士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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久しぶりの投稿です。
少しですがアクションもあります…よ?


縛道は鬼畜

勇輝とカナは王都アトライアへの馬車の中にいる。

「今回の依頼に同行させていただきます。外交関連を担当しているノースです。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。政治的な話は全くわからないので。」

馬車には勇輝とカナ、そしてノシヨ代表のノースが乗っている。

残りの護衛やメイドやらは他の馬車で移動している。

・・・そうだ、ちょっと実験したいこと思いついた。・・・

勇輝は自分の魔力を微量に全方位に放出した。

・・・実際にちゃんと広がってるのかはわからないけど、成功したら使える。・・・

期待と不安を胸に放出する量を上げる。

「ーッ!…来た……。」

勇輝は確かな反応を感じて思わず口に出した。

「どうしたんですか?」

隣に座っているカナが覗き込むように聞いてくる。

相変わらず着ているドレスは目のやり場に困る。

「ああ……今ちょっと周囲に自分の魔力を放出して実験をしていたんですよ。」

「実験…ですか?」

「それで前と後ろの馬車に乗っている人を感知できたんですよ!……ノースさん、前の馬車には御者を含めて9人で合ってますか?」

少し興奮気味にノースに聞く。

「はい!?えーと確かそのはずです。」

「よし、成功だ!」

勇輝は小さなガッツポーズをした。

勇輝が試したのは電波の代わりに魔力を使用した擬似レーダーだった。

・・・とりあえず感知には成功したけど、人数と大まかな距離くらいしかわからなかった…まあ、これだけできたら十分かな。精度を高めるために魔力をの量を増やしたり長時間使っていると、いくら転生の強化でも魔力切れの不安が残るな。次は…フェーズドアレイレーダーをやってみるか。・・・

勇輝は目を閉じて意識を集中し、馬車の後方に限定して魔力を放出した。

確認する方法がないのでちゃんと指向性を持っているのかはわからない。

とりあえず、向きに注意しつつ出力を上げる。

・・・どうだ?………一つ後ろはさっきと同じように反応してるな。もっと出力を…・・・

前方の馬車の反応はなかったのである程度後方に指向性を持たせられたようだ。

さらに出力を上げて確認してみる。

・・・ん?…新しい反応だ…。1、2……10か…ビンゴかな?・・・

最後尾の馬車に乗っている人員と思われる反応が確認できた。

・・・この感覚的に、指向性を持たせた方が同じ距離を少ない魔力で探知できるようだな。流石に全方位となると効率がよくないか…。・・・

「勇輝さん、感知ができるんですか?」

ノースが勇輝に尋ねてきた。

「この馬車の列の周りの人数くらいはできそうです。」

「へぇー、でも大丈夫ですよ。私達には護衛の兵士が付いてますから。」

ノースは自信たっぷりに胸を張った。

・・・確かにこれだけ居たら何もなさそうだけど…フラグ臭がするから不安だな。……魔力使用の限界の調査も兼ねて周囲だけでもレーダー張っとくかな。・・・

「そうですね。もしもの時は頼りにさせていただきます。」

そうは言ったものの不安が捨てきれないので全方位にそこそこの範囲のレーダーを展開して休むことにした。

 

 

・・・む……いつのまにか寝ていたのか…。レーダーは…多分きれてる。・・・

腕時計を見ると1時間ほど眠っていたようだ。

隣のカナは壁に寄り添って寝ている。

反対側に寄りかかって来なかったことに少し、残念な気持ちとホッとした気持ちが入り混じっている。

ノースは腕を組んでウトウトしている。

・・・レーダー展開!・・・

目を閉じて少し広めに魔力を放出した。

・・・随行の馬車は…異常ないな………ん?側面に反応?・・・

別の反応らしきものを感じて右側面に集中してレーダーを使う。

すると、反応がよりはっきりと感知できた。

・・・随行とは別の反応が2つ……人型か?ある程度の距離を保っているな。・・・

「ノースさん、起きてください。なんか見張られてます。」

「えっ?私達を…ですか?」

とりあえずノースを起こして状況を説明する。

「まだこちらの様子を伺っているみたいなので護衛の兵士に伝えて警戒するようにしてください。私の方でも調べてみます。」

「分かりました!」

覇気のある返事をしたノースは持ってきていた鞄から羽根ペンとインク、手頃な紙切れを取り出してつらつらと何かを書いた。

そしてその紙切れを丸めて握ると、握りこぶしの隙間から青い光が見えた。

ノースが手を開くと真っ白いツバメみたいな鳥が手の平に乗っていた。

「よし、行ってこい!」

ノースが窓から鳥を放った。

白い鳥は前方の馬車へと飛んで行き、器用に窓の隙間から中へと入って行った。

・・・えっ、何今の…カッコいいな。・・・

勇輝はノースの行動を目を輝かせて見ていた。

 

