ポケットモンスター 夢のカケラを追いかけて 作:からんBit
御言アキはミアレシティの病院のベッドで目を覚ました。
モゾモゾと布団から這い出し。カーテンをわずかに開けて窓の外を見れば、朝焼けが東の空に赤い光を残している。まだヤヤコマも寝ている時間ではあるが、アキにとってはもう起床時間だ。白いシーツに包まれた固めの布団から身体を起こし、寝ぐせのついたままの髪を手櫛で軽く整えた。
ふと、その拍子に髪が一本引き抜けた。
朝日に照らされた赤毛。
それを見て、アキは嫌なことを思い出した。
「はぁ……」
重苦しいため息を吐き、もう一度ベッドに横たわる
脳裏に浮かんでいたのは治療のために一番強い薬を使っていた時のことだ。
薬の副作用が酷くて。髪が抜けたことがあった。体中の毛という毛が全て抜け落ち、スキンヘッドにまでなった。ニットの帽子を常に被り。カツラをつける生活を余儀なくされた。ただ、元々が赤毛だったせいもあり黒髪のカツラの違和感が酷いのだ。タクミはそのことを笑ったりはしなかったが、自分自身の姿が醜くなったという感覚はどうしても消えなかった。
「……あぁ、もう、なんでだろ……」
カロス地方にきて、手術を乗り越え、ポケモンハイスクールのオンライン授業を受け出してから早2週間。
なぜか最近、病気が一番辛かった時期のことをよく思い出す。
傷の状態も順調に進み、退院の日程をそろそろ決めようかという話になっている。
なのに、アキは日に日に自分の心が不安定になっていくのを感じていた。
退院したら、本格的に学校に通うことになる。そこに不安があるのだろうか。
それもゼロではない。ゼロでは無いが真の理由ではない。
本当の理由はアキ自身が一番よくわかっていた。
「…………どうなるの……かな……」
切り取った病気の検査結果が出たと昨日主治医から教えられた。
そも説明が今日の夕方からある。
『完治』という言葉。それが、アキの心を重くしていた。
物心ついてすぐの頃から付き合ってきた病気だった。
足が痛くて走れなくなり、歩けなくなり、立てなくなった。
この病気が発覚した頃はそんなに深刻には考えていなかった。それが1年経ち、2年経ち、病気は悪くなる一方で強い薬の副作用で苦しむ日々だった。
『この薬ならよくなる』
『この治療法なら痛みが和らぐ』
『順調に行けば6か月ぐらいで軽くなる』
そう言った期待の言葉はことごとく裏切られてきた。
大人の言葉を信用できず、1人で苦痛に耐え続け、このまま死んでしまうんじゃないかと絶望していた。
病気そのものは切除してしまったものの、心に刻まれたトラウマはそう簡単に消えてはくれない。
また、裏切られるかもしれないという不安が黒い淀みのように胸の奥でわだかまり続けていた。
アキは戸棚の上に置いてあるホロキャスターに手を伸ばした。
スマホのように小型化されているホロキャスターから『メッセージ』のアプリを呼び出す。アプリを起動すると、一番上にタクミとミネジュン、マカナの入ったグループが表示されていた。
ミネジュンからはポケモンをゲットするたびに写真が送られてくる。
マカナは日常のどうでも良さそうな呟きが流れてくる。
タクミはあんまりメッセージを残してくれないが、1回1回が丁寧に言葉を綴ってくれているのがわかる。
「………」
アキはその画面を数秒見つめ、画面を暗転させてしまう。
タクミ達は今もこのカロス地方のどこかで野宿をして、朝の空気を吸っているに違いなかった。
そんな彼等の気分に水を差すようなことを言いたくはなかった。
しばらくすると、朝の検査の為に看護師さんがやってきて腕から血を採って帰っていく。
昔はよく泣いていた採血も今となっては毎日でも平気だ。別に痛いのが好きというわけではないのだが、泣いても喚いても検査は絶対にやらなくてはいけない身体なので、抵抗しない方が楽なのだと気が付いたのだ。
