ポケットモンスター 夢のカケラを追いかけて   作:からんBit

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あの日からの距離

「試合開始!!」

「キバゴ!“ダブルチョップ”」

「キバァァァ!」

 

タクミの指示とほぼ同時にキバゴの両腕に紫炎が灯る。

キバゴは地面を蹴り上げ、大地を砕かん勢いで飛び出した。

 

そんなタクミ達に対してコルニの顔には心底楽しそうな好戦的な笑顔が浮かんでいた。

 

「いいね!そうこなくっちゃ!!ルカリオ!前に出て“はっけい”!」

「バウッ!」

 

ルカリオが飛び出し、掌に青い炎のような“波動”が揺らめいた。

両者はフィールドのほぼ中央で肉薄する。

ルカリオとキバゴの足が交差するクロスレンジの距離。

 

キバゴの右腕の“ダブルチョップ”が低い位置から最速の軌道で繰り出される。

ルカリオの“はっけい”もまた鋭い機動で差し込まれる。

 

何かが爆発したかのような強烈な破裂音が響いた。

 

「キッ……バッ……」

「バウッ……」

 

ルカリオの“はっけい”をキバゴが腕でガードしていた。

 

「いいねっ!!ルカリオ!“はっけい”!連打を上げるよ!!」

「キバゴ!!遅れるな!!“ダブルチョップ”!!」

「キバッ!!」

「バウッ!!」

 

ルカリオが腕を振り、キバゴはそれを最小限の動きでガードする。

 

ルカリオの腕の回転速度は上がっていく。

だが、キバゴは揺るがない。

ルカリオの動きを目で追い、的確にガードを重ねて攻撃の直撃を避ける。

その間にも細かくステップを刻んで位置を調整し、決してルカリオから距離を開けない。

 

少しでも間合いを開ければ“ボーンラッシュ”や“はどうだん”で一方的に攻撃される。近接格闘技しか持たないキバゴでは対応ができない。

 

だが、ルカリオの攻撃はガード越しにも“波導”となって内腑へと伝わってくる。守勢に回りっぱなしでは決して勝てない。

 

それはタクミもわかっていた。

 

不意に、キバゴが身を沈めて“はっけい”を回避した。

ルカリオの身体が更にキバゴに隣接する。

 

「キバゴ!!そこっ!」

「キバッ!」

 

キバゴは足を地面に強く叩きつけた。めり込む程に強く踏みしめた足裏で砂地を掴み、一歩未満の距離を最大限の脚力をもって突進する。下半身で生み出したエネルギーをそのまま腰の動きを通して増幅し、上半身への打撃力へと変換する。

 

全身の力が拳の一点に集中する。

 

そして、キバゴの鋭い“ダブルチョップ”がルカリオの正中を捉えた。

 

 

 

衝撃が走った。

 

 

 

「ほう……」

 

観客席で見ていたコンコルドが思わずといった様子で自分の髭を触っていた。

 

「バウッ………」

「っ!!!」

 

あまりにも強烈な一撃だった。飛び散った紫炎が観客席に到達したと錯覚するほどの破壊力。ルカリオはそのあまりの衝撃に目を見開き、その口から唾液とも消化液ともとれる液体がこぼれた。ルカリオは【はがねタイプ】だ。【ドラゴンタイプ】の“ダブルチョップ”の威力は半減しているはず。それでも、数歩後退させられる程の一撃。

確かに、ルカリオの体重が前に乗っていた。その最悪の瞬間にカウンターを食らったのだからその衝撃は通常の倍はある。

 

だが、それにしたって威力が高すぎる。

 

そのことに一番動揺していたのは当の本人達であった。

 

「………っ!!」

「キバッ………」

 

自分の腕を見下ろすキバゴ。掌を見つめ、ひっくり返し、そしてタクミを振り返る。

キバゴの大きな目が動揺と興奮に彩られていた。

 

タクミもキバゴも何か特別なことをしたわけではない。

 

『たいあたり』と『型』

 

全身の筋肉を余すことなく使い切る突進である『たいあたり』

効率的に身体を動かして無駄な力を使うことなく拳を振る『型』

 

その効果が今この場に現れていた

 

