届かない!届かない!届かない!!
ただ立って居るだけなのに!
一歩も動いては居ないのに!
隊長さんの薄布一枚程度の霊厚の壁が破れない!
「院生にしてはやりおる・・・じゃがまだまだ赤子の児戯の域を出とらん。」
凄い!凄い!凄すぎる!!
隊長さんは本当に強い!
初めての感覚だ。
こんなに胸の中が熱くなるなんて私は病気なのだろうか・・・
暗殺者にとって今の状況は絶望以外のなにものでもないはず・・・
手も足も出ないのに・・隊長さんを動かすことすら出来てないのに・・鼓動が高鳴る!
何か手はないか
何処かに隙はないか
学んだ術で通じるモノはないか
ひたすらに頭を動かす。
全力で隊長さんを観察する。
ダメだ・・・一分の隙もない。
勝てない試合をするのは馬鹿のする事と教わってきた。
【今】の私を知られたら叱られ、叩かれ、軽蔑される。
私は姉上のような才が無いのは嫌と言うほど聞かされた。
所詮、私は姉上を守る盾・・・数多の一匹・・それでも今だけは数多の中の【雄】じゃなく、たった一人の【雄】として!!
「隊長さんに言われた通り、答えを出すには私はまだまだ足らない」
「うむ」
「だから、今からは無謀で無策で馬鹿みたいに唯々行きます!!」
「それをある者は無謀、ある者は大馬鹿、ある者は死にたがりと言い、先程までの小童なら儂も其奴等と同じことを言おう。」
「・・・」
「が、小童の目に宿るモノを見た今はあえてこう言おう・・・持てる全てをぶつけて来るがよい【童】!」
「はい!!!」
隊長さんは少しばかり霊圧を上げてくれた。
おかげで探知に霊圧を割かなくても居場所がわかる!
なら、まずは全身の力を抜いて深呼吸・・・子供っぽいとか暗殺者とか今はどうでも良い!
全力で霊圧練り上げ、それを纏ってからの体当たりっ!!
「力の練りが甘いっ!!」
「ぎゃふっ!?」
猪の如く突っ込んだ私の額をバッチーーン!!と襲った強烈な痛み・・・その正体はデコピン。
しかも、隊長さんは霊圧を指で弾いただけ・・・それなのに私の全力で纏った霊圧の鎧を容易く貫き、私は十メートルほど吹っ飛ばされた。
「なら次はこれです!」
隊長さんの目の前まで移動し、両拳に霊圧を集める。
そして打つ!撃つ!打って、撃って、打ちまくる!
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「粗暴、無骨、未熟・・・ただその意気やよし!!」
隊長さんは少ししか霊圧を出してない。
なのに、岩を殴ってるようだ・・・けど今は止められない!止まれない!止めたくない!止まりたくない!
「まだまだぁぁぁ!!」
「今はただ打ち、ただ挑み、ただ知れ。
己の力量を、己の未熟さを・・・これは死合でも実戦でもない。
死合や実戦では決して学べぬ、学ばせて貰えん。
故に今知るのじゃ。
己の未熟さを、己の力量を、弱さと強さを。
それを知ることで人は初めて強くなる!」
腕が軋む
霊圧が綻ぶ
呼吸が苦しい
なのに!
心が昂る!
胸が高鳴る!
体力も、霊圧も、全てが落ちていくのに私の中の【ナニカ】はどんどん強くなる!
「はぁはぁ・・・これが、これが今の私の全力だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
パキィィィン!!!
「や、やったぁ・・・」
最後の一撃
それは全力の一割も出してはいないだろうが隊長さんの霊圧の壁を砕いた。
「良くやった・・・此処まで諦めなんだ小童に儂からの褒美じゃ。」
隊長さんの拳が私の顔に当たる。
霊圧を纏ってすら居ない拳・・家で振るわれてきたモノより、もっとずっと痛い・・・そして凄く暖かい・・
林へと吹き飛ぶ体
意識を手放しそう・・
「・・・た、隊長さん?」
「ようやったぞ、小童・・」
林直前で勢いが止まった。
辛うじて手放さなかった意識も、もう限界だ。
最後に感じたのは木に当たる直前で私の体を受け止めてくれた隊長さんの霊圧だった。
ナルト君は後、半週程延びそうです・・・
スマホ水没でデータぶっ飛んだ・・・