パン主体の朝食をほぼ無心となって食べ終え、歯を磨いて顔をおしぼりで拭い、寝癖を本格的に整えた。左脚は今日も包帯でぐるぐる巻きにされているが、少しずつ保護しているガーゼの量は減ってきている。切り落とした足の先に義足が付くのはまだ先の話になるが、それでも快方に向かっているのは間違いなかった。
それから、ベッドの上でもぞもぞと着替える。今日は白のTシャツとサロペットスカートの組み合わせ。
なんとなく画家のような気分になりながら、アキは看護師を呼んで車椅子に乗せてもらった。
本当は一人でも移れるのだが、介助してもらえるならそちらの方がいい。
アキはリュックを背負い、ホロキャスターをポケットに突っ込み、「よしっ」と気合をいれる。
今日はポケモンハイスクールでの授業に直接出席する。座学だけならweb授業で単位を得られるのだが、実技となるとそうもいかない。
そして、今日は本格的なポケモンバトルの講義が行われる。タクミ以外とのはじめてのバトルだ。
今日は色々なことがある。色々なことが決まる。
病院からポケモンハイスクールまではせいぜい3ブロック先で、大した距離もない。
だが、ずっとベッドの上にしか居場所のなかったアキにとってそれは広い世界へと出ていくことに他ならなかった。
タクミ達の『地方旅』と同じように、アキの『旅』も今日ここから始まるのだ。
そうやって、気合を入れて病室を後にした直後だった。
「アキ、今日は体調大丈夫?授業受けれそう?」
「アキ!迎えに来たヨ~」
母とミーナが既にナースステーションで待っており、タクミ達のように『独り立ち』というわけにはいかなかった。
「お母さん、私1人で行くって言ったでしょ」
「もちろん。でも、見送りくらいいいでしょ。吐き気はない?トイレは行った?ハンカチ持った?」
「お母さん!!」
小学1年生じゃあるまいし。しかも、今は友人のミーナの目の前なのだ。アキは耳まで真っ赤にして声を張り上げた。
「はいはい。でも、気をつけてね」
「わかってる。ミーナ、行こ」
「OK!車椅子握った方がいい?」
「うーん……」
アキは一瞬思考をめぐらせる。
「いや、いいよ。自分で押していく」
「そう?疲れたら言ってね。すぐに押してあげるから」
「ありがとう」
アキはそう言って車椅子の車輪の外側についている持ち手を握った。
廊下を進み、エレベーターに乗り込み、診療でごった返すロビーを抜ける。
車が行き交うカロスの町。
アキは天井より遥かに高い青空を見上げて、目を細めた。
外の世界はアキにとっていつも光が強くて眩しい。
「アキ?どうかした?」
「ううん、なんでもない。行こっか」
アキはミーナに適当に話題を振りながらポケモンスクールへと向かった。
ポケモンスクールは円形のミアレシティの外側に位置していた。
地球界で言うところのゴシック建築に似た様式の建物だ。ミアレシティのポケモンスクールの歴史は古く、遡ればポケモントレーナーが『ナイト』と呼ばれていた時代にまで記述があるという。建物自体は長い歴史の中で何度も改修工事を行なっており、古びた外装とは裏腹にその中身は最新の設備を取り揃えたカロス地方有数の教育施設だ。
本棟の中には500人は入れる巨大な講堂から、50人単位の小さな教室まであり、様々な授業体系に対応できるようになっている。屋内バトルコートを15面、屋外バトルコートを30面も取り揃えており、それに加えて芝生や巨大水槽などの特殊なバトルフィールドまである。もちろんバトルに関する施設だけではなく、ブリーダーやコーディネーターの為の教室や、果ては大学進学の為の勉強部屋まである。
まさにポケモントレーナーに必要な全てが取り揃えられている場所だった。
