→何も手を着けず…
そんな感じのサイクルを繰り返している今日この頃です。
本当にごめんなさい。
「ど…どどういう風にって……カナさんっ!?」
あまりに突然の出来事に勇輝は落としたパンのことも忘れて聞き返す。
「あっ、な…なな…何でもないです!」
カナは勇輝の反応を見て慌てて取り消したが、現実は変わらない。
「私、ちょっと風に当たって来ます…!」
「え…ああ、はい…。」
カナは勇輝に背を向けたままそう告げると小走りで去ってしまった。
その場には固まったままの勇輝とその足元に落ちている食べかけのパンだけだった。
・・・えぇー……何だ今の…。どういう風に好かれたいかって?あんなに可愛い子に好かれるのなら何でもいい……あっ、ヤンデレ系は勘弁。……いや!そうじゃなくて…つまりは、カナさんは…アプローチして来た…!?この僕に?いやいやいや、何で?・・・
勇輝はパンを拾うことも忘れて頭の中で、無意味に思考を巡らせていた。
・・・カナさん、僕にアタックしようとしてるのか?本当ならちょっと嬉しいけど…いやいや、良くないでしょう、カナさん16だよ?こっちはたぶん若干若返ってるかもだけど20になるんだぞ…ちょっと年の差じゃない?早いと思うよたぶん。どうしようかな…断るか?だけど、気まずくなるよなぁ…・・・
心の中のモヤモヤを残したまま勇輝は立ち上がるとふらふらと歩き出した。
「何言ってるんだろ…私。」
カナは勇輝のいる場所から少し離れた場所の木の陰にしゃがみ込んでいた。
・・・変に思われちゃったかな…、どうしよう。仮に勇輝さんが質問に答えていたらどうなったんだろう。その希望に合わせた?難しい事言われたらどうしよう…。でも、もっと大事な問題は……・・・
「私は…勇輝さんのことが………好き?」
思わず口から出た言葉にカナは少し戸惑いを見せる。
・・・私は勇輝さんと一緒に居たい。それは変わらないけど…この気持ちは少し違う…?これが好きってことなのかな?・・・
「ううー……分かんないよ…。」
カナは頭を抱えて俯いて弱々しく呟いた。
「何が分からないの?」
「えっ?……シャリアさん!?いつからそこにっ!?」
カナが声のする方に振り向くとシャリアが腕を組んで木に寄り掛かってカナを見下ろしていた。
「アルを寝かしつけてちょっと歩いていたら、なんか木の裏から呻き声みたいなのが聞こえたのよ。そしたらあなただったってわけよ。それで何か悩みでもあるの?」
ゆっくり立ち上がったカナに説明をするシャリアが最後に出した質問にカナはビクッと肩を動かした。
「な…なんでも無いですよ。」
カナはシャリアから顔を逸らして答えた。
「あなた、誤魔化すのが下手ね。それじゃバレバレよ。なんか好きってのも聞こえたけどー」
「き…聞いてたんですか!?」
「その反応も白状するのと変わらないわよ。本当にあなたちょろいわね。」
「あう…」
カナは耳をしゅんと下げて縮こまった。
「とにかく、話してみなさい。年はほとんど変わらないけど経験は豊富よ。色恋に関しては微妙だけど。」
シャリアは組んでいた腕を今度は腰に当てて胸を張った。
「うーん…それなら……、私は勇輝さんと一緒に居たいということを望んでいます。けど、だんだんと近くにいるときに自分が少しおかしくなったりしちゃうんです。自分でもこの気持ちが何なのか分からないんです。やっぱりこれが好きということなんでしょうか?」
「そうね、それは私も流石に断言はできないわ。でも、似たようなものは一足先に経験したわ。」
「えっ!シャリアさんも?」
