グランブルーファンタジー クロスオーバーFエピソード集   作:第22SAS連隊隊員

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今回は自分も大好きなゲームのあのキャラクターが登場します。3の発売が楽しみです。





ノコギリ

【ノコギリ】

 

鬱蒼と生い茂る森の中を三人の男女が歩いていた。

一人は角を覗かせた黒い兜を被り、全身を同じく黒の鎧を隙なく着込んだドラフの男、もう一人は金髪で左右で結い、赤い軽装鎧を着た女、最後の一人は栗毛を後ろで結った青い服を着た女だ。三人は何やら話しながら森の中を進んでいる。

 

「これといった成果は無かったわね」

 

「仕方あるまい。次の島へ向かうぞ」

 

「ねぇ、ぶっ続けで探索ばっかだからさ、ここらへんでちょっと息抜きでも……」

 

栗毛の女が休憩を提案して金髪の女もそれに賛成した。鎧の男はそれもそうだな、と同調する。三人は街で何か食べることで意見が一致し栗毛の女は大喜びした。先程よりも軽い足取りで栗毛の女が先頭を進んでいると突然足が止まった。

 

「どうした、ベアトリクス」

 

「なに、もしかして忘れ物?」

 

「いや、あれ……」

 

ベアトリクスと呼ばれた栗毛の女は「それ」を指を差す。後ろの二人は彼女の両脇から「それ」を見た。ベアトリクスが差した先には地面に巨大なノコギリが突き刺さっていた。

三人はゆっくりとノコギリに近付き、手を伸ばせば触れる程度の距離でノコギリを囲む。先端が地面に突き刺さったノコギリは見える範囲だけでも人の背丈ほどはあり、幾重もの歯が凶悪さを滲ませている。ベアトリクスが上から下までしげしげと興味深そうに眺めた。

 

「ゼタ、来るときにこんなのなかったよね?」

 

「確かになかった……バザラガ、行きと帰りも同じ道だよね?」

 

「ああ、同じ道だ」

 

ゼタと呼ばれた金髪の女は確認のために聞くと、鎧の男バザラガは簡潔に答える。そうしている間にノコギリへの視線が何往復もしたベアトリクスが手を伸ばし――。

 

「触るな」

 

低く唸るような声がそれを制した。三人は咄嗟に得物に手をかけて構える。いつの間にか木陰に一人の男が立っていた、男はゆっくりと木陰から歩いてくる。森の木々によって幾分か遮られた太陽光に晒され姿が顕になった。

男は紺色のフード付きコートを目深に被っていた、鼻から上はフードに隠れており唯一見える鼻から下は色黒だ。袖を捲った右手首には大きな赤い腕輪を嵌めている。

 

「何を警戒している。同じ神機使いだろう」

 

男は警戒心を向ける三人に向かって疑問混じりにそう言った。「神機使い」という聞き慣れない言葉と、「同じ」というこの場では意味が分からない単語を聞いたベアトリクス達は得物を構えたまま頭上に疑問符を浮かべる。そうしている間にも男は近付いてくるが妙な動きは全く感じられない。

フードの男はベアトリクスとゼタの間に立ち、三人が囲んでいたノコギリに手を伸ばし、柄を片手で掴むと軽々とそれを引き抜いた。男は自身の身長を越える巨大なノコギリを片手で持ったまま表と裏を見て具合を確認している。その様子を見てベアトリクスとゼタは驚愕で固まっていた。

 

「他人の神機に触ろうとするなんて、なんのつもりだ。自分以外の神機には決して触れてはならないのは常識だぞ」

 

「……あんた、さっきからなに訳の分からないこと言ってんの?」

 

一方的に話をする男に少し腹が立っていたのか、ベアトリクスは僅かに棘のある口調で男にそう言った。男はそんなことを言われるのが予想外だったのか、微かに動きが止まる。

 

「……お前たち、神機使いじゃないのか?」

 

「だから、さっきから神機だとか神機使いだとか訳の分からないこと言うな!」

 