アキもここには何度か来ているのだが、今だにキャンパスを歩くだけで気圧されたような気分になる。
『うう……学校か……学校……』
そもそも、アキはこうも不特定多数の人間が大勢集まる場所というところに来たことがなかった。
病院内は人口密度的には高い場所かもしれないが、病棟にいる限りだとほとんど人の出入りはなく、大勢の人間がいることを意識することは少ない。
アキは何度か大きく息を吸い込んで緊張をほぐそうとする。
だが、落ち着こうとすればするほど周囲の人間が自分を見ているような気がしてくる。
アキは車椅子を押す自分の手に嫌な汗が滲んでいくのを感じた。
そんなアキにミーナが心配そうに声をかけた。
「アキ、大丈夫?なんか顔色悪くなってきてない」
「平気平気、えと、教室はどっちに行けばいいの?」
「午前はバトルのお時間。んで、午後の3限目は講堂で講義。4限目は3-B教室だね」
ミーナはそう言ってニヤリと笑った。
「これでやっとアキとバトルできるね」
「うん。お手柔らかにお願いします」
「へへん、ポケモンバトルは勉強してるだけじゃ勝てないってのを私が教えてあげるんだから」
「それはそうだけど、ミーナはもう少し予習復習ちゃんとした方がいいよ。3回の小テストで合計13点とかは流石に笑えないと思う」
「笑って!そこは笑って流して忘れて!」
ちなみにアキの小テストの合計点は284点。同期の中で2位の成績である。
アキの人生はベッドの上の方が圧倒的に長く、勉強する時間はたんまりあったが故の好成績であった。
「じゃあ、今日の4限目のライブ先生の小テストは大丈夫そう?」
「へ?小テスト?あったっけ?」
「先週言ってたじゃん。みんながスタートで躓いてないかどうか確かめるって」
「…………」
「出そうなポイント教えてあげようか?」
「お願い!アキ!!助けて!!」
アキは涙目になって肩を掴んできたミーナに苦笑いを浮かべた。
アキはミーナに車椅子を押してもらいつつ、膝の上で教科書を広げてライブ先生の講義の内容で重要そうなポイントを幾つか彼女に教えた。
「ふむふむ、OK!とりあえず、ポケモンのタイプ相性の歴史の重要人物を覚えておけばいいんだね!最初の分類者はオーキド博士!」
「うん、それで、タイプ相性表は絶対に頭に叩き込んどいて」
そんな話をしているうちにミーナがアキを連れてきたのはこのスクールのバトルコートであった。
カロス地方ではスタンダードなクレイコートが20以上も整列している様を見るのはなかなかに壮観であった。まだ始業前だというのにパッと見渡すだけで10を数えるコートで既にバチバチにバトルが繰り広げられている。
ポケモンが好きなアキにとってはそれだけで気分が高揚してくる光景であった。
「ほんと……ここ何時来ても誰かバトルしてるね」
「そりゃそうでよ。皆、ポケモンリーグを目指してるんだから」
「うん、ここにいる人たちはみんなライバルなんだ」
ミーナはチラリとアキの顔を盗み見る。
アキはいつも朗らかで陽気に振る舞うことが多い。だが、今日はその頬に人並以上の好戦的な笑みが浮かんでいた。
その表情を見て、ミーナは背筋にわずかに震えが走ったのを感じた。
ミーナはアキと友人になってからまだ日が浅い。彼女のバトルすら見たことがない。だが、彼女のポケモンに対する知識量はポケモン界で生まれ育った自分以上に深い。
ミーナはこのポケモンハイスクールで彼女が一番のライバルになるんじゃないかと感じていた。
そんなミーナが思うことは1つだ。
今すぐ、アキとバトルがしてみたい。
今すぐ、自分の力をぶつけてみたい。
だが、ミーナが声をかけようとした瞬間、予鈴のチャイムが鳴り響いた。
連絡事項は掲示板とメールにて伝達されるので、ホームルームなどのないポケモンハイスクール。
時間になれば前置きなどなく講義が始まってしまう。
