ヒロインが全員ヤンデレなサノバウィッチ   作:タキオンのモルモット

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前回、黒い琥珀の記憶とか書いたんだけど判らない人が居たようなので補足説明。

黒い琥珀の記憶(メモリー•オブ•ジェット)はジョジョの奇妙な冒険第四部の小説版に出たスタンドで、自分の指定した範囲内に誰一人近づけさせないという能力があります。

その位病んでるんです。


1-2 ヤンデレの基本技能は盗聴

「………………あ?」

 

思わず声が漏れてしまった、危ない危ない。

 

危うくセンパイにも気づかれるところだった。

 

それにしてもあのビッチは何を言っているのでしょうか?前世だとか何だとか……前世なんてものがあったとしてもセンパイは私と結ばれてるに決まっているのに……。

 

 

「しかし何となくセンパイが何かを隠しているのは察していましたが………五感で感情を感じ取れる……それは確かに、幾ら私でも話せませんよねぇ……」

 

うんうん、と頷き、少女は歩き出す。

 

「まあ、その点は許してあげましょう、私は寛大なので!!」

 

保科柊史と一度しか───それもたった数十秒話した事があるだけの少女、因幡めぐるは晴れやかな笑顔でそう言った。

 

「……それにしてもこのシチュエーション使えますね……良い計画を思いつきました❤」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、今日は綾地さんの謎宣言を聞いてその後、前世の話を、「皆に祝福されたカップルだった」とか「部室の中を砂糖まみれにした」とか延々と、しかし必死に、語られて直ぐ帰宅……序でに鍵を取りに来た先生に入部届を(綾地さんが)受け取り俺に笑顔で渡してきた。

 

成る程、入らなきゃバラす、と。中々に有効的な脅しだ。

 

物凄く嫌なんだがな、この能力。何が悲しくて冷蔵庫で冷やしたシチューを味わなきゃいかんのだ。

 

と、そんなことを思っていると前から人影がこちらへ小走りで向かってきた。あれは─────

 

「仮屋?」

 

「おっす保科、今帰り?」

 

「ああ……そうだけど……お前はバイト帰りか?」

 

「うん、今日はちょっと早めに終わったんだ。……そうだ、保科、めすぶ……じゃない、綾地さんの用事って何だったの?」

 

「ん?あー……」

 

さて、どう伝えたものか。

 

前世の記憶が云々とかいって告白されました、とか言ったところで笑われるのは間違いないし……入部することになってしまったことをそれとなく伝えるしか無いのだろうか……

 

「……保科、言いにくいなら言わなくても大丈夫だよ?友達だからってそんな言わなきゃならないって訳じゃ無いんだから……そんな顰めっ面して悩まなくても」

 

「……っ」

 

友達。その単語が、今日の会話を思い出させる。

 

 

『もしかしたら……今の親友も失うかもしれませんね……?』

 

……仮屋は、俺の秘密を知ったらどんな反応をするんだろうか。表面上は慰めてくれるだろう。

 

だが、それでも、今までと変わらずに友達と言ってくれるのか─────突然、そんな事が頭をよぎる。

 

そんな俺の顔を見た仮屋はいつになく真剣な顔をして

 

「……保科、何があってそんな辛い顔をしているのかは知らないけど────」

 

そこで区切って、彼女は笑顔で

 

 

─────私はどんなことがあっても、保科の味方だよ

 

 

嘘を吐いた時特有の薬の味がしない、完全なる本心で、仮屋和奏はそう言ってくれた。

 

仮屋なら、仮屋なら信じてもいい、そう心から思った。

 

「……仮屋、話……聞いてくれるか……」

 

「うん、それじゃあ取り敢えず移動しようか」

 

そう言って仮屋は俺の手を取って、足早に、途中走って、移動しはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……以上が今日起きた事の全てだ」

 

「うん……え?マジで?」

 

近くの公園、辺りは少し暗くなり、人の影はなく、話すのにはもってこいだった。かなり電波な話だから人気のない場所を選択したが本当に良かった。

 

「……保科の能力についても、まあ判った、そりゃ言うのアレだけ躊躇った気持ちもわかるよ……辛かったんだね………でもごめん、ぶっちゃけ綾地さんの前世発言のせいで大して驚けない」

 

「………なんていうか、信じてくれるんだな」

 

「というよりは寧ろ納得がいったって感じかな?だから綾地さんは一年の頃からずっと保科の事を目で追ってたんだなぁって………何時思い出すのかずっと待ってたわけだ。そういう設定だったわけだ………保科の能力自体の事に関しては小学校の頃同じクラスだったのずっと覚えてたから……その様子を思い出せて、それで納得いったって感じ。それに……」

