士官候補生の異世界漂流   作:サイレントグラス

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鍛治師

「ごめん下さーい。だれかいませんか?」

勇輝は扉を叩く。

「さっきからうるさいぞ。この前武器を納品したろう。………ん?誰じゃお前さん。」

しゃがれた声を出しながら頭と髭が真っ白の老人が扉を開けて出て来た。

高齢のためか腰が曲がっていて、162cmという低身長の勇輝より少し背が低い。

「失礼しました。私は永遠勇輝というものです。あちらの武器屋に置いてある武器はあなたが作ったんですよね?ちょっとお話をしたいのですが。よろしいですか?」

「なんじゃ、突然やって来て。儂は忙しいじゃ。出直すんじゃな。」

老人は面倒くさそうに家の奥に行こうとしていた。

・・・確かに頑固そうだな。こういったタイプの人はひたすら自分の仕事に熱心なタイプ……というかそれ以外興味が薄い。それなら。・・・

「待って下さい!あなたの腕を見込んで見てもらいたいものがあるんです!」

勇輝がさがるように言うと、老人の動きが止まった。

「ほう、いったいどんなものじゃ?つまんなかったら承知せんぞ。」

ゆっくりと振り返って老人は戻って来た。

「仕方ない…中に入りな。茶は出せんぞ。」

「お気遣い結構です。お邪魔します。」

 

 

勇輝はテーブルと椅子のある部屋に案内されて座った。

家の中はお世辞にもきれいとは言えず、工具らしき物や書き殴りのメモがたくさん散らかっている。

目の前のテーブルはかろうじて肘をつけられる。

「それで見せたいものってなんじゃ。」

「それは……これです。」

そう言って勇輝はあのサーベルを取り出して老人に見せた。

サーベルを見せた途端に老人は目を見開いた。

「お前さん!ちょっと触らせてくれんか。」

勇輝が了承するよりも早く引ったくるようにサーベルを取った。

「装飾が凝ってるのぉ。そんなことはどうでもいい、なんだこの軽さは。レイピアに匹敵するぞ!」

老人がサーベルを抜いて刀身を見てまた驚いた。

「なんじゃ?刃がついとらんじゃないか。それにしてもこの刀身はどんな金属でできているんじゃ?」

・・・この世界には合金が普及してないのかな。・・・

「えーと、確か鉄と鉛を混ぜた物だったと思います。他にもあったかもしれないですが。お爺さん、これを戦えるようにすることはできますか?」

「これは無理じゃな。儂のことはヘトスと呼べ。刃を付けたところで強度が足りん。それよりもこの剣を譲ってはくれないか?この金属を調べたい。」

「駄目ですかぁ、それなら別に構いませんよ。ただ、頼みを聞いていただきたいです。」

「頼みってなんじゃ?」

ヘトスはサーベルが気になるのかそわそわしている。

「まずはこの剣と同じ見た目で戦いに使えるものを作って欲しいことです。それから……。」

そういうと勇輝は弾帯に付けているM1の銃剣と64式、89式の銃剣を取り出してテーブルに置いた。

「これらにも刃をつけて十分な切れ味を与えて欲しいのです。」

ヘトスが銃剣を興味深そうに見る。

「これまた変わった短剣じゃな。これも刃がついとらんのか。アンタ戦う気があるのか。まあこいつは使えそうじゃな。」

「そうですか。なら受けていただけますか?」

「刃を付けるのはすぐに終わるが、剣は何日かかかるぞ。腕がなるわい。さっさと終わらせてあの金属を調べたいしの。」

「交渉成立ですね。完成したら、私はこの先の[猫の月]に滞在する予定なのでそちらに知らせてください。」

「おう、任せとけ!終わったらファイに持ってかせる。………ああ、ファイは店をやってるガキのことよ。」

・・・あの店の人、ファイっていうのか。とりあえずこれで近接武器はなんとかなりそうだな。・・・

「それでは、ヘトスさん、よろしくお願いします。」

そう言って勇輝は軽い足取りで家を出て宿を探した。

 

 