ミーナの燃え上がった闘争心は行き場をなくし、渋い表情として顔に現れた。
「それで、ミーナ。集合場所はどこ?」
「……案内するよ~」
「ん?ミーナ?なんか変な声してない?」
「べつに~」
ミーナはアキの車椅子を押して集合場所へと移動した。
そこではアキ達と同年代の少年少女達が30人程度集まっていた。
アキが所属しているクラスはポケモン所持が許される10歳を迎え、ポケモンリーグ初参戦の子供たちが参加するジュニアクラスだ。ポケモンハイスクールにおいて、ポケモンリーグへと進出する人数が一番少ないクラスでもある。
ポケモンハイスクールは主に『地方旅』に出られない人たちの集まりだ。そんな人達が規定の講義を受け、実技を経て、ポケモンリーグへの挑戦権を得る。アキ達が所属するジュニアクラスの他にはシニアクラスというクラスもあり、そこには何回もポケモンリーグに出場したことがある人や、本戦リーグに進んだことのある猛者が集まっている。
そんな人たちを押しのけてポケモンリーグの参加枠を勝ち取らなければならないのだから、10歳の彼等がいかに狭き門に挑んでいるのかがわかるだろう。
そんな彼等の間にクラスメイトとしての仲間意識は希薄だ。
当然、仲の良い友人グループぐらいはあるが、クラス全体の統一感は皆無に等しい。
彼らにとってクラスメイトとは夢を同じくする同志であると同時に、強力なライバルなのだ。
そんな中、突然現れた車椅子の少女は注目を集めた。
左足にガチガチに包帯を巻きつけ、好戦的な瞳を隠そうともせず、にこやかに笑いながら現れた赤毛の彼女。
アキが現れた瞬間、クラスメイトの間に小さな呟きがこぼれた。
「あれが地球界のアキって人だよね」
「ずっとwebで参加してて、小テストで常に満点近いって話だ」
「でも、所詮地球界のトレーナーだろ。地球界のトレーナーはもう何年も本戦リーグに出ていない」
「……まぁ、一応チェックしておくか……強敵にはなりそうにないけどな」
アキに向かう視線は興味本位なものから不躾なものまで選り取り見取りであった。
アキは細く息を吐きだし、自分の気持ちを整える。
『大丈夫だ……大丈夫……』
生まれてこのかた、学校といえば病院の中の学級ぐらいで大多数の授業など受けたことのないアキ。
ここまで大勢の視線に晒されたのは始めてだった。
アキは自分の腰に下げてあるモンスターボールに触れ、気持ちを落ち着ける。
例えこの場に味方が誰もいなくても、自分には心強い仲間がいる。
一緒に強くなっていこうと決めたポケモン達。今この瞬間も『地方旅』で頑張っているミネジュンやマカナ。
そして、絶対に追いついてみせると心に決めたライバルであるタクミ。
アキは1人で戦ってる訳ではない。
アキは揺らぎそうになる自分の心に喝を入れた。
そんな時、車椅子を押していたミーナが声を上げた。
「やっほー、ナタリー、トマ」
アキは急発進した車椅子に一瞬身を固くした。
車椅子に身を預けている身としてはいきなり動き出されるのが一番怖い。
タクミや家族に車椅子を押してもらってるときは必ず声掛けをしてくれるので、こんなことはない。
ミーナはそういう点をまだよくわかっていなかった。
少し冷や汗を流すアキに気づくことなく、ミーナは車椅子を押して自分の友人グループに合流した。
「ハーイ、ナタリー、今日も元気そうね」
そう言ったのは長い黒髪を一本に束ねた少女であった。黒髪といっても日本人とは違い、顔の掘りが全体的に深く、色濃い眉が特徴的な女の子だ。
「紹介するね。彼女がアキ。地球界からこっちに来たトレーナーよ」
「へぇ、あなたが噂の。アタシはナタリー。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