 

「ノースさん、今のはなんですか?」

勇輝がノースに詰め寄る。

「えーと、私の得意魔法で小さなものをある程度変化させられるんですよ。専ら今みたいに紙切れを動物に変えて伝令に使っています。…魔法はこれくらいしかできないんですけどね。」

少し照れくさそうにノースが説明してくれた。

「便利ですね。これで兵士も警戒を強めてくれるでしょうね。」

・・・それじゃあ、こっちも行動に移らせてもらおうか。・・・

勇輝はレーダーはそのままに双眼鏡を取り出して窓から反応のあった方向を観察した。

しかし、反応がある方向は森が広がっていてそれらしいものは見えない。

・・・クソッ、森に隠れながらつけて来ているな、これじゃ確認することはできなさそうだ。・・・

勇輝はため息をついて双眼鏡を下ろした。

ノースは勇輝の一連の動作を興味深そうに見ている。

「ああ、これ…気になりますか?」

勇輝が双眼鏡をノースに差し出す。

「いいんですか?ちょっと失礼します。」

ノースが双眼鏡を受け取って窓の外をじっくりと眺める。

「すごい…こんなに綺麗に、しかも既存のものより遠くまで見える…。一体これをどこで?」

ノースが双眼鏡を勇輝に返して興奮しながら尋ねてきた。

・・・あちゃー、マズイな。なんて答えようか。・・・

自分の行動が迂闊だったことを少し後悔して、返答を考えた。

「これは……私の知り合いの特注品なんですよねー。とても便利なので気に入ってるんですよ。」

勇輝はそれらしい理由を捻り出して自然を装って答える。

「ふーん、そんなんですか。私もこれ欲しいですね。その知り合いとは?」

ノースはまだ諦めきれずに食いついてくる。

しかし、この双眼鏡はこの世界の技術ではそうそう作れるものではないだろう。

「それが、各地で放浪の旅に出ていてたまに手紙が来るくらいで会うことはなかなか無いので難しいですね。今もどこにいるのか知ることはできそうにないです。」

「うーん…残念です。諦めるとしましょう。」

ここでやっとノースが折れてくれたようで肩を落として言った。

・・・ふぅ、やっと諦めてくれたか。ごめんな、これは譲れないからね。・・・

勇輝は心の中でホッと一息ついた。

 

 

 

その後はレーダーで謎の反応を監視するために眠ることが出来ず、2時間くらいを退屈に過ごした。

途中で寝ているカナが勇輝に寄りかかって来て集中が乱れかけたが、なんとか持ち直している。

「ふふっ、まるで兄妹のようですね。」

ノースがそれを見ながら微笑んでいた。

「ご冗談を、あくまでも今は"姫さま"ですよ。」

勇輝は照れくさそうにそっぽを向く。

「へぇーえ、今は…ですか。」

ノースがニヤついて呟いた。

若手とはいえ流石は外交官、双眼鏡の時とは違って勇輝の反応があからさまだったので何か勘付いたようだ。

ノースは特に何も言わずただニヤニヤしている。

・・・むぅ……これじゃ立場が…コイツ絶対年下なのに…。・・・

勇輝は何か弱みを握られたような気がして不愉快だった。

しかし、勇輝も紳士?であるので黙って2時間程耐えていた…いや、嫌ではない、むしろ嬉しいので語弊がある。

そこまで経ったらノースも飽きたのか窓の外を眺めていたが、時折勇輝の方を見てはニヤつくことの繰り返しだった。

 

 

いつしか窓の外が暗くなり始め、日が暮れかけていた。

それからしばらくすると馬車が停止して外が騒がしくなってきた。

「おやっ、野営の準備を始めたようですね。今日はここまでということですね。」

ノースが窓から少し身を乗り出して教えてくれた。

「そうですか、私も手伝うとしましょう。………カナさん、起きてください。」

勇輝に寄りかかっているカナを優しく揺すって起こす。

「うぅん?…勇輝さん、おはようございます。」

目をこすりながらカナが口を開く。

「今は夕暮れですよ。私は野営の準備を手伝うので待っててください。」

「ふぇ?本当だ……えっ!?勇輝さん!?」

やっと寝ぼけが覚めたのかカナが外に出ようとしていた勇輝を呼び止めた。

「大丈夫ですよ、ここで待っていてください"お姫様"。これは私達の仕事です。」

勇輝がわざと執事っぽく振舞ってお辞儀をする。

「え……えっ!?」

カナが口を開けて固まってしまった。

・・・そんなに意外だったかな?少しフォローしておくか。・・・

勇輝がもう一度カナに近づいて向き合った。

「冗談ですよ。カナさんは今はお姫様という事になっているので外に出ない方がいいんですよ。早めに済ませるので少し待っててください。」

「はい……。」

カナがしぶしぶ頷いた。

そのカナの姿を見ていると少しいたたまれなくなるので踵を返して馬車から出た。

 

