ置いてある。
これは別の部屋を取れなかった勇輝のせめてもの策であった。
・・・流石にずっと同じベッドじゃマズイからな。・・・
「勇輝さん……。」
ベッドに腰掛けていたカナが恥ずかしそうに声をかけた。
「着替えさせてもらってもいいですか?」
カナの顔は赤くなっている。
以前買ったカナの服は異次元空間に入っている。
「あ…ええ、いいですよ。」
勇輝は一瞬動揺したが、異次元空間の入り口を開く。
以前試したが、この空間はカナだけを入れることもできることがわかっている。
カナが入ると勇輝は椅子に座ってしばらく待っていた。
・・・覗かないぞ。たとえ可愛い子が着替えていても気にしない。・・・
雑念を押さえつけているとカナが出て来た。
店で買った服を着ているが、ひとつだけ違う点がある。
それはカナの尻尾が出ているということだ。
「どうですか…?」
まだカナの顔は赤かった。
・・・初めて尻尾の全体を見たな。耳といい尻尾といい、美しいものだな。・・・
「綺麗な尻尾ですね。」
「ーッ!?」
カナは動揺して真っ赤になっている。
しかし尻尾は左右にせわしなく振られていた。
・・・やっぱり尻尾はわかりやすいな。・・・
これが萌えというのだろうか…そんな考えを一瞬して目を離した。
休憩を終えると再びギルドに行って依頼を探した。
内容は馬車を襲撃しているリッジウルフの群れの討伐だった。
名前の通り、崖を主な住処とする狼のようでランクはCだった。
「今回は相手が手強いので銃を主に使わせていただきます。大丈夫ですか?」
「私も頑張りますから、心配しないでください。」
カナが勇輝を見つめて言った。
・・・機動力のある相手ならアレを使うか。・・・
「今回はたくさん撃つので離れたところから援護してください。」
「はい。」
目的地に馬車で向かっていたが御者の悲鳴が聞こえた。
「助けてくれー!リッジウルフだっ!」
「なんだって!?」
その声を聞いて馬車から飛び出る。
・・・住処に行く前に襲撃されるとはな。行く手間が省けた。・・・
馬車が止まってカナが遅れて出てきた。
馬車の周囲を赤茶色の毛に覆われた大型犬サイズの狼が囲んでいる。勇輝達を睨んで唸っている。
「カナさん!御者を守ってください!」
「はい!」
カナを離れさせた。
「さーて、コイツの実力を見せてもらおうかっ!」
勇輝は異次元から黒い塊を取り出した。
・・・9mm機関けん銃…取り回しの良さから選んだけど、精度があまり良くないらしいからうまく当てないとな。・・・
勇輝は弾を装填して構えた。
にらみ合いの中ついにリッジウルフの1体が飛び出してきた。
「喰らえッ!」
勇輝がバーストで撃つと弾は目標の上を行き、掠りもしなかった。
・・・クソッ!銃が暴れる!・・・
狼は銃声に怯んだが、またすぐに襲いかかる。
「当たれー!」
もう一度狙いを修正してバーストする。
今度は数発が命中して、狼は転ぶように倒れて死んだ。
「よしっ!いけるぞ!」
心の中でガッツポーズをして次を狙った。
指切りのバーストを2回したところで弾がきれた。
その射撃でまた1体倒したが、弾切れの隙に2体同時に迫ってきた。
・・・弾切れが早いっ!・・・
機関けん銃を左手で持ち、右手で9mmけん銃を抜き取り素早く4発撃った。
距離が近かったため全て命中して助かった。
「……危なかった。」
機関けん銃のマガジンを交換してけん銃はホルスターにしまう。
リッジウルフは勇輝に敵わないと判断したのか別の方向へと向かった。
・・・クソッ!あっちにはカナさんと御者の人が!・・・
けん銃のリロードをしながら御者台の方へ急いだ。
「あっち行って!」
カナは怪我をしている御者をかばって杖を構えている。
「カナさん!」
勇輝が牽制にバースト射撃をしながら包囲網を破ってカナの前に出た。
カナを背にして立ち、リロードをしながら周りを見渡すとリッジウルフが3体倒れている。
・・・カナさんがやったんだな。・・・
「よく持ちこたえました!カナさんは治療を!」
「はい!」
カナが振り向いて御者に回復魔法をかける。
「よくもやってくれたな……ーッ!」
許さないという言葉は銃声に変わって飛び出した。
トリガーを引ききり左から右に薙ぎ払った。
何体か後ずさって避けたが2体を仕留めて、もう2体が傷を負った。
・・・やっぱりばら撒きの方がいいな。けどその度に弾切れになるのは辛いな。・・・
傷負ったものを除けば残り4体になっていた。
「勇輝さん!援護します!」
治療が終わったカナが隣に立った。
「大丈夫ですか…?こんな近くにきて……。」
心配した声でカナの方を向いて聞くが、カナはにっこりと笑った。
「大丈夫です。」
・・・どうして笑えるんだ……。とにかくケリをつけないと!・・・
勇輝は機関けん銃を収納してホルスターからけん銃を抜いた。
そしてナイフを取り出して左手に持ち、某ビッ○ボスの構えを取った。
「ここからはCQCで勝負だ!」
怪我負った狼が後退して残りの4体が前に出て2体は突っ込んで来た。
・・・同時か!片方を確実に止める!・・・
けん銃を連射して狼が倒れる。
もう片方は怯まず進み飛び掛かって来た。
「ーッ!ハァッ!」
左のナイフで空中の狼の頭に向けて振り下ろした。
ナイフは狼の頭頂に深く突き刺さり、狼は即死した。
しかし勢いは止められず勇輝を押し倒した。
「危なかったなぁ」
勇輝に覆い被さっている死体を退けて立ち上がる。
リロードをして再び構えを取ると、後ろから氷の礫が飛翔し、無事な2体を襲った。
カナの放った魔法の威力は小さいが、狼は動きを止めた。
「いい的だっ!」
じっくりと頭を狙って両方とも1発で仕留めた。
怪我をしていた2体は逃げて行った。
・・・けん銃の射程じゃ無駄だな。・・・
勇輝はけん銃をホルスターにしまい、カナの正面に立った。
「ありがとうございました。いいサポートでしたよ。」
笑顔で言えたつもりだ。
「助けてくれたのは勇輝さんも同じです。」
カナが笑って答えた。