士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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M1の銃剣ももちろん刃が付いていないので純粋に刺す事しか使えません。
ちなみに勇輝はサーベルをまだ諦めていません。


出会い

・・・そういえばちょっと腹が減ったなぁ。迷い込んだのが多分午後5時くらいでそれから色々あったから本当なら夕食を食べてるはずなんだよな。・・・

今まで通った森の中でも特に食べられそうな物は見当たらなかった。

さすがに腹が減ってはどうしようもない。

・・・なんとか食料を見つけるか、人に合わないとな。・・・

腹が時折音を鳴らして空腹感がいっそう強くなる。

森の中を歩き続けると次第に周囲が明るくなり木の密度も減ってきた。

どうやら森もあと少しで抜けられるようだ。

「あれは…道か?」

森の終わり近くであまり草も生えておらず土肌を露わにしている線が現れた。

・・・おそらくここを馬車とかが通るよな。そうでなくてもこの道に沿っていけば人がいる。・・・

勇輝は道に沿って進み始めてすぐに森を抜けた。

 

 

森が後ろに小さく見えるくらいに歩いたところで遠くに何かが見えたので双眼鏡を異次元から取り出す。

・・・これ…護衛艦とかに置いてあるやつか。・・・

艦長の気分で双眼鏡を覗くと2頭の馬に引かれている馬車が見えた。

そこそこの大きさで人が乗っているのか荷馬車かはわからないがとりあえず馬を操る人は見える。

・・・やっと人に会えるな。食べ物とか分けてもらえるかな?・・・

しばらく歩いて馬車が近くまでやってきた。

「おーい!」

声を掛けると馬車が止まった。

「んっ?あんたこんなところを一人でどうしたんだい?」

優しそうな感じのおじさんが馬の間から声を上げた。

見た感じ40くらいかもう少し若いがそれでも十分年上だ。

・・・良かった。言葉は通じているみたいだな。意思疎通が出来なかったらさっそく詰んでた。・・・

「ちょっと旅に出ていたのですが、森の中で襲われて…荷物を残してなんとかここまできたんですよ。ただ、食べ物を何も持ってなくて…。もしよろしければ何が分けていただけませんか?」

「そいつは災難だったな。干し肉と水を少しくらいなら分けてやれるが、あんたはどうするんだい?」

「とにかく街に行こうと思っています。特にあてはないです。そういえばこれからあの森を通るんですか?」

「ああ、そのつもりだよ。ただ今は魔物が出るらしいから本当は護衛を付けたかったんだが、どこも忙しいみたいでな。幸運を祈るしかないね。」

どうやらこの馬車は荷馬車のようでおじさん以外は乗っていないみたいだ。

おじさんは仕方ないといった感じで答えた。

「それでしたら食べ物を分けていただく代わりに私が護衛しますよ。ですのでご一緒させてもらえませんか?」

「本当かい?それくらいなら全然構わないが戦えるのかい?」

「大丈夫です。それなりに戦えます。」

「それなら願ったり叶ったりだ。ちょいと狭いが乗ってきな。」

・・・食べ物も確保できたし街にも行けるみたいだ。助かるな。・・・

勇輝はお礼を言って馬車の荷台に乗り込んだ。

 

 

荷台の上で干し肉と水を分けてもらってさっそく食べてみた。

・・・結構硬いし、おつまみのビーフジャーキーと同じかそれ以上にしょっぱいけどまぁ悪くはないな。・・・

ガタガタと揺れて乗り心地は悪かったが訓練で何回か乗ったカーゴの荷台とたいして変わらないのであまり気にならなかった。

外の景色が見える分こっちの方がいいかもしれない。

しばらく馬車に揺られていると再び森の中に入った。

・・・今まで歩いてきたのはなんだったんだ…。まあ人に会えたからプラマイゼロかな。・・・

 

 

