そろそろ次の章に進もうと思います。相変わらず行き当たりバッタリですが、まだまだ続きます。
「ううーん…、ふぁー…。」
馬車の側で毛布にくるまって寝ていた勇輝は朝になり目を覚ますと大きな欠伸をした。
・・・毛布があったからまだ寝れた方かな。流石に枕とかが何も無いのはキツかったな。今度何かしら調達しよう。・・・
目を擦りながらそう考えていると毛布の中に違和感を感じた。
「うん?」
まさか…と思いつつゆっくり中を見ると栗色の髪が目に入った。
いつの間にやら馬車の中で寝ていたはずのカナが潜り込んでいたようだ。
・・・どうやら毛布だけのお陰ではなかったようだな。やけに暖かいと思ったらそういうことか。……まあ、仕方ない、少しは甘えさせてあげるか。・・・
カナは王女を演じている間勇輝に甘えるのを我慢していたため今回はもう少しゆっくりすることにした。
・・・どうやらカナさんがこうやっていることにも幾分か慣れたみたいだな。ちょっとばかしこれが普通になっているようにも感じる。・・・
勇輝はそんな自分の変化もまあいいかと思うようになっていた。
あまりにも暇だったのでレーダーを使用してみる。
突然予期せぬ大所帯になってしまったため近くに多数の反応がある。
「あ…」
勇輝はその中のとある反応を確認して思わず口を開いた。
・・・ノースさん…ずっとそこにいたんですか……。本当に身体壊しますよ。・・・
ノースの地点が勇輝が寝る前に彼ががいた机から場所が全く変わっていなかったのだ。
もしかしたら机で寝ている可能性もあるがほぼ徹夜だったことは容易に想像できる。
・・・なんか申し訳ないな。あとで何か労ってあげられないかな。・・・
働き詰めだったノースに申し訳ない気持ちになり、レーダーを切ると軽く目を閉じた。
「ははは……、出来たぞ…。これで戦争を止めさせてやる…。ハハハハッ!」
ノースは目の下のクマをアクセントに狂気をまとった顔をしていた。
そして自分の書き上げた紙を両手で掲げて椅子から立ち上がった。
「あれっ?視界が歪んで……」
急に立ち上がったからだろうかノースは目を回して力が抜けたように倒れた。
「おーい!ノース、起きてるかー?っておいっ!大丈夫か!?」
それから少ししてノースのもとにレイルがやってきたが、倒れているノースを見て大慌てで駆け寄った。
「なんだよ、寝てるだけじゃねーか。おどかしやがって……ん?なんだコレ?」
寝息を立てているノースに安心して悪態をついたレイルは彼の手に握られている紙を手に取った。
「ふーん…、おおっ!スゲー。やるじゃねーかよ。」
その内容を読んだレイルはノースを見てニヤリと笑うと紙を机の上に乗せてその場を離れた。
そしてまたしばらくして毛布を持ったレイルがやってきたノースにゆっくりとかけた。
「オレがいなくなった間に立派になったじゃねーか。」
レイルはそう呟くと肩を回して外に出た。
「はっ…いつのまにか寝てた。」
勇輝がもう一度目を覚ますとカナはいなくなっていた。
・・・どれくらい寝てたんだ?…………30分くらいか、カナさんはどこに?・・・
腕時計を見てその後に立ち上がり毛布を軽くはたくと異次元空間に収納した。
「あっ!勇輝さん、おはようございます!朝食持って来ましたよ!」
突然後ろから声をかけられて振り向くとカナが2人分の朝食を持って立っていた。
そして何故かキラキラオーラが見えそうな雰囲気を醸し出している。
「おはようございます。わざわざありがとうございます。」
勇輝も少し間を空けて挨拶を返すと朝食のスープを受け取った。
スープの僅かな温かみを感じて安心感に包まれた。
・・・この程度で取り乱すなんて人のことを言えないかもな…。カナさんを見て安心した。・・・
勇輝は自分の新たな変化になんとも言えない気分になり、スープを啜った。
「カナさん。」
「はい?どうしたんですか、勇輝さん?」