 

「……?」

 

「保科は嘘をつかないって信用してるからね」

 

それは嘘も何もない、本心から来る言葉だった。

 

「それに仮にこれが保科の嘘だとしたら『そこまで女に飢えてるんだなぁ』って一生からかうだけだから!!」

 

「うん、その言葉が無ければ良かったんだけどなぁ」

 

全部台無しにしやがって、嫌いじゃないけど。

 

「まあそれは置いておいて………かなりやばいね。取り敢えず保科は大人しくオカルト研究部に入った方が良いと思う。私や……多分海道も戯れ言と聞き流せるけど他の皆はそうはいかないし……何より能力の性質的にキツいでしょ」

 

「ああ、それは承知してる。入らなきゃならないことは。」

 

それはもう仕方が無い。あの脅しは俺の精神だけじゃない、体調にもダイレクトにダメージを与える。それを回避するためにはしょうがない。

 

「問題はその後だよね……ずっと二人きりだと何時何されるか判らない……」

 

「……それは無いんじゃないかな」

 

「え?」

 

「いやさ、例えば前世で俺が綾地さんとイチャイチャしながら二人きりでオカルト研究部回してたならそこをもっと強調する筈だと思うし、何より部活として成立しない」

 

「あー、そうか。確かに二人じゃ成立しないよね」

 

「今日前世の設定を長々と語っていたときも「部室の中を砂糖まみれにした」とか言ってたが、その表現は他人がいないと成り立たない、つまり何人か人を入れるつもりではあるということだ。」

 

「……そうなると綾地さんに全面の信頼を置ける人……もしくは設定に基づいて入れることになるけど……」

 

「残念ながらメンバーの名前までは言ってなかった……」

 

「うーん……そうか……」

 

「……まあここは今考えても仕方ない。置いておこう」

 

「……まあそうだね、でも保科、暫く気をつけた方が良いよ、特に……家とか」

 

「?家?」

 

やけに神妙な面持ちで仮屋はそう呟いた。

 

「……というより放課後かな……?さっきここまで来るときに私途中で走ったでしょ?」

 

「そういや……」

 

「あの時、気のせいかもしれないけど、綾地さんらしき人を一瞬見かけたんだ」

 

「……つまり尾行されてた?」

 

「多分……」

 

「……あれ?前世で付き合ってたのに俺の家知らないの?って突っ込みたい」

 

「そういえば綾地さん一人暮らししてるらしいよ」

 

「……成る程、設定の逃げ道はあるのか……じゃねえ、マジかよ……尾行されてるの……?」

 

「……体調管理も気をつけた方が良いね、同じ部活の仲間だから心配、とでも言えば幾らでも知ることは出来そうだし……綾地さん表向きは優等生だからなぁ」

 

「うっへえマジかぁ……今は大丈夫そうだが……」

 

「そりゃ撒いたからね……ふふふ、保科は忘れているだろうけど事逃走に関しては得意分野だよ、鬼ごっこで捕まったことないもん」

 

どや、と無い胸を張る仮屋。そうなのか、まあそれのお陰で助かったんだ、ここは礼を言って─────

 

「今私の胸が無いって思ったなー?」

 

「そそそそそ、その様なことあろう筈がございません」

 

「嘘だっ、今目が語ってたもん!!私だってBはあるからな!!」

 

「そんなこと暴露しなくていいわ!!すいませんでした!!」

 

「やっぱり思ってたんじゃんかー!!」

 

 

 

閑話休題

 

「……まあ、取り敢えず対策立てようにも立てらんないけど、ストーカーしてたっぽいから、家のセキュリティとか気をつけた方が良いかもね、不法侵入まではしないと思うけど……」

 

「……例えば?」

 

「ベタだけど自分が最後に家を出るときに何かしら挟んでおくとか、自室のモノ全てにテープで印をつけておくとか」

 

「………成る程……参考になるなぁ……」

 

「まあ、漫画の受け売りだけど何もしないよりはマシだと思うよ?」

 

「そうだな……ありがとう仮屋、助かったよ」

 

いやはや、親友とは良いものだ。これだけで大分心が楽になった。

 

「私に出来ることがあれば何でもするさ……私はずっと保科の味方だよ、だから……無理しないで何かあったら私を頼ってね?」

 

「ああ……ありがとう……この恩は必ず返す」

 

「じゃあス◯バで」

 

「容赦ないなぁ別に良いけど!!」

 

