六機の駆逐型ISは剣を量子化し、入れ替わるように体躯よりもやや長い砲塔を実体化させた。
ランチャーの機関部からバイパスケーブルを引き出し、腰部の接続口へとつなげる。
「統合火器管制リンク、アクティブ。チャンバー稼働状態、良好」
指揮機へ向けて伝達。六機すべての状態を確かめ、続けざまに次の手順を読み上げた。
「ランチャーレール、ロック解除」
六機の搭乗者が復唱する。
留め具が外れ、砲身が延伸する。約八メートルほどの長さ。空中から機械獣を捉えたまま、チャンバー内部のエネルギーが砲撃可能な域へ達するのを待ち望む。
機械獣は異常を察したか、長砲身一二〇ミリ滑腔戦車砲を空へと向けた。駆逐型ISが頻繁に互いの位置を入れ替えている。にも拘わらず、その砲口だけは常に機械獣を捉えていることを悟った。
大気が鳴動。移動中の打鉄高機動型・弐が脚を止め、一息に逆進する。砲弾が左前方を飛翔した。防壁へと着弾。爆炎が空中に舞った。
コンマ数秒後に別の火焔が出現。紫電改二機、打鉄高機動型二機が増速しながら位置を変える。至近弾による爆圧で破裂した弾片がシールドを激しく叩いた。
動き回る機械獣。巨躯の防御にまでは手が回らないらしい。重装ラファール・リヴァイヴ・カスタムの群れが楯と
砲撃が繰り返される。着弾のたびにフィールド内に激震が走った。土砂が崩れ、生き埋めになっていたラファール・リヴァイヴ・クァッドファランクスの姿が露わになった。後退しながら
爆風と震動により、フィールド内で攪拌された
火の粉は、機械獣の砲撃だけが原因ではなかった。熱量が駆逐型ISの周囲で増大していたのである。砲撃の的を避けるために飛翔するたび、機体の周囲が発火する。外からは炎の帯をまとっているように見えただろう。
機械獣の咆哮。反響が収まらぬうちに後ろ足を覆う鎧の留め金が外れた。巨大な推進ユニットが実体化する。左右に一基ずつ。前脚にも小型の推進ユニットが姿を表す。
多層シールド展開中のラファール・リヴァイヴ・クァッドファランクスに向けて猛烈な突進を敢行。
「!!?」
防御姿勢をとったISの頭を踏みつけ、空中へ大きく飛び上がった。推進ユニットを点火し、ランチャーを抱えた打鉄高機動型・弐めがけて驀進した。
大きく口を開ける。地面から高角度で射撃を受けた。構わず打鉄高機動型・弐の腕に食らいつき、かみ砕かんと頭を激しく振る。
ギギギ……と牙がシールドにめり込んでいく。
が、機械獣の横合いから一陣の影が出現する。燕二〇改が【壱】と書かれた物理盾の先端を、機械獣の口に押しこんでいた。
「畜生が! 腹ァかっさばいて喰うぞ!!」
猛りながら武漢語で言い放つ。盾ごと乱暴に押し出す。ランチャーを抱えたまま増速し、足蹴にした。
「圧縮完了。トリガー、アクティブ!」
紫電改二機がいちはやく発射準備を終えた。「アクティブ。先に撃つが、よろしいか?」
ほぼ同時に多数の閃光がほとばしった。機械獣が距離を置きながらの砲撃。砲弾の飛翔音で声がかき消される。
「撃たせろ」
「念のため熱遮断シールドを展開中だ。あと二〇秒で終わる」
重装ラファール・リヴァイヴ・カスタムの
緑色のランプが明滅する。
青島が準備を終えた駆逐型ISらに砲撃許可を伝える。
「熱遮断シールド展開完了。砲撃、始め!」
各機がトリガーを押し下げる。
これまでのものよりも強烈な閃光がほとばしった。
ISコアより供給された膨大なエネルギーをチャンバー内で圧縮。エネルギーを唯一の出口であるレールを伝って射出。高速で運動する電子によって衝撃波面が発生した。
砲撃とは比較にならない衝撃が、フィールドに展開していたすべてのIS群を包み込む。
爆風が塵芥を吹き飛ばした。膨大なエネルギーの奔流。重装ラファール・リヴァイヴ・カスタムはピットやシャッターへの影響を恐れて、
「今度こそやったか……?」
青島が周囲を確かめる。
巨躯は健在だが、外部装甲に無数の亀裂が走っていた。機械獣はフィールドの障壁に叩きつけられ、横たわっている。鎧と推進ユニットが無残に砕け散っていた。
重装ラファール・リヴァイヴ・カスタム四機が戦槌を握り直す。
「アンノウン1は完全に破壊する」
指示を伝える。全員がビューヒェル空軍基地の情報に触れていた。アンノウン1が無人機であることを承知しており、機体を構成する部品に至るまで、すべてを破壊し尽くして無に帰すつもりでいた。
一斉に戦槌を振りかぶったとき、上空から機械で歪めた、人間の声が降り注いだ。
「それは困るな。こいつは、
新たなISが一機出現。膝をついた巨躯の頭上。小振りな濃い青紫色のISだ。あたかもシジミチョウが羽を広げたような鮮やかな姿形をしている。搭乗者は白いバイザーで顔を隠していた。
ハイパーセンサーがIS反応を検知。青島は「友軍」を示す光景に困惑を覚えた。
――――なぜならセンサーが示す名は、
「……眺めているだけはうんざりだ……」
挑発するかのように掌を天へ向け、指を折る。
傲岸不遜な言葉を発した。
「……今しばらくは
歓喜で歪んだ口元が、バイザーの端から垣間見えた。
電子が加速しながら金属棒の周囲にとどまり、その加速が激化するにつれ発光現象を伴う。エネルギーソードだ。片手で振るうと、火の粉が舞った。