救世主っぽい個性を手に入れたぞ   作:螺鈿

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注文なんてのは大体でいいんだぞ

 対人戦闘訓練の時間が来たぞ! というよりコスチュームが届いたぞ! これはテンション上がりまくりますよおぉおおおお!!

 

 そんなこんなで訓練に合わせて要望を出していたヒーロースーツが届いた。周りの皆もウキウキで喋り合っている。オレ? 喋り合う人なんていませんけど? 入学してそれなりにたってグループも出来てきている。しかしその中に俺の居場所はない。なぜ、なぜこうなった!? 中学では少ないが、ブラウン君とジョーンズ君という友人がいて、いつも3人で行動していた。決して、決してコミュニケーション能力に不安があるわけじゃあ……

 

 スーツが入っている鞄を抱える。思わず涙が溢れてしまいそうになるが耐える。スミス強い子だもん。

 

 気を取り直して鞄を置く。この中に俺の夢への第一歩、ネオコス(映画1作目仕様)が入っている筈だ。きちんと要望に、忠実にネオを再現した絵を載せていたので問題は無い筈。実用性を考えて、サングラスには通信機能も持たせるようにしておいたのでヴィジュアルだけの浪漫物ではない。

 

 ドキドキと高鳴る胸を抑え込んで、詰め込まれた夢の鞄を空けると……そこには黒、黒、黒! うーん、いいですねぇ! しかしよく見ると夢の宝箱には不似合いな、見覚えのある物が入っている。

 

「……ぷらぐ?」

 

 ひらりと落ちてきた紙を見ると取説であった。要約すると下記の通り。

 

 ・ウールとレザー調の黒の素材が今無いから入学試験の映像を元に、スーツにしておいたよ。

 ・防弾、防刃で高温にも耐えられて動きを阻害しない多機能スーツだよ

 ・高性能サングラスも付けとくよ

 ・通信機能はサングラスと分けたからこのプラグ使ってね

 ・銃は検閲あるから仮免取得まで持てないよ。どうしても持ちたかったらゴム銃あるからサポート科来てね

 ・なんか気合入った絵描いてくれたけどネクタイ付けとくから許して(はぁと)

 

「DAMN IT!」

 

 バタンと鞄を閉じると周りが静かになり、視線が集まる。それを無視して自分のロッカーにズンズンと進み、鞄を放り込んだ。そして代わりに取り出したるは自分で買ったネオなりきりセット(AM〇ZONのパチモンではない)。只でさえエージェント要素が強いのにこれ以上あっち側に寄せてたまるか。

 

 決意を新たに、オレはサングラス(ネオ仕様)をかけた。

 

 

 

 

 

 

「始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 今日はオールマイトが担当だ。しかしやっぱり画風が違うな、かっけぇわこの人マジで。

 

「良いじゃないか、カッコいいぜ皆! 自信を持て、まだまだ大丈夫さ!!」

 

 なぜかオレの方を向いて言ってくる。今日の俺は自前のネオ仕様の服に加えてワックスで固めた頭だ。そうか、そんなに決まってるか。憧れでもあるオールマイトに言われると思わずにやけてしまう。……あっ、目逸らされた。

 

「すっげぇな、まるで映画みたいだぜ」

 

 話しかけてくれたのはウェーイ上鳴。その名の通りうぇーいな奴だ。コスチュームもなんかホストっぽい。

 

「ありがとう」

「でもなんか敵みたいだけどな」

 

 そういやコイツのコスは黒の素材使われてんな。そうか、コイツにオレのコス分を使われたのか……

 

 まるでザイオンに住む人間の悪臭を憎むように敵意を向けると上鳴は何処かに行った。クソッ、この戦闘訓練で相手になったら覚えてろよ。

 

「さぁ、組み合わせの時間だ!」

 

 どうやら今日は2対2の訓練らしく、組み合わせが発表される。誰でもいいけど、友達に……とまでは言わないから仲良くやれるといいなぁ。

 

 組み合わせを見ると俺の相棒は障子くんという人らしい。目を向けると触手で挨拶してきた。やっべ、怖いんだけどこの人。

 

 ビビりながら挨拶を交わすと作戦を話し合いたいらしい。コミュ力たけぇなこの触手。

 

「……という感じで行こうと思う」

「いいんじゃないか。建物の図面的に、注意すべきポイントはこの辺りだろう」

「なら侵入経路はこれでいいか? 三済はどう思う?」

「基本的には。しかしお互い力に優れた個性だ。場合によっては無理やり道を作れることも頭に入れておこう」

「あぁ、そうだな」

 

 一方的に話すのではなく、相手の考えも引き出しながら話を進めてきた。論理的だし、話しやすいし、すげぇわこの触手。何かオレ以上に絡みづらそうなのに、なんでコイツは昼飯一緒に食べる相手いるのとか思っててごめんなさい。

 

「そういえば、俺の個性はさっき言った通り肉体の器官を複製できる触手だが、お前のはどうなんだ? 肉体強化系なのは分かるが……」

「俺か。俺は集中することで感覚を強化するものだ。肉体は普通に筋トレしてたら強くなった」

「そうなのか、俺も筋トレはよくする。よかったら今度一緒にやらないか?」

「……あぁ、そうだな」

 

 やっべ、ここにきて初めて同級生っぽい会話が出来た。スミス泣きそう。やっぱ触手はすげぇわ。

 

「それにしても、三済は案外話せるヤツだったんだな。正直、少し気後れしていた」

「……スミスでいい」

「?」

「スミスと呼んでくれ」

 

 拝啓、ママン。お友達が出来ました、今度サングラスあげようと思います。

 

 




エージェント候補が増えたよ、良かったね。

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