久しぶりに投稿できました。
勇輝が異世界に漂流する前の年……
4月1日の朝
・・・ここが士官学校の門……ここをくぐれば新たな人生の始まりとなるのか。・・・
故郷の九州からやってきた勇輝は近くの宿に泊まっていたが、学校の門までバスを出してくれるということだったので問題なく到着した。
8時前に着いたが、開門は0830と書かれていて、他にも十数人が列を作っている。
・・・緊張するなぁ、忘れ物ないよな?・・・
ついに門が開いて中に入った。
門の正面の本館と呼ばれる立派な建物への道はきれいな桜が咲き乱れていた。
その横道を進むと道の端に戦車が3両と戦闘機が展示されていた。
・・・すごいなぁ、あれはGA○Eでも出てきた74式戦車であっちは61式か…もう一両はなんだ?だいぶ古いようだ。戦闘機はF-1かけっこうでかいな。・・・
早速桜よりも兵器に夢中になって歩くとその先に体育館があり、そこで新入生の受付をしていた。
「お名前と合格通知書を出してください。」
紺色の制服を着た学生の人が名簿を見ながら聞いてきたので書類を出す。
「永遠勇輝です。お願いします。」
「えーと…あった。君は233小隊だね。この名札を持って2番目の寮に入ってね。」
・・・第2学隊かぁ、アタリだといいなぁ。・・・
「ありがとうございます。」
名札を受け取り寮に向かう。
寮の前では人だかりができていた。
「君、2学隊?こっちにおいで。」
赤地に白い線が入った腕章をつけた学生に呼ばれた。
「こっちにきて写真を撮るから上着は脱いでね。」
言われるがままに従って写真を撮る。
「どうも。担当の人が来るからそれまで待っててね。」
そして3分ほど待った。
「永遠君…永遠君いる?」
引き締まった体格で坊主頭の背が少し高い学生が名前を呼んでいた。
「はい!ここにいます。」
「そうか、君だね。俺の名は**。君の上対番だから君の面倒をみることになる。よろしく。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
・・・へぇー、この人が対番なんだ。いい人なのかな?・・・
「いきなりだけど着いてきて。」
手招きされて小走りで追いかける。
寮の玄関でいくつかのものを受け取った。
・・・手提げ鞄にヘルメット?あとはシーツと枕カバーか。・・・
そして対番を追いかけて3階に上がると、ある部屋に入った。
「ここが君の部屋の寝室だよ。このベッドの下にいろいろなものを用意してあるから使ってね。」
そう言ってベッドの下からキャスター付きの衣装ケースを引っ張り出して開けるとタオルやハンガー、下着からお風呂の道具までいろいろ揃っていた。
「それじゃ、隣の居室に挨拶しに行くよ。君の部屋の上級生になるからね。」
寝室を出て隣の扉の前に立つ。
対番が3回ノックを2回してから扉を開いて中に踏み込んだ。
「入りまあァーすッ!」
短節だがすごい大声で叫ぶと勇輝を招き入れた。
勇輝は対番の左隣に立たされ、対番が右奥に座っていた人に体を向けて浅いお辞儀をした。
「233小隊2学年**学生は対番挨拶に参りましたっ!」
・・・何かの呪文か?すごい大声でスラスラと何か言ったけど聞き取れなかった。・・・
勇輝は隣でその迫力に圧倒されていた。
奥の人が気だるそうな返事をすると対番が靴を並べて部屋に上がったので見よう見まね出て着いて行く。
先ほどの人の前に並んで立つと、対番がお辞儀をした。
「着校した下対番を連れて参りましたっ!」
・・・毎回こんな大声なのか…ちょっと慣れない。・・・
「お前の自己紹介をしてみろ。」
「永遠勇輝です。九州出身で中学ではソフトテニスをしていました。高校では生徒会活動に取り組んでいました。」
緊張もあって小さい声で話した。
隣の対番はちょっとそわそわしている。
「そうか、九州か。声が小さいが、今はまだ何も言わん。きつかったら対番でも俺たちでもいいから言えよ。」
「はい!」
そして2人は部屋を出る。
「おい、**」
「はいっ!」
対番が部屋の人に呼び止められた。
「お前は先に出とけ。」
勇輝はそそくさと部屋を出る。
「ーーー!」
「はいっ!」
「ーーーーーーー!?」
「いいえっ!」
・・・なんか扉の向こうから怒号が聞こえる。対番が怒られてるのかな?・・・
上級生は何を言っているかドアの外で聞き取れないが何やらシバいているというのは理解できた。
「帰りますっ!」
しばらくして対番が部屋から出てきた。
「よし、次に行こうか。着いてきて。」
そういう対番の顔は無理して大丈夫と言っているようだった。
もう一度隣の寝室に入った。
「これから身体検査があるから短パン着替えて身体歴の書類を持ってきて。」
そう言われた勇輝だが、問題があった。
「あの、短パン持ってきてないです…。」
「そうかっ、ちょっと待ってて。すぐ持ってくる!その間に携帯と書類を出しといて!」
対番が部屋を飛び出た。
用意を終えて携帯を見ようとした時に対番が戻ってきた。
