士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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久々の戦闘回です。魔法と現代兵器の両立って難しい…。


襲撃者

勇輝はノースに頼んで手空きの兵士達を集めてもらっていた。

兵士達が集合している目の前には勇輝が立っているが、周囲には大量のOD色の物体などがゴロゴロしている。

「なんだよあれ…。」

「あれも武器なのか?」

兵士達は興味深そうにそれらを見ている。

「皆さん、よく集まってくれました。これから皆さんには敵の襲撃に備えた準備をしてもらいます。……これは設置型の爆弾です。これを私が教えるように設置してください。」

勇輝が足元の対人障害システム(クレイモア)を拾い上げて兵士達に見せる。

兵士達は見たことのない形の爆弾に注目している。

「これから一つ試しに使ってみるからその威力をしっかり確認するように。」

勇輝は離れた場所にあらかじめセットしていたクレイモアと目標を模した木の板を指差した。

周囲を見回して安全を確認すると遠隔操作のスイッチを押した。

その直後に軽い爆発が起こり、目標周辺が白い煙に包まれた。

煙が流れて消えると目標の木の板はズタボロになっていた。

「おおー!すごい!」

「爆弾と聞いたからもっと派手かと思ったら結構地味だな。」

兵士達が口々に感想を言っている。

「これは爆発自体は大したものではありません、けど小さな鉄球が無数に飛ばされて来るんです。……それがどういうことかはわかりますよね?」

勇輝は何人か大して驚いていなかったようなのでちょっとばかり脅してみた。

爆発の威力をショボいと言っていた兵士は顔が若干青くなっている。

「見てもらったように危険なものには変わらないので慎重に扱ってくださいね。…まずはここに2つほど持ってきてください。」

クレイモアの近くにいた兵士がハッとしたように動き出してクレイモアを恐る恐る大事そうに抱えて持ってきた。

・・・ちょっと脅かしすぎたかな?遠隔操作でしか爆発しないはずだからそこまで怖がらなくてもいいんだけど…。・・・

その後も慎重すぎるくらいの設置作業で少し時間がかかったが、それなりにトラップの設置は完了した。

・・・とりあえずセットはできたけど、問題は遠隔操作のタイミングだな。今回は数が多いからどれがどこか確実に把握して起爆させないと…。そうだ、レーダーを使えばいいじゃん。・・・

街中では人が多すぎてパンクしそうだったのでオフにしていた魔力レーダーの存在を思い出す。

・・・よし、これで反応が設置エリアに近づいたら起爆すればいいな。どれくらい通用するかわからないけど至近距離からショットガン食うようなもんだからただではすまんだろう。とりあえず夕食にしよう。・・・

レーダーを発動させて現在の状況を把握しながらカナ達が待つ場所へ向かった。

 

 

