グランブルーファンタジー クロスオーバーFエピソード集   作:第22SAS連隊隊員

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カイムの剣、鉄塊

【カイムの剣】

 

意識を取り戻してはじめに感じたのは、土の感触と草の匂い。ゆっくりと目を開ければぼやけた視界に緑色の物体、生い茂る草木が見えてくる。

体の具合を確かめながらゆっくりと身を起こしてぐるりと辺りを見回すと、自分の直ぐ後ろに見慣れた赤い巨体が横たわっている。ハッと直前の出来事を思い出して赤い巨体のあちこちを確かめた。光沢を放つ赤い鱗にはかすり傷ひとつ見当たらず、それから更にくまなく調べたがやはり傷は一つもなかった。

 

「カイム?」

 

ちょうど調べ終えたところで巨体から声がかかる。数歩後退ると赤い巨体がのそりと動き、長い首の先にある顔がこちらを向いた。

 

「……何がおきたか分からぬが、お互い助かったようだな」

 

紅の翼竜アンヘルの言葉に男――カイムは首肯で応える。それから赤竜は長い首を伸ばしカイムよりも更に高い視点で辺りを見回す。やがて首を降ろして顔をカイムに近付けると、見えたものを伝えた。

 

「辺り一面は森になっている、しかもかなりの広さだ……いったいここはどこだ?」

 

自分たちは何故、森の中にいるのだろうか? 記憶が正しければ、封印の崩壊と共に現れた巨大な母天使と赤子達を止めるために立ち向かい。自分なら止められると名乗った幼子を母天使まで送り届けた。その後は空を漂う夥しい数の赤子に襲われながら、文字通り世界が止まってゆく様を見届け――。

ここで記憶は途切れている。どれだけ頭の中を探ってもそのあとの記憶は全く出てこない。

もしかするとここは死後の世界なのだろうか? カイムとアンヘルが本気でそんなことを考え始めた矢先のこと。

ガサリ、と背後の草むらがざわめく。

 

「……!」

 

迂闊だった。突然の出来事に現状の確認を優先するあまり周囲の警戒を怠っていた。カイムは素早く愛用の剣を引き抜くと振り返りながら構える。

振り返った先に居たのは宙に浮かぶ小さな赤いトカゲに軽装の少年、細身の剣を隙無く構える女騎士だ。一瞬にして空気が張り詰め、一触即発の状態となる。

カイムは剣を構えながら対峙する二人と一匹をつぶさに観察した。少年と女騎士が身に着けている鎧や剣は見たことがない、少なくとも連合軍や帝国の人間ではなさそうだ。二人の傍らに浮かんでいる小さなトカゲは幼生のドラゴンだろうか? だとすれば二人の内のどちらかが契約者である可能性は高い。

お互いが相手の出方を伺い、一歩も動こうとしない。不用意な行動は死につながると双方は理解しているからだ。このまま終わりの見えない我慢比べが続くと思われた矢先のことであった。

 

「うわ、すごーい! 大きなドラゴン!」

 

二人と一匹の後ろから、蒼い長髪の少女がひょっこり顔を出すなりそう声を上げた。緊張感とはまるで無縁なその声色に場の空気が掻き乱される。

 

「カイム、少し待て」

 

低く威厳のある声で契約者を制すると、この隙を逃さずにアンヘルは目の前に現れた集団に幾つかの質問を投げかける。

ここはどこだ? お前たちは帝国の人間か? 母天使はどうなった?

質問の答えは三つ目を除いて返ってきた。

ここは数ある島の一つである。女騎士は元帝国の軍人だが訳あって離れ、今は帝国から逃げながらとある島を目指している。母天使とはなんだ?