宿屋[猫の月]はヘトスさんの家のすぐ近くにあった。

・・・見た感じは悪くなさそうだな。

宿の扉を開けるとカランカランと小さなベルが鳴った。

「ハーイ、今行くよー。あら、お客さんかい?」

店の奥から恰幅のいいおばさんが出てきた。

「あのー、一週間の宿を取りたいのですが、あとお昼もいただけませんか?」

「一週間だね。それなら宿での食事代も含めて銀貨4枚だよ。ただ、今日のお昼はさっき終わったから残り物になるけどいいかい?」

「4枚ですね。……どうぞ。お昼はそれで構いませんよ。」

弾帯に脱落防止の金具を介して取り付けていた袋から銀貨を取り出しておばさんに渡す。

「それじゃあ用意するから向こうの食堂で待ってな。娘に持ってかせるから。」

「わかりました。」

勇輝は食堂に入って手頃なテーブルについた。

しばらくすると、若い女の子が皿を持ってやって来た。

多分勇輝より少し若い…高校生くらいか。

士官学校では見ることのできない長い金髪に整ったスタイルをしている。

「ハイハーイ!お待ちどーさん!ちょっと冷めてるけど、それでもお母さんの料理は美味しいって有名なんだよ!」

・・・何この子元気だな。うちの世界じゃあんまりこういう人はいなかったから新鮮だな。これが誰にも害のない無邪気な明るさというやつか。・・・

感心しているうちに目の前に皿が並べられた。

「それじゃあごゆっくりと。食べ終わったら声を掛けてくださーい。」

「ありがとう。……いただきます。」

さっそくスープをいただくと、確かに冷めているが、とても美味しい。

・・・この宿は当たりだな、ありがとう、受付のお姉さん。・・・

教えてくれたギルドの人に感謝しながら完食した。

「ごちそうさまでした。よろしくお願いします。」

「ハーイ。」

勇輝は席を立ち、自分の部屋に行った。

 

 

勇輝の部屋は2階にあり、中は掃除が行き届いている。

・・・いい感じだ。・・・

椅子ではなくベッドに腰掛けてしばらくぼーっとした。

・・・なんかここに来てからみんな優しいなぁ。いや、逆に今までが悪かっただけか?でも表面上の付き合いだけだからなぁ。とにかく閉じきった日本や、士官学校よりは全然マシだ。・・・

弾帯を外してベッドに寝っ転がる。

・・・それにしてもさっきの子可愛かったなぁ。………いやっ、何考えてんだ!深夜の酒とアンダー18ダメゼッタイ!・・・

一瞬の思考を去年の夏期休暇前に教官が言っていた言葉を持って振り払う。

・・・ギルドで依頼でも見てくるか。・・・

弾帯を装着してギルドに出発した。

 

 

・・・なんか手軽な依頼ないかなぁ?・・・

勇輝はギルドの掲示板の依頼書とにらめっこしていた。

「リザードマンの巣の殲滅…ダメだBランク以上だ。リッジウルフ4頭か…どうしよう。」

いつの間にか独り言まで言って迷っていると後ろから声を掛けられた。

「あのー……。」

「どうかしましたか?」

相手は杖を持ってベレー帽みたいな帽子を被った緑色の瞳の少女だった。

「もしよかったらこの依頼でパーティを組みませんか?ほかに誰もみつからなくて……。」

少女はおどおどしながら勇輝に依頼書を見せた。

「暴れイノシシの退治…デカくて手がつけられないのか。ランクもDだしたいして難しくなさそうだな。………失礼ですが、あなた年は?」

「じゅ、16です…。」

・・・緊張でもしてるのかな?僕みたいに駆け出しなのか。それにしても結構年下か。ちょっと心配だな。・・・

「そうですか。私でよけれご一緒しましょう。ちょうど手頃な依頼を探していたので。」

勇輝がそう言うと少女の顔が少し明るくなった。

「本当ですかっ!ありがとうございます!私はカナといいます。よろしくお願いします!」

そう元気に話した。

・・・一気に元気になったな。いいことだ。笑っている方が可愛い。いやだからなんでそうなるんだ!・・・

「…ゴホン、私は勇輝です。こちらこそよろしくお願いします。」

そしてお互いにギルドカードを交換した。

パーティを組むときはこうするらしい。

「4つも年上なんですね。…このじゅうっていう武器はなんですか?」

・・・あれ?もしかしてあまり離れてないと思われてた?…まあ気にしないでおこう。身長ばかりはどうしようもない。・・・

「私の魔道具の類だと思ってください。それは後でお見せします。」

カナのギルドカードを見ると武器は魔法の杖、種族は獣人と書いてあった。

・・・獣人?てっきりヒトだと思ってた。・・・

「勇輝さん、ヒトだったんですね…。帽子を被っていたので耳を隠していると思ってました。」

「それは失礼しました。…あれっ?私の耳帽子とか関係なく出てますよ。」

そう言って勇輝は自分の耳に指を指す。

「すっ、すいません!帽子ばかりを見ていたばっかりに…。」

「いえ、別に気にしませんよ。もしよかったら帽子を取ってくれませんか?」

勇輝は作業帽を取って髪を触るとそう言った。

「ここでですか?うぅー…分かりました。」

カナは恥ずかしそうに帽子を取るとくりいろの髪と同じ色の犬のような耳がぴょこっと立っていた。

しかしその耳はすぐに倒れてしまった。

どうやら恥ずかしいと倒れるらしい。

「も、もういいですか?」

泣きそうな声で言ってきたので申し訳なくなった。

「ごめんなさい。もう大丈夫です。」

ちょっと涙目になっていたカナが素早く帽子を被った。

「それでは気をとり直して行きましょうか。」

「は、はい!」

勇輝が受付で依頼の参加手続きを済ませて言うとカナがついてきた。

・・・なんか可愛いな。あれが本物のケモ耳かぁ……いかんいかん!アンダー18だから!・・・

もやもやした気持ちをなんとか押さえつけて出発した。

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