士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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設定紹介
ゴブリン…勇輝が始めて異世界で遭遇した存在。ゲームやアニメでもお馴染みであったので勇輝もすぐに分かった。主に複数で行動するため同時に相手すると連携によって手こずらされるがやはり単体では弱い。


邂逅

勇輝が目を覚ますと辺りには真っ白で何も無い空間が広がっていた。

自分の格好は変わっていないがM1も奪った剣も持っていない。

・・・ここはどこだ?僕は確かゴブリンみたいなやつを2体倒して…そのあとどうなったんだ?・・・

「ここはあなたの精神世界とでも言ったら解りますか?」

「ーッ!誰だ!」

「私はまあ神といったところです。あなたたちの暮らしていた世界と先程あなたがたどり着いた世界の管理を担当しています。」

頭の中に声が響いてくるのは変な感じで姿は見えない。

・・・神だって?もう本格的に異世界ものだな。そうじゃなくても凄いことだけど。・・・

「本当か?この際なんでもいいから色々説明してください。まず私は死んだのですか?」

勇輝は矢継ぎ早に質問する。

「それでは説明させていただきます。厳密に言うとあなたはまだ死んでいません。あの時銃の暴発で死ぬところをギリギリで時間を止めて一時的にあなたを私が管理しているもう一つの世界に避難させたのです。緊急だったので場所は選べませんでしたが…。」

「そうなのか。まだ生きてるのか。良かった。それにしても本当にオンボロだなぁM1も、安全装置も掛かってたのに暴発するなんてなぁ。それにいきなり森の中で変なヤツに襲われるし。」

・・・でもなんで時間を止めてわざわざ避難させてまだ助けたんだ?・・・

「心の中を読むようで申し訳ないですが、あれはこちらでも想定外の事故で誰も死ぬはずではなかったのです。私が少しでも気づくのが遅かったら死んでしまっていました。」

「そうだったんですか。結局この後はどうなるんですか?まずは元の世界に帰れるんですか?」

「安心してください。まずあなたは死んでいないので戻ることはできます。私以外が担当だったら見落としてしまっていたでしょうね。死んでいたら転生などはできても帰ることはできなくなっていました。私ってあまり仕事ができるわけでは無いですが間違いで人を死なせたりそれを見捨てることだけは絶対にしません。」

・・・あれ?なんかこの神さま結構真面目?異世界モノだと大抵やらかしてるイメージなのに。この人?そこらの神よりしっかりしてない?・・・

「あのー?聴こえてますよ。私はともかく他の方のことは言わないでください。そういう方は大抵私の先輩なので。」

「ごめんなさい。ッていうかいるんですか!?」

異世界モノでありがちなうっかり人を死なせてしまう神さまたちが実在するという驚愕な事実を知ってしまった。

 

 

「そういえば、すぐに戻れるんですか?」

「そのことなのですが、そのまま戻ってもまたすぐにあの銃の暴発を顔に受けてしまうので少し時間を戻してから送り返します。ただ、これは結構複雑な作業でそれなりに時間をかけないといけないんです。先輩方はもしかしたらこの作業が嫌でワザとミスを見逃しているのかもしれないですね。」

・・・ちょっと今ヤバそうなこと聞いてしまったな。多分面倒だからやらないんだな。それにしても本当に真面目なんだなぁ。僕も真面目だけが取り柄だからなんか分かるな。・・・

「とりあえず元の世界の時間をあなたが暴発を回避できるくらいに巻き戻したら帰れます。それまでは異世界で過ごしてもらいます。本当に勝手で申し訳ないですがそのお詫びとしてある程度は補填なども用意します。」

「ふぅーん…、作業はどれくらいかかるんですか?あと、補填っていわゆるチートっていうやつですか?」

「作業に関していうと、世界の時間を巻き戻すのはかなりの難しいことではっきりとは言えませんがもしかしたら数年くらいかかるかもしれないです。本当に申し訳ありません。」

「いえっ!神さまは悪くありませんよ!死ぬところを見捨てずに助けてくれてそんな面倒なことまでやってくれるんですから。」

「そう言ってもらえるなら嬉しいですね。補填に関してはそういう認識でいいと思いますが、まだ死んでいない人となると少し限度はあります。出来るだけ実現できるようにしますので考えてください。」

「えーっと、それではちょっと時間をください。」

 

 

・・・どうしようかなぁ。下手すると数年はあの世界で暮らすのか。特典どうしようかな。あっそうだ。・・・

「あの、その世界では魔法ってありますか?」

「ありますよ。主に火・水・土・風・木の5属性で他には数は少ないですが光と闇、それから日常生活や特殊な用途の無属性といった感じですね。こちらもあまり多くありませんが複数の属性も使えます。」

・・・やっぱりあるんだ。ならやっぱり使えた方がいいよな。けどあんまりイメージ湧かないなぁ。とりあえず生き残れるようなものは欲しいな。・・・

「身体能力の強化は私の学校で体力検定ってのがあるんですけど、それで全部一級を取れるくらいにできますか?」

「ちょっと待ってくださいね。………問題ありませんよ。これくらいでいいんですか?もう少しくらいはいけますよ?例えば岩を素手で砕いたりとか。」

・・・それってちょっとっていうのか?僕はあくまで常識の範囲内で良いや。体力検定7級でボーダーギリギリの僕からしたらオール一級でも十分バケモノのようなもんだし。・・・

「ちょっと興味ありますけどそこまではいらないです。魔法も一般よりそこそこできるくらいでいいです。」

「結構控えめなんですね。そうしておきます。」

「ただ、これだけは外せないのがあって…時空間魔法みたいなもので収納には困らないこと、見たものの名前とか詳細を知る能力と、自衛隊の個人装備もその中に加えてください。」

「わかりました。頑張ってみます。これくらいでいいですか?」

「あと最後にできたらもっと人受けが良くなったらいいですね。いや冗談です。どのみち変わらないでしょうし。」

「それはもう十分良いと思いますよ。ちょっとあなたのことを調べてみましたが決して悪くありません。言うとすれば周りに恵まれてなかったかもしれないですね。ですからちょっぴりの幸運を祝福として与えます。」

「本当ですか?これで良いんですか?私みたいな人間で。」

「確かにあなたは今まで他人から受け入れられたり認められたりされてこなかったみたいですが。私はあなたを見捨てません!」

・・・ほんとに良い人?だなぁ。目がウルウルしてきた。まぁ今なら泣いてもいい…かな?・・・

勇輝は今までの人間関係の苦労とそれを理解してくれて、今の自分を受け入れてくれる存在に出会えた2つの幸せに涙を流しそうになって目をずっとパチパチさせている。

そのうち涙が頬を伝うのを感じた。

不思議と雨の時とは違って不快感はなく、ただそうなっているということだけははっきりと分かっている。

「補填はこれで結構です。とにかく元の世界に帰れるまで生き残ります。」

「出来るだけ作業が早く終わるようにしますのでどうかご無事で。頑張ってくださいね。」

勇輝は片手でサッと涙を拭いながら上を向いてほとんど使ったことがない表情筋をぎごちなく動かして笑顔を作った。

「神さまも頑張ってください。私をここまで見てくれた人?ならたとえ10年だって生きてみせます!だから無理はしないでくださいね。」

「優しいんですね。あなたに祝福を。」

そう言葉を交わすと真っ白な空間にキラキラとした輝きが降り注ぎ勇輝を包んでいった。

「私はあなたを見捨てません。あなたを見てくれている者がいることを忘れないで下さい。」

勇輝は光に包まれ気付くと森の中で目を覚ましていた。

 

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