時間の合ってない腕時計を見ると森に入って30分くらい経っていた。

「兄ちゃん!魔物だ!」

おじさんが焦った顔で指差す先にはあのゴブリンが5体いた。

手には剣……後ろの一体だけは弓を持っている。

勇輝は肩からM1を外して後方で弓を引こうとしている一体に狙いを定めた。

「やらせない!」

M1から放たれた弾丸はゴブリンのみぞおち付近を貫いて貫通した。

撃たれたゴブリンは貫通した穴から血飛沫を上げて小さく吹き飛んだ。

・・・これで弓は押さえた。あとは4体だな。・・・

勇輝は荷台から飛び出して馬車の前に立つ。

「着剣!」

腰から銃剣を抜いてM1に取り付ける。

ゴブリンは最初は仲間が大きな音とともに吹き飛ばされたことに驚いたが、すぐに仲間の仇に向かってきた。

「クソッ!」

すぐさまM1を構えるが銃剣を先端に付けたことで取り回しが重くなり、慣れていなかったためにうまく照準が定まらない。

2発撃って先頭のゴブリンの胴体になんとか当てて倒し、もう1発で隣にいたやつの頭に命中させた。

・・・よし!ヘッドショット!あと2体で、こっちの残弾は4か。・・・

残り2体は構わず接近してきた。

勇輝も応戦するがもうすぐ至近距離まで来る。

「止まれーッ!」

2発撃って1体を倒したところで最後の1体が迫って来たが照準は間に合わない。

「クゥッ!」

M1を振り上げて機関部近くで剣を受け止める。

機関部は金属部品で丈夫だったので剣を受けても特に問題なかった。

すぐさま振り払って床尾で胴体を叩き怯ませる。

「くらえ!」

M1の向きを素早く変えて銃剣をゴブリンの心臓がある辺りを突き刺した。

ゴブリンはあまり体重が無いらしく突かれた勢いで上に持ち上がり、勇輝はそのまま地面に叩きつけた。

「ふぅ、ヒヤッとした。」

刺さった銃剣を引き抜き一息ついた……が、それが大きな隙になった。

「兄ちゃん!後ろだ!」

おじさんの叫びにビクッとして一瞬反応が遅れた。

後ろを向くと剣を持ったゴブリンがこっちに迫っていた。

・・・まだいたのか。・・・

すぐにM1を構えて撃ったがゴブリンの上を掠めるだけだった。

「ーッ!ヤバイ!」

ゴブリンが剣を振り下ろしてきたのを慌てて避けようとして後ろに尻餅をついた。

さらにもう一度剣を振り下ろしてくるが、勇輝はそれよりも早くM1を突き出してゴブリンの胴体に銃剣を刺した。

「グギィ……」

剣は届かないがまだゴブリンはもがいている。

勇輝も体勢が悪いためこのままでは押し負ける。

「これで終わりだ!」

そう言ってM1の引き金を引いた。

轟音の直後に勇輝に返り血が飛び、ゴブリンは後ろに吹き飛んだ。

そして薬莢とともに特徴的な高い音を響かせてクリップが排出された。

「……危なかった。」

近くに落ちていたクリップを拾ってダンプポーチにつっこみ新しいクリップを取り出そうとした。

「助けてくれー!」

その声に振り向くと剣を持ったゴブリンがおじさんを追い詰めていた。

おじさんは木に背中をつけていてもう後がないようだ。

・・・M1は撃てない。ならこっちでやるしかない!・・・

M1を置いてホルスターに収まっている9mm拳銃のグリップに手をかけた。

拳銃を抜きながら安全装置を解除し、軽く狙いをつけて撃ち続けた。

はじめの2〜3発は外れたみたいだが、その後の3発は確実に当たった。

ゴブリンは仰向けに倒れた。

近づくとまだ息があったので一思いに頭に1発撃ち込んだ。

「大丈夫ですか?さっきはありがとうございます。」

「…ああ、助かったよ。それにしても変わった武器だな。まだ耳が痛い。」

「まぁちょっと特別なんですよ。それより早く離れましょう。」

二人は馬車に戻って歩いた。

途中でさっき倒したゴブリンが1体這いずりながら近づいてきていた。

「悪いけどトドメだよ。」

最後の2発を叩き込んでスライドがストップした。

ゴブリンは息絶えている。

勇輝はマガジンを交換してM1を拾って戻った。

 

