BanG Dream!〜夢を打ち抜く彼女達の日常〜 作:凛句りんく
目の前には、
「しっかりしなさい、白金さん!!!」
「さ、紗夜さん!?∑(゚Д゚)」
「転移したはずの紗夜が何故ここに?」 と驚きを隠せない燐子に、紗夜が理由を問われる前に次の指示をする。
「早く起き上がって今井さんを蘇生させなさい!」
「で、でも私は蘇生魔法を使えないんで
……(ー ー;)」
すると、紗夜が絹で出来た小包を燐子に渡す。
「あの、これは(・・?)」
「転移先で手に入れたドロップアイテムです。おそらく本クエストの報酬だと思います」
燐子が中身を確認すると、主に旅で消費しそうな数々のアイテムが入っており、その中には死亡したキャラを蘇生させるアイテムまで入っていた。
「これって、凄い激レアの回復アイテムじゃないですか∑(゚Д゚)
これがあればリサさんを蘇生できる……っ!!」
さっそく燐子は倒れたリサにアイテムを使用する。リサを生き返らせれば他のみんなも復活させる事が出来るからだ。
「そういうことです。なので、白金さんは今井さんの蘇生に専念して下さい」
そういうと、紗夜は迷いなく黒竜の方へ走っていった。
それに対して黒竜は迎え撃つべく、鉤爪で斬り裂こうと左前足を構える。
当然、紗夜は初心者で、黒竜どころか竜種にも会った事があるわけなく、攻撃を簡単に防げるわけがないと燐子は思っていた。
「危ないです紗夜さん!! いったん戻って!」
燐子の声が届いてないのか、それとも紗夜が聞く気がないのか、真相は分からないが紗夜の足が止まることない。
そしてそのまま近づいてくる少女に、黒竜が鉤爪を振り下ろし紗夜を引き裂く——
「はああぁぁぁぁぁあ!!!!!」
——ことはなかった。パリーンッという衝撃音と共に黒竜は攻撃を弾かれたからだ。
「じゃ…ジャストガード(゚∀゚)」
ここで説明を一つ。完全防御(通称"ジャストガード")とは、敵の攻撃を、自身の装備品(盾や剣)や魔法(魔法壁など)等で、ダメージ判定が起きる寸前(敵によるが約0.1秒〜0.5秒前)に防ぐ技だ。
成功すると金属を叩いたような高い効果音が鳴り、反対に失敗すると通常のガード判定も起きずにダメージを受けてしまう。
成功した時のメリットとして
①防御力が最大値まで跳ね上がる&あらゆる弱体効果を無効化
②敵対象に一時的なスタン付与
③特定の武器による恩恵ボーナス(HP回復または状態異常回復など)
これらの効果が付与される。
例外はあるが殆どの敵に通用するため、かなり強力なプレイヤースキルだ。
勿論、強い敵になればなるほどタイミングが難しくなる。
しかし、今回の邪竜ファブニールは難易度が高い方なので、NFO熟練者でも失敗するリスクを避け安全に通常防御に徹する人が多い。
だが、紗夜は迷わずにジャストガードを狙いにいったので、燐子は挑戦したことと成功したことの両方に驚いていた。
「お、動けるようになった! ありがとう燐子!!」
紗夜が黒竜と奮闘しているうちに、さっそく燐子が取り掛かっていたリサの蘇生に成功する。
「いやー、ずっとゴーストモード(死亡したプレイヤーが、生存者には不可視の幽霊状態となること)ってやつで紗夜を見てたけど……頼もしすぎない??」
「はい……私も何が何やら。 とりあえず、紗夜さんがタゲ取っている内に友希那さんとあこちゃんを蘇生してあげましょう。 私はリサさんを守りながら遠くから魔法で牽制するので」
こうして、紗夜が黒竜の攻撃を防ぎ、燐子が遠距離魔法でサポート、リサが蘇生に専念するという体制が出来上がった。
しばらく戦闘が続き……
なんと、紗夜が黒竜の攻撃を
「紗夜さーん!! 無事に蘇生できましたー! もう下がっても大丈夫ですよー!」
「正直、気づいたら幽霊になって、なにが起きたか分からなかったわ」
あこが前線でひたすら黒竜の攻撃を防いでいる紗夜に、手を振って後退の合図をした。
紗夜が来たのは予想外の出来事で、タンクとしての役割も十分すぎるほどこなしている。
しかし、黒竜はそれでも勝てないと思ってしまう強さだった。離れて攻撃しようにも咆哮が飛んでくるため安全に戦闘をすることは出来ず、そもそも燐子の最上級魔法もダメージを少量しか与えられない。
そして一向に宝箱の上から動こうとしないため、囮作戦も難しい。
故にあこと燐子は撤退する判断をしたのだが、