「あっ、勇輝さん!終わったんですか?そろそろ夕食ですよ。」

椅子に座っていたカナが勇輝を見て立ち上がり手を振る。

「あらかた終わりました。あとはセットしたところに敵が来た時に爆発させれば大丈夫です。」

カナやノース、レイルがついているテーブルに向かったが、椅子がなかったので自分の分は異次元空間から取り出して置いた。

「へぇ…便利なもんだなそれ。」

レイルが羨ましそうに一連の動作を見ていた。

「そうですね。食料や武器などなんでも入れたり取り出したりできますからね。……そうだ!せっかくなので夕食にこれも一緒にどうですか?」

勇輝が異次元空間に備蓄で収納していた食べ物を取り出して並べる。

全て屋台で買ったできたてなのでおかずにはもってこいだ。

「スゲーな…あっつ!?なんだこれ、できたてか?」

早速食べようとしたレイルがその温度に驚いていた。

「できたての状態を維持できるんですよね。私は兵士達にも配って来ます。」

勇輝は周囲に座ったりして簡易的な食事をしていた兵士達に屋台の串焼きをあげるととても喜ばれた。

ついでに毛布もあげたかったが、数がないので仕方なく諦めた。

兵士達に一通り配り終えてテーブルに戻ると本来の食事も置かれていたので夕食にした。

「それにしても、来ますかね……ヤツは…。」

ノースが不安げに語りかける。

「そうだな、もし来なかったら俺が自分から探してでも見つけ出す。だが、今は来ることに賭ける。」

レイルが静かながらも力強く答えた。

「私たちもお手伝いしますよ。」

勇輝もさりげなく話に加わる。

「そういえばノースさん、ノシヨからの返事は来ましたか?」

「まだですね。明日の朝には届くと思います。」

ノースは首を横に振る。

「まあ、二週間ありますからそれまで頑張りますよ。」

「ノースも苦労してるな。俺がいなくなってから頑張ったんだな。」

レイルが感慨深そうにノースを見る。

「そういえば、カナとはどう知り合ったんだ?こんなに王女にそっくりなやつなんてそういないぞ。」

レイルがカナを見ながら尋ねる。

・・・いや、なんだかんだで世の中には5人くらいそっくりさんがいるらしいぞ。どれくらい似てるかは別として…。・・・

心の中でツッコミを入れながら会話を見守る。

「勇輝さんとカナさんは偶然旅でノシヨに訪れていたところを陛下が、演説の群衆の中に見つけて城に呼び寄せたのがキッカケです。」

「正しくは連行ですけどね。」

「う……、本当に申し訳ないです…。」

勇輝が訂正するとノースが申し訳なさそうに頭を下げる。

「なんか…訳ありみたいだな。」

「まあ、それからケーネ王女の影武者としてグレアム王子をフッてきたというところです。」

しばらく話し込んでいると夕食も済んだのでノースとレイルは一緒に席を立ってどこかへ行った。

「行っちゃいましたね。」

「そうですね。私たちもゆっくり休みましょうか。敵がいつ来るかわかりませんからね。」

勇輝とカナの2人もテーブルを立った。

 

 

勇輝は異次元空間に入って装備の確認をしていた。

服装は迷彩服4型で、弾帯を付けている。

・・・相手はすばしっこいタイプだからなぁ…銃が当たるかどうかは怪しいな。サーベルも…取り回しは短剣に敵わない……となると…これか?・・・

勇輝は9mm拳銃とヘトスの鍛えたナイフを装備した。

他には9mm拳銃の予備マガジン2つだけという軽装だ。

・・・鉄帽はいらない…でも暗視装置がいるかな?迷う……いいや、いらない。・・・

結局勇輝の装備は迷彩服に迷彩帽、弾帯に9mm拳銃とそのマガジン、ナイフ、手には革手袋、靴は半長靴となった。

それからマーハリクで報酬としてもらった青い宝石の加護が込められたバッチを胸に付けた。

その位置は本来なら徽章などが付いているところだが、勇輝は学生でまだ何も貰っていないためがら空きだった。

・・・おっ、なんか勲章っぽくなった。それにしては小さいけどまぁいっか。加護の力もどれほどか知らないけど頼りにさせてもらおう。・・・

鏡で自分の姿を確認した勇輝はそんな感想を抱きながら外に出た。

 

 

「流石に暇ですね。」

「そうですね。」

すでに三回くらいはこのやり取りをカナと行った。

準備を整えて野営地で警戒態勢を取っているが、何も異常なくすでに2時間ほど経っている。

「レイルさんたちは?」

「そろそろ…交代で来るはずですよ。」

勇輝とカナはレイルと数人の兵士とローテーションで警戒していてもうすぐ交代の時間だった。

カナは既に眠たそうにしている。

「ーッ!何か来た…。」

勇輝はそう呟くとクレイモアのスイッチを取り出して手に取った。

「勇輝さん!もしかして…。」

カナも目を擦って眠気を振り払うと不安そうに勇輝を見つめる。

「反応がありました。カナさんはレイルさんたちを呼びに行ってください。私はトラップでなんとかしてみます。」

「はい!分かりました!」

カナが杖を握って走り去る。

・・・くそぅ、もうすぐ休憩だったのに…こんなタイミングで来るなんて。……真っ直ぐ近づいて来るな。このルートのトラップは……。・・・

レーダーの反応の方角からメモをしておいたトラップの情報と照らし合わせて起爆する順番を確認する。

・・・3、2、1…今だ!・・・

勇輝がスイッチを押した直後に遠くで爆発音が響いた。

この爆発音に野営地も騒がしくなる。

「嘘だろ…。」

勇輝はレーダーの反応を確認して呟いた。

 

 

・・・クソッ!あの距離で方角も間違っていなかったはず…どうやって防いだんだ?今度こそは仕留める。・・・

勇輝は爪を噛み、次のトラップの起爆のタイミングを待った。

相手はいまだに真っ直ぐ、ゆっくりと接近している。

「勇輝さん!連れて来ました!」

「悪い、遅くなった。」

カナがレイルと兵士たちを連れて来た。

「待機してください!もうすぐ起爆します。」

勇輝が目を閉じて集中し、カナたちを手で静止させた。

・・・あと少し……食らえ!・・・

スイッチを押して新たに爆発が起こった。

「あの向こうにヤツが……。」

「勇輝さん、どうですか?」

レイルとカナは爆発が起こった方向を見ている。

「どうして……、ダメです、仕留めきれない!」

勇輝はスイッチを地面にたたきつけようとしたが、途中でやめて収納した。

代わりにホルスターから9mm拳銃を抜いてカナ達に向かって振り向いた。

「危険ですが、直接戦うしかないようです。行きましょう!」

「よしっ!それでこそだ、ここで二年前の借りを返してやる!」

勇輝とカナ、レイルと兵士たちは森の中へ松明の灯りを頼りに進んでいく。

 

 

