士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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ここで突然の魔法要素です。やっぱり設定を活かすってのは難しいですね。



魔導士官候補生

「よし、ここまで来れば十分試せますね。」

勇輝とカナは町の外れにある食料庫の近くの平原に来ていた。

「何か的のようなものがあればいいんですけど…。」

辺りを見回しても平原が広がるだけで使えそうなものはなかった。

「勇輝さん、私が用意します!………ハアァー……。」

カナが杖を構えて魔法を発動させると自販機くらいの氷の塊が現れた。

「これなら…どうですか?」

「上出来です!ありがとうございます。」

・・・さて、何からやろうかな?まずは使ったことのあるものからやるか。・・・

「破動の四…白雷!」

某死神が使うものとは違ってピストルに見立てた構えで雷撃を放った。

狙いやすくなっていたので思った通りに氷塊の中心に雷撃の一閃が命中した。

貫通はしなかったがそこそこ穿つことができた。

「おおー!これは以前コボルトと戦った時の…。しかもこんなに集中させることができるなんて。」

「まだまだ行きますよ。」

見とれているカナに構わず次の魔法を使うため構えを変える。

今度は手のひらを広げて氷塊に向ける。

「メラッ!」

ソフトボールより少し大きいくらいの火球が飛んでいった。

白雷が当たった場所から少し左にズレた。

・・・手のひらだと狙いにくいな。これくらいなら誤差の範囲だけど。・・・

「これは…初歩の火属性の魔法ですね。もっと強力なものはできますか?」

「ううーん…ちょっとやってみます。」

どうやらメラではショボかったようなのでアレを使ってみる。

両手を広げて氷塊に向ける。

「ハアァァー!…メラゾーマッ!!」

勇輝の手の先から巨大な火球が生まれ、勢いよく飛んでいき、氷塊に当たると炎が一面を取り巻き、蒸気が上がり始めた。

炎が落ち着いた頃には氷塊はふた回りくらい小さくなっていた。

「こ…これは…純粋に強化しただけなのに高等魔法並みの威力…すごいじゃないですかっ!」

・・・よしっ!上手くいったな、さすがメラゾーマだ。・・・

「次は何にしよう……あれっ…?力が…」

「ーッ!!勇輝さんッ!」

勇輝は暗くなる視界の中で青空とカナの姿がかろうじて見えたところで意識を失った。

 

 

「うっ…ここは…。」

勇輝が目を覚ますと自分が仰向けに寝ていることが分かった。

そしてボヤけていた視界が少しずつクリアになって目の前にいるものに気がついた。

「勇輝さん…目が覚めましたか。無茶しすぎたみたいですね。……心配しました……。」

「ごめんなさい…自分の器には過ぎていたようですね。次からは気をつけます。」

勇輝が謝るが、ふと自分の体勢の違和感と柔らかい感触に気がついた。

よく見るとカナの顔は勇輝の真上にあり、少し胸の膨らみで隠れている。

「あ……。」

勇輝はカナに膝枕をされていた。

恥ずかしくなって動こうとしたが体が言うことを聞かず、動けなかった。

・・・クゥー…魔力切れ…恐るべし……。・・・

勇輝は羞恥心と幾分かの邪念と戦うことを余儀なくされた。

 

 

それから5分程休んである程度動けるようになったのですぐにこの恥ずかしい状況から脱する。

「カナさん、もう大丈夫です。ありがとうございました。」

そう言いながら素早く起き上がり背中の汚れをはらった。

「もういいんですか?とりあえず何か食べた方がいいですよ。」

カナは少し残念そうな顔をしていたがすぐに切り替えてポーチから干し肉を取り出した。

「ありがとうございます。カナさんも休んでください。」

硬めの干し肉に顎の筋肉をフル活用して食べ進める。

・・・魔力の容量はたいした量ではないみたいだな。ある程度修行すれば増えるものなのか?メラゾーマの消費が多かっただけかもしれないが毎回倒れていたら使えない。・・・

「カナさん、今回みたいなことの対策って魔法の使用を控える以外に何かありますか?」

干し肉をなんとか飲み込んで質問する。

「えーと、体力と同じように鍛えているとたくさん使えるようになりますよ。ギリギリまで魔法を使うことを繰り返すと効率がいいみたいですけど危険なので程々にくださいね。」

・・・そうか、まるっきり持久力と似ているな。あまり好きじゃないんだよな…長距離とか。魔法で疲れるのは少し違うけど。・・・

「あっ、そうだ!魔法を使うときは杖などの媒介を用意した方がいいですよ。何も持たないでやると魔力の効率が悪くなって無駄に消費しちゃいます。」

カナが思い出したように魔力切れの原因の1つと思われる事を話した。

・・・ああ、そういう事だったのか、じゃあさっきのも魔力がダダ漏れで効率が悪かったって事なのか。・・・

「そうだったんですか、杖の代わりにこれでどうですか?」

勇輝はサーベルを抜いてカナに見せた。

「うーん、金属は基本的に魔力の伝導性が低いので向いてないですよ。木とかなら少しはマシですよ。」

・・・やっぱり剣を杖代わりにするのはキツイか…でも木だったら…。・・・

勇輝はM1を取り出した。

「これならいけますかね。ほとんど木で出来ているので。」

「それなら…使えると思います。」

・・・杖にするにはちょっと重いけど無いよりはマシか・・・

 

 