そのあとは向こうが質問をする番となり、喋れないカイムに代わってアンヘルが答えた。その中で星晶獣を始めとした聞いたこともない言葉がいくつも混じっていた。

 

「ふむ……」

 

お互いの質問を終えたところで、アンヘルは改めてここが何処なのかを考える。目の前の集団の女騎士は元帝国の軍人だそうだが、身に着けている装備の意匠は明らかに自分たちが戦っていた帝国のものと違う。更にこの世界は幾つもの浮遊島が国を形成しており、それぞれの島に星晶獣と呼ばれる強大な力をもった存在が居るらしい。

ここまでの情報が揃ったところで紅の竜の中では一つの答えが、普段の自分なら余りのバカバカしさに失笑すること間違いなしの解が導き出される。

 

「カイム、どうやらここは異世界のようだ我等は何らかの理由でこの世界に飛ばされたらしい」

 

アンヘルの口から出た余りにも突拍子のない言葉に、普段は殆ど表情を変えないカイムもさすがに眉を顰める。しかし、アンヘルがここが異世界であるという根拠を一つ一つ説明していくうちに、徐々にその顔は何時もの無表情へと戻って行った。

 

「何よりも、お主は帝国の鎧を見間違えるのか」

 

その言葉を聞いてカイムは女騎士を一瞥すると、表情は眉を顰める前に戻っていた。カイムがここが異世界であるという事実を受け入れたところで、アンヘルは改めて自分たちを見つめる集団に話しかける。

 

「先程はすまぬな、改めて名を名乗ろう。此奴の名はカイム、我はその契約者だ」

 

「騎空団の団長をしているグランです」

 

「カタリナだ。元帝国の人間だったが、今はわけあって帝国と戦っている身だ」

 

「おいらはビィ! お前すげぇなぁ、なに食ったらそんなにデカくなれるんだ?」

 

「ルリアです。私は帝国に囚われていましたが、カタリナに助けてもらいました!」

 

「一つ聞きたいのだが、お主達はなぜ帝国から逃げている。なにか理由があるのか?」

 

アンヘルの質問にカタリナは順を追って帝国から逃げ続けている理由を話し始めた。帝国はルリアが持つ力を狙っており、それを軍事利用しようとしている。その非道を許せなかったカタリナは隙を見てルリアを連れ出すが、既に見抜かれていたらしく追われる身となった。

その道中でグランも巻き込まれ、彼は空の果てにあると言われている島を目指すため、カタリナとルリアの二人は帝国の追っ手から逃げるため。目的が一致した双方は協力することとなり、現在は逃亡生活を送りながら空の果てを目指している。

 

「帝国と名の付く輩はどこにいても愚行しかおこさないのか。呆れ果てる」

 

ふん、とアンヘルは鼻息と共に呆れの言葉を吐いた。

 

「それにしても、二人はこれからどうするんだ? 別の世界から来たならやっぱり帰る方法を探すのか?」

 

ビィが尋ねる。

 

「さぁな、元の世界に未練は無い。これから此奴と共に旅でもするか……」

 

「カイムさん、良かったら僕達の騎空団に来ませんか? 生活には困りませんし、何よりも貴方達が居てくれればとても心強いです」

 

グランは優しげな、それでいて真剣な口調でカイムとドラゴンにそう言った。

ふむ、と赤い竜は声を漏らすと傍らの契約者に尋ねる。

 

「だ、そうだ。どうする、カイム?」

 

そういうとカイムとアンヘルはしばし無言で見つめ合い、やがてグランへと向き直る。カイムはゆっくりと首を縦に振った。

 

「もとより我等は行く宛もない身だ。その言葉に甘んじるとしよう」

 

一人と一匹の承諾にグラン率いる騎空団の面々は大はしゃぎで喜ぶ。「それじゃあ、まずは騎空挺に行きましょう」とグランは言い、他のメンバーを率いて来た道を戻って行った。その背中をカイムは追うようにして歩き始める。

幸いなことにカイムよりも先行したグラン達はカイムが浮かべた笑み、両口端が歪な角度で釣り上がり、人に決して見せてはならない表情を見ずに済んだ。

そしてアンヘルは口の利けない契約者が胸中でつぶやいた言葉をはっきりと聞き、それを決して口にはしなかった。

 

――また帝国のダニを殺すことができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【鉄塊】

 

夜の帳が降り、太陽の代わりに白い月が地上を柔らかく照らす。ここはとある島にある街だ。

普段なら仕事を終え家路に付いたり、酒を求めてやってきた人々でごった返している時間だが、この日は街に住む人の影も形も無かった。あちこちに立てられた篝火が静かに燃えており、時折パチパチと薪が爆ぜる音が石造りの街に響く。しかし。街の中央の広場だけは大勢の人間がとある集団を取り囲んでいた。

