士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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なんとか時間を見つけて少しずつ執筆しています。現在これからの展開で結構悩んでいるところです。出来るだけ矛盾を作らないように気をつけていますが頑張って付いてきてください。


非常呼集

軽い二度寝から勇輝は目を覚ましてもう一度毛布の中を確認する。

そこには二度寝する前と変わらない姿のカナが眠っていた。

・・・もしかして僕がこのままだとしばらく起きない感じ?・・・

左手を上げて腕時計を見ると8時前だった。

「カナさん、カナさん、起きて下さい。」

とりあえず声だけかけてみる。

耳がいいから起きてくれると思っていたが、全く反応が無い。

・・・どうしたものかなぁ…もうしばらく寝かせてあげるか。・・・

カナを起こさないようにゆっくり体をよじりながらベッドを抜け出ようとする。

終始やましいことをしているような緊張感を感じながらなんとかベッドから抜け出した。

後ろを振り返るとカナの背中と尻尾が毛布からはみ出ていた。

・・・なんか…無防備だな。ちょっと心配になってきたな。・・・

冷えてしまっては可哀想なのでゆっくりと毛布をかけて音を立てないようにして朝食を食べに行った。

 

 

食堂で軽い朝食を済ませてカナの分を持って部屋に戻った。

扉を開けるとカナは頭を毛布から出していた。

そして、勇輝が入ってきた音に反応したのか耳がピクリと動いた。

「うーん、あれっ…勇輝さん?おはようございます。」

「おはようございます。朝食を持って来たので食べて下さい。」

「あっ……ごめんなさい!手間をかけさせてしまって。」

寝起きからの慌て具合が可愛らしいと感じながら椅子に座って、残り物のパンを取り出した。

カナも向かい側に座って朝食を食べ始める。

申し訳ないと思っているようで耳がしゅんと倒れていた。

・・・やっぱり分かりやすいな。素直なところがまた可愛い……。おっと、いかんいかん、また気を抜くところだった。・・・

雑念を振り払うようにパンを大きめにちぎって頬張る。

喉に詰まらせそうになったがなんとか呑み込んだ。

 

 

「今日はあまり戦ったりしない平和な依頼でもやりましょうか。」

「そうですね。私たちずっと戦ってばかりでしたからね。」

2人の食事が終わって今日の予定を決めた。

早速支度をしてギルドに向かった。

・・・流石にランクは低いものが多いな………おっ?こいつはいいね。・・・

勇輝が掲示板に張り出されていた依頼の中でとあるものに目をつけた。

[大岩の破壊:町の外れにある食料庫として利用されている洞窟の入り口が落盤で大きな岩に塞がれてしまった。町の人々のために破壊せよ。]

「カナさん、これとかどうですか?ランクはDでそこそこのものです。」

勇輝は依頼書をカナに見せる。

「これ……できますか?私の魔法じゃ効果は薄いと思いますけど。」

カナは心配そうに言う。

「大丈夫ですよ。それに試したいこともあるので。」

そう言って勇輝は依頼書を受付に持っていった。

「それでは行きましょう!」

「は…はい。」

少しテンションの高い勇輝に付いていけないカナだった。

 

 

2人は町外れの洞窟の近くまでやって来た。

入り口らしきところの近くに人が何人か立っていた。

「すいません、依頼を受けて来たんですが。」

「おお!貴方達がそうですか。この岩のせいで冬を乗り切れるか町の人たちが心配になってるんですよ。お願いします。」

どうやらこの町の人で今回の依頼の見届け人のようだ。

「任せて下さい!粉々にしてみせます!」

勇輝は自身満々に答えた。

今の勇輝は迷彩ではなくOD一色の士官学校の作業服に半長靴を履いている。

・・・よし、やるか。・・・

「訓練非常呼集ゥゥー!」

1人大声を出すといくつかの装備を取り出して慌ただしく動き始めた。

取り出したのは鉄帽とその中帽、弾帯、携帯円匙(折りたたみのスコップ)、サスペンダー、水筒である。

鉄帽に中帽をセットして頭に被り、他の装具を弾帯に取り付けてサスペンダーに腕を通して腰につける。

もちろん水筒の中身は満水でキャップを外すと水が表面張力で張るくらいまで入れてある。

・・・よし!3分以内に完了したぞ。訓練で教官に何度も非常呼集をかけられた成果だ。・・・

1人で満足げな雰囲気を漂わせる中カナを含め他の人たちは訳が分からず引いていた。

「何…ですか?今の……。」

カナが不思議そうに聞いてくると勇輝は得意げに答える。

「今のは非常呼集といって突然号令がかけられてそこから素早く装備を装着して事に備える修行のようなものです。」

「……へぇ…そうなんですか。」

まだ理解しきれていないようでカナは頭に?が浮かんだように首を傾げていた。

「それでは始めますか!」

2人と町の人数人は洞窟の入り口へと向かった。

 

 