「私のはちょっと違うけどね。私たちはこの後ノシヨに保護されるでしょ?それからなんだけど、レイルも冒険者のパーティの活動拠点をノシヨに移す事にするそうなの。そして彼は私にメンバーにならないかって声をかけたの。その時胸の奥で、暖かい気持ちが溢れてきたの。その前からなんだかんだで私の事を気にかけてくれてたのが私にも分かってたからその気持ちに気付けた。きっと私は…レイルのことが好きになっちゃったみたいなのよ。」
シャリアは、レイルの話をし始めた辺りから若干上の空な雰囲気を漂わせていた。
・・・へぇ…シャリアさんがこんなになるなんて…もしかして私も?ちょっと心配になってきた。・・・
「ちなみにレイルさんは?」
「彼は気付いていないと思うわ。私も気持ちを告げるかどうかはまだ分からないわ。……カナ、あなたのも近いものだと思うわ、今はそれを自分の中ではっきりさせるだけでいいんじゃないかしら。そこから先はあなた次第よ。」
シャリアはそう言い終えると後ろ手を振りながら去っていった。
・・・そっか、私次第…か。私はどうなんだろう…勇輝さんは私の事どう思ってるのかな?迷惑だったりしないかな?……やっぱり分からないよ。・・・
シャリアが去った後もカナはしばらく頭を抱えていた。
夜が明けて、楽しく騒いでいた両国の兵士達も気分を切り替えて片付けと出発の準備をしている。
勇輝とカナはあの後会う事なく別々の馬車で眠った。
「あっ、おはようございます、カナさん。」
「お…おはようございます…。」
勇輝がカナを見つけて声をかけるとカナは返事だけを返してよそよそしくそっぽを向いた。
・・・えっ?僕何かしちゃった?たぶん昨日のことだよな、何があったんだ?・・・
「カナさん、昨日の事だけー…」
「おう、勇輝!ここにいたのか。ちょっと手伝ってくれ。」
「えっ、ちょっと…。」
勇輝がカナに尋ねようとしたところでレイルが現れて勇輝を引っ張られて連れてかれてしまった。
引っ張られながら後ろに見えたカナは未だに顔を逸らしていた。
・・・仕方ない、さっさと終わらせて後で聞くか。・・・
「レイルさん、何をすればいいんですか?」
「それがな、今回の野営が終わったら日を跨がずにノシヨに向かいたいんだ。ちょうど今ギリギリの距離なんだよな。そこであんたにもう必要のない野営用の荷物とかも収納してもらいたいのさ。荷物が軽くなれば、十分に間に合うからよ。」
「そうでしたか、それなら手を貸しましょう。」
そのままレイルとともに荷物が集められている場所へと向かった。
「よし、これで全部ですか?」
「ああ、今ので最後だ。助かったよ。本当に兄ちゃんには世話になってるよ。」
テント用の布を異空間に放り込んで勇輝が兵士に尋ねると感謝をされた。
「勇輝、ご苦労だったな。これでも食えよ。」
「レイルさん、ありがとうございます。……なんですこれ?」
勇輝がレイルから手渡されたのは干し肉だったのだが、いつもと少し違う感じがした。
違う動物のものなのだろうか肉の色合いが、少し薄い色をしていた。
「コイツはなぁ、ワイバーンの肉だよ。図体はデカイが数が少なくて、おまけに倒すのも一苦労だから貴重なんだぜ。」
「へぇ、ワイバーンですかぁ……もしかしてこれですか?」
勇輝は以前ミサイルで撃ち落としたワイバーンのことを思い出して記念に取っていた首を取り出してレイルに見せた。
「うわっ…脅かすなよ。確かにコイツだな。アンタも仕留めた事あったのな。それじゃ食ったこともあったか?」
突然出てきたワイバーンの首にレイルは少し身構えたが、気を取り直して質問してきた。
「いや、食べられるとは知りませんでしたよ。それより、移動中に突然襲われたものでしたから。この首と状態の良さそうな鱗をいくらかといった感じです。」
「そうか、なら首は錬金術師辺りに売ればけっこうするぞ。鱗も使い勝手が良くてドラゴンよりは劣るがそれなりに貴重だ。」
