救世主っぽい個性を手に入れたぞ   作:螺鈿

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演出なら多少の脚色も許されるんだぞ

 今日のスミスは体育服。控室で一人佇んでいます。いや、別にハブられてるとかじゃないよ。

 

 クンフーを高めたりサングラスを磨いたりして、なんやかんやでやってきた雄英体育祭。今日は皆体育服だ。覚悟を決めてスミスフォーム着ることを決意したけれど、進んで着たいものでもないので少しは気が楽だ。

 そして今は最終トーナメントの待ち時間。予選? 1次はT-1000ばりのダッシュで、2次は砂藤くんと障子くんのチームマッスルで周りを威嚇してたら通ったよ。

 

 

 しかしこうして一人で鏡を見てると考えてしまうな。今まで目を逸らしていたが、やっぱりオレスミスに似てるわ。言動もそれっぽいかもわからん。

 

 しかしな、それは仕方ないのだ。新生児模倣っていうのがある。赤ちゃんは視界に映る親のマネをして社会性を育てていく。しかしオレはその前に個性でマトリックスを何度も見てしまっているせいでそれが刷り込みになっているのだ。故に言動がなんかマトリックスの人物たちみたいになってしまうのも仕方がない。うん、そういうことにしておこう。

 

 しかし、しかしだ! 100歩譲ってもスミスだ。エージェントスミスじゃないスミスだ! そして顔はスミスでも心はネオだ! 体は許しても心だけは、心だけは守りきるのだ!! そう、救世主スミス、これでいこう! 実はスミスってあだ名も愛着あるしな。とりあえず学生の内はスミス、卒業したらネオとしてヒーローだ!

 

 先日以降モヤモヤとしていた心を清算して頷く。あ、やっぱりスミスっぽいわ。

 

 

 

 うんうんと鏡の前で唸っているとアナウンスが流れた。やっとトーナメントが始まるらしい。あ、そういやオレ1回戦だったわ。相手は緑谷くんだっけ。

 

 しかしなげぇな。どんだけ準備したんだよ。心の中で愚痴りつつ向かうと、係員に止められた。え、なんで? 演出の都合上後から出ていくの? あ、はいわかりました。

 

 

 選手通路の出口でボーっと眺めていると、流れていた陽気な音楽が止まる。そして地鳴りと共に地面が変形し、相手側リングの道が変形していく。

 なんだなんだとざわめく観客に、プレゼントマイクのアナウンスが流れた。

 

『始まるぜ、日本最大のシンデレラボーイ&ガールを決める祭典。雄英トーナメント、上がって来たのは16名! 最後に頼れるのは己のアイアンフィスト!! 下らねぇルールはいらねぇ、お前らの力見せてみろ!!!』 

 

 かつてここまでノリノリのマイク先生を見ただろうか。なんか色のついたスモークも炊き始められている。

 

『さぁまずは第一回戦! 爆発、凍結、なんのその! 1000マン? そんなもんくれてやらぁ!! この俺の背中に乗れるなら!!』

 

 緑谷君側のステージがなんかすごいことになっている。花火も次々と打ち上げられ始めた。

 

『降り立つ背中はダークホース! 最早誰にも言わせねぇ、頂点目指す、俺が奪る!オレが来る!』

 

 徐々に影が大きくなり、小さなその姿が露わになる。

 

『立ちふさがる物ぶち壊し、行こうぜ 夢の向こう側(プルスウルトラ)へ!』

 

 雰囲気からは想像もつかないが、トップクラスの成績を残し続けてきた緑谷くん。それに相応しい演出といえばそうなんだろうが……

 

『さぁきたぜ! お待ちかね、本日最大のシンデレラボーイ………1-A! ミドリヤァアアアアアァァァイズウゥウウウクゥゥゥウッッ!!』

 

 なんだこれ……。個性もフル活用して、度が過ぎている演出に引いてしまう。

 

 雄英祭はハイライトしか見てなかったからなぁ。演出が派手とは聞いてたけどここまでとは……

 

 見る方はともかく、やられる方はたまったもんじゃないな。見ろよ、緑谷くんカチコチになってるじゃん。ノリノリのマイク先生に持ち上げられて、ドンドンテンションが沈んでってるよ。

 

 でも、ちょっと嬉しいかも……ここで派手にスミスじゃなくネオっぽく活躍出来たら、オレの救世主スミス道が進むかもしれん。もうスミス期待しちゃうね。

 

 

 

『さぁ、注目度ナンバーワンのお相手は、圧倒的存在感を誇る肉体派! 壊せるなら壊してみろ、そう言わんばかりの体は黒鉄か、巌か!』

 

 ここでオレのリングまでの道に柱が地面から生えてくる。係員がGOサインを出すので歩いていくと、オレの速度に合わせて柱が爆散し、火花と破片が舞い散る。

 

『こいつぁまさしく強敵の風格! その力は岩を砕き、その動きは弾を避け、与えられた課題は完遂する!! 誰が呼んだかエージェント! 渋すぎるお前は本当に学生かぁ!?』

 

 ザッケンナコラー! あんまりだろ、こちとら救世主スミスで行くって決めてんだよ、エージェント要素はお呼びじゃねぇよ!!

  てか誰だよその名で呼んでるやつ。絶対に許さんぞ! 覚えてろよ、絶対に屋上に呼んで学生らしく爽やかに拳で決着つけてやる!!

 

 思わず足を止めると、リング手前で地面が急に持ち上がり、宙に飛ばされる。結構な時間宙に浮いた後、リングに着地。別にいいけど、驚くわ。打ち合わせ位してもよかったんじゃねーの?

 

『多分将来苦労するだろうなぁ……1-A ミィイイイスミスゥウウウミィィトォオオオオオ!!!』

 

 なんか区切るとこおかしくね? リングに立つと、緑谷くんがあからさまにホットした顔をする。気持ちは分かるよ。

 

『それじゃあ始めるぜぇぇえええ! ルールは先程言った通りだ。場外か参ったって言葉だけ。ただしやりすぎは禁物、ヒーローってこと忘れんなよ』

 

 マイクの言葉に構える緑谷くん。分かる、早く始まって欲しいよね。

 

『それじゃあレディィイイイイ! START!!!』

 

 ド派手な演出で観客の盛り上がりが頂点に達した時、一回戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 後で知ったことだけどあの演出、プレゼントマイクが好きな様にMCやりたいが為にヒーロー業で稼いだ私費を投じているらしい。尺の都合上テレビではカットされてるんでネットでしか流れないんだと。

 それでもプレゼントマイク的には構わないらしい。

 

 ヒーローってすごいなと思いました。ギャラ的な意味で。

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