我慢の限界に達したのかベアトリクスが声を荒げる。続けて何かを叫ぼうとした彼女をバザラガが制して一歩前に出た。

 

「どうにも話が噛み合わない、すまないがお前の出身や所属している組織があったら詳しく教えてくれ」

 

フードの男は一瞬だけ沈黙したあと「わかった」といって話しを始める。曰く、男はフェンリルの極東支部なる組織に所属しているらしい。彼の居た場所ではアラガミというモンスターが世界の殆どを喰らい尽くし、人類は滅亡の危機に瀕しているという。そのアラガミに唯一対抗できるのが神機であり、それを扱える人間は神機使いと呼ばれている。そして彼は任務の最中に突如として気を失い、気がつけば森の中にいたという。

話を聞き終えたベアトリクス達は三者三様の反応を見せていた。ゼタは難しそうな顔で首を捻り、バザラガは腕を組んで沈黙、ベアトリクスは訳が分からないという顔をしていた。

 

「俺が話せるのはこれくらいだな」

 

「……にわかには信じられんな」

 

「同感」

 

「同じく」

 

バザラガの言葉にゼタとベアトリクスが同意する。

 

「それで、今度はそっちが話す番じゃないのか?」

 

「それもそうだな」

 

男に促され今度はバザラガがこの世界の話を始める。この世界は空に浮かぶ幾つもの島がそれぞれ国となっており、ここはその中の一つである。今から五百年前に覇空戦争と呼ばれる大きな戦いがあり、その戦争で星の民と呼ばれる種族は星晶獣という強大な力を持つ幻獣を使っていた。そして五百年後のいま、現在も星晶獣はあちこちの島に存在しており、自分たちはその調査を行っている。

バザラガは自分たちと組織に関することを伏せつつ歴史を語った。星晶獣の討伐こそが自分たちの本来の目的であるが、それを語ることは公には知られていない組織のことを話すことになる。そのためバザラガは「星晶獣の調査」という当り障りのない、尚且つ嘘でもない言葉でごまかした。

 

「……」

 

バザラガの口から語られたこの世界の成り立ちを聞いて、男は腕を組んで沈黙する。何かを考えているのか、それとも戸惑っているのか、フードを被っているためどのような表情をしているか分からない。

しばしの沈黙が場を流れたあと男は静かに口を開く。

 

「正直なことを言えばとても信じられないが……あんたらが神機使いでないことは確かだな」

 

「何か根拠があるの?」

 

ゼタがそう言うと男は右腕を上げた。

 

「この腕輪は神機を使うのに絶対に必要なものだ、逆を言えばこの腕輪をしているのは神機使いのみ。あんたらは武器を持っているのに腕輪をしていない、と言うことは神機使いではない」

 

「武器と腕輪になんの関係があるのさ」

 

「アラガミは神機以外の攻撃では傷一つ付けられない、その結果世界からは神機以外の殆どの武器が姿を消した。そして神機を制御するためにこの腕輪が必要でな。こいつがないのに神機に触ると……」

 

「触ると?」

 

「神機に喰われる」

 

真剣にフードの男は言い切った。ベアトリクスとゼタは言葉の意味が分かりかねるのか困惑の表情で男を見ている。

「喰われる」とはどういう意味なのか。何か比喩的な意味か、それとも文字通り武器に自分が食べられるのか。本当の意味がわからずとも、当事者である神機使いの男の様子からその言葉がただならぬ意味を持つのは確かであろう。

 

「武器に喰われる、という意味か?」

 

「見せた方が早いな、少し離れてろ」

 

バザラガの質問に男は寄りかかっていた大樹から背を離すと三人に離れるように言う。ベアトリクス達はフードの男から十分な距離を取ると、それを確認した男は傍らに立て掛けていたノコギリを手に取り、構えを取った。

腰を低く落とし左手を前に、ノコギリを握る右手は後ろに引いた。まるで突きを放つような構えを三人は固唾を飲んで見守る。

 

「あ!」

 

