士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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異世界での移動手段って結構重要ですよね。アレって個人装備になるんですかね?


乗り物

町の観光も粗方終わらせた勇輝とカナはノシヨへの出発に向けて準備をすることにした。

宿は今日まで泊まることになっているが、出発は朝にする予定なので今のうちだ。

・・・何かいい移動手段ないかな?そういえばアレって個人装備になるのかな?・・・

「カナさんちょっと異次元に入ります。付いてきてください。」

人気のない横道に入って異次元空間への入り口を開くとカナにそう言って中へと消えた。

「勇輝さん!?待ってください!」

カナも慌てて入り口に入っていった。

 

 

・・・うわぁ、本当にあった……。あとはうまく扱えるかな?・・・

勇輝の目の前には一台のバイクが置かれていた。

細身だが、ODカラーで無骨なデザインが力強さを感じさせ、前輪の泥除けには白い桜の花が描かれている。

・・・あんまり戦闘車両以外は詳しくないんだよな。確か川崎が作ったんだっけ?・・・

とりあえず勇輝は偵察バイクにまたがってみた。

・・・結構デカイな。ちょっと窮屈だけど、頑張れば2人乗れそう?・・・

身軽なカナならいけると思ったがもっと大事なことがある。

「バイクの免許持ってない……。」

勇輝は車の免許は取っていたので原付は問題なかったが、本格的なバイクとなると話は別だ。

「ばいくのめんきょってなんですか?」

いつの間にか追いついて後ろにいたカナが尋ねる。

勇輝の前にある謎の物体が気になっている。

「これはバイクという乗り物です。とても速いんですよ。まあ、免許は特になんでもありません。とにかくこれを使えればノシヨへもすぐに行けます!」

「へぇー!こんなものもあるんですね!乗ってみたいです!」

カナが意外な食いつきを見せてバイクに近づいてきた。

「ああ……まだ私も始めて使うのでちょっと練習してからにしましょう。」

「うーん……それまで待ちます。」

ちょっと残念といった感じでカナの耳が垂れた。

・・・まずは燃料を入れて…操作をひと通り確認しないとな。それから広いところで練習だな。本来想定してないだろう2人乗りでの運用になるからな。こいつが多少の悪路でも使えるのが救いだな。この世界に舗装された道路があるわけないからな。・・・

勇輝は近くにあったガソリンを満タンに入れて準備だけは整えた。

 

 