「…………へへっ」

「キババッ」

 

タクミとキバゴが同時に頷き、前を見る。

 

「行くぞっ!!」

「キバッ!!」

「距離を詰めろ!!」

「キバァァァア!!」

 

後退したルカリオに向け、キバゴが前のめりになる。

 

「ルカリオ!“はっけい”!」

「バウッ!」

 

腹を抑えて立ち上がったルカリオが再び構えを取る。

その瞬間にキバゴの“ダブルチョップ”が襲い掛かった。

 

だが……

 

「バウッ!!」

「キバッ!?」

「あっ……」

 

キバゴの攻撃が逸れされた。

 

ルカリオの“はっけい”だった。

ルカリオはキバゴの“ダブルチョップ”で伸びた腕を真横から“はっけい”で弾いて攻撃を逸らした。

 

そして、伸び切ったキバゴの身体に返しの“はっけい”が突き刺さる。

 

「キバァァアアア………」

「ばか……」

 

相手が怯んでいると思っての直線的な突撃。

せっかく学んだ『型』の動きを完全に放棄した突進。

そんな動きでは“波導”を読むルカリオに見切られて当然だった。

 

吹き飛ばされ、間合いを開けられながらキバゴは頬を拭って再び“ダブルチョップ”を構えた

 

「キバ!!キバキバ!!」

「キバゴ、後でお説教な」

「キバァ……」

 

項垂れるキバゴ。

反省はしているようだった。

 

その瞬間、観客席にいたコンコルドから活が飛んだ。

 

「こらっ!タクミ!!試合中に和むな!!」

「お、押忍!!」

「キバ!!」

 

構えを取るキバゴ。

 

それを見て、コルニとルカリオは大きく息を吐きだした。

身体の内にこもる熱量を噴き出し、滾る血潮を沈めていく。

 

「ルカリオ、わかってる?熱くなっちゃダメだよ」

「バウッ」

 

コルニは自分達の欲求を胸の中に押し込む。

 

キバゴは強くなった。

あの公園での前哨戦の時よりも確実に強くなった。

 

ジム戦ではルカリオVSキバゴの勝負はなかった。

次にタクミがいつジム戦を挑んでくるかはわからないが、その時にキバゴを選出してこない可能性は大いにある。キバゴと全力で戦えるのは今回がラストチャンスなのかもしれない。

 

コルニは戦ってみたかった。『メガルカリオ』でキバゴと戦ってみたかった。

 

左拳にはキーストーンがある。

ルカリオもメガストーンを装備している。

 

やろうと思えばいつでも『メガシンカ』ができる。

 

コルニは突き動かされるような衝動を抑え込む為に奥歯を噛みしめる。

 

今回のバトルはルカリオVSキバゴの約束。

それを反古にして、これ以上立場を悪くするのはいかんともしがたい。ただでさえアウェー環境なのだから、次はブーイングが飛んでくる。そして何より、祖父からの追加トレーニングを受けるのは勘弁願いたかった。

 

コルニは砂浜で地獄の短距離ダッシュをやっている自分を思い出し、なんとか頭をクールダウンをした。

 

「ルカリオ!“ボーンラッシュ”!」

「キバゴ!来るぞ!!」

「キバッ!!」

 

ルカリオは棒状にした“ボーンラッシュ”をキバゴに向けて振り下ろした。

キバゴはそれをガードし、相手の間合いの内側に入り込もうとする。

 

「“ボーンラッシュ”!!」

「バウッ!」

 

ルカリオはすぐさま“ボーンラッシュ”を2分割して棍棒状にしてキバゴを迎え撃つ。

キバゴはその連打を潜り抜けることができず、打ち据えられて間合いに入れない。

 

「もう一回!“ボーンラッシュ”」

「バウッ!!」

 

ルカリオは“ボーンラッシュ”を接続して再び棒状にして横薙ぎに振り切った。

 

「キバゴ!伏せろ!!」

「キバッ!」

 

キバゴはその攻撃を身体を低くして回避する。

 

「ルカリオ!水面蹴り!!」

「バウッ!!」

 