「これ、俺のやつだけど使って!着替えたらすぐに行くよ。」
言われるがままに着替えて外に出た。
「この建物が医務室っていうところで何か病気や怪我があったらここに行く。検査は俺たちは付き合えないから、連絡先を渡して終わったらすぐ連絡して。」
そう言ってラ○ンの登録をして建物に入った。
中には勇輝と同じ新入生が受付に並んでいた。
「そこの体温計を使って待ってて。」
迷彩服を着た女の人が体温計を渡してきた。
体温計を脇に挟んでしばらく待つと測り終わったが平熱だった。
平熱を示している体温計を係の人に渡すと紙コップを渡された。
「次は検尿だから向こうのトイレに行ってね。」
・・・まじか、でもちょうど出そうだったからなんとかなりそうだ。・・・
トイレを済ませるついでに尿を取って外の係の人に渡した。
「次は階段を登って奥の部屋で上の服を脱いで下さい。」
勇輝は階段を登って服を脱ぎ、次の検査の列に並んだ。
その後は肺活量の検査や採血などいろいろな検査をした。
全ての検査が終わって服を着た後に対番にメッセージを送った。
[検査終わりました。]
[すぐ行くから玄関で待っといて]
速攻で既読がついて返事が返ってきた。
「検査お疲れ様。」
玄関で3分も待たないうちに対番が迎えにきた。
「次はもうお昼だから食堂でご飯を食べるよ。」
対番について行く。
途中ですれ違うほかの学生に時折立ち止まって敬礼をしていたが、勇輝はどうすればいいのか分からずとりあえず挨拶だけした。
食堂の前の階段にすでに何人か並んでいた。
「ちょうどいいな。もうすぐ開くし、並んでる人も少ない。」
対番がホッとしていた。
少し待って列が動き始めて食堂に入った。
・・・すごく広い…みんなここで食べるのか。・・・
食堂の広さに見とれているとすぐに呼ばれてついて行った。
「おっ、今日はカレーか。よかったな。マシな方だぞ。」
対番が微笑みかける。
・・・マシってどういうこと?普段マズイの!?・・・
若干の不安を抱きながら対番のがよそってくれたカレーを食べる。
結構いい味だった。
対番は勇輝が半分くらいしか食べていないのに、既に食べ終わりそうだった。対番はそれに気付いたらしく少しペースが落ちた。
「無理して早く食べなくてもいいよ。ゆっくりでいいからね。」
そう言ってくれたが、勇輝は遠慮してしまう性格なので逆効果だった。
さっさとカレーをかきこんで席を立ち、食堂を出た。
一度部屋に戻ると今度は対番がOD色のくたびれた大きなバッグを2つ持ってきた。
「これから君の制服や靴をもらいに行くよ。ついてきてね。」
ゆっくり休むことなく出発した。
今度は寮からかなり離れた建物で移動だけでも少し疲れた。
すると、建物の前に長い列ができていた。
「けっこうかかりそうだな。ごめんね、ちょっと待たせることになりそう。」
対番が申し訳なさそうに言うがこれはどうしようもないと思った。
やっとのことで入り口に到着すると受付の人が小隊を聞いて、対番が答えながら書類を見せていた。
それが終わると階段を登って試着場と書かれている場所へ向かった。
「今のうちに服を脱いどいて!色々な服を持ってくるから!あっ、そうだ!身長何センチ?」
混み合ってる試着場で対番が畳み掛ける。
「162cmです!」
それを聞くと対番は人ごみの奥に消えていったので服を脱いでおく。
しばらくして対番が2着の紺色の制服を持ってきた。
「まずはこっちから着てみて、緩かったらこっちにして。」
制服を受け取って早速着てみる。
・・・こんな感じなんだな。やっぱりコスプレみたい。・・・
「もう片方を着てみます。」
もう1着をもらって着替える。
その間に対番はまた奥に行って今度は制帽を持って着た。
「今のうちにこいつも調べるよ。」
帽子を被れてくれたあいだに制服も着終わった。
・・・うん、これで良さそう。帽子はまだ感覚が慣れないな。・・・
「これでいいです。帽子も。」
「りょーかいっと、次持ってくるから脱いでハンガーに掛けといて。」
脱いだ制服をハンガーにかけ終える少し前に次の服を持ってきた。
その後も何度か試着をして次々とサイズを確かめた。
全てのサイズを調べ終えると、それを記入した用紙を係に提出して倉庫から引っ張り出してOD色のバッグに詰め込んだ。
靴の箱もあったので2つの大きなバッグでもパンパンになってかなりの重さになった。
それでも対番は書類を挟んだバインダー以外を一人で持って運んだ。
勇輝はバインダーだけを持って一緒に部屋に向かった。
そして現在へ………
勇輝は目を覚ますと馬車の中にいた。
その肩に寄りかかってカナが寝ていた。
目の前に美しい栗色の髪と狼系の耳があった。
・・・寝ていたのか。また、懐かしい夢を見たな。本当なら僕も新入生を世話するはずだったのに異世界で生活してるんだよな。対番元気にしてるかなぁ。あ……時間止まってるのか。・・・
カナの頭を優しく撫でながら、もう一眠りすることにした。