と、まあそんなこんなで、巫山戯た後は、比較的心を軽くして帰ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふふふふ、ははっ、はははははははははははは!!ここまで、ここまで上手くいくなんて!!綾地寧々、お前のお陰で私は保科の……柊史の大切な存在になることが出来た!!はははっ、あははははははははははははははは!!」

 

自分以外が居なくなった公園で、仮屋和奏は大きな声で嗤った。

 

今日バイトへ行く前の事。仮屋和奏は保科柊史の上着のポケットの中にこっそりと、盗聴器を仕掛けた。その音声をこっそり聞いていたのだ。まあ、バイト先にあまり客が来なかったという偶然があったからこそ出来たことなのだが。

 

後は簡単だ、心が弱っているであろう保科柊史に、彼が望んでいるであろう言葉を言うだけ。

 

勿論、あの言葉は本心だった。仮屋和奏は永遠に保科柊史の味方であり、保科柊史を一ミリも疑わず、保科柊史という人間を愛し続けるだろう。だからこそ、保科柊史は感じ取れなかったのだ。だって嘘は言っていないから。

 

「ふふふ、後は綾地寧々の指紋とか手に入れば……盗聴器を綾地寧々のモノとして偽装してトドメを刺せるんだけど……まあ、まだ早いか、今日だけで大分リードは出来たし、ゆっくりと確実にやりますか!!」

 

保科柊史と自分自身の仲を裂く敵を社会的に抹殺しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保科柊史は父親に夕食を作り、部活に入ることになったというのを伝え、部屋に戻った。

 

帰り道、百均で買ってきたテープを仮屋に言われたとおり、目張りのように貼り付ける。

 

「………はぁ………これが普通の告白だったらまだ嬉しかったんだけどなぁ………まさか綾地さんが電波兼ストーカーだったなんて………」

 

まあ、普通にされたとしてもOKしていたかどうかは怪しいが。

 

そもそも苦手な人間に、冷たく当たることは無いだろうが、告白となると……悩む、とそんな感じの評価である。

 

「……あれ?」

 

そんなことを考えながらテープを貼り付けて、今、ゴミ箱に目張りを付けようとして、違和感を覚えた。

 

「……ゴミ箱の中身が……無い?」

 

おかしい、親父はそんなことを滅多にしないというより、俺の部屋に入ってくることは殆ど無い、それにこのゴミ箱の中身は紙ゴミ……棄てるにしたって曜日が違う。勿論、自分が処分した覚えも無い。

 

「………どうなってんだよ………」

 

底知れぬ恐怖を感じながら、彼は震えた手で今の所、唯一の味方に連絡を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く……まさかあの金髪の雌もセンパイのことを狙っていたなんて!!私がやる予定だったのに……!!」

 

自身の家の部屋で、因幡めぐるは叫び倒していた。

 

因幡めぐるの立てた計画は偶然にも、仮屋和奏が立てた計画と同じだった。保科柊史とコンタクトを取り、何食わぬ顔で親密になり、受け入れる。

 

時間はかかるがこれ以上のプランは他に無かった、と言える。だが、仮屋和奏に先を越された。

 

「……いや待てよ?センパイと私はほぼ初対面……今から仲良くなって……打ち解けておけば……少なくとも友人でも何でも無い後輩という立場はまだ使えますね……」

 

……どうやらまた何かを思いついたらしい。その顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「ふふふふふ……さーて、センパイの家から拝借した使用済みティッシュ……ふへ、ふへへへへへへへへ………」

 

そのティッシュと()()()()()()()()()()()を使い、彼女は一晩中、淫らな嬌声を上げていたそうだ。

 

 




めぐるちゃんがただの変態に……!!まあ後々ヤンデレになるからいいか。

保科柊史
多分寧々ちゃんに普通に告白されてたら受けてた。
最近鼻水が酷く、ティッシュの消費が激しい。

綾地寧々
前世に固執しすぎてチャンスをふいにしてしまっている。だが安心したまえ、まだまだこれからだ。
尚、盗聴器の類を買うお金がないらしく悩んでいる。

仮屋和奏
恐らく今作で一番策略家なヤンデレ。見事、柊史君の信用をもぎ取った。暫定的にメインヒロイン。
もうギターを買うお金は貯まっているが他に柊史君の為に色々買う予定なのでバイトは続ける模様。

因幡めぐる
過去のトラウマ、高校デビューの失敗で落ち込んでいたときに柊史君に堕とされ一目惚れ、その結果、超変態ストーカーに。センパイが居ないと生きていけない依存心を拗らせ、夏休みにがまんできなくなって始めてピッキングして不法侵入してカメラや盗聴器を取り付けティッシュや小物を回収し始めた。
本人曰く「鼻水でもセンパイのならなんでも興奮します」だそうです。


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