ルカリオは流れるような動きで水面蹴りを繰り出した。それをキバゴは自分の足でブロックした。

ルカリオの身体が止まる。だが、その隙を埋めるようにコルニの指示が飛んだ。

 

「“はどうだん”!!」

「バウワッ!!!」

 

ルカリオが右拳に“はどうだん”を纏った

この至近距離では狙いを定めて『撃つ』よりも直接『ぶつける』方が確実で早い。ルカリオは右拳の先に“はどうだん”を保持したまま、頭を狙った右フックを放った。

 

「身体を捻れ!!」

「キバッ!!」

 

キバゴは身体を捻り、攻撃を回避する。

その直後、ルカリオの後ろ回し蹴りがキバゴの腹にヒットした。蹴り飛ばされたキバゴは無理に耐えることはせず、地面を転がって衝撃を逃がし、再び構えをとった。

ただの蹴りなので威力は低い。問題は再び間合いを開けられてしまったことだった。

 

「“はどうだん”は囮で、蹴りを当てるのが狙いだったのか」

「キバァ……」

 

コルニとルカリオはニヤリと笑い、再び“ボーンラッシュ”を構えた。

キバゴは『型』通りの構えを取るものの、その両腕に“ダブルチョップ”の紫炎を纏わせることはしなかった。

 

「キバゴ……やっぱり厳しいね」

「キバッ……」

 

キバゴが小さく頷いた。

 

この短い時間でタクミは1つの確信を得た。そして、それはキバゴもわかったらしい。

 

『キバゴではルカリオに勝てない』

 

それはどうしようもない事実であった。

キバゴは至近距離での近接格闘戦に拘っている。だが、それは本人の主義だけが理由ではない。その間合いじゃないとルカリオを上回ることができないからだ。

 

距離を少しでも開ければ“ボーンラッシュ”で常に先手を取られ、“はどうだん”を含めた強力な一撃を狙われる。そして、その距離ではキバゴには打てる手がない。

 

ならば“あなをほる”で強引に間合いに入るか、鋭いダッシュで間合いの内に入り込むしかない。

だが、それも“波導”で動きを先読みしてくるルカリオ相手には厳しいものがある。

 

『やっぱり、キバゴはジム戦では出せないのか』

 

タクミはキバゴに“ダブルチョップ”を指示して再び攻勢をかけさせる。

だが、ルカリオの“ボーンラッシュ”に阻まれて有効打を与えられる距離に入れない。

相手の攻撃に対するガードの意識が上がったことでかなり粘り強く戦えるようになっているが、結局のところ守っているだけでは勝てないのだ。

 

次第に押されはじめ、キバゴは無理な攻めを余技なくされる。

 

キバゴはルカリオの大振りな“ボーンラッシュ”を虎の子であるキバでの防御で受け止めた。首の力で“ボーンラッシュ”を止め、両腕が使える状態で強引に間合いの内に入り込んだ

 

そして、キバゴがルカリオの腹部を狙おうとした瞬間だった。

コルニが“インファイト”の指示を飛ばした。

キバゴは『入り込んだ』のではなかった。

『誘い込まれた』のだ。

 

それは、『キバゴVSタクミ』の練習でもよくあるキバゴの負けパターンだった。

 

「バウワァァァアアアアアアア!!!!」

 

1発、2発、3発と連打が撃ち込まれていく。なんとか防御するキバゴの両腕をすり抜けるように拳が顔面に、ボディにと次々と差し込まれていく。

 

キバゴは持ち前のタフさで足を踏ん張ることができた。だが、膝は震え、肩で息をする有様にまで追い込まれた。両側のキバにもヒビが入り、今にも捥げ落ちそうになっている。今の状態から反撃できたとしても一撃のみ。それでは今のルカリオへの致命打へは至らない。

 

なにより、ここで完膚なきまでに叩きのめされると困るのはタクミの方だった。

 

なにせ、明日もトレーニングは続く。なんならこの試合の後にも反省を兼ねたトレーニングをしたい。

 

タクミは躊躇いなくタオルをフィールドに投げ込んだ。

 

「キバゴ!TKO(テクニカルケーオー)!ルカリオの勝ち!!」

 

キバゴがそれを聞き、両腕を下ろした。

 

「キバァ……」

 