「いえ、ここで倒して前に進みましょう」
紗夜は首を振って納得しなかった。
「『Roseliaは頂点を目指す』
湊さん、そうでしょう?」
「え、ええ、そうだわ」
「でしたらこんな竜ごときに負けてなんて要られません!! 私たちなら前に進めます!!!」
なおも紗夜は語る。こんなところで止まっている場合では無いと。
Roseliaなら幾多もの壁を壊していくんだと。
「ちょ、紗夜、落ち着いて」
「そうですよー、倒す手段があるなら別ですけど……」
「倒す方法ならあります」
「「ええ!?」」
あこと燐子は目を丸くして驚く。いったい何処にそんな方法があるのか。
すると、紗夜は笑みを浮かべて答える、
「まず、黒竜の壁役は私がします。ある程度の攻撃ならジャストガードで防げますし、ブレスも私のスキルでヘイトを上げるので今井さんや湊さんに危険はありません。なのでお二人は回復と歌唱を常にしてもらえれば問題ないはずです。そして白金さんと宇田川さんには、ただひたすらに魔法や魔術でダメージを与えて下さい。こうすれば誰も死ぬことは無いですし、安全に黒竜を倒せます」
作戦をドヤ顔で紗夜は語った。確かに理に適った作戦だが、考えるべき要素が2つほど抜けていることに燐子は気づく。
「でも紗夜さん、もし紗夜さんがガードに失敗したらどうするんですか?」
「大丈夫です、絶対にミスしません」
「そ、それにダメージも私とあこちゃんの攻撃では全然通らなくて倒せないはずです(ー ー;)」
「全然通らないのは分かります。しかし、
さも当然のように紗夜は答えた。少しでも与え続ければいつかは倒せるだろうと。そこに紗夜のミスや討伐時間は考えられていないが。
「では、もう質問は無いですね。
それでは行きますよ!!!
昨晩、何百回も映像を見て勉強したことを無駄にはさせません!!!
私たちRoseliaの力を見せつけてやるのです!!! 」
「ええ、Roseliaは頂点を目指すバンド。負けてられないわ」
「何だか分からないけど頑張るよー!!」
「皆んなヤル気じゃーん!!わーん!!りんりーん!! いったい何回攻撃したら終わるのかなー!!!」
「もう、考えたら負けな気がするよ……( ̄ー ̄ ) 」
こうして、Roseliaの地道で無謀な黒竜討伐作戦が行われた。
そして…
討伐開始から約2時間と30分が経った頃……
友希那が57回歌い、
リサは83回のヒール、
あこが93回も炎を放ち、
燐子が124回の氷魔法を唱え、
紗夜が
とうとう黒竜は地にひれ伏し、目から光を失った。
この時、Roseliaメンバーは揃って同じ感想を浮かべる。
(((( もう、しばらくゲームは辞めようかな ))))
しかし、ただ1人、紗夜だけは静かにガッツポーズをしていた。
「……っよし」
--ログアウト後---
「紗夜さーーん!!! なんであんなに強くなってるんですかー!?」
「そうですよ!! 私もビックリしたんですよ!!?? 」
黒竜を倒し、宝箱から転移して報酬を受け取った後、もう遊ぶ気にならず自然とログアウトする空気になり、みな徐々にゲームから離脱していった。
そしてしばらく休憩した後、お店の前に集合する流れになり今に至る。
「た、たまたま上手く出来ただけです」
「「たまたまであんなにガード成功しないでしょう!?」」
あこと燐子はゲーム中の出来事が未だに信じられず、落ち着きを取り戻せない様子だ。
それに対し紗夜は動揺を隠せず、目を合わせないで前髪をイジりながら話す。
心なしか耳も赤い。
「まぁまぁ、燐子達も落ち着いて。紗夜は私たちのために必死に勉強してくれたんでしょ?」
「そ、そんなこと――」
「紗夜、今更隠しても仕方ないわ」
「うぅ、は、はい……」
こうして、紗夜は洗いざらいに今日までの経緯を話した。
初めは燐子達の足を引っ張りたくないから軽く実況動画を観はじめたこと、徐々にハマって実際にプレイしていたこと、上手くガード出来ると周りのプレイヤーから讃えられ嬉しかったこと、ゲームのしすぎで寝不足になってたことなどなど。ひと昔の紗夜からしたら考えられないことだらけだった。
「まさか紗夜さんが……」
「び、びっくりですね……」
まさにゲーム沼に浸かる定番の流れだった。それを1番ゲームからイメージが遠い人物の話しているので、燐子達はなおさら驚いている。
「あはは、私は紗夜の意外