 

「抜かったな……」

 

「カタリナ……」

 

「ルリア、大丈夫だ。必ずここから抜け出すぞ」

 

「ちくしょう、卑怯だぞお前ら!」

 

男一人と女二人、空飛ぶ小さな竜が一匹。彼等はとある理由で帝国から逃げ続けている騎空団だ。そして現在、彼等は大勢の帝国兵に囲まれている。

少し前、彼等はこの街に自分たちが欲する情報を知る人物がいるという話を聞いて、この街にやってきた。だが、待っていたのは大勢の帝国軍であり彼等は何とかして逃げようとしたが、入念な下準備を整えた帝国によっていつの間にか街の中央に追い詰められていた。

円形の広場は外周を何十人もの帝国兵が埋め尽くしており、突破することは至難の業だ。だからといってここで諦めるつもりは毛ほどもない。

女騎士カタリナは少女ルリアを庇うように立ち、打開策は無いかと周囲を隙無く観察する。何か、何か方法はないか。カタリナは視線を右に左に動かすが見えるのは帝国兵の姿ばかり。カタリナは自分が囮になって他の仲間を逃がすという選択肢を取りそうになったとき、幾重もの帝国兵の壁の向こう側にいつの間にか男が立っていることに気が付いた。

薄汚れた外套を羽織った男、乱雑に伸ばされた前髪で目元は見えないが間違いなく「彼」だ。一筋の希望の光りが差し込む。

男の気配に気が付いた何人かの帝国兵が振り返る。それが彼等が見た最後の景色となった。

外套の男が右足を踏み込む。余りにも強烈な踏み込みで石畳が砕け、男の足が僅かにめり込んだ。左から右へと腕を振り、その動きに合わせて何かが猛烈な風切り音と共に振るわれる。腕が振り切られると同時に男の前にいた数人の帝国兵が血の花へと姿を変え、石畳から大量の砂埃が舞い上がる。男が振るったもの、それは余りにも大きく分厚く、そして無骨過ぎる代物であった。

男の身の丈程はあろう剣の形をした鉄の塊、まさしく鉄塊と呼ぶに相応しい得物で男は一振りで数人の帝国兵を屠ったのだ。

鎧を着たままの帝国兵の上半身が石畳に落ちて、金属と石がぶつかりあう耳障りな音を撒き散らす。

男が、カイムがゆっくりと顔を上げる。歯をむき出しにして――嗤っていた。一拍だけ静寂が当たりを支配する。

 

「こ、ここ」

 

突然の出来事に上ずった声で帝国兵の一人が何かを喋ろうとする。

 

「殺せえええええぇぇぇぇぇ!!」

 

それが彼の遺言となった。鉄塊が再び振るわれる。

 

 

 

 

 

「ああ、もう! なんだよアイツ! いきなり現れたと思ったら暴れだしてさ!」

 

虐殺が繰り広げられる広場を見下ろしながら、帝国軍の軍人であるフュリアスは腹立たし気にそう叫んだ。

先程まで自分の勝利を確信し、あとは嬲り殺しにされるであろう憎き騎空団の最期をゆっくりと眺めようと思った矢先に、奴が現れた。現れるや否や、バカでかい剣のようなものを振り回して次から次へと部下を肉塊に変えてゆく。

このままでは負けるのは確実だ。ただでさえあの騎空団には辛酸を舐めさせられている、今回も負けるなど、プライドが許さない。

 

「おい、アレを出せ!」

 

「あ、アレを? まだ細かい調整が……」

 

「いいから出せ! どうせテストついでにあいつらに使うつもりだったんだ! それともなに、そんなに処刑されたいの?」

 

「た、直ちに!」

 

メガネの奥でフュリアスの目が冷たく光る。睨まれた傍らの帝国兵は上ずった声でそう言うと、慌てて後方に走っていった。

苛立ちを吐き出すようにフュリアスは舌打ちすると、今度は嗜虐的な笑みを浮かべて広場を見下ろす。

 

