疲労困憊、フラフラしながら二時間余りで書きました。
あまり調子がよくないとわかる文章。
人数が増えると散らかりますね。反省。
「ね! セシリアさん!」
「嫌ですわ」
即答されて肩を落とす。清香は右へ、左へ、首を巡らせるも一夏以外に知り合いはいない。
大いに困った。
どうしようかな。清香は腹を決め、目を瞑って走り出した。
(逃げよう!)
「いけませんっ」「わっ」
とたんに激しい衝撃が走った。膝と額から激痛。口元に熱を帯びている。鉄の味がしたので間違いなく口腔内を切った。目を閉じて走ったのがよくなかったのだろう。
恐る恐る薄目を開けてみた。白色と金色が広がっている。目の焦点が合うのを待つ。
蒼い瞳に涙が浮かぶ。妙に近い。瞳孔まではっきり見えた。
(これはなぁに?)
じっくり観察。息苦しいので口を開ける。ぷはーっ。
顔を上げ、凰鈴音の姿を探す。清香を指さし、全身震えている。
「痛いですわ」
「ご、ごめん」
言われて初めて四つん這いになっていると気づいた。セシリアを下に押し倒している。押し倒し……。
「ごめんなさぁーい!」
セシリアの唇から赤い血。唇同士が衝突。痛みのあまり互いに口を押さえている。
立ち上がると背後にアヤカの姿。呆れた顔つき。無言で絆創膏を差し出した。
礼を言って受け取る。アヤカがセシリアを助け起こす。清香に渡したのと同じ柄の絆創膏をセシリアにも差し出す。「消毒は自分でやって」
振り向きざま清香の額をデコピン。「痛いっ」
「何やってんの」
清香は痛む額を押さえ、上目遣いで機嫌をうかがう。凰鈴音と勝負することになった、と告げる。猫のような目で凰鈴音を見つめ、次に清香を見た。「は? 代表候補生があんたなんか相手にするって?」冗談と受け取ったようだ。
タッグマッチの相方にセシリアを指名したこと。断られたので逃げようとしたこと。まくしたてたあと、清香はアヤカの両手をとった。
「い・や」
即答。清香から何か言う暇すら与えられなかった。「なんでよー」
アヤカが理由を口にする前に誰かが叫んだ。
「あー! アンタ、去年、ベルギーIS代表団にいたやつ!」凰鈴音だ。
「南アフリカ共和国だったよね、国籍の片方」と清香が聞く。
ルームメイトが額に手を当て、下を向きながら「やらかしたー」とつぶやく。
清香はアヤカを小突いた。「アルバイトでアグレッサー役をちょっとね」などといった言い訳をする。
凰鈴音が騒ぐ。
「早くしなさいよ!」
「じゃあ、織む」「一夏はあたしのものよ!」
最後まで言わせてくれなかった。
「だったら二組のもうひとりの代表。
「小柄は来ないわ」
「アダージョ・レガートの操縦者の人は? 三つ子のメテオさん、でしたよね。三人とも魔法少女っぽい
「あいつらはやかましいから置いてきた」
即答だ。誰かいませんかー。誰もいませんねー。
腕組みして困り果てる。頼るべき伝手がない。空を見上げる。太陽は悩みなど関係なく照りつける。
「仕方ありませんわね」
口元の絆創膏。清香とおそろい。セシリアは凰鈴音を睨めつけ、清香に鋭い視線を送った。
「気が変わりました。わたくしが助力致しましょう。後ろは守りますわ。ただし、後ろは、ですけれど」
含む言い方をする。「ありがとー」清香は深く考えずに膝を折って主を待つ打鉄のもとに駆け寄った。
▽▲▽
清香の打鉄。
相変わらずバケツを頭から被ったような姿。試験したいとかで持ち込まれた装甲の類いを身につけている。外見は筋肉質。装甲と装甲のあいだにエネルギー・シールドを展開するという変わった設定。
「もっと思い切ったらいかが?」
「まだ怖いんだよー」
高度三〇センチ。足下に何もない感覚に怖じ気づいている。
一夏の白式、凰鈴音の
ヒソヒソ通信。
(作戦は?)