勇輝が呼びかけるとカナが食事の手を止めて勇輝の顔を見る。
「昨夜はよく眠れましたか?……あの馬車はそんなにちゃんとしてないのでちょっと寒かったでしょうか?」
勇輝は気まぐれにちょっとした意地の悪い質問をしてみる。
「えっ?あ…ああ、大丈夫でしたよ…。勇輝さんは?」
カナは耳をピンと立てて目を少しそらし明らかにいつもと違う反応を返した。
「私は毛布だけでしたが、何故かそんなに寒くは感じませんでしたね。あの毛布そんなに暖かくなかったと思ったんですが。」
「へ…へえー…。そうでしたか…。よ…良かった…です。」
カナは勇輝の返答に顔を赤らめてもじもじしていた。
その顔はちょっと嬉しそうであり、尻尾はあからさまにそれを示していた。
・・・カナさん、気づいてないと思ってるんだなー。これはこれで可愛い。・・・
「さてと、とりあえずノースさんのところに行ってみましょうか。」
「はい!」
カナに癒しをもらった勇輝はノースのいる詰所に向かった。
「ノースさーん、います……か…。」
勇輝がノースを呼びながら詰所に入ったところで口の前に人差し指を立てたレイルが出て来たので声のボリュームを下げた。
「すまねぇな。ノースのやつ寝ちまってるからよ。」
「いえ、それなら仕方ないですよ。かなり無理してたみたいですから。」
カナが後ろを付いて来る中勇輝とレイルはノースが居る所へと向かう。
到着すると何故か地べたで仰向けになって眠っているノースの姿があった。
かなりやつれた顔をしていたが、やりきったという表情をしていた。
毛布がかけられているのはたぶんレイルがやったんだろう。
「ずいぶん派手に寝てますね…。」
「ああ、どうやら仕事を終えて立ち上がったところで力尽きたようだな。その証拠に……コレ見てみろよ。」
レイルは机の上にある紙を取り、勇輝に渡した。
「なんですか?………ふむ……。」
・・・どれどれ…交渉内容の変更…?カイゼル公による第二王女の拉致及び監禁を始めとした行為に対する厳重な抗議を行う。…しかしカナによる影武者交渉の事実の露見を避けるため拉致監禁に関しては言及せず、野営地に対する襲撃の首謀者としての講義を中心とする……か。確かに今回の件はサビーナ家と対立しているカイゼル公への有効打…いや、決着をつけることになり得る。それはいいカードになるな。・・・
「すごいですね。今回の事件をうまく外交のカードに利用するなんて。でもかなり緻密に練られてますね。カナさんのことがバレないやうにも対策を考えられてる。」
読み終えた紙をレイルに返すと彼は再び紙を机の上に戻した。
「だろ?後はこれに沿って交渉をするだけってことだ。それまでは休ませてやらうぜ。それだけの仕事をコイツはやったんだ。」
レイルはノースに視線を移すとそう優しく言った。
「そうですね。ノースさんはこの後も交渉を実際に進めることもやらないといけないですからね。じゃあ私たちはお暇しますか。」
「あの、ノースさんをちゃんとしたところで寝かせた方がいいんじゃ…。」
カナがそう言ってノースに近寄って行った。
「やめとけ、下手なことして起こしちまうよりはこのままの方がいいからよ。ほっとくのが一番だぜ。」
レイルが手を出してカナを止めた。
「うーん、分かりました。」
カナは仕方なく踵を返して勇輝の後について詰所を後にした。
しばらく後になってやっとノースが目を覚ましたらしく交渉チームが慌ただしく動き始めたのを勇輝たちは見た。
しかし、ノースは勇輝たちと話すのも朝食を食べることも後回しにして大急ぎで馬車に乗って交渉に出向いて行った。
「すごい早さで行っちゃいましたね。」
「それだけ自身があるってことでしょうかね。確かにあのカードはなかなか強力ですからね。これならあちら側もかなりの譲歩を迫られるはずです。ノースさんを信じましょう。」
「はい!」
勇輝とカナはノースの交渉の成功を祈り馬車を見送った。