 

馬車から出た勇輝は野営の準備を手伝ってはいなかった。

今は数人の兵士を連れて森へと向かっている。

「慎重に進んでください。迂回しているとはいえ、相手に察知されてるかもしれないので。」

勇輝が兵士達に小声で注意喚起する。

兵士は皆無言で頷いた。

勇輝達は野営地から遠回りで謎の追っ手の元へと向かっている。

・・・反応は馬車が止まった時からずっと同じだ。ヤツらも野営の準備でもしているのだろうか。それなら好都合なんだけど…。・・・

森の入口へと差し掛かり、勇輝はレーダーを指向性から全周型に切り替えた。

魔力の消費は距離的にも十分近づいているので問題ないし、森の中はどこに危険が潜んでいるか分からない。

事実、追っ手の反応以外にも森の中にはウヨウヨと多数の反応があった。

・・・おそらくは魔物だろうな。出来るだけ避けたいな。・・・

相手に気づかれないように細心の注意を払って森の中を進む。

「ここで待機してください。何かあったら笛を鳴らして合図します。」

勇輝は兵士たちを魔物の反応が少ないエリアに待機させた。

・・・よーし、これ使ってみたかったんだよね。どんな感じかな?・・・

勇輝は88式鉄帽ととある機器を取り出した。

それを鉄帽に取り付けると頭に被った。

そして機器を目の前に移動させる。

・・・おお!見える見える、すごいな暗視装置は。・・・

勇輝は暗視装置を装備して追っ手に接近していく。

兵士たちは松明の灯りを頼りに進んでいるため目立ってしまうので勇輝が先行する事にしたのだ。

・・・反応はすぐ近くだ。このまま魔物も来ないでくれよ。・・・

心の中でそう祈りながら森を進む。

 

 

緑色に包まれた視界の中魔力のレーダーも駆使して目標へと近づく。

そして大きな木を過ぎた時、急に視界が明るくなって真っ白になった。

しかし、暗視装置がすぐに光量を調節して視界がクリアになる。

・・・おう、ビックリした…篝火か…ここで間違いなさそうだな。・・・

暗視装置を跳ねあげて双眼鏡で野営地と思われる若干開けたエリアを見る。

篝火の影が揺らめく中ついに人影を発見する。

・・・いた!どうやら人間のようだな。・・・

目標はフードを被っているので種族はわからないがおそらく男の2人組と思われる。

・・・なんの目的か知らないけど……捕まえる!・・・

慎重に接近して隙をうかがう。

そして、右手の人差し指を目標の1人に向ける。

「縛道の四…這縄…。」

光の縄が素早く伸びてターゲットの胴体に腕ごと巻きついた。

「ぐっ!?なんだよこれっ!!」

「大丈夫かっ!?」

縛られたターゲットがバランスを崩して転び、もう1人が慌てふためく。

勇輝は冷静にもう1人に狙いをつける。

「もう一丁!縛道の四…這縄!」

もう一本の光の縄が男に巻きついた。

「クソゥ…こんな縄ごときで!」

もがいている2人を確保するために勇輝が茂みから出て駆け寄る。

「ガアァーッ!!」

はじめに拘束した男が唸り声を上げて縄を千切ろうとする…というか千切れそうだ。

「オラァッ!」

「おわっ!」

勇輝の目の前でついに縄が千切られて男が立ち上がる。

「こんのーっ!」

男が短剣を抜いて構え、突進してくる。

「ーッ!!ぐっ…」

とっさに腕を掴んで突き刺さるのは防いだが、勢いは殺しきれず押し倒された。

「しぃーねぇー!」

男が体重と力に任せて勇輝の首に短剣を刺そうと押し込む。

身体能力が強化されていても状況が悪く、徐々に押されている。

「うぅー…男に…押し倒される趣味は無いぞっ!」

「うっ!?」

勇輝は右足で思いっきり男のアレを蹴り上げた。

男は裏返った声を上げて飛び退いた。

「大人しく捕まれっ!縛道の三十…嘴突三閃(しとつさんせん)!」

右手で空中に素早く三角形をなぞると各頂点に光の杭のようなものが生成され、男に向かって飛んでいく。

そして3つの杭が男に直撃すると、一緒になって吹き飛び、そのまま木に貼り付けられた。

「ぐぅ…動けない。」

両手と腰を光の杭で木に打ちつけられて流石に動けないようだ。

・・・危なかったな。やっぱり鬼道は使えるな。・・・

勇輝はブ○ーチを読んでいて本当に良かったと安堵してOD色の笛を取り出して音を鳴らした。

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