(グー・チョキ・パー……ですわ)
(へぇー、どんなどんな)
(わたくしがグーを出したら清香さんがお二人を攻撃します。チョキを出したらわたくしがインコムで援護します。パーなら逃げてください)
パーが一番得意だ。清香は打鉄の手に持った三七ミリ軽砲を掲げてみた。
清香から見ると、黒い画面に白く象った線が表示されているにすぎない。セシリアから通信。
(バケツを取ったらいかが。今の状態では、見えるものも見えないでしょう)
(取らないよ。取ったら怖いもん)
(シールドがあるから大丈夫ですわよ。見えない方がかえって危ないですと思いますの)
清香は首を振って見せた。
肉眼を用いず、計器とセンサーに頼る操縦法。最初の家庭教師であるアニキこと、巻紙礼子。清香に仮想空間でのIS操縦を教示している。
「さて」
清香は目を開けた。計器とセンサーの表示。彼我の距離、高度差。白い形同士の距離で到達時間が割り出せる。
双天牙月を構える甲龍。
脇を閉じ、雪片弐型を構える一夏。前回の戦いの教訓を生かし、振り回すような真似はしない。
先ほどから妙に頭がすっきりしている。ISに乗るといつも頭に
(……日頃の行いが活きてきたかな?)
成長したに違いない。模擬戦開始の合図。セシリアの指示はグー。
「突っ込むのに援護とかは?」
「バッカニアは旧型。燃費が悪いのはご存じでしょう。今の清香さんならわたくしの援護なしでもなんとかなりますわ」
「なんとかならないよー!」
セシリアは連戦があとに控えている。最低限の助力のつもり。
涙目で三七ミリ軽砲を撃ってみた。弾丸が空を切る。狙いをつけるのに戸惑っているうちに、白式と甲龍が接近する。
白式と甲龍が二手に分かれる。正面からは甲龍。センサーが白式の動きを捉えている。あわてふためくが、極端に抽象化された画面では迫力がない。
(落ち着こう)
甲龍が双天牙月を振りかぶる。攻撃と防御に長ける。「うわわっ」そのくせ足癖が悪い。
凰鈴音が、チェ、と舌打ち。「なんで避けんのよ」
「当たったら痛いよっ」
「シールドがあんのよ。痛いわけっないじゃないの!」
「わーっ!!?」
三七ミリ軽砲を取り落とす。銃に注意が向いたとき、横合いから一夏が突撃。突いてくる。一発目が装甲に当たって軽い衝撃が走った。驚いているうちに二発目を当てようと踏み込んでくる。
(あれれ?)
ゆっくりだ。白く象った形が何層にも重なって見える。形と形との間の距離から時間が算出できた。清香は一番先を行く形に向かって手を伸ばす。
雪片弐型が装甲表面を擦過した。火花が飛び散るなか、白式の手首をつかむ。慣性を生かしたまま回転し、甲龍が飛ぶ方角へ投げ飛ばした。
清香は目を丸くした。驚いた。凰鈴音が白式を抱え込むように受け止める。
甲龍が動く。真っ正面から突っ込んでくる。形はど真ん中だ。先ほどと同じく一番先を行く形に向かって飛び跳ねた。
空を駆け上って天地逆。甲龍の勢いをPICを使ってねじ曲げる。向かう先には一夏の白式。真っ正面から衝突。
通信のなかにパチパチという音。セシリアの拍手。
(指示は?)
グーだ。ちぎっては投げ、ちぎっては投げる。清香無双。
「わたし、もしかして天才?」
などと喜んだ、その三時間後。
ちょっと身体が痛いかなーと笑いながら夕食を摂った。
部屋に戻る。お腹が捻れるような激痛。強烈な吐き気。
「ウエェェェエェエエエッェェェ」
洗面台に向かって身を乗り出す。一通り吐き終えた後、激痛が全身の筋肉という筋肉に転移した。床で泣きながらのたうち回る羽目に。
「うわぁーん! 痛ぁーい! 身体が痛いよーっ!! 助けてー! アニキー! おねーさーん!!」
当初、相方はセシリアではなく打鉄零式でした。
誰かいませんかー。→3組が手を上げる。二人が手を上げて、そこのフードファイター。という流れ。
グー・チョキ・パー……のあたりで、さすがによくないかな、と思い直してセシリアにしました。
次は区切りを目指して仕込んでいきます。