「結構大きいですね。こんなに大きな洞窟だとは思いませんでしたよ。」

勇輝は洞窟の入り口とそのど真ん中に転がる大岩を見てそう言った。

「元々はもう少し小さかったんですけど、少し周りを掘って広げたんです。多分その影響で落盤したんだと思います。」

勇輝の言葉に町の人が解説する。

・・・なんだ、どっちかというと自業自得じゃないか?まあ、仕方ないか。・・・

心の中でつっこむと勇輝は腰の弾帯に取り付けてある携帯円匙を取り出して展開した。

円匙は真っ直ぐではなく90度の角度に設定して鍬のような形にした。

勇輝は大岩に振り上げた円匙を振り下ろした。

ザクッという音を立てて岩の表面が少し削れた。

・・・完全に刃が立たないわけじゃないみたいだけどちょっと骨が折れるな。まぁいいや、時間はたっぷりあるし。・・・

「えいっ!……ハッ!……ーッ!」

何度か削って岩に小さな窪みを作った。

・・・もう少し穴みたいにしないとな。・・・

さらに円匙で深く削ると拳大の穴を作った。

「これで良し!C4爆弾!」

そう言ってC4爆弾を取り出して信管をセットした。

少し形を変えて穴の中に上手く詰めて導線を伸ばす。

「皆さん!離れて下さい!この岩を吹っ飛ばしますよ!」

周りの人を離れさせてスイッチを用意する。

「5…4…3…2…1…今っ!!」

スイッチで起爆した習慣に銃とは比べ物にならない爆音が周囲の空気を震わせて大岩は土煙に包まれた。

カナや町の人はもちろん勇輝も衝撃に固まっていた。

・・・すげぇ、どうかな?破壊できたか?・・・

土煙が晴れていき、洞窟の入り口が見え始めてきた。

そこには大小の岩のカケラとぽっかりと空いた洞窟の入り口が広がっていた。

「おおー!すごい!本当に粉々になった!ありがとうございますっ!」

岩が砕かれた事実に我を取り戻した見届け人が勇輝に向いてお礼を言った。

「どういたしまして。それより中身は大丈夫そうですか?結構な衝撃があったので影響があるかもしれないです。」

勇輝が洞窟の奥を覗き込みながら尋ねる。

「そうですね。確認してみます。でも洞窟が使えるようになっただけでも十分ですよ。あとは……こちらは私達からの些細なお礼です。どうぞ。」

見届け人が瓶詰めにされた何かを取り出して勇輝に渡した。

「これはこの町の特産品である果物の砂糖漬けです。庶民にはそこそこの高級品ですよ。ぜひ召し上がってください。」

「えっ!?そんなものを頂いてもいいんですか?」

カナが突然驚きの声を上げた。

その目は輝いているように見えた。

・・・なんかすごい食いつきだな。甘い物好きなのか?・・・

カナの新たな一面にほっこりしながら勇輝は瓶を手に取って鑑定をしてみる。

[果物の砂糖漬け:内容物はリンゴと桃/熟成度良好]

・・・ふぅーん、いいもん貰ったな。あとでデザートにでも食べよう。・・・

瓶を収納して町へ帰ることにした。

「おっと、装備はもう要らないですね。」

装着していた装備類を慌てて収納する。

・・・こんなにごちゃごちゃ着けてたら変に見られるからな。・・・

しかし、装備の有無にかかわらず変な格好に見られていることには気づいていない勇輝だった。

鉄帽を作業帽に変えてカナと町へ帰った。

 

 

「カナさんは甘い物が好きなんですか?」

町に入り、ギルドへと向かいながら振り返ってカナに話しかける。

「はい!大好きです!以前からスイーツに憧れてて、この前の町長の屋敷で食べた物がすごく気に入ったんです。」

元気に話すカナの姿はとても新鮮で見ている側も温かい気持ちになる。

「そうだったんですか。私も甘い物好きなんですよ。気が合いますね。」

勇輝もかなりの甘党で休日は外出先でよくクレープを食べたりしていた。

士官学校の付近の街では制服を着た学生が沢山いるが、軍服みたいな制服でクレープを食べている姿はギャップを感じるだろう。

「さっきの砂糖漬けは今日の夕食後の楽しみに取っておきましょう。」

「はい!楽しみですね!」

尻尾が大きく振られていて年相応にはしゃいでいるカナに癒される勇輝だった。

・・・いいねー。夕食後が楽しみだな。・・・

そうこうしているうちにギルドが見えてきた。

 

 

2人はギルドに入って受付に向かった。

「この依頼の達成報告に来ました。お願いします。」

「はい、………えーと、確認しました。ご苦労様です。こちらが報酬になります。お受け取りください。」

カウンターの上にいつものように銀貨などが入った袋が置かれた。

「ありがとうございます。」

勇輝が袋を取ってすぐに事態は急変した。

「大変だー!!町に魔物の群れが来るぞー!」

扉を開けて息を荒くしながら飛び込んで来た冒険者らしき男が叫んだ。

「なんだとっ!?こんな時期に?」

「急げ!戦える人員を集めて緊急クエストを出せっ!」

ギルドの職員が慌ただしく動き出した。

「勇輝さん……。」

カナが周囲の空気に押されて心配そうに勇輝の腕を掴む。

「私たちも行きましょう。少しでもこの町の力になると思います。」

「……はい、戦いましょう!」

カナも杖を握りしめて決意を固める。

「よし……非常呼集ゥゥー!これは訓練にあらずっ!」

自分に向けて声を上げて装備を整える。

今度は2分と経たずに準備をおえた。

「行きましょう!」

2人は他の冒険者に続いて町の門へと急行した。

 

 

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