BanG Dream!〜夢を打ち抜く彼女達の日常〜 作:凛句りんく
Pastel*Palettesのメンバーである白鷺千聖は、何としても番組を成功させたいと思い、いつもより気合を入れて準備に励む。
そしてとうとう、番組収録の当日を迎えた――
(全3話)
「さぁ始まりました!!!パスパレのパスパレによるパスパレファンのための番組――」
司会者はここで大きな溜めを入れる。その間にカメラがPastel*Palettesの各メンバーを1人ずつ映していった。
しばらくしてカメラマンがOKの意思を込めたアイコンタクトを司会者に送ると、彼女は大きな声で先ほどのセリフの続きを言う。
「その名も『めちゃ×2パスパレってるッ!!』スタートです!!!」
こうして、Pastel*Palettes初となる冠番組が始まった――
---------------------1ヵ月前-------------------------------
「「「えええーー!?Pastel*Palettesの冠番組が制作決定!?!?」」」
事務所に集められた私達は、会議が始まるやいきなり番組スタッフから驚くべき事実を告げられた。
「いやー、とうとうあたし達も自分の番組を持つまでに至ったかぁ」
そうやって感慨に浸っているのは
Pastel*Palettesのギター担当である。
彼女は一度見たものは、すぐに覚えて習得する、いわゆる天才少女。私もその才能が欲しい。それがあれば台本を覚える時間を――コホンッ。失礼しました。性格は明るくさっぱりしているから、元気なアイドルとして売れている……彩ちゃんの次にね。だけど感覚型の天才である故に、人の気持ちに鈍感で相手の気持ちを汲み取るのが苦手だ。この欠点の克服は今後のパスパレの成長にも影響してくるから早く治したいものね。
「フヘヘ、ジブン感激っす!!まさかこんなにも早く冠番組を任せてもらえるなんて!」
一人称を「ジブン」と表現する少女は
少し……いや、かなりの機械オタクだわ。なんたって『ジブン、機材に囲まれている時が一番の幸せっす。フヘへ……』っていうほどだもの。さすがの私も少し引いた。
どこから拾ってくるのか、かなりたくさんの豆知識や雑学を持っていて『困ったときは麻弥ちゃんに聞く』が最近のパスパレでは浸透してきている。なので彩ちゃんもよく頼られている。羨ましいッ!! しかし自分の可愛さに自信がないのか、公の場では恥ずかしがり屋だ。そこがファンの中では密かに人気になっているけれど。
「きっと、私たちのブシドーが認められた証拠なのです!」
高い声と「ブシドー」が口癖の特徴的な彼女は
日本人の父とフィンランド人の母を持つハーフで帰国子女だ。肩書きが強すぎるわ。さらに手足が長くモデル体型――実際にモデルもしている――でスタイルがよく、パッチリ大きい目に小さく可愛い顔。こんだけ持っているなら性格くらい悪いと思うだろう。しかし神はこの子に、素直で誰でも優しいという素晴らしい性格も捧げた。正直、私はこの子に正面から勝負されたら勝てる気が一切しない……彩ちゃんなら勝てるけど。同じグループで本当に良かった。
「ど、どどどうしよう!!! 私、まだ心の準備ができてないよぉ~!!」
涙目で今にも泣きそうな彼女は天使だ。あ、見間違えた、
アイドルに憧れて芸能界入りするも、あがり症でアドリブに弱く、感情が高ぶるとついつい泣いてしまう泣き虫さんだ。そして、泣いた彼女を慰めるのが私の生きがいの1つになっている。もの凄い努力家で、諦めない心を持っている素直で眩しい子なのだが、なかなか芽が出なくて大変だった。しかし、どんなに失敗してもめげずに泥臭く頑張るその姿に、メンバー全員が心を打たれた。人生をかけて彼女を絶対にトップアイドルにさせると誓ったほどだ。故に、心を鬼にして飴と鞭と鞭と鞭の日々になっている。仕方のないことよね。
「みんな、喜ぶ気持ちは分かるけど、浮かれてはいけないわ。その番組を成功させて継続させていかないと意味がないのよ。喜ぶのは頑張ったその後」
皆に厳しい意見を言い場の空気を引き締めたのは私、
私は幼い頃から子役として活躍している若手女優で、性格は……過程より結果を大事にするリアリスト、といった感じだろう。子役時代から成功する期待をかけられ続けてきたからかしら。Pastel*Palettesに加入した理由も、自分に利益がありそうと思ったからで、別にアイドルになりたいわけではなかった。しかし、パスパレで過ごしていくうちに自分が少しづつ変わっていってるのは自覚している。そして重要なのが、丸山彩に惚れていることだ。これが友情なのか尊敬なのか恋なのかなんてどうでもいいわ。とにかく彼女の夢を叶えさせて幸せにすることが私の悲願だ。
――――「丸山彩ファンクラブ」の設立者兼代表役であることは親友の花音ですら知らない。
そんなこんなで各自ロケや取材など行い、慌ただしくも番組本番の本日を迎えたのだ。
-----------------番組に戻る------------------------
司会者はカメラに向かい笑顔で告げる。
「本日はこの番組の記念すべき第一回。ということで、なんと特別に!! 生放送でお届けしまーーす!! Mytubeやワクワク動画でもライブ配信してますので、みなさん、どしどしコメント追ってくださいねーー」
