ごちうさに男性アルバイトを放り込んでみる   作:rinta

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文の量より更新速度を取る勇気。


客としてきた女子高生がそのお店の下宿生である可能性を探れ。ただしその店には不思議なうさぎがいるものとする

 

「あー暇だなぁ」

 

 

ある日の昼下がり。いやある日などつけなくともここ最近毎日言っている口癖を店の天井へと言い放つ。

 

 

「バイトさん、サボらないでください」

 

 

「そのバイトさんって言うのいい加減やめないですかチノちゃん」

 

 

カウンターで雑誌片手にぼやく俺に、この店のオーナーの娘にして、銀髪で長髪なちっこい中学生の女の子、チノちゃんが冷めた視線を送ってくる。さらに言うとそのチノちゃんの上に乗っかっているアンゴラウサギのティッピー(笑)も俺に対し怒気を含めた視線を送ってくるが、どちらもその愛くるしい見た目のせいで全く迫力がない。

 

 

「いつでもお客さんをお迎えできる準備でいることが大切だって、おじいちゃんも言っていました」

 

 

チノちゃんは胸を張って言うが、いかんせん発展途上なためまたも迫力不足である。あと頭の上のウサギは力強く頷いてんじゃないよ。顎の下撫でて威厳もなにも無くさせるぞこのジジイ。

 

 

「まぁその心構えも大事だと思うよ。でもねチノちゃん。それでも俺はこの一時間のうちに客が一人も来ていない事実はどうやっても覆せないと思うんだ」

 

 

俺の言葉にチノちゃんはウグッ、と言葉を詰まらせる。いやまぁ仕方ないんだけどね。タカヒロさんのおかげで店自体の経営は持ち直したけど、それも夜の営業のおかげだ。いまでも昼の営業の方は昼飯時を過ぎるとパッタリと客足が途切れる事が多い。まぁ、全く客が来ないということでもないから俺みたいにだらけすぎるのもどうかと思うが、しかし今みたいに暇な時は暇なのだから仕方がない。

 

そんな益対もないことを考えていると、チノちゃんがさきほどよりも冷めた目で俺を見ていることに気づいた。

 

 

「...全く。あなたの作るコーヒーはあんなに美味しいのに、なんであなた本人はそんなにグータラなんですか」

 

 

「昔はもっとしっかりとして素直な若者だったのにのう...」

 

 

なにやら一人と一匹に軽蔑されたようだ。だがウサギは当たり前のようにダンディな声で喋るな雑技団に売り飛ばすぞ。

 

 

「まあまあ、コーヒー飲む?」

 

 

「またそうやってごまかして...いただきますけど」

 

 

チノちゃんは不服そうな顔をしたままだが、コーヒーの誘惑に勝てなかったらしくカウンターの方へと寄ってきた。じいs...ウサギも飲むらしくチノちゃんの頭から降りている。

 

...前から疑問だったんだがウサギってコーヒー飲んでいいのか? まぁ本人飲みたがってるからいいか。というかどうでもいいな、うん。

 

 

「そういえば、そろそろリゼさんがやってきますね」

 

 

コーヒーが出来上がるのを待ちながらチノちゃんがふとつぶやく。時計を見ると時刻は天々座が入るシフトの15分前だった。タイミングもいいし彼女の分も用意すると扉のベルが鳴った。噂をすればなんとやらだ。

 

 

「おはよう。すまない、少し遅れてしまって」

 

 

店の扉から現れたのは、チノちゃんよりも色んな所が大人びた、長髪を二つ結びにしている女の子、俺と同じくこの店でバイトしている天々座理世だった。

 

 

「全く問題ないですよ、リゼさん。全然遅れてないです」

 

 

「いや、軍ではが30分前行動が原則だからな。謝罪させてくれ」

 

 

「ここは軍じゃないですリゼさん」

 

 

