・・・そういえば異次元空間に入れるって書いてあったよな。一回確かめて見るか。装備品の確認もしたいし。・・・
勇輝は何か門のようなものを想像しようとしていたがイマイチイメージが固まらなかったのでとりあえず空間にぽっかりと空いた穴を開くイメージをした。
すると目の前に自分が余裕で入れる大きさの円が現れた。
その向こうは真っ暗でこちらからは見えない。
・・・何も見えないな。何か突っ込んでみるか。・・・
ちょうど近くに枝が落ちていたので、拾ってゆっくりと突っ込んでみる。
枝の半分くらいを入れたところで同じように引き抜くと枝は特に変化はなかった。
・・・よし、入ってみるか。・・・
得体の知れない真っ暗な円に向かって歩き始めてそれを通り抜けると一面がクリーム色?の空間がどこまでも広がっていた。
・・・装備品とかはどこかな?ていうかどんな感じで置いてあるんだろうか。無造作に転がっているのか?・・・
その疑問の答えはすぐにわかった。
「このロッカー…僕が学校で使ってるやつじゃないか!……でも中身が増えてる。」
ロッカーには士官学校の制服や作業服が入っているがそれ以外にも入っていないはずの陸海空の制服や迷彩服が入っていた。
引き出しには弾帯や水筒などの携行品が入っている。
・・・どうやら身につける類のものはこのロッカーにあるようだな。・・・
隣には銃架が置いてあり、さっき収納したM1に64式小銃、89式小銃だけでなくMINIMIや110mm個人携行対戦車弾もあった。
・・・本当に一式あるなぁ、カール君もあるじゃないか。これなら火力も大丈夫かな。・・・
武器を一通り見ている時にソレは勇輝の目に留まった。
「あれは!キング・オブ・バカ銃!!やっぱりあったか。こいつは使わないかな。始めて見るけど結構ゴツイな。」
「各種の銃剣に儀礼指揮官用のサーベルもあるじゃん。」
その後もしばらく装備品を物色してマニア心を満足させていた勇輝だった。
・・・装備はこんなもんかな?あとコレも。・・・
選び終わったらさっそく身につける。
その完成した装備一式はナニカがおかしかった………。
着ているのは陸上迷彩の新型である4型で弾帯も3型だ。
頭には88式鉄帽を被っている。
弾帯をサスペンダーで吊るし、右側面に9mm拳銃のホルスター、その後ろ隣に予備マガジンポーチ2つ分、背中側にはダンプポーチを着けている。
ここまではそこまでおかしくはない。
だが弾帯の左側面には指揮官用のサーベルが下げられていたのだ。
だがよく見ると部隊で使われているものではなく士官学校のエンブレムが元からある桜に加えて鞘や鍔にあしらわれている。
これは儀仗隊でも使用されているものなのだ。
「一度サーベル下げて見たかったんだよね。この世界なら剣の方がいいだろうし。」
迷彩服にサーベルというわけのわからない組み合わせもだが、もっと重要な問題があった。
・・・銃剣もサーベルも刃が付いてないんだよなぁ。銃剣なら刺突になら使えるだろうけどサーベルには強度的にも厳しいな。さてどうしたものか。・・・
しばらく考えた後に名案を閃いた。
・・・魔法で何かしらごまかせばいいんじゃね?風魔法あたりでも纏わせてれば切れるかな?試しにやってみよ。・・・
勇輝は装備を身につけて外に出た。
武装した勇輝の前には腕くらいの太さの細い木が生えていた。
この木をサーベルの試し切りに用いようとしていた。
・・・どんな感じならいいかな?ナ○トの風のチャ○ラを纏わせたクナイみたいにやってみるか。・・・
事前に風魔法単体で試してみたが、木を切り倒すまでは出来ず細かな切り傷をたくさん残しただけだった。
儀仗隊の舞台で何度も見た指揮官のサーベルさばきを見よう見まねで真似して抜き放った。
そして風を刀身に纏わせる。
「ハアァッ!」
上段から斜めにサーベルを振り下ろした。
「あれ?」
振り抜いた後は異常に軽くなっていて違和感を覚えたがすぐにわかった。
・・・刀身が無い!?壊れた!?・・・
サーベルの刀身は木の半分にも達しないところで止まっていた。
どうやら強度が足りなかったようだ。
・・・やっぱり見かけだけのちゃっちい模造刀じゃキツかったか。ちょうどいいや今度はアレを試す。・・・
刀身を木から抜いて持ち手の近くに置き、手の平をかざして懐かしい映画のワンシーンをイメージした。
「レパロ!」
すると刀身が持ち手のところにくっついて元に戻った。
どうやら成功したみたいだ。
・・・うーん…さすがはハ○ーポ○ターだ。これならもしかしてア○ダケ○ブラ使えるのか?・・・
サーベルは使えないので渋々装備を変更する。
・・・サーベル使いたかったけど今は諦めるか…。・・・
異次元にサーベルを戻して代わりに取り出したのはM1だった。
「レパロ!」
銃の各部にあるヒビやキズが次々と無くなっていき、機関部右側面の大きなヒビ割れも直っている。
「これでまた戦えるな。よろしくな。」
今までボロボロでいつポッキリ折れてしまうかわからない状態でたくさんの技に挑戦して落とすこともあった…キズやヒビ割れの一つ一つが勇輝の儀仗隊でこの銃と共に歩んだ思い出だった。
しかし、今では木製パーツにキズ一つ無く美しくもある姿をしていた。
・・・経年劣化の分まで直せたかはわからないが60年以上も戦ってきたんだ。きっとやっていける。あとは…。・・・
今度はクリップと実弾、そして銃剣を取り出した。
「クリップに装填するの難しいな。マガジンとは比べ物にならないな。」
何度も並べた弾が崩れて詰め直しになったがなんとか8発詰めることができた。
・・・コイツをさっそく本体に装填するか。・・・
クリップを入れるため思いっきり槓桿を引くと目の前をくすんだ真鍮色の空薬莢が飛んでいった。
勇輝はそれを拾い上げた。
・・・そうか、ずっと入っていたのか。お前のお陰で生き残る事が出来たよ。ありがとな。・・・
普通は薬莢が射撃した後に排出されるはずだが、儀仗隊が使用している空砲は火薬の量が少ないのか射撃してもボルトが下がりきらず薬莢が内部に残ったままになるのだ。
このことも1発だけしか装填しない理由だった。
勇輝は気をとりなおして引ききってボルトが止まっているM1を取りフル装填のクリップを押し込んだ。
ボルトを戻して安全装置を解除し、ゆっくりと構える。
手頃な木に向けて引き金を引いた。
「ーッッ!」
空砲より少し低い轟音が耳に響き、大きな反動が肩を叩きつける。
その後も射撃を続けて最後の1発を撃ち終えると甲高い金属音が響き渡り、空のクリップが飛び出してボルトが止まった。
・・・異常ないな。やっぱりいいね。この音は。・・・
クリップを拾って的にしていた木を見ると10cmくらいの円に収まっていた。
・・・距離が近いけどまあまあかな。とにかくコイツは完全復活した。・・・
以前までサーベルが下げられていた弾帯の左側面はM1用の銃剣と予備のクリップを入れた適当なポーチが付いた。
「それじゃあぼちぼち出発しますか。」
負い紐を緩んで肩にM1を背負った迷彩服の青年は再び森の中を歩き出した。