「もうすぐ、出くわします。構えてください。」

勇輝は立ち止まると松明を近くの木に燃え移らせないように置かせた。

「ルーモス…マキシマ!」

足元の手頃な枝を拾って周囲を魔法で照らした。

・・・これで暗闇という厄介な要素は無くなった。もうすぐ接敵するな。・・・

枝を捨てると9mm拳銃を前方に構える。

静まり返る中ゆっくり足音が聞こえてきた。

「ーッ!お前は…二年前のっ!」

レイルが足音の主を見ると声を荒げて剣を抜いた。

ヤツは情報どうりのローブとフードで姿を晒さない格好をしていた。

顔は見えないがその手には短剣が握られている。

「テメェ!ケーネ王女はどこだ!嫌でも喋ってもらうぞ!」

「……」

ヤツは黙ったまま立っている。

「ーッ!」

突然何の前触れも無くヤツは低い姿勢で短剣を構えてレイルに向かって行く。

「来たな!二年前のようにはいかんぞ!」

レイルが剣を構えた。

ヤツがレイルの直前で斜め横にステップをして意表を突いた切り上げをしてきたが、レイルは冷静に見切って剣で防ぐ。

「オラァッ!」

レイルが両手の力で振り払うとヤツがバックステップで距離を取り、レイルが攻勢に出た。

「すごい、トリッキーな動きを全て見切ってる…。」

「あの中には入れないな。」

瞬きも許されない攻防を他の人間はただ見るだけしかできなかった。

・・・あの乱戦じゃ銃による援護はできない。魔法も微妙だ…。これほどまでレベルの高い戦いだとは…。・・・

流石は凄腕冒険者といったところだろうか、これでBランクというのも驚きだ。

「これでっ!」

「ーッ!?」

レイルの横一閃で相手は体勢を大きく崩されて隙を見せた。

「ハアァァッ!!」

その一瞬を逃すまいと立て続けに斜め上から剣を振り下ろす。

「チッ…。」

ヤツが微かに舌打ちをしてレイルに切り捨てられた………はずだった。

敵を斬って下にあるはずの剣は相手の直前で薄い青色の光の障壁に弾かれていた。

「なっ!?」

「ーッ!」

思わぬ防御に剣を弾かれて出来た隙を突いてヤツが反撃に出た。

「グッ……。」

ヤツの短剣は剣を握っていたレイルの右手首を捉えて斬り裂いた。

レイルはたまらず剣を落として右手を押さえる。

ヤツは更に急所を狙って飛び込む。

「やらせるかよっ!」

レイルは左手で懐から相手の物より一回り小さい短剣を抜いて投げた。

「ーッ!?」

短剣はすんでのところでまたもや光の障壁に弾かれたが、ヤツはバックステップで距離を離した。

 

 

「レイルさん!大丈夫ですか!」

勇輝が間に入りながら右手を押さえているレイルに声を掛ける。

すかさずカナが駆け寄って治療を始める。

「すまない…。」

「いえ、今は大人しく回復に専念してください。」

2人は少しずつ後退する。

「さて、私が相手になりますよ。」

勇輝が9mm拳銃とナイフを抜き、CQCスタイルで構える。

・・・そう言ったものの、どうやって戦うか……良くて時間稼ぎかな?とりあえずあの障壁が厄介だな。多分あれでクレイモアも防いだんだな。ということはおそらく発動はオートってところか。・・・

「ーッ!」

「クソッ!」

勇輝めがけて向かって来たヤツに9mm拳銃を3発発砲する。

「ーッ!?」

最初の2発が命中したがまた障壁に防がれた。

拳銃に驚いてバックステップを取ったため3発目は回避された。

・・・クソー、今のでもう簡単には当てられなくなったな……あの障壁の弱点はないのか?・・・

「ーッ!」

「ああ、しつこい!」

再び突撃してくる相手に拳銃を向けるがすぐに回避行動を取られて狙いが定まらない。

素早い動きに翻弄されてあっという間に距離を詰められてしまった。

「クッ…。」

いきなり首を狙って来た斬撃をかろうじてナイフで受け流して拳銃を2発撃った。

障壁に弾丸は弾かれてヤツは距離を取る。

「いちいち下がってんじゃないぞ!それならこっちから行くぞ!」

残弾が少ない拳銃をリロードして勇輝は吶喊する。

ナイフのリーチに入る直前に牽制射撃で2発撃つ。

「チッ…。」

1発が障壁に弾かれたがそのまま勇輝はナイフを構えて斬り込んだ。

「ーッ!!」

ナイフは短剣に受け止められたがまたすぐにゼロ距離で3発連射した。

「ウッ…。」

2発は外れたが1発だけは左足の太ももを掠った。

ヤツは微かに呻き声を上げ、慌てて距離を取った。

・・・やった!攻撃が通じたぞ。やっぱり…距離を取っていたのは…。・・・

「その障壁…発動した直後は別の場所を守れないんだろ?」

「ーッ!!」

僅かであったが確かにヤツは動揺を見せた。

「タネはもうバレてしまったな!覚悟しろよ!」

勇輝は拳銃をホルスターにしまうと異次元から9mm機関拳銃を取り出して構えた。

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