キバゴは溜息を吐きだした。それを見て、タクミも息をつく。

 

キバゴは構えを解き、再び右拳を左手掌に合わせた「抱拳礼(ほうけんれい)」をする。

タクミも同じく「抱拳礼(ほうけんれい)」をして頭を下げる。

 

「ありがとうございました」

「キバキバ!!」

 

キバゴがそう言った途端、キバが二本ともポロリと落ちたのだった。

カランコロンと音を立てて転がっていくキバを拾い上げ、タクミはキバゴの頭を撫でた。

 

「まだまだ、修行が足りないな」

 

タクミがそう言うと、キバゴと目が合う。

 

『お互いにな』

 

そう言われた気がした。

 

さて、どうしたものだろうか。正攻法ではやはり難しい。となると、搦め手を取れるヒトモシとフシギダネはやはり確定。後はやはりゴマゾウか。“ボーンラッシュ”や“はどうだん”を強引に突破して打撃を叩き込むにはゴマゾウの突進力に頼るしかない。たけど、それだと前回の勝負の二の舞だ。ゴマゾウは瞬間的なパワーに限ればパーティ内最強だ。だが、その一撃ではメガルカリオを倒せないのは前回のバトルで実証済み。メガルカリオの体力を削り切るには継続的に有効打を積み重ねていける連打力が必要だ。可能性があるのはフシギダネの“ツルのムチ”。このジムでのトレーニングでフシギダネのパワーもあがっているとは思うが、フシギダネは踏み込みに一番重要な“後ろ足での蹴り足”が弱い。決定打に繋がる攻撃はできない。

 

では、どうするか?

 

頭の中でいくつもの疑問が巡る。

だが、後ろ向きな気持ちはなかった。

 

タクミは自分の掌を見下ろす。たった2週間の間にキバゴ達との組手を繰り返して肉刺が潰れて皮膚が重なり、既に分厚くなり始めている。

 

キバゴの放った強烈な一撃。

 

あの時に感じた空気の震えが今も肌に残っている。

確実に成長している。

後はどこまで時間を詰めれるか。

 

タクミは「抱拳礼(ほうけんれい)」を返してくれているコルニとルカリオを見やる。

両者の顔には『不完全燃焼』とわかりやすく書いてある。

 

だが、残念ながらこれはジム戦ではないのだ。

燃え尽きるまで拳をぶつけ合うのはまた今度。

 

今はまだ、熱を溜めておけよ

 

タクミは自分の心臓の上を拳で叩く。激しく胸骨を打つ心臓は今にも暴れることを望んでいるようだった。そして、そう思っているのはタクミだけではない。

 

「キバッ……」

 

既に拳を握り、『たいあたり』の踏み込みを繰り返しているキバゴ。

 

『キバゴはルカリオに勝てない。今は、まだ』

 

ゴマゾウの打撃力、ヒトモシの攪乱力、フシギダネの空間制圧力、そしてキバゴの連打力

 

ピースはある。青写真はまだ見えない。

だが、今日の一戦はその為の試金石として十分な役割を果たしてくれた。

 

後はどこまで詰めれるか。

 

タクミは観客席から顔をのぞかせているマカナとクチートを振り返った。

 

「ぶーーーー………」

「クチーーー………」

「なんでブーイングされてるんだろ……」

 

無表情のマカナと困惑した顔のクチートにブーイングされながらタクミはその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

 

夕食時、いつもの面子にマカナ達を加えた面子での晩御飯となっていた。

 

「クチッ!!?」

「だから、普段はブーイングはしちゃだめだからね」

「クチクチクチ!!」

 

両手で口を塞いで何度も頷くクチートの頭を撫でまわし、モモンの実を手渡す。

 

「マカナ……クチートに変なこと教えないでよ」

 

タクミは右隣りのマカナを斜目で睨む。

マカナは丁寧なフォーク使いで豆腐のステーキを頬張っていた。カロス地方の豆腐ステーキは初めて食べたけど、デミグラスソースに合っていて結構美味しかった。

 

「……クチートが……不満そうだった」

「だからって……教育に良くないよ」

「……クチートは……もうちょっと自分を出した方がいい」

「わかるけど。わかってるけど、もう少しやり方ってのがね……っていうか、クチート不満だったの?」

 

