お隣さんは引きこもり!?   作:たけぽん

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4. どうしてこうなった

「なんかどっと疲れた……」

 

ベッドに倒れこみ、貰った小説を一つ手に取り読み始める。ジャンルはラブコメ。高校に入学した主人公がクセの強いヒロインたちと青春する、ありふれた内容だ。しかし、キャラクターの魅力が大きい。普通の事をしているだけでも、簡単に主人公に感情移入できる。他にも、情景描写がしっかりしていてキャラ達が見ている風景や状況が簡単に想像できる。

 

「これは、かなり面白いんじゃないのか?」

 

引きこもりの大学生が書いた小説ときくと駄作という先入観が生まれるが、それをはねのけるような面白さがある。優介はどんどんページをめくっていく。

 

「でもこれ、どこかで読んだような……」

 

内容というよりは文体やキャラの書き方に見覚えがある。だが、麻耶と会ったのは今日が初めて。それに知り合いが書いた小説を読むなんて事自体が初めてだ。

 

「気のせいだな。きっと」

 

ふと時計を見ると午後1時を回っていた。そろそろ昼ごはんを食べないと一日のバランスが崩れてしまう。

 

「冷蔵庫、何入れてたっけ」

 

そう思い冷蔵庫を開けると、あまりめぼしいものはなかった。せいぜい冷凍のドリアがあるくらいだろうか。だがこのドリアは隆盛が目をつけていたものだ。別に隆盛に気を使う必要なんて微塵もないのだが、冷凍食品ばかり食べていては栄養バランスが偏る。なので優介は近くのスーパーへ行くことにした。

 

上着を羽織り、部屋をでて鍵をかける。何を作ろうか考えていると摩耶の部屋から大きな音が鳴った。

 

「え?なに!?」

 

びっくりしながらもドアの前まで行きインターホンを鳴らす。

 

「お、おーい。摩耶?大丈夫かー?」

 

返事がない。ひょっとして体が弱かったりするのだろうか。1年も引きこもっていたのだから不思議な話でもない。慌ててポケットから鍵をだす。多少手間取りながらも扉をあける。

 

「摩耶!何があった!っておわあ!」

 

ドアを開けた矢先に何かが優介に覆いかぶさってきた。やわらかく、温い何かが。

 

「いてて……なんだ一体。って、ま、麻耶!何やってんだよ!」

「んー?あー優介……えへへなんでもないよー」

「なんでもない奴に押し倒されるなんて普通に考えてあり得ないだろ!い、いいから早くどけ!俺の理性が無事な内に!」

 

生まれてこのかた女子とここまで密着したことのない優介にとってこの状況はかなり問題だ。しかもがっちりと押さえ込まれていて、下手に動くと変なところに手が行ってしまいそうだ。それでもなんとか抜け出そうともがいていると摩耶の顔が赤くなっていることに気付いた。

 

「お前、もしかして酔ってる?」

 

午前中に手土産に持っていった酒を飲んだのだろうか。それにしたって少量でここまで酔いはしないだろう。とすると結構飲んだのだろうか。事によっては救急車を呼ばなくてはいけないかもしれない。

 

「どれくらい飲んだんだ?」

「えー?半分くらいかな」

「は、半分!?」

「一本の」

「脅かすなよ……」

 

予想に反して全く飲んでいなかった。単純にアルコールに耐性が無いだけのようだ。取りあえず救急車はいらないようだ。

 

「あはは、優介―なんか変な顔してるねー」

「俺はお前ほど変なやつを知らないけどね!」

 

なおも麻耶をどけようともがく優介だが、がっちりと押さえ込まれていてまったく身動きが取れない。そんな時別の扉が開く音がした。

 

「あのー、うるさいんですけど……!?」

 

開いた扉は103号室。悠里の部屋だった。いらいらした口調で話しかけてきたのもつかの間、優介たちの状況を見て絶句している。

 

「いや、まて天草!これはけしてお前が思っているような状況じゃない!というかちょっと手を貸してくれませんか!」

「さ」

「さ?」

「桜井の変態!最低!こ、こんな人目につくところで……馬鹿じゃないの!?」

「いや、これは偶発的な事故というか、俺だってこんなところでそんなことするわけないだろ!」

「ここじゃなきゃするの!?」

「し、しません!どこにいたってしません!」

「甲斐性なしだねー優介は」

「麻耶は少しだまっててくれるかな!?」

 

なんとか弁解しようと次の言葉を考えていると、急に悠里が静かになった。

 

「お、おい天草?」

「ゆ、優介にま、麻耶って……やっぱりそういうことなんだ……」

 

どうやら麻耶の発言で火に油を注いでしまったようだ。確かに、女子を苗字で呼ぶことが多い優介が名前で呼んでいるこの状況ははたからみると普通じゃない。

 

「い、いやこれはちがくて――」

「わわわわっすれもの~♪優介のうちにわっすれもの……!?」

 

優介の言葉の途中で今度はあろう事か隆盛がやってきた。悠里同様状況をみて絶句している。

 

「い、いやまて隆盛!これには深い訳が!ってかなにこの状況!?漫画かよ!」

「ほう?どういう訳があるのか詳しく聞こうかな、裏切り者君?」

 

隆盛の表情にはいつものへらへらした様子は一切ない。それどころかものすごく蔑んだ目で優介を見ている。

 

「そうだよ、どういう訳かちゃんと説明しなさいよ桜井!」

「わ、わかったから!説明するから!まずはこいつをどけるの手伝ってくれ!」

「ぐう」

 

優介たちをよそに、麻耶は夢の世界へと旅立っていた。

 

「なんでこの状況で寝られるんだお前は!」

 

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