「そうなんですね、いいことを聞きました。とりあえずこれはありがたくいただきます。」
勇輝はワイバーンの首をまた収納すると干し肉を少し齧ってみた。
普通のものよりかなり頑丈で顎が疲れそうだが、噛むほどに独特の味が広がる。
不思議とクセはあまりなく硬い以外は食べやすかった。
「けっこういいですね、美味しかったです。」
「おう!それなら良かった。さて、そろそろ出発と行こうか。俺はノースに知らせてくるからアンタは馬車に戻ってな。そうだ…せっかくだからカナにもコイツを食わせてやれ。じゃあな。」
レイルは勇輝にもう一切れの干し肉を手渡すと走って行った。
「さて、戻るか。」
勇輝は干し肉を齧りながら馬車へと向かった。
「あら?あなたたち何かあったの?」
またもやケーネ王女と同じ馬車にカナと乗ることとなった。
しかし、馬車に乗る前から相変わらずカナは顔を合わせてくれない。
王女も流石に違和感に気づいて2人に尋ねる。
「「いえ、何も。」あっ……。」
2人の返事が被り、2人が短い間顔を見合わせてカナはすぐに逸らしてしまった。
「あらあら、どうしちゃったのかしら。そうね……勇輝さん、席を外してくださる?ちょっと2人でお話をしたいの。」
「えっ?分かりました。」
勇輝は少し疑問を残しつつも馬車を出てノースたちがいる馬車に行った。
「どうしたんですか?勇輝さん、もうすぐ出発ですよ?」
「いや、今度はこっちに乗らせてください。なんでも王女様がカナと話をしたいということですから。」
「ああ、そうだったんですね、それなら少し狭いですがどうぞ。」
「ありがとうございます。それではお邪魔します。」
勇輝が馬車に乗って少しすると馬車の一団は出発した。
「あの、お話しって…。」
「大したことじゃありませんよ。カナさん、あなたってもしかして勇輝さんのことがお好き?」
「ふぇっ!?いや…その…。」
王女が身を乗り出してカナに顔を近づけて言った言葉にカナはたじろいだ。
「ふふっ、可愛いわね。いいじゃない。恋っていいものよ。」
王女はどこか楽しそうな表情で両手を合わせている。
「で…でも、勇輝さんが私のことをどう思ってるのか分からないから心配なんです。」
「その気持ちも分かるわ。でも、だからってつれない態度ばかりだったら離れて行っちゃうわよ。もっと大胆に行かなきゃね。それに勇輝さんは大丈夫だと思うわよ。今までだって悪くされてないんでしょう?」
「そ…そうですけど。やっぱり怖いんですよ。」
カナは震える声で自身の心情を吐露する。
「やっぱりそうよね。それはあなたの勇気次第ね。でも、そんなに心配することはありませんよ。何よりこんな可愛い子に好きって言われて嫌になる男なんてそうはいませんよ。」
自身の瓜二つの人にそれを言うのは自分に言っているようなものではという言葉をカナはかろうじて飲み込んだ。
「1つ心配があるとすれば勇輝さんがカナさんを子供っぽく見ているかも知れないということくらいかしら。それもあなたの振る舞いで簡単に無くせるわ。あなたには私に無いものがあるんですもの。」
楽しそうに話していた王女が話の後半で目の輝きを少し無くして自分の胸に手を当てたのを見てカナも何を言おうとしているのか察して顔を赤らめた。
「それはそうと、もっとお話ししましょう!まだ到着まではたっぷり時間があるからいろいろ聞かせてちょうだい。まずはいつから好きになったの?」
「うぅー……」
カナはその後しばらく王女との恋バナに付き合わされることとなった。
なんだかんだで本格的にカナのパートをやるのは初めてですね。
なかなか進まないのはいつものことになってますね。
もうちょっと………かな?