士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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ちょっとずつ読んでくれている方が増えてきて嬉しいです。これからもどんどん上げていくので是非軽い気持ちで読んでください。


初依頼

「知らない天井だ…。」

そんなセリフを吐きながら魔物の襲撃の生き残りの鶏の鳴き声で目を覚ました。

時間にガチガチに縛られた学校での暮らしの癖で腕時計に目をやると、午前6時過ぎになっていた。

・・・あれー?昨日寝た時はこの世界に来た時からズレていて午前10時くらいだったぞ。こんなところに電波飛んでる訳ないし…。まぁいいか。ある程度は頼りにできる。・・・

ベッドから起きて身だしなみを整えると食堂で朝食のパンとスープの残りをもらった。

「さてと、任務開始といこうかな。」

村人に借りた梯子で比較的広めな西側の家の屋根に登って対人狙撃銃と双眼鏡を出した。

あとはスナイパーよろしく襲撃が来るまでひたすら待機だ。

 

 

 

「暇だなぁ。」

腕時計を見ると30分くらい経っていた。

・・・これだけでもキツイのに同じ体勢で何日も待ち続ける本職のスナイパーってやっぱり凄いな。・・・

あまりに退屈だったので差し入れでもらったパンをかじりながら双眼鏡で村を眺めてみた。

・・・そんなに広くはないけど子供とか若い人も多いな。畑も元気そうだし、魔物の襲撃を除けばかなりいいところだな。みんな優しいし。・・・

「これは守るしかないでしょ。」

勇輝は改めて気を引き締め、双眼鏡で村の外を見た。

「ーッ!アレはっ!」

双眼鏡の視界の端に映り込んだ森で何度も見た影を勇輝は見逃さなかった。

 

 

「来たぞー!魔物が来たぞー!」

勇輝が屋根の上で叫んで村人に知らせる。

・・・まずは観察だ。距離はまだ結構ある。1kmはありそうだ。数は…多いな、情報が違ったのか?どう見ても10体以上はいるぞ。・・・

「まだ試してないけどあの数相手ならコイツの出番かな。」

勇輝は異次元からMINIMIを取り出してベルトリンクにつながれた弾薬をセットした。

念のためMINIMIに使用できるM4のマガジンもポーチに入れておく。

「うん、準備完了!」

再びMINIMIを戻して対人狙撃銃を構えてスコープを覗く。

「一匹も村には近づけない!」

スコープの調整してある有効射程に獲物が来るまでじっと待ち続ける。

 

 

勇輝の叫び声を聞いて村は一気に騒がしくなった。

若い男達は古い剣や槍を持って村の入り口を固め、それ以外のものは家の中に隠れて窓を硬く閉ざした。

「本当にそこから倒せるのかー?あんたに期待してるぞ。」

槍を持った村人が屋根の上に寝そべっている勇輝に声をかける。

「大丈夫です。皆さんは入り口を守ってください。」

「わかった。頑張れよ!」

村人は入り口の守備に行った。

・・・そろそろ射程圏内だな。厄介な弓持ちから片付ける!・・・

弓を持っているゴブリンの頭に狙いを定めてトリガーを絞る。

「キャラじゃないけど…、狙い撃つぜッ!!」

某スナイパーの台詞とともに対人狙撃銃が火を噴き、弾丸が飛んでいく。

それは集団の真ん中付近にいたゴブリンの頭に命中して破裂するように血を撒き散らしたのがスコープではっきりと見えた。

・・・なかなかエグいな。スナイパーは弾が敵にめり込むのをアップで見なきゃいけないからつらいって言われるのがよくわかるなぁ…。・・・

「…とりあえず、ひとぉーつ!」

すぐさま次弾を装填して慌てふためいている集団の中で動いていない者に照準を合わせる。

今度は心臓を狙って撃った。

撃って少しの間を置いてそれは命中した。

「ふたぁーつ!」

淡々と薬莢を排出し、次の標的を狙う。

立て続けに仲間を2体やられて動揺していたゴブリン達は埒があかないと思ったのか一気に走り始めた。

・・・立ち止まらないのは賢明な判断だが、隠れる場所もなく真っ直ぐに向かって来るのならただの的と同じだ!・・・

「みぃーつっ!」

「よぉーつっ!」

「いつーつっ!」

残りの3発も命中して群れのおよそ半数を仕留めた。

対人狙撃銃の装弾数は5発である。リロードしてもいいが、距離が縮まってきているので武器を切り替える。

勇輝は狙撃銃を収納して屋根から降りた。

そしてゴブリンが向かってきている村の入り口に走って行き、村の男達と合流した。

「あんた、どおしたんだ?奴らはどうした?」

「先程5体仕留めました。あと、6〜7体はいます。私を入り口の前に出してください!」

「分かった!気をつけろよ!」

「はい!」

入り口を開けてもらってMINIMIを取り出して陣取る。

「さーて、何体残ってるかな?」

生き残ったゴブリンは勇輝がクレイモアを仕掛けたエリアに差し掛かっていた。

そして、スイッチとなるワイヤーに触れる。

ドォーーンッッ!!