ベアトリクスが声を上げる。彼女達の見ている目の前でノコギリに変化が表れた。鍔の部分から何かが蠢く音と共に黒い顎が現れる。ベアトリクス達が驚いている間に顎に二つの黄色い目が現れ、牙が生えてくる。やがて顎は黒い獣の頭となり刀身を口内に収めるほどの大きさになった。

 

「見ていろ」

 

男は右手を、黒い獣を突き出す。一際大きく野獣の口が開かれ咆哮しながら目の前の大樹に喰らいついた。一噛みで極太の幹を食い千切り獣はあっという間に鍔に姿を消す。あとには大きく歯型に抉られた大樹が残される。文字通り目の前で大樹が喰われた。

 

「神機使い以外の人間が神機に触ると今のやつに喰われる。だから絶対に触るな」

 

「ベア……危なかったね。もう少しで死んでたよ」

 

ベアトリクスは黙って頷いた。

 

「それ以前に、不審な物にすぐに手を出すのはどうかと思うが」

 

「そ、それよりもあんた、いい加減にそれを脱いだら。顔も見せないなんてちょっと失礼じゃない? 名前だって聞いてないし」

 

「……それもそうだな」

 

その指摘を誤魔化すようにベアトリクスは慌てて男の非常識を糾弾する。男は特に反論もせずにここでようやく目深に被っていたフードを脱いだ。右手でフードを掴んで後ろに下ろすと、隠れていた銀色の髪が現れ太陽の光を照り返す。その下にある髪とは対照的な色黒の顔を見て三人は驚いた。

 

「ユーステス……!?」

 

銀色の髪に浅黒い顔、鋭い目付き。奇しくもその顔立ちは三人がよく知る人物にそっくりであった。

 

「誰かと間違えていないか? 俺の名前はソーマだ」

 

銀髪の男、ソーマ・シックザールはここで初めて名を名乗った。

 

「え? あ、ホントだ」

 

ソーマの頭を見たゼタが何かに気がついた。あとを追うようにベアトリクスとバザラガも彼の頭を見て気がつく。

 

「エルーン族特有の耳がない、確かに人違いだな」

 

あまりにも知り合いに似ていたもので驚いた、と言いながらゼタはまじまじとソーマの顔を観察する。ベアトリクスはソーマの顔をどこか複雑な表情で見ていた。

 

 

 

 

 

その後、ソーマは一先ずバザラガ達と行動を共にすることとなり、その流れで昼食を一緒に食べることとなった。町中のレストランに入った四人は店員に案内され空いているボックス席に座る。座るや否やベアトリクスが真っ先にメニュー表を開いた。

 

「んで、今日は何にする?私はパスタ!」

 

「私も同じので」

 

「俺も同じものを頼む」

 

「任せた」

 

最後のそっけないソーマの返事にベアトリクスは少しだけむくれるが、気を取り直して近くを通りかかった店員に注文を伝える。店員が店の奥に消えるとベアトリクスはゼタと他愛もない話を始めた。

仲の良い二人は今度の週末はどこに行くか、この前カワイイ服を見つけたなどと楽しげにお喋りをしている。友人の誕生日が近いという話題になったところでふと、ゼタがソーマに質問する。

 

「そういえばソーマって歳はいくつなの?」

 

「歳か、十八だ」

 

十八、その数字を聞いた途端にベアトリクスが何やら意味ありげな笑みを浮かべ、突然立ち上がった。左手を腰に当て、右手の人差し指でビシっとソーマを指差すと高らかに告げる。

 

「いいかソーマ、私は二十一歳だ。つまりアンタよりも三つ、三つも年上だ!」

 

勝ち誇ったような笑みを浮かべながらベアトリクスは三つという部分を強調して繰り返す。ゼタは呆れたようにそっぽを向き、バザラガは兜の口から大きな溜息を吐いて俯いた。当のソーマは興味がないのか腕を組んだまま無言を貫いている。

三人の様子には構わず、ベアトリクスは身振り手振りを交えながら更に言葉を続けた。

 