 

その後は襲撃も無く、森を抜けてしばらくすると街が見えてきた。

石造りの立派な壁がそびえ立ち、道の先には大きな門が開かれている。

「兄ちゃん、あれが[コヨースカ]だよ。この辺りでは結構デカイ街だぜ。」

「へぇ、そうなんですか。やっと一息つけそうですね。」

「そういえば街の門をくぐるには通行税がかかるが払えるか?銅貨3枚だ。」

・・・マズイな。お金なんて持ってないし、それどころかシステム自体も全く知らないぞ。・・・

「え、えーと、実はお金も食料と一緒に失ってしまったんですよ。ははっ…。」

「そうかい。あんたもついてないな。ここは護衛してくれた礼に払ってやるよ。大した額じゃないしな。」

「本当ですか!助かります。」

・・・とりあえず目立つM1は収納しておこう。銃剣は短剣の類だと思ってくれるだろう。・・・

勇輝はおじさんの計らいのおかげで難なく街に入ることができた。

馬車が大通りの入り口近くで止まると、そこでおじさんと別れた。

「兄ちゃん、達者でな。」

「本当にお世話になりました。ありがとうございます。」

そして勇輝は大通りへと向かった。

 

 

・・・何をするにも拠点だったり資金を集めないとな。今日の宿もお金がないと入れない。となるとやっぱりギルドか?・・・

勇輝は思案しながら歩いていると果物を売っている屋台のおばさんに声をかけられた。

「そこの変わった格好した兄ちゃん!このリンゴを買わないかい?今ならとっても甘いよ。」

・・・変わった格好だと……。ああ、そうか迷彩だもんな。・・・

「すみません、今お金がないもので。ちょっと聞きたいんですけど、この街のギルドかみたいなところってありますか?あったら場所も教えてください。」

「それだったらこの大通りの先の街の中心にあるよ。この街は初めてかい?」

「つい先ほど来たばかりなんです。ありがとうございました。」

親切なおばさんに礼を言って大通りを進む。

 

 

ファンタジーでよくありそうな中世風の大通りを進むと目の前に大きくて立派な建物が見えて来た。

・・・多分あれがギルドだな。さっそく行ってみるか。・・・

ギルドに向けて歩き出した勇輝は通行人の若い男性にぶつかった。

「おっと、すみません。」

「オイッ!どこ見てやがんだ!……変な格好しやがって。ふざけてんのか?とりあえず有り金だしな。」

・・・えっ、やばくない?こんな大通りで白昼堂々と?・・・

「聞いてんのか!いい度胸じゃねーか。さっさと出さないと大怪我するぞ。」

周りを見るといつの間にか仲間と思われる男に囲まれていた。

数は全部で3人だ……よく見ると酔っ払ってる。

「もう知らねーぞ!やっちまえ!」

目の前の男が向かってくる。

・・・流石にここで銃は使えないよな。銃剣は危ないし、3人相手に接近戦はきつい。……そうだ!・・・

「破道の一…衝!」

人差し指を向けて唱えると指先が小さく光って男が吹っ飛んだ。

・・・これなら大した怪我にもならないだろう。・・・

「この野郎!よくも!」

他の二人も襲って来るが同じように吹っ飛んだ。

「すいません。この酔っ払い3人を衛兵にでも突き出してください。」

囲んでいた野次馬に後を任せて勇輝はギルドの方向に向かって逃げるように去っていった。

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