「……どれだけ通用するか……」
何機撃墜できるか。
マドカは難易度の高いゲームで遊んでいる気分だった。
身体を傾かせ、ビットとともに急旋回に入った。鈍足のISがいたはずだ。
ラファール・リヴァイヴ・クァッドファランクス。狙われていると知って、防楯である
マドカは嗜虐的な笑みを浮かべる。
(……行けっ!)
ビットからレーザー射撃。直後、ラファール・リヴァイヴ・クァッドファランクスが驚愕した。
背部からレーザー直撃。四門ある
「……なぜ、という顔だな……」
直進するはずのレーザーを曲げた、かに見えた。
実際のところ鎖交するよう二発同時に射出したにすぎない。
光の変調。ビットの位置を誤認させるまやかし。手品の
(……足りない)
(……私を驚かせるほどの、
圧。センサーに六つの輝点。
背後から駆逐型六機の逆落とし。
ランチャー・レールの先端からプラズマの刃が出現。
(……力が欲しいッ!)
六対一だ。
織斑マドカは背中を倒し、大の字に四肢を広げながら回転した。刃と刃の隙間を縫い、さらに推力を加えて斬り上げる。淡い黄色の機体が【弐】と描かれた盾を取り落とした。
さらに身体をひねりこむ。空中で踊るような舵取り。振り返ったとき、一条の黒煙が見えた。
紫電改・弐が推進器を損傷。生じた火花が可燃性ガスに触れ、爆発したからだ。
地面に降り、後退するかと思いきやラファールの群れに混ざった。
空中で
巨躯の外部装甲は損傷が進行していた。至る所に陥没と割れが生じている。脚部と腰部の装甲に巨大な杭が撃ち込まれ、地面から逃げられずにいるためだ。
白い目を小刻みに揺らし、取り囲むIS群に対応できずにいる。
(……足らない……足らない)
マドカは渇きを覚えていた。
脆弱な輸送機を守る、盾扱いではないか。マドカのなかでフラストレーションが蓄積していく。
マドカは直感にしたがって顔を上げた。カチ、という小さな音が聞こえ、確認せぬまま身体をひねりこんだ。
燕二〇改がランチャーの砲口を向けていた。
あたりは爆炎と煙が立ちこめていた。地上の状態が
視界にちらつき。五条のプラズマ光に続いて、燕二〇改・壱、弐の敵意を露わに感じとったのだ。
突き出された刃を避けるべく、マドカは高度を下げた。防御態勢のまま動けなくなった巨躯を見据える。
崇明航空基地から出撃する直前、作戦指導部が直接マドカへ任務を説明した。ひとつは巨躯の監視。ふたつめは万が一巨躯が破壊されそうな事態が陥ったとき、介入して阻止することだ。
(指導部の連中、やけに無人機にこだわっていた……)
マドカの原隊は
現在の部隊は違う。
(
なぜなら。
スコール・ミューゼルがマドカに言い聞かせた言葉を正しいとするならば、転換期は三年前である。
(……同時期にシノノノ・タバネの名がIS以外で聞こえ始めた)
篠ノ之束が独自のナノマシン技術を用いて医療・美容業界への華麗な転身を図ったのだ。医療用ナノマシンを題材にした論文を発表。博士号を取得する傍ら、数多のベンチャー企業、製薬、化粧品工場に至るまで、医療・美容に関連しそうな企業を次々と買収して傘下に収めた。
ISコアを応用した、全世界通信インフラ整備事業で指折りの資産家となっていたが、買収額総額は保有資産を優に超えていた。さらに篠ノ之基金までも設立した。
その資金はどこから。
スコールは
見えてきたもの、単純な答えだ。
篠ノ之博士は研究者。同時に商売人でもある。
(……ISを、
そして
土煙のなか、マドカは反応しないはずのハイパー・センサーが励起する一瞬を見いだす。微細な糸。たぐり寄せた先に、何があるか。
(……私はコイツが欲しい。コイツは無人機としてではなく、
赤い光が浮かび上がる。巨躯の両眼が紅く染まった。
「遅かったな。
▽▲▽
「――ッ!!?」
重装ラファール・リヴァイヴ・カスタムが力をこめる。
だが、動かない。見かねた紫電改・弐が長刀を肘めがけて横合いに振るう。装甲を押し切らんとした。
剥離し、ひしゃげ、破断し、落下する。内部が露わになってもなお、
上体を起こし、拳を造る。振りかぶって杭を叩いた。土に埋まるまでたたき続ける。貫通した杭が外部装甲を砕く。腰部と脚部の双方。
「こいつ!」
重装ラファール・リヴァイヴ・カスタムの一機が叫んだ。心なしか、声がうわずっている。
カチカチ……という微弱な音がした。青色の小さな腕の姿。胴体ほどの巨大な腕を操っている。
小刻みな振動が消えている。ゆっくりと周囲を
重装ラファール・リヴァイヴ・カスタムらが後退。代わりにラファール・リヴァイヴ・クァッドファランクスが前進した。
「クァッドファランクス。砲撃、始め!」
「重装隊、
指揮機が矢継ぎ早に叫んだとき、多数の発射炎が閃いた。
無数の砲弾。装甲に激突するたび、火炎と爆発が生じた。
胸部、腹部は筋肉を象った灰色の線は見る影もない。
土煙が静まっていき、逆に砲火が拡大する。
大きな爆発。
肩の装甲が崩落した。内側には青色の装甲。
赤い瞳が明滅し、最も大きな目標を見定める。口を覆っていたマスクの留め金が砕け、おどろおどろしい咆哮がフィールドに響き渡った。
砲弾が空を切る。
今、いたはずの巨躯が消えている。一条の赤い残像が砲火のなかに残っていた。
移動距離、わずか二〇〇メートル。
遅れて雷のような鳴き声が聞こえ、
視線が集中する。ラファール・リヴァイヴ・クァッドファランクスが膝をついた。黒いオイルが地面に流れ出している。
腕を振るい、もう一機のクァッドファランクスに向けて放り投げる。
慣性のまま地面に横たわったIS。搭乗者が
装甲全体にパイルバンカーの衝撃が伝播した結果、無数のひび割れが生じ、戦闘不能に
――――
あたかも数えあげるように。
掲げていた拳を引いて、腰を落とし、再び振りかぶった。