「そして何よりも組織では私が先輩だ! 先輩の言うことを聞く、これが社会の常識だ! だから新入りであるアンタは私の言うことに従うこと、わかった?」

 

フフン、と誇らしげに鼻を鳴らしベアトリクスの演説は終わった。沈黙を貫いていたソーマはゆっくりと目を開くと青い瞳をベアトリクスに向ける。

 

「なるほど、確かにアンタの言うことも確かだな」

 

「うむうむ、素直で大変よろしい」

 

「だが、その前にアンタは世間の常識に従うべきじゃないのか?」

 

ベアトリクスはソーマの言った意味が理解できなかったのか小さく首を傾げる。そんな彼女をゼタは小突くと、目配せして何かを訴える。ゼタの目が動いた方向にベアトリクス顔を向けると、いつの間にかレストラン中の客が自分を見ていた。

 

「あ、あの、お客様……」

 

後ろを振り返る。注文した料理を運んできたウェイターがどこか気まずそうにそう言った。

 

「~~~っ!!」

 

ベアトリクスは顔を真赤に染めると落下するような勢いで着席し、顔を真下に向ける。ソーマ達が一斉に溜息を吐いた。

 

◆◆◆

 

「まったく、ベアのせいで私達まで大恥をかいたわよ」

 

「ごめん……」

 

「少しは自制を覚えろ」

 

「はい……」

 

ベアトリクスが店内中の注目を集めてしまったため、四人は碌に料理を味わうこともなく大急ぎでかき込み、逃げるようにして店を後にした。通りに出たところでベアトリクスはゼタとバザラガから説教をくらうが、自分に非があることを認め素直に聞いている。

しかし、ベアトリクスに絡まれた当のソーマは特に何も言わずに黙っていた。その様子が気に入らないのかベアトリクスは僅かに棘のある口調でソーマに物言う。

 

「……あんたは特にないの?」

 

「何がだ?」

 

「一番文句を言いたいのは普通に考えて突っ掛かられたアンタでしょ」

 

「あんなことを一々気にするほど子どもじゃない」

 

「~ッ!!」

 

ベアトリクスの顔がむくれて何かを言いたそうにしているが、先程あのような出来事があったうえに今はゼタとバザラガの二人から説教をくらっている真っ最中だ。そして何よりもここで感情に任せて言葉を吐き出せば「自分は子どもだ」と主張するようなもの。ベアトリクスは自分たちの騎空挺に戻るまでずっとむくれていた。

その日の夜のこと、月明かりに照らされながらバザラガは騎空挺の舵を取っていた。次の島に向けて騎空挺は雲の海をひた走る。バザラガの後ろから小さな足音が聞こえると、振り返らずに背後の人物に声をかける。

 

「ゼタか、なんの用だ」

 

「ソーマのことでちょっとね」

 

「なぜ、無関係なソーマの同行を許したのか。だな?」

 

うん、とゼタは小さく答える。バザラガは舵を取りつつ前を向いたまま彼女の疑問に答えた。

 

「まず、ソーマの持つ神機は危険だ。あれを野放しにしておけば何が起こるかわからない。下手に放っておくよりも同行させて様子を見るのがいいだろう」

 

「確かにそうだね」

 

バザラガの言うことは最もであった。この世界では極めて異質である力を持ったソーマ、彼の存在がどのような影響を及ぼすかはまったく想像がつかない。もしかしたら何れは自分たちの手に負えないほど脅威となる可能性も有り得る。そのような事態を防ぐためにもまずは同行させて様子を見るべきだとバザラガは判断した。

 

「それに神機はもしかしたら星晶獣に対する新たな力になるかもしれん」

 

これも当然だ。この世界のヒエラルキーで頂点に君臨する星晶獣。バザラガ達が持つ武器も星晶獣に対抗するために作られたものだが、ソーマの持つ神機はもしかしたらそれ以上の力を秘めているか、はたまた対星晶獣の新たなヒントになるかもしれない。