離れた場所からでも空気が震えるのが分かった。

・・・かかってくれたみたいだな。最後はここで迎え撃つ!・・・

MINIMIを構えていると爆発で巻き上げられた土煙の中から4体のゴブリンが飛び出してきた。

皆どこかしらに散弾による怪我を負っているようで、ところどころ血を流している。

・・・これで終わりにする!・・・

突進してくる集団に向けて機関銃の掃射を始める。

毎分725発の弾丸の嵐が次々と命中してゴブリンを貫いた。

10秒くらい撃ち続けて引き金から指を離した時には1体も立っていなかった。

「お…終わったか?」

後ろから村人たちがおそるおそる出てきながら尋ねる。

「はい、終わりましたよ。これで安全です。」

「あんた、ナニモンなんだ…。」

その後は村人と協力して片付けをした。

 

 

「これが依頼の報酬じゃ。ご苦労だったの〜。また何かあったら頼りにさせてもらうよ。」

「こちらこそありがとうございます。皆さんお元気で。」

勇輝は報酬のお金が入った袋を受け取った。

・・・やっぱり現代のお金と比べると重たいな。お札とかはないだろうしなぁ。どのみち収納すれば関係ないけど。・・・

村から街に出る馬車に乗せてもらって街に戻る。

・・・今日のお昼と宿はどうしようかな。とりあえずギルドに行こう。・・・

大通りで馬車を降りてギルドへ行く前に屋台を見て回った。

「あっ、おばさん!昨日はありがとうございました。」

昨日ギルドへの道を教えてくれた果物売りのおばさんがいた。

「おや、変な格好のお兄さんじゃないかい。ギルドには行けたみたいだね。よかった、よかった。何か買って行くかい?」

「それじゃお言葉に甘えさせてそのリンゴを一つください。」

見た感じ色が良くて甘そうに見えたリンゴを指差した。

「あいよ。銅貨2枚だよ。」

・・・さてと、銅貨もあるけど、銀貨で払ってその価値を確かめよう。・・・

「すいません、銀貨1枚でお願いします。」

「おや?ちょっと面倒だね。」

おばさんはそう言いながら、ジャラジャラと銅貨を数え始めた。

「はい、お釣りの銅貨13枚だよ。しっかり確認しな。」

「……大丈夫です。ありがとうございました。」

銅貨を一時的に腰のダンプポーチに放り込んでリンゴ片手に別れを告げた。

・・・銀貨1枚で銅貨15枚かぁ。ちょっとキリが悪いな。・・・

そう思いながらリンゴをかじる。

「おっ、甘い。いいね。」

リンゴの甘さに唸りながらギルドへと向かう勇輝だった。

 

 

ギルド前に到着する頃にはリンゴを食べ終えていた。

正面の扉を開けて受付に向かう。

「こんにちは、依頼達成の報告に来ました。」

「あら、こんにちは。ゴブリン6体討伐の依頼でしたね。ご苦労様です。」

勇輝はポーチから村長の証明書を出して受付の人に渡した。

「この証明書にも書いてありますけど、ゴブリンは依頼内容の倍の数がいましたよ。てっきり6体だと思っていましたのです驚きましたよ。」

ちょっと大げさに苦労したというアピールをする。

「そうでしたか…、こちらの情報に誤りがあったようなので追加の報酬をお出しします。ご迷惑をおかけしました。」

「まあ、なんとかなったので気にしませんよ。他の群れが合流でもしたのかもしれないですし、仕方ないと思いますので。」

「今後は情報の信憑性をもっとしっかり確認します。………こちらが追加報酬になります。」

受付のお姉さんはカウンターの下から報酬が入った袋を取り出してカウンターに置いた。

・・・ふぅ、村で貰った報酬よりちょっと重たいな。謝罪も含まれてるのかな。・・・

勇輝は袋を受け取った後、思い立ったように尋ねた。

「あの、この街で手頃な宿ってどこかありますか?」

「手頃ですか…。それならギルドを出て左の方に少し歩いたところにいいとこがありますよ。[猫の月]という宿です。悪い評判は聞きませんし、ご飯が美味しいと有名です。」

「ありがとうございます。」

勇輝は受付を離れて外に出ようとした。

「あっ!待ってください!最後に伝えることがあります。」

「どうしたんですか?」

「ギルドカードのランクの更新をするのでカードの提出をお願いします。勇輝さんが達成した依頼はDランクなのであなたのランクがEからDになります。」

「ああ、そうでしたね。それではお願いします。」

士官学校でも使っていた身分証ケースに入れてあったギルドカードを取り出して手渡した。

身分証ケースは勇輝の胸ポケットにチェーンでしっかり縛着されていて士官学校の身分証とマイナンバーカードも入っている。

「確かに受け取りました。すぐ終わるので少々お待ちください。」

お姉さんがカードを持ってカウンターの奥に行き、5分くらいして戻って来た。

「お待たせしました。これであなたはランクDに昇格しました。この調子でどんどん頑張ってくださいね。」

「ありがとうございます。頑張りますよ。」

勇輝は今度こそギルドを出て[猫の月]へと向かった。

 

 

・・・まだギルド正面の大通り以外は見たことがないからいろいろ散策しようかな。・・・

ギルドを出て左に歩くと大通りと違って屋台ではなくしっかりとした店舗が並んでいた。

雑貨屋や服飾店をざっと見ながら歩いていると、ある店の前で足を止めた。

・・・武器屋だ。ちょっと見ていこう。・・・

店には剣や槍、斧などが展示されていて誰もサビ一つない。

「すいませーん。だれかいますかー?」

店の奥に呼び掛けると店主と思われる青年が出て来た。

筋肉質でガタイがいいがたぶん同年代だ。

「おう、呼んだか。何か用か?」

「いや、ちょっと聞きたいことがあるんですよ。ここの武器ってあなたが作ったんですか?かなり立派ですね。」

勇輝は店の武器を見回しながら言った。

「悪いが俺は売ってるだけなんだ。ここの武器は向かい側の家のジジイが打ったものだ。ジジイが打ったものを俺が売ってるんだ。あのジジイは腕はいいんだけど店をやるには頑固すぎるんだ。」

「そうなんですか。ありがとうございました。」

「あんた、ジジイのところに行くのか?やめといた方がいいぞ。」

「まあ、ダメ元でなので別に構いませんよ。」

そう言って向かいの家に向かった。

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