この司会者が言った通りに今日は生放送だ。故に失敗は出来ない。昨日、全体のリハーサルをやった時は完璧だったので、ぶっつけ本番のコーナーだけ乗り切ればなんとかなる……はずだ。みんな、頼んだわよ。
「(千聖さんの目が怖い……。私、なにかやったかしら)コホンっ。さて、Pastel*Palettesの皆さんに挨拶をしてもらいましょう!!」
司会者から話がふられた。リハーサル通り、彩ちゃんから自己紹介を始めることになっている。
「(わ、わたしの番だっ!!落ち着いて、落ち着いて、大丈夫……。)はーい!! 皆さんこんにちはー☆まんまるお山に彩りを!! Pastel*Palettesボーカル担当、丸山彩でーす!!」
「こんにちはー! Pastel*Palettesのギターをやってる氷川日菜だよー! 今日はとてもルンっとしていまーす!!」
「はいどーも! 上から読んでも下から読んでも大和麻弥!! ドラム担当っす!」
「みなさんこんにちわ!! Pastel*Palettesのキーボードをしています、若宮イヴです!! 今日はよろしくお願いします!!!」
「こんにちわ。Pastel*Palettesのベース担当の白鷺千聖です。本日はよろしくお願いします!」
よし、約束通りだわ。彩ちゃんは噛まない。日菜ちゃんはアドリブを入れない。麻弥ちゃんはフヘへ禁止。イヴちゃんはブシドー禁止。それぞれ守れているみたいね。
そして司会者が話を進めた。
「みなさん、ありがとうございます!! とっても可愛いです!」
モニターでもたくさんのコメントが流れている。「イヴちゃん可愛い」「日菜ちゃん今日も元気だね~」「麻弥ちゃん最高っす」「さすが安定の千聖様だなw」「彩ちゃん噛まなかった、がんばったやん」「彩は俺の嫁」などなど。彩ちゃんはみんなのよ。あとであのコメ主はファンクラブ会員に特定させよう。
「(さらに千聖さんの目が怖くなった!? なんで!?)さ、さっそく新コーナーにいきたいと思います! 名付けて「千聖の部屋」!!」
司会者が予定通りに新コーナーに進めたわね。このコーナーはゲストをお招きして私と紅茶でも飲みながら対談する和やかなものだ。ちなみに、今回は初回ということで予めゲストに誰が来るかは知らされている。
司会者が話を進めている間に、私はセットアップがされている別のお部屋へと移動をしていた。
「――というのがこのコーナーの説明です。」
「うんうん、千聖ちゃんが好きそうなコーナーだよねー」
「そうですねー。千聖さんはカフェでお茶が好きですから」
「まさにブシドーですねっ!!」
「イヴちゃん、それどういう意味……」
「それでは、このコーナーは私こと白鷺千聖が司会をいたします。本日のゲストは『ハロー、ハッピーワールド!』のドラム担当で、私の親友でもある
「こ、こんにちわ!! 松原花音です……っ!」
彼女達「ハロー、ハッピーワールド!」は、先日TVのニュースで報道され注目を集めている。様々な病院や児童施設で、子供たちや障がい者の方、病気で苦しんでいる方などに無償で演奏をし笑顔を送っているガールズバンドとして取り上げられた。彼女達の活動は世間から称賛され、ネットでも騒がれている。特に、こころちゃんの反響は良くも悪くも凄まじい……。
そんなわけで、視聴率を取りたい番組としても、親友として話すのに慣れている私としても、彼女を呼ぶことはメリットがあった。
「花音ちゃんだ」「キターーー」「8888888」「これは予想外で嬉しい!!」「だれだ??」「いま人気の子だゾ」「ハロハピでggrks」「こマ?」「ふぇぇぇの子だwww」「かわゆい」
コメント盛り上がってるわね、やはり呼んで正解だったわ。
「今日はよろしくね、花音」
「う、うん、私、がんばるっ」
「ふふ。そんなに力まなくていいのよ。さて、初めの話題ですが――」
私は順調に進行していく。まあ、ただいつもより言葉使いを気を付けて、花音にリラックスさせ、上手に笑いを取ればいいだけだもの。そんなに難しいことではないわ。
「とか千聖ちゃん思ってそーだよねー」
「はい、おそらく。生放送で失敗できないプレッシャーもある中でミスをせず、さらに花音さんにも気を使うのは、決して簡単ではないはずなのに」
「千聖さんが培ってきた現場の経験があってこその技だと思います!」
「すごいな、千聖ちゃん。私だったら絶対に噛むもん。もっと頑張らなきゃっ!!」
そのままコーナーはミスなく進んでいき、終盤へと差し掛かった。
「――それでは最後の話題に移ります。ええっと……『みんなが知らない白鷺千聖の良いところを教えてください』だそうです。花音、教えてくれるかしら?」
これもリハーサル通りだ。花音には事前に考えてもらっているから、すんなり話せるはず。これでこのコーナーは終わりね。案外簡単に乗り切れてホっとしたわ。
この時、千聖は気を抜いていた。無事に終わる安心感と、親しい花音との会話で緊張が解けたのか、普段の彼女なら終わるまで決して油断はしないのに。そして千聖が緩んでいるなら、当然ながら花音は――
「うん、わかった!(最初は緊張してたけど、なんだか楽しくなってきちゃったな。千聖ちゃんの良いところか……あれは言っていいのかな、いいよね、悪いものじゃないんだし)」
――良くも悪くも緊張が解れ、千聖から言われていた『TVの私のイメージを崩さないようにお願いね』という忠告を完全に忘れていたのだ。