自分たちの真意を知らないソーマのことを不憫に思ったゼタは俯いて下唇を噛んだ。同時に、これも組織のためだと言い聞かせる。私情を挟んでは集団は立ち行かない、これが当然だと彼女の中で冷徹な組織のゼタが人間のゼタに言い放った。

 

「それと、いきなり別の世界に放り出され、右も左もわからないような奴を見捨てるほど俺も無情ではない」

 

まさかそのような理由が出てくるとは思わなかったのか、ゼタは一瞬だけ面食らったような顔をして小さく笑う。

 

「……ちょっと意外」

 

「俺とて人の子だ。それなりに人情はある」

 

厳つい風体にはとても似合わない台詞を事も無げに口にするバザラガ。そんな彼の意外な一面が垣間見え、クスクスとゼタは笑う。

それじゃあおやすみ、とゼタは大きな背中に就寝の挨拶をして部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

「以上が現在の調査結果だ」

 

「全てハズレか」

 

とある一室で二人の男がテーブルの上に置かれた紙を見ながらそう言った。二人がいる部屋は床や家具にたっぷりと埃が積もっており、長い間人の出入りがなかったことが窺えた。

天窓から差し込む光が部屋の中を舞う埃を照らす。片方の男がテーブルの上に置かれた紙を畳んで懐にしまうと、それに合わせて埃たちが舞い踊る。

 

「一つ聞くが……あんた、何か隠してないか?」

 

「なんのことだ?」

 

報告を聞いていた男は灰色の瞳から鋭い視線を放ちながら男に尋ねる。尋ねられた男は特に変わった様子もなく、さも当然のようにそう返した。

 

「……すまない、なんとなくそう思っただけだ。気分を悪くしたのなら謝る」

 

「気にするな」

 

そう言って尋ねられた男は床の埃の上に足跡を残しながら部屋から出て行った。しばらくして、もう一人の男も腰のホルスターに収められた銃を揺らしながら部屋を後にした。

 

 

 

裏通りの古びた空き家を出たバザラガは表通りへと向かう。大勢の住民が通りを行き交うなか、バザラガは人混みを掻き分けながらとある喫茶店のテラスに入った。色とりどりのパラソルの花が咲き乱れる店先、パラソル下のテーブル席にベアトリクスがジュースを飲みながら楽しげにゼタとおしゃべりしている。

 

「終わったぞ」

 

「お帰り。思ったより早かったね」

 

「これと言って報告することはなかったからな。定時連絡だけだ」

 

バザラガは席に座ると、ゼタとベアトリクスの二人は会話を再開する。ソーマとバザラガは特に何かする訳でもなく二人揃って腕を組み、黙っていた。

女子二人が軽食や飲み物を口にしながらおしゃべりを続け、これでもう何回目となるか分からない話題の切り替えが行われる。ふと、通りを見たゼタが何かに気がついた。顔をしかめてそれを確かめるといきなり手を上げる。

 

「ルリアちゃん! 久しぶり!」

 

「あ、ゼタさん。お久しぶりです!」

 

ゼタが手を振る先には蒼い髪の少女が手を振り返していた。少女は前を歩く女騎士に話しかけると騎士もこちらを向き、驚いたような顔をしたあとに会釈する。

二人は通りから離れてバザラガ達のもとに近付いてくると、ルリアと呼ばれた少女はゼタに抱きついた。

 

「こんなところで会うなんて奇遇ですね! ベアトリクスさんもお久しぶりです!」

 

「ルリアちゃんも久しぶり。本当に偶然だね」

 

どうやらルリアはゼタ達と知り合いらしく、久しぶりの再会を喜んでいた。

 

「久しぶりだな、バザラガ殿」

 

「オダヅモッキーの件以来だな、カタリナ」

 

その隣ではバザラガが鎧を着た女騎士と挨拶を交わしていた。彼女の名はカタリナ、ルリアを守る騎士であり騎空団を率いる団長でもある。彼女達は以前バザラガ達と行動を共にしたことがあり、それ以来奇妙な縁があるのか事あるごとに出会っていた。