クチートにそう尋ねると、モモンの実を食べていたクチートは急いで首を横に振った。

 

「不満だったんだ」

「クチッ!?」

「はははっ、クチートの隠し事はわかりやすいよ。もしかして、試合に出たかった?」

「………クチ……」

「だから、まだ焦っちゃダメだって。でも、いつか、必ずね」

「クチッ!!」

 

そう言って拳を握るクチートの顔に焦りはない。

 

「ダネダァ!!」

「ほら、クチート。フシギダネが呼んでるよ。ぼやぼやしてたら、キバゴにご飯食べられるよ」

「クチ!」

 

クチートはニコリと笑って、ポケモン達が集まる方へと歩いていく。

 

最近、本当にバトルに対する怯えや緊張の色が見られなくなってきた。

クチートの再デビューも近いのかもしれない。

 

「…………クチートはジム戦出さないの?」

「流石にね。まだ、リハビリ中。出せたら……どうかな……」

 

タクミはクチートが一体どういったバトルの組み立て方をするのかをまだ把握できていない。

 

「クチートの顎の使い方のキレはいいし、緩急のつけた動きもいい。多分、防御と攻撃をバランス良く兼ねた近距離戦がメインに組み立てられそうだけど……メガシンカができないとパワー不足感は否めないし、少し戦い方は工夫しなきゃだなぁ……」

「……タクミのポケモン……そんなのばっかり……正攻法から離れてばっかり」

「搦め手と毒ワザで沈めてくるマカナにだけは言われたくない」

 

タクミがそう言うとマカナは素知らぬ顔でフライドポテトを三つまとめて口に放り込んだ。そんなマカナの隣からコルニが声をかけてきた。

 

「マカナちゃんも『地方旅』の途中なんだよね」

「……はい……今は打倒メガガルーラでトレーニング中……です」

「あぁ、メガガルーラかぁ……この辺にもちょくちょく来るよ。『打倒メガガルーラ』、対策は順調?」

「……まだ……でも……次は……確実に……落とす」

 

サラリと言い放ったが、最後の言葉には殺気にも似た威圧感が乗っていた。

マカナもまた、乗り越える壁を前に熱量をあげている最中だ。

だが、いつまでもうかうかしてられない。この3つ目のジムを乗り越えれば『地方旅』の1/3の行程は終えたことになる。もう『旅が始ったばかり』などとは言ってられない。

 

タクミもマカナも時間との勝負が始まっているのだ。

 

マカナの熱量に当てられたようにタクミのフォークを握る手にも力がこもった。

 

そんな2人の様子をコルニは全く察知できていないように明るい声で話し続けた。

 

「ねぇねぇ、今のジム攻略したら次はウチのジム来なよ。マカナちゃんのポケモン、バトルするの面白そうだし」

「…………考えておきます」

「うんうん!考えておいて!!」

「……タクミよりも……先に挑んでみせます」

 

カチンとくる物言いだったが、現状否定する手札がないので食べ物を口に詰め込むことで沈黙を保った。

 

「それで、マカナちゃんは明日にはもう町を出ていくの?」

「……はい……あ……良ければ……ジム門下生の人達と……もう少しバトル……したい……」

 

マカナがそう言うと、テーブルの反対側で数人の門下生がギクリと身を強張らせた。

今日、タクミのバトルが終わった後にマカナにバトルを申し込まれた面々であった。

マカナの実力に見合ったポケモンでのバトルを行ってもらったが、簡単な言い方をすれば『圧勝』であった。毒を打ち込み、のらりくらりと時間を稼ぎ、相手を動けなくさせる。まさに『毒沼』のような戦い方だ。その為、毒でダウンしたポケモン達用に『おかみさん』が調達してきたモモンの実が今日の食卓にあがっていた。

 

タクミも以前バトルシャトーでマカナとバトルした。

マカナのバトルはその時と根本的な戦術は変わっていない。

だが、その動きは以前よりもより『深く』なっていた。

 

野良バトル18連勝中というのは伊達ではなかった。

 

「そっかそっか。それじゃあ皆、明日の午前練の時に何人かバトルしてあげてね」

 

