BanG Dream!〜夢を打ち抜く彼女達の日常〜 作:凛句りんく
「弦巻こころ」の誕生日が近づいてきた。
こころを除いたハロハピ一同は会議で話し合い、誕生日サプライズをしてこころを喜ばせようと計画する。
徐々に準備は進み、ついに誕生日当日を迎えた。
いまここに、弦巻こころ嬢様誕生日パーティーが開催される!!(全三章)
「誕生日おめでとう!!!」
パーンという破裂音と共に、虹色のテープが弦巻こころに降り注ぐ。
初めは驚きで目を見開いたまま黙っていた
「わぁ、きれいだわ! みんなありがとう!!」
ここは弦巻家のとある一室。いつもは『ハロー、ハッピーワールド』の会議や曲作りのための勉強会などに使用している部屋だ。
今日は来月のライブに向けて作戦会議をすると
「わーい!! サプライズ成功だね!!」
『ハロー、ハッピーワールド』ベース担当の北沢
「ああ、こころの儚い笑顔が見れて私は嬉しい」
「それって、儚いの使い方が違うような……」
「あっはは……。 何はともあれ、成功して良かった〜」
その他ハロハピ一同も気を緩めていた。特に
美咲も、薫と
「みんな、あたしのためにありがとう!! 今日が私の誕生日って覚えていたのね! とーっても嬉しいわ!」
こころが嬉しそうに告げる。
実のところ
「そんなの当たり前だよ、こころん!! 忘れるわけないじゃん! 何日も前からずーっと考えて準備していたんだからね!」
「はぐみの言う通りさ、こころの大切な記念日を忘れるわけない。今日という日を如何にして祝うかみんなで悩んだよ」
何日も前から考えていたが故に、何度も
そしてその都度、美咲と花音がなんとかして誤魔化していた。その言葉を素直に信じる
「あのね、こころちゃん、実はまだ終わりじゃないんだ」
花音が微笑ましい笑みを浮かべて述べる。既に第一段階のサプライズが成功しているので嬉しさを隠しきれないし、また喜ぶ姿を想像すると不思議と笑顔になっていた。
「そうだよこころ、まだサプライズは続くよ。黒服の皆さん、お願いしまーすっ」
美咲のドヤ顔からの合図により、後方に待機していた黒服の人たちが機敏な動きを開始した。いつのまにか人数が倍以上になっており、それぞれが自身の役割を正確かつ迅速に実行している。
「こころ様、どうぞこちらへ」
静かに近づいた黒服集団の中の1人が
その間、時間が経つにつれ変化していくのは『部屋』全体だった。
入口の扉、やけに大きい窓、よごれ一つない壁、5人ではありあまる机、イス、もともと一般の家庭にはないあろう高級な代物だが、それぞれがより豪華な代物になっていく。
どこからか購入したであろう高級だと予想される絵画など、元々無かった家具やインテリアも次々と運ばれる。
気がつくと、5人が始めにいた部屋の面影は無くなり、どこかの国の貴族を招いても何ら差し支えのない豪勢な一室へと変わっていた。
「わぁ、すごいわ! お姫様のお部屋みたいね!」
部屋の改装が完了したと同時に現れたのは……
ピンクを基調とした、可愛らいしドレスを着飾った
「あの……どこの国の王女様でしょうか?」
「み、美咲ちゃん!? しっかりして! こころちゃんだよ!」
「……はっ! あまりに可愛すぎて見惚れてしまってた」
「ん? 変なことを言うのね、美咲。でも嬉しいわ!」
こころが美咲の言動に首を傾げる。しかし美咲が口に出しただけで、他の3人も美咲と同じ感情を抱いていた。それぐらい誰がみても「美しい」「可愛い」と見惚れるほどの格好である。
「あぁ、
「うん、すっごく可愛いよ!! 本物のお姫様みたい!」
「みんなありがとう! 後でみんなも着るといいわ……って、あれ、この写真って」
こころが豪勢に変わった部屋を眺めていると、壁一面に貼り付けてある数々の写真に目が向く。
それは、ハロー、ハッピーワールドにとって、大事な大事な思い出の1枚だった。
「気づいてくれたかい? これは、初めてライブをしたときの写真さ」
「やっぱり! この日を忘れるわけないわ。こんなに楽しくって、みんなを笑顔にした日はなかなか無いもの」
そして
「これって、みんなで準備したのよね? こんな沢山の写真、集めるのにとっても大変だったんじゃない?」
「ううん、こころん。これはね、薫くんが全部用意したんだよ! こころんへの誕生日プレゼントとして!」
壁一面に貼り付けられたこれら複数の写真は、全て昔からずっと薫が撮りためていた思い出コレクションだった。
薫は演劇の練習のために様々な思い出を振り返り、その時の感情や表情を上手くコントロールすることで自由な演技を作り出していた。
そのためハロハピとの思い出もいつでも振り返れるように撮り溜めているのだ。もちろん、練習のためだけではなく、楽しいから撮っていることも多々だが。
「せっかくの
ハロハピメンバーそれぞれが
それが、このハロハピの思い出の記憶を全部振り返ることが出来る光景で、こころへの贈り物だったのだ。
「んー! とーっても素敵!! ありがとう薫!」
「どういたしまして。そんなに喜んでくれたのなら、私も用意した甲斐があるものさ」
「ならみんなで思い出を語りましょう! わたし1人で振り返るより、みんなと話した方が絶対に楽しいわ!! さっそくだけれど、この写真の時に──」
1枚1枚、楽しく振り返りながら思い出話が弾んだ。
そんな中、花音が美咲に小さな声で話しかける。
「こころちゃん、楽しんでくれてるね。正直、何をプレゼントしたら喜んでくれるのか分からなかったけど、みんなで一生懸命かんがえて良かったぁ~」
花音の安堵した顔に、美咲も顔が緩む。
「うん、良かった、本当に。こころって欲しいものは何でも買ってもらえる気がするからかなり悩んだよね……。でも、私たちだけにしか渡せないプレゼント、選べた気がする」
実際、弦巻家は超が3つは付く金持ちなので欲しいものが何でも手に入ることは間違いは無い。そこで美咲達はプレゼントは物に限らないで考えることにした。
「あのね、こころん。みんなそれぞれプレゼントを用意してあるんだよ!」
はぐみが満を辞して言ったので、胸を張りドヤ顔になっている。
まぁはじめに伝えているのだが。
「ええ、言ってたわね。楽しみだわ! はぐみは何を用意してくれたのかしら?」
この
「ふふーん、実はもう渡してるよ!」
「ええ!? いつのまに渡したの?」