カタリナはゼタとベアトリクスのテーブルにもう一人座っていることに気がつくと、その顔を見て挨拶をしようと口を開きかけるが、何かに気がついて訝しげな表情になる。それを察したバザラガはカタリナにソーマを紹介した。

 

「そこにいるのはソーマだ、訳あって俺達と行動している」

 

「ソーマだ。バザラガ達と行動している」

 

小さく顔を上げ、簡潔かつ手短にソーマはそう言うと再び俯いた。カタリナはどこか困ったような顔を、ルリアは見知らぬ人物に興味津々といった表情でソーマを見ていた。

 

「うわー、ユーステスさんにそっくりですね!」

 

「でしょー。私達も初めて見た時は勘違いしちゃったよ」

 

「そのユーステスというやつは誰だ? 俺と初めて会った時もそいつと勘違いしていたが」

 

早速ソーマとの交流を深めるルリア。彼女の明るい性格と相まって場は更に和やかになってゆく。ベアトリクスがよくソーマに突っ掛かる、という話をゼタがすると当のベアトリクスは顔を真赤にして反論した。

そのすぐ隣ではバザラガがソーマの事情についてカタリナに話していた。異世界から来たこと、その世界の状況、彼の持つ神機やその危険性。聞けば聞くほどカタリナは困惑の表情を濃くするが、目の前の男が嘘や冗談を言う性格ではないことを知っているカタリナはその話を信じることにした。

 

「ソーマの事情についてはこんなところだ。"俺もこの件を上にはどう報告するべきか困っていて、色々と考えているところだ"」

 

「なるほど……」

 

バザラガのどこか含みのある言い方にカタリナは事情を察する。それ以上は言葉を交わさずとも、彼らの所属する組織や立場を考えればバザラガの言わんとしていることは分かっていた。

そこでだ、と言ってバザラガはカタリナに何か耳打ちすると彼女は驚く。いいのか? と目で確認すると兜の男は黙って頷いた。それを見て女騎士も頷き返す。

ふむ、とバザラガが唸るとソーマに顔を向ける。

 

「ソーマ、一つ提案だがこの騎空団に付いて行くのはどうだ?」

 

「ちょ、バザラガ。いきなり何言ってんの!?」

 

バザラガの突然の提案にルリアを交えてベアトリクスと楽しく会話していたゼタが慌てる。当のソーマは慌ててこそいないがどこか訝しげな顔をしていた。

 

「どういう意味だ?」

 

「俺たちは上からの指示が無ければ動くことはできないが、カタリナの騎空団なら自由に動くことが出来る。もしかしたらお前が元の世界に帰るための手がかりが掴めるかもしれない」

 

「なるほどな」

 

ソーマは納得し、隣で話を聞いていたゼタはバザラガの提案の意味を、本当の意味を理解して彼を見た。

 

「私は一向に構わないぞ。何よりも人手不足でな、新しい団員が来てくれるなら大歓迎だ」

 

「だったら、そうすることにしよう」

 

ソーマがカタリナの騎空団に入団すること了解すると、ルリアは両手を上げて大喜びする。

 

「ソーマ行っちゃうのかー。短い間だったけど寂しくなるね」

 

「お前なら大丈夫だと思うが、道中は気をつけろ」

 

ゼタはどこか寂しげな表情を浮かべ、バザラガは何時もの調子でソーマに見送りの言葉をかける。その後ろで最後まで黙って話を聞いていたベアトリクスの表情は俯いて見えなかった。

 

◆◆◆

 

「短い間だったが世話になったな」

 

次の日の朝、街の出入り口でソーマはバザラガ達に別れの挨拶をしていた。どこが名残惜しそうにゼタが手を差し出すとソーマは黙ってその手を握る。

 

「向こうでも元気でね」

 

握り合った手が上下に揺れて握手を交わす。手が離れた時にはゼタは優しげな笑みを浮かべていた。

 