「とりあえず軽めのものをいくつか試します。今度は無茶しないですよ。」

M1を小さくなってしまった氷塊に向けると引き金に指をかけながらある呪文を唱えた。

「ヒャド!」

引き金を引くと氷の礫が銃口の先から飛び出して氷塊に当たると、命中した箇所が凍り付いた。

「え…水属性の魔法…しかも氷…初歩的ですけどまだほかの属性が使えるんですね。」

カナは勇輝の3つ目の属性の魔法に驚いていた。

・・・次は土属性だ。何にしようかな?そうだっ!防御系にしよう。・・・

勇輝はM1を肩に担うと「マリン立て銃」の動作をして床尾を地面に着かせると同時に呪文を唱えた。

「サンドウォール!」

目の前に土の壁がせり上がって勇輝の前方を遮断した。

・・・おー、想像通りだ。適当に考えたけど普通にできた。・・・

「………土属性まで…。」

「まだまだいきますよ!次は…ハードプラントッ!」

もう一度「マリン立て銃」をして唱えると地面から大きな根が突き出してきた。

・・・ポケ○ンの技まで再現しちゃったな。結構使えそうだ。……でもまた魔力がヤバそうだ。せめて最後に風属性も……。・・・

勇輝はM1を収納してサーベルを抜くと刀身に風を纏わせた。

・・・模造刀でもある程度切れ味が出たんだから業物ならっ!・・・

風を纏ったサーベルで目の前の土の壁を真横に切る。

・・・どうだ?・・・

サーベルを見ると折れてはいないようだ。

少し後に土の壁が切られたところから真っ二つになり、崩れていった。

「すごい……基本属性全てを使うなんて…。」

カナは茫然と勇輝の魔法を見ていた。

・・・やっぱり、神さまの特典なんだろうな。いくらアニメとかの知識でイメージがしやすいとはいっても普通はできないんだろうな。・・・

「いやぁ、さっきと違って魔力がなくなりそうな時の感覚が分かったので最後は剣に纏わせるだけにしました。しばらくはまた休憩ですね。」

「え…ええ、休憩ですね。」

カナはまだ驚くから立ち直っていないようだ。

・・・マズイな…やりすぎたよなこれ。落ち込んじゃったかな?・・・

勇輝は調子に乗っていろいろな属性の魔法を使った事を後悔した。

「…ごいです。すごいですよ!勇輝さん!大魔術師でもこんなに多くの属性を使えるのは少ないんですよ。修行すれば魔法だけでも十分すぎるくらいに戦えますよ!」

カナが目を輝かせながら勇輝を絶賛した。

「そ…そうですか…。嬉しいですね。」

予想外の反応に勇輝も少したじろいでしまった。

・・・ここまで言われると照れるな。自分自身の本当の力じゃない貰い物の力なのに……。・・・

カナの手放しの絶賛に後ろ向きな感情を持ってしまい、複雑な気持ちになった。

 

 

勇輝は休憩で使えそうだと思い、以前購入したテーブルと椅子を取り出した。

ある程度平なら野外でも問題なく使える。

「カナさん、少し早いですけどお昼にしましょう。」

「あっ、この椅子!あの時の…。」

勇輝は椅子に深く腰掛けると一息ついて、昼食になりそうなものをいくつか取り出してテーブルに並べた。

カナとテーブルに向かい合って着くと食事を始めた。

・・・うーん、屋台で買った状態をキープできるってのは本当に便利だね。次はこの串焼きにしよう。・・・

勇輝が串焼きに手を伸ばそうとした時に視界の上から黒っぽい影が現れて串焼きを掻っ攫っていった。

「なっ!?串焼きを返せー!」

串焼き泥棒の犯人はトンビに似た大きめの鳥だった。

・・・クソッ、撃ち落としてやる。・・・

手でピストルを形作ると上空のトンビもどきに狙いを定めた。

「食い物の怨みは怖いぞ!破動の四…白雷!」

青白い雷撃が一直線に向かって悠々と飛んでいたトンビもどきを貫いた。

トンビもどきは煙を出しながら真っ逆さまに落ちて地面に激突した。

近くに来て見てみると胴体に穴が開いて血が流れている。

・・・狙いは完璧だったみたいだな。串焼きが一本無駄になったけどいい練習になった。・・・

勇輝はテーブルに戻ると上に気をつけながら食事を再開した。

 

 

「これって食べられるんですかね?流石に仕留めたまんまというのも可哀想ですし。」

食事を終えた勇輝がトンビもどきを指しながら聞いた。

「うーん……どうですかねー。よく見ますけど仕留めることもあまりないので特に需要ないんじゃないですか。」

カナはそれはちょっとというように控えめに答えた。

・・・たしかにトンビを食べたって話は聞かないもんな。肉が硬いのかな?勿体無いけど埋めてあげるか。・・・

携帯円匙を取り出して5分程地面を掘って丁度いいくらいの穴を作り、トンビもどきの死体を埋葬した。

「コイツも食べ物が欲しかっただけですからね。」

そう言いながら手を合わせる。

カナは勇輝の行動を不思議そうに見ていた。

「それって何ですか?」

「ああ、これは私達の故郷の風習で死者を弔う時に冥福を祈るために行うものです。」

・・・まあいろいろと違いもあったりするけど大抵は手を合わせるので十分だからな。・・・

「へぇー、そうなんですね。」

カナも見よう見まねで手を合わせる。

・・・おお、ケモ耳美少女がぎこちなく手を合わせるところがまた可愛らしい。・・・

勇輝が感慨深くなっているとカナが立ち上がってテーブルに向かって歩き始めた。

慌てて勇輝も付いていく。

「今日はこれくらいにしてゆっくり町の観光でもしますか。」

「いいですねっ!早く行きましょう!」

いそいそとテーブルと椅子を収納すると、町へと歩き出した。

 

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