「そうやって調子に乗っているのも今の内さ」

 

小さな口から忍び笑いが漏れる。

 

 

 

 

 

一体どれだけの花を咲かせたのだろうか、石畳の広場は真っ赤に染まっていた。鉄塊が風を切ると何輪もの赤い花が咲き乱れ、広場を更に艶やかに染めてゆく。何人かの帝国兵が花を咲かせている男に果敢に挑むが、次の瞬間には彼等も赤い花に変わる。

カイムが振るう鉄塊は既に真っ赤に染まっていた。黒ずんだ刀身は帝国兵の血で染め上げられており、振るわれる度にその上に新しい血が塗られる。

広場の石畳全てが血で塗り潰され、その場の帝国兵の数が半分を下回った時であった。篝火を震わせる程の咆哮が夜空に轟く。

これには流石のカイムも鉄塊を振るうことをやめ、辺りを見回した。彼だけでなくカタリナたち騎空団、それだけでなく帝国兵も音の発生源を探そうとあちこちに視線を彷徨わせていた。

 

「あれを見ろ!」

 

帝国兵の一人がある方向を指差した。彼が差した先に広場にいる全員が注目する。影が迫ってきた。時間と共に影は巨大化し徐々にその輪郭が見えてくる。再び篝火を震わせる咆哮が轟き、巨大な影が広場目がけて急降下してきた。風切り音がしたと思えば一瞬で影は地上に降り立ち、大地を震わせてその姿を露わにする。

それは黒い龍だった。まるで闇夜が竜の姿となったような漆黒の鱗を持つ黒い竜は、赤い瞳でカイムを見下ろしていた。

 

「は、はは……」

 

兵士の誰かが鎧の奥から笑い声を漏らす。

 

「フュリアス様のドラゴンだ! これで勝てるぞ!」

 

黒い竜の登場に帝国兵が確信を持って叫ぶ。それは周囲の兵士たちにも伝播し、広場の帝国兵達は歓喜の雄叫びを上げた。

 

「マジかよ……」

 

「フリュアスめ……こんなものを持っていたのか」

 

逆に騎空団の面々は苦虫を噛み潰したような渋面を作っていた。騎空挺の操舵士であるラカムは得物の銃を構えることすら忘れて呆然と黒い翼竜を見上げる。カタリナは歯ぎしりし、このドラゴンを創り出した小人を睨み付けたかった。

ブラックドラゴンは自身を見上げる人間たちを一瞥すると、足元に立つ人間、カイムに狙いを定めた。一噛みで食い殺そうと鋭い牙が並んだ口を開き、カイムに襲いかかる。

 

「カ――」

 

カイム避けろ!! とカタリナは叫ぼうとする。そして、叫ぶ前に結末は訪れた。

ブラックドラゴンの横面に鉄塊が叩き込まれる。速さと重さ、カイム自身の膂力が合わさった凄まじい一撃は硬い鱗を物ともせず叩き割り、ドラゴンの頭を横に殴り飛ばす。その先にあった石造りの民家に黒い竜は突っ込み、崩れた家の下敷きとなった。しかし、カイムの攻撃はこれで終わらない。

足元の石畳を砕きながらカイムは跳んだ。家々の屋根を越えるほどの高さまで跳び上がり、跳躍の限界の達したところで鉄塊を上段に構える。上昇から下降へと変わり始めたところで、瓦礫の下敷きになっていたブラックドラゴンが身を捩り顔を出す。自分に向かって落下する漢を見上げた。竜の眉間に分厚い鉄の刀身がめり込んだ。

ドラゴンは悲痛な叫び声を上げながら再び地に倒れ伏す。着地したカイムは間髪入れずに鉄塊を下から上に斬り上げ、石畳ごとドラゴンの頭を打ち上げた。

 

「こともあろうに黒い竜を出すとは」

 

遥か上空から広場を見下ろしているレッドドラゴン、カイムの契約者であるアンヘルは呆れたようにそう呟く。

 

「己の不幸を嘆くことだな。ああなったら誰にも止めることはできん」

 