「カタリナ達の騎空挺は隣町に停めてあるそうだ。さほど距離も離れていないし魔物も殆どいないが気をつけろ。それと、あの騎空団は俺達と違った意味で賑やかだ。初めは苦労するかもしれんが……じきに慣れるだろう」

 

「心配するな、元の世界でもあんな感じの奴らとは部隊を組んでいたからな。それと、俺があんたらと行動を共にしたことは上には知られない方がいいみたいだな」

 

ソーマの不意の言葉にゼタが固まる。バザラガは特に取り繕うような素振りも見せずに淡々と尋ねた。

 

「いつからだ?」

 

「あんた達と出会ってしばらくしてからだな。臭い、とでも言うべきか。俺のいた場所も似たようなものでな」

 

そう言ってソーマは肩を竦める。「そうか」とバザラガは短く言った。

ソーマはバザラガの隣に立つベアトリクスを見た。彼女は今朝から一度もソーマと会話どころか目も合わせようとせず、今もそっぽを向いている。ソーマは小さく息を吐くと神機を担ぎ直し最後の会話を交わす。

 

「俺はこれから元の世界に帰る方法を探す。次にあの騎空団と会ったら俺はいないかもしれんが……その時は伝言でも頼んでおこう」

 

それじゃあな。そう言ってソーマは後ろを振り返り歩き始めた。舗装された道は小高い丘へと続いており、紺色の背中は神機を揺らしながら丘の上に向かう。丘の中腹辺りになったところでゼタが小声でバザラガに話しかけた。

 

「組織にソーマのことは報告してないの?」

 

「俺も色々と考えたが、あいつにはこれが一番いいだろう。組織がソーマの存在を知ればその力を危険視するものや、よからぬことを企む輩が必ず出てくる」

 

「なるほどね」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「あの騎空団なら大丈夫、そんな気がしてな。確証はないが」

 

「……私も」

 

ゼタとバザラガはそう言って離れてゆくソーマの姿を見送る。神機を担いだ背中は時間と共に小さくなり、まもなく丘の向こうに消えるだろう。ゼタは右を向くと未だにそっぽを向いている親友に声をかけた。

 

「ベア、ソーマ行っちゃうよ」

 

「……」

 

ベアトリクスは相変わらずそっぽを向いている。そんな彼女にゼタは呆れたように小さな溜め息を一つ吐き、肩を竦めた。

 

「次はいつ会えるかわからないんだから、今の内に一声かけたら。でないとあとで後悔するよ」

 

ベアトリクスの肩がピクリと震えた。次第に震えは肩から全身へと広がり、ベアトリクスは勢い良く走りだした。そんな親友の様子にゼタは苦笑する。

 

 

 

「ソーマーーーーー!!!」

 

丘の中腹まで登ったベアトリクスは口に両手を当てて大空に響き渡るような大声で叫ぶ。その先には巨大なノコギリを担いだ紺色の背中が。

 

「私みたいに無茶して、迷惑かけるんじゃないよーーーーー!!!」

 

ベアトリクスの叫びは青い空に幾重も木霊する。空の彼方へ木霊が消え去り一陣の風が彼女の栗色の髪を揺らした。

 

「……あ」

 

ノコギリを担いだ背中が左手を挙げた。その姿が丘の向こうへ消える直前に挙げられた手は降ろされる。ソーマの姿が見えなくなった。見送りの言葉を叫んだベアトリクスは快晴の青空の様に晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。あいつならきっと大丈夫、根拠は無いがそんな確信が彼女の胸の中にあった。

ベアトリクスは大きく息を吸いゆっくりと吐き出す。改めてソーマが消えた丘を見やると、踵を返してゼタの元へと歩いて行った。

 

 

 




というわけで、今回はゴッドイーターシリーズよりソーマを登場させました。
声優もそうですが顔つきや色黒なところと共通点が多いですね。GEはグラブルと是非ともコラボしてほしい作品の一つです。
次回もGEのキャラクターを登場させる話を投稿します。
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