まだシフト時間前だというのに律儀に謝る天々座に、ふと昔の常連客を思い出す。そういえば天々座の通う学校はあいつと同じところだっけ...っとダメだな。油断するとアイツのこと考えてるな。悪くはないが、あんまり気にしすぎてるとさすがに気持ち悪い。

 

そんなことを考えている間に天々座が更衣室へと向かおうとしていたため、その背中へ声を掛ける。

 

 

「コーヒーあるぞ。着替える前に飲んでけ」

 

 

「ありがとう。でもどうした? またサボりを怒られたのか」

 

 

「うるせ。さっさと席座れ」

 

 

ほくそ笑みながら軽口を言う天々座を睨みながらカウンターへ促す。

 

以前からチノちゃんに怒られたらコーヒーで宥めることを多用していたからか、最近はコーヒー淹れるといつもこうだ。もう天々座の分を用意するのやめようかと思ったが、なにげに美味そうに飲んでくれるから止められない。なんか餌付けしてるみたいで楽しいし。

 

そんでコーヒーが出来上がったので、いざ二人と一匹に振る舞う。チノちゃんと天々座は普通にカップを手にとってコーヒーを味わっているが、ウサギに関しては手がないため俺が飲ませている。意味分からん。20代後半のフリーターがウサギにコーヒーを飲ませているこの絵になんの需要があるのだろうか。えっ、何? 俺得?お前得だけだよちくしょう。

 

 

「やっぱりあなたの作るコーヒーは奥深いですね。私には出せない味です」

 

 

「確かに。一体どんな淹れ方したらこの味が出せるんだ...?」

 

 

「嬉しい事言ってくれるな―。でもチノちゃんがミルクと砂糖入れてくれなかったらもっと嬉しいかも」

 

 

「それはっ!...別にいいでしょう...」

 

 

二人があまりにもコーヒーを褒めてくれるので、照れ隠しでチノちゃんをからかったら怒られてしまった。まぁ大人でもコーヒー飲めない人はいるので何も恥ずかしがることはない。でもバリスタ目指すんならもうそろそろ卒業しないとなぁ。

 

と、ふと天々座が席を立った。時計を見ると彼女のシフトの時間だったのだ。

 

 

「ん、そろそろ着替えないとな。コーヒーごちそうさま。美味しかったぞ」

 

 

「おう、お粗末さま。急がんでいいぞ」

 

 

ああ、と天々座は小さく返し、店の奥へと引っ込んだ。

 

チノちゃんもコーヒーを飲み終えたらしく、こちらにカップを渡しお礼を言ってくれる。こういうときに接客業のやりがいというものを感じる。相手客じゃないけど。

 

 

「小僧、今回のはまあまあじゃな。改善点はたくさんあるが」

 

 

「ウサギが喋るな」

 

 

なんだかウサギが喋ったような幻覚と幻聴が聞こえたので、とりあえず一言で一蹴し使ったコップの後片付けを行う。背後ではまたもウサギが騒いでいる幻聴が聞こえるが、まぁチノちゃんがなんとか宥めてくれるだろう。

 

 

と、そこに別の音が紛れ込んだ。聞き慣れた、この喫茶店の扉のベルの音だった。

 

 

「あっ...」

 

 

チノちゃんがその音に気づきすぐに接客の準備をする。そして...

 

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 

 

持っているお盆で顔を少し隠した、人見知りの子の、精一杯の挨拶が店内に響いた。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

チノちゃんに続いて俺もお客さんに挨拶をする。チノちゃんに釣られるように、というより、あんな子が頑張っているのに俺がサボるわけにはいかないっていうただのつまらない自尊心だが。

 

さて、そのお客だけど、一体どんなお客だろうか...

 

 

「うっさぎー♪ うっさぎー♪」

 

 

ん?

 

 

「うさぎがいない...」

 

 

なんて?

 

 

「うさぎがいない...っ」

 

 

えっ?

 

 

「うさぎがいない!!」

 

 

ほう...。

 

 

「「……………」」

 

 

 

 

なんだこの客。

 

 




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