ジムリーダーとしての指示に門下生が「押忍っ!」と答える。

だが、皆の顔からは『勘弁願いたい』という気持ちが全面に出ていた。

 

まぁ、持久戦を挑んでくるマカナを相手にすると精神力がゴリゴリと削れていくのだから気持ちはわかる。しかも、バトルに負けたら師範から追加トレーニングのおまけ付きだ。『ジムリーダーを目指すのならどんな相手にも五分以上のバトルをせんか!!』というお叱りはごもっともであるが、マカナを相手にした後の追加トレーニングはなかなかに心理的にキツイものがあった。

 

「そういえばタクミ君とはバトルしないの?」

「……うん……バトルしたい……タクミ、明日どう?」

「いや、明日と言わず今晩でもいいよ。夕食の後にでも。ねっ、みんな!?」

 

タクミのポケモン達から元気な返事があがる。

バトルの疲れのあるキバゴも頬にたっぷりとご飯を詰め込みながら諸手を挙げて立候補している。

 

最近、タクミは夕食を食べた後にも追加のトレーニングに励んでいた。

朝練、午前練、午後練だけではまだ足りないと感じていたのだ。

 

「……いいの……ならやろう」

「よっしゃ!!」

 

テーブルの端から師範であるコンコルドの鋭い視線が飛んできた。例えタクミであっても、負けたら追加トレーニングが待っているというわけだ。

 

負ければ……ね……

 

タクミは口の中でそう呟き、頭の中で戦術を組み立てていく。

 

そんな時、コンコルドがコルニに向けてサラリと衝撃的な言葉を言い放った。

 

「ああ、コルニ。明日、ジム戦が入ったからの」

「へぇ~………えぇっ!!明日!?」

 

タクミとマカナのバトルを見学するつもりでいたコルニは突然の申し出に声を張り上げた。

 

「えっ!!明日!?そんな急な!!」

「安心せい。トレーナーのジムバッジ所有数は2つじゃ。今のタクミ君への調整と一緒でよい。それなら一晩でできるじゃろ」

「うぇぇっ……」

 

ポケモンのコンディションを大事な試合に向けて整えるというのはトレーナーなら誰しもがやることだ。

ただ、モチベーションであったり食事量であったり、その日にキッチリとベストコンディションに持っていくのはなかなか難しい。

 

だが、一流のジムリーダーであるならばそれぐらい一晩でこなせ、というコンコルドからの課題であった。

 

残念ながらコルニにはタクミ達のバトルを見学する余裕はなさそうだった。

 

「返事は?」

「押忍!!それで、おじいちゃん。ジムバッジ2つってことは『地方旅』の人?」

「ああ、タクミ君達と同じ、地球界からの『地方旅』参加者じゃ……えーと、名前は……」

 

タクミはマカナ相手に誰を選出するか考えていた。

マカナもご飯を食べ終えたアローラベトベターを膝に抱え上げて頭を撫でていた。

 

そんなタクミ達の耳朶に聞き覚えのある名前が突き刺さった。

 

「名前は……リュウノスケ……これが顔写真じゃ」

 

タクミとマカナの視線がそちらに向かう。

不機嫌そう皺の寄った眉と寄った殺気だった目がホロキャスターの淡い画面に浮かび上がっていた。

 

『チャンピオンになるのは俺だ……』

 

バトルシャトーでの出来事が脳裏によみがえる。

それは間違いなく、タクミと少なからず因縁のあるトレーナー『片垣 龍之介』その人であった。

 




最新作についてタクミのパートナーにインタビュー その4


・クチートさん、フェアリー、はがねタイプ複合でポニテツインテの女の子とキャラ被りまくってる後輩デカヌチャン一族について一言

「え?えと、私は主人の為に私の役割を全うするだけですので、その、あまり、意識することはないのですが……そ、そうですね。強いてあげるとするならば……あのハンマーは一度持ってみたいです。えっ!?あれ100kg近くある疑惑が……持てるかな……メガシンカしたらもしかしたらもしかしたら……メガシンカ……か……」

意気消沈したクチートを見かけたタクミに説教くらったのでインタビュー終了
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