「あはは、固くならなくていいよ。ミーナから話は聞いてる。ずっと病院暮らしだったなんて大変だったんだねぇ」
「……う、うん……まぁ、いろいろと」
アキはこういう時に人見知りしてしまう自分が恨めしい。
やや頬を赤くするアキ。
そんな彼女にもう一人のミーナの友人が声をかけた。
「君が、アキ……この間の小テストは君に負けた」
「へ?」
「僕はトマ……よろしく」
「よ、よろしく」
トマは褐色の肌と薄茶色の短髪をした男子であった。フレームの薄い眼鏡をかけてはいるがその奥には吸い込まれそうな青い瞳があった。彼はアキを見下ろし、『貴様には負けん』とでも言いだしそうな視線で睨みつけてきていた。
次の瞬間、トマの頭がナタリーの平手で盛大にひっぱたかれた。
「いった……」
「おい、トマ、いきなり威嚇するんじゃない。彼女が困っているだろ」
「僕は威嚇などしていない。ただ、ライバルとなるトレーナーに対して相応しい態度を取っていただけだ」
「もっともらしい理屈捏ねるんじゃないよ!あんたはただこの前のテストで負けたのが悔しいだけだろ!」
もう一発頭をひっぱたかれ、トマはナタリーから距離を取った。
「ポンポンたたくな。脳細胞が死ぬ」
「フン、その方がいい。頭蓋骨の中にスペースができて余裕も生まれるだろ」
険しい顔をするトマを無視し、ナタリーはアキに向けてウィンクを飛ばして肩をすくめた。
「悪いね。トマの奴が勉強で負けたのはこの前の小テストが初めてだったんだ。それで、あんたを敵視してるんだよ」
「あ、そうなんだ……じゃあ、彼が主席なんだ」
勉強に自信があったのはアキも一緒だった。
3回の小テストも手ごたえは十分であり、1位も十分に狙っていたのだ。
それが、2回も2位に終わったのはアキとしても不本意であった。
そんな負けん気を顔に浮かべたアキに向け、ナタリーが楽しそうに口角を持ち上げた。
「おっ、なんだいなんだい。あんたもやる気なのか?いいね、バチバチしてる奴は好きだよ」
「え、あ、顔に出てた?」
「ああ、バッチリとね。なるほど、ミーナが言う通り、面白そうなやつだな」
そうこうしているうちに本鈴が鳴り、講義が始まった。
最初はポケモンバトルの基本的なルール説明の解説からだった。その中にはカロスリーグにおけるルールの話も盛り込まれていた。
カロスリーグに出場するにはバッジを集めるか、その他の方法で出場権を獲得するかだが、出場権を得られたからと言ってすぐさま本戦リーグに出場できるわけではない。
まず、カロスリーグでは2VS2の予選がある
その年の参加人数にもよるが、例年通りであれば5回から6回勝利すれば本戦リーグに出場できる。
本線リーグは20人によるトーナメント戦。人数が中途半端なのはシード権を持つトレーナーが4人いるからだ。
本線リーグの準々決勝から参戦してくる4人のトレーナー。
それが四天王だ。
彼等はカロス地方を勝ち上がってきた強力なトレーナーと準々決勝で戦い、そして大概は四天王だけの準決勝が始まる。
本線リーグに出場してくるのは実力者ばかりのはずなのに、それを毎年当然のように切り捨てていく。
それだけ、四天王というのは圧倒的強さを持っているのだ。
シード権を持っているのは権力者故の特権ではなく、『やるまでもなく勝敗が決まっている』という強さの証明でしかなかった。
まぁ、そんな先の先の話など今のアキにはどうでも良かった。
今はただ、一刻も早くバトルをしてみたかった。
そして講義が終わり、バトルの時間が訪れる。
今日は成績に関与しない模擬バトルであり、好きな相手との1対1の勝負を時間の許す限り行うこととなった。
そして講師が各々に任せた瞬間だった。
アキの両肩にズンとミーナが体重をかけた。
「さぁ!アキ!バトルしよう!」
「うん、やろう!!」
お互いの瞳が熱く燃えていた。