赤い竜は傍観に徹することを決めた。黒い竜に四度鉄塊が打ち込まれる。

そこからは戦いとはとても呼べない一方的な暴力が続いた。カイムはブラックドラゴンの頭を何度も鉄塊で殴打し、殴られる度にドラゴンは体勢を崩し防御も回避もままならず血を吐き続けた。それだけでなく、鉄塊が振るわれる度にドラゴンの頭は徐々に抉られ、砕かれ、削げ落ちてゆく。

どれだけの時間が経過しただろうが、黒い竜は既に虫の息となり、その巨体は痙攣するように震えるばかりであった。雄々しかった角は圧し折られ、赤い瞳はとうに潰されて肉の破片と化している。もはやドラゴンの頭は血と肉と骨の混合物と殆ど変わりない状態であった。

カイムは鉄塊を上段で構えると右足を踏み込む。踏み込んだ箇所の石畳が粉々に砕け散り、カイムの足が大きくめり込んだ。そのまま勢いに乗せてブラックドラゴンの頭にとどめの一撃を叩き込む。硬い鱗と骨は安々と砕かれ肉と脳漿が一瞬で叩き潰される、鉄塊よってドラゴンの頭が真っ二つに割れ、辺りに血と肉を撒き散らした。

 

「……」

 

フュリアスは呆然としていた。まだ未調整とはいえ最新作の生物兵器、それも最強の生命体と名高いドラゴンが文字通り為す術もなく殺されたのだ。オマケに戦いの内容も、男が鉄塊でドラゴンを殴り続けるだけの余りにも一方的な虐殺だ。

ふと、肉塊を見下ろしていた男が嫌に滑らかな動きで頭を向け、フュリアスを見た。嗤っている。

狂気と狂喜が入り混じった、血と肉に濡れた笑みで男はゆっくりと口を動かし、声のない言葉を紡ぐ。

 

――次はお前だ。

 

「ヒッ……!」

 

本能的な恐怖がフュリアスの心臓を鷲掴みにする。そのまま握り潰そうとするが、フュリアスは逃れるように叫んだ。

 

「て、撤退! 撤退だ!!」

 

大声でそう叫ぶと帝国兵の誰よりも早くその場からフュリアスは逃げ出す。一歩遅れて広場の兵士たちも我先にと逃げ出し、やがて帝国兵は一人もいなくなった。

カイムは逃げた帝国軍を追いかけるために、上空で待機しているアンヘルを呼んだ。直ぐに真上から巨大な影が猛烈な風切り音と共に近付いてくる。その背中に飛び乗ろうと両足に力を込め、跳躍しようとした。

 

「カイム!」

 

すんでのところでカイムの背中へカタリナが叫んだ。

 

「深追いは危険だ、ここは一旦戻るべきだ!」

 

カイムは振り返る。カタリナの後ろでは傷を負った仲間たちが互いに応急処置をしており、身体のあちこちに包帯や布を巻いていた。一度だけ帝国軍が逃げた方を見やると、カイムは無言で頷き、鉄塊を担いで仲間の元へと歩み寄る。カタリナ達のもとへ辿り着くと同時に、アンヘルが翼を大きく羽ばたかせ広場に緩やかに着地した。

 

「あれだけのモノを見せつけられたのだ。帝国の奴らも当分は手を出してこまい」

 

「だろうな。これでもちょっかい出してくるなら、そうとうな自信家か救いようのないアホのどちらかだ」

 

アンヘルの言葉に包帯を押さえながらラカムが同意する。他の仲間達も応急処置を終え、本格的な治療をするために騎空挺グランサイファーに戻ることとなった。

傷の痛みに文句を言いながら帝国軍とは反対の方向へと騎空団は歩いてゆく。カイムはもう一度だけ振り返った、前髪に隠れたその目には激しすぎるほどの激情が燃え盛っていた。カイムは鉄塊を担ぎ直すと遅れて仲間たちの後を追う。最後にアンヘルが広場から飛び立ち、後には頭が潰されたブラックドラゴンの死体だけが残されていた。

 

 

 

 




当初の予定ではグランが団長を務めているはずでしたが、実際に書いてみるとキャラクター的に非常に扱いづらいことに気がついたため、以降の話ではカタリナが団長を務めています。
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