異次元空間を出た2人は再び町外れの洞窟近くの平原に来ていた。

ここが一番ちょうどいい広さで人もいないので都合が良かったのだ。

「よーし、始めますか。」

勇輝はガソリン満タンの偵察バイクを呼び出した。

さっそくエンジンをかけて動かしてみる。

勇輝より1年早くからずっとバイクに乗っていた弟の動作を見よう見まねで実践して少しよろめきながらも乗ることができた。

「おおー!すごい!」

自転車と同じである程度速度を出した方が安定するのでスピードを上げてみる。

尻から伝わるエンジンの振動が小気味よくテンションが上がる。

・・・さすが偵察オートだぜ、平原もなんともない。・・・

風を肌に感じながら大きくUターンしてカナの前まで来て停車した。

弟のバイクより軽く細めだったのでなんとか扱えたようだ。

「早くてカッコいいですね。……ちょっとこの匂いは特徴的ですけど。」

駆け寄ったカナが鼻をつまんでいる。

「乗っている間は風で気になりませんよ。今度は一緒に乗ってみましょう!」

「いいんですかっ!……どう乗るんですか?」

「そのまま私の後ろに同じように乗ってください。それからしっかり掴んで落ちないようにした方が安全です。」

かつて自分が弟のバイクに乗せてもらった時に受けた説明を真似てやる。

・・・できればヘルメットを着用させたいけど耳が窮屈だろうしなー。というか、ノーヘルで2人乗りとかヤバくない?・・・

道交法のことを思い出し、ゾッとしたが、幸いこの世界にはそんなものはない。

しかし、事故を起こしたらただではすまない。

「こうですか?」

勇輝の後ろにカナが乗り込んで勇輝に両手でつかまった。

「ーッ!……大丈夫です。それでは動きますよ。」

慎重にアクセルをかけて前進し、徐々にスピードを上げる。

それなりのスピードに達すると勇輝を掴むカナの力が一層強くなった、というか体がさらに密着した。

・・・多少は予想ついたけど……恥ずかしいな。・・・

ただ、まんざらでもなかった。

それから大きくカーブしたり蛇行したりして停車した。

「ふぅ、どうでしたか?」

「……すごかったです!とても爽快で風が気持ちよかったです。」

カナは目を輝かせていた。

・・・カナさん結構肝が座ってきたのか?なんか絶叫マシンもいけそうな感じだな。・・・

ちなみに勇輝は中学の時にいった遊園地のジェットコースターでそれなりのトラウマを持っている。

「明日はこれで一気にノシヨまで行きましょう。これなら半日で行けます。」

「楽しみですね。」

勇輝がエンジンを切ったバイクを収納して振り返りながら言うとカナが笑顔で答えた。

・・・あんなに密着されるのを半日か……柔らかい…イヤッ!?違う違う!!・・・

別の意味で勇輝も楽しみだった。

 

 

・・・移動手段は良いとして、他はもう特にないかな?ひと通り終わったらなんか暇になっちゃったな。どうしよう。・・・

とりあえず日が暮れかけて来たので町の方へと歩き出したが、何かいい暇つぶしがないか考えることに没頭していた。

今までは異世界の生活にいっぱいいっぱいだったが、ある程度余裕が出てくるとどうすればいいのかわからなくなる。

・・・とりあえず暇な時はギルドに行ってみよう。今日はもう宿に帰って休むけど。・・・

結局依頼に打ち込むのが一番だという結論に至った。

勇輝は心の中でこれだから軍人みたいな堅物なんだよなと思いながらも、どうしようもないのでなかった事にしてカナと並んで歩いた。

カナも後ろにくっつくのではなく隣を歩くようになっていたのでよく見えるようになった。

勇輝の方が少しだけ背が高い(といっても162cm)ので若干見下ろす形になり、カナの耳が間近に見える。

時折ピクピクと動いたりして本物だということを実感させられる。

・・・多分僕はもともとケモナーの素質はあったらしい。確かに今までも推しキャラにケモ耳娘がそこそこいたな。………ていうかカナって誰かに似てたんだよなー。誰だっけ?確か狼っ娘で耳や尻尾がそっくりなんだよな。・・・

カナの耳を眺めるなりまた考え込んでしまったが結局思い出せなかった。

 

 

宿に帰って夕食を食べたらすぐに明日の準備を始めた。

異次元から銃の弾とマガジンを取り出してはひたすら装填して収納する。

「勇輝さん、私にも手伝わせてください。」

カナが居ても立っても居られなくなり、作業を手伝い出した。

「ありがとうございます。……ってその弾は違いますよ!こっちの箱に入れてください。」

カナは大きさや長さが少し違うくらいにしか見えない弾薬をよく間違えたていたので9mmけん銃専門にしてもらった。

全ての銃の予備弾倉を15個ずつ装填し終わったところで休む事にした。

「たくさんやって指がいたいです…。」

「私もですね。そこまで無理して手伝わなくてもよかったんですよ。」

「いえ、私だけ何もしないわけにはいきませんから。」

「そうですか…、本当にありがとうございます。」

勇輝はカナの献身的な精神に癒され、浄化されるような気持ちになった。

・・・これが尊いということなのか。・・・

夜に内職じみた作業をしていたため変なテンションになりかけていたみたいなので寝る事にした。

「カナさんも明日は早いのでしっかり休んでください。おやすみなさい。」

勇輝が最後まで言い切らないうちに毛布を被ると目を閉じたが、直後に毛布が優しく持ち上げられるのを感じるとその後カナが入り込んで来た。

・・・来るの早いなっ!この前のでもう吹っ切れたのか!?・・・

「おやすみなさい、勇輝さん。」

間近に来てからおやすみを言って来たので勇輝はドキッとさせられてしまった。

・・・ああーっ、もう全く……カナさんには敵わないな。・・・

勇輝はなんとか冷静さを取り戻して眠りについた。

 

 




偵察バイクを運転しながら89式を撃つのってめちゃくちゃカッコいいですよね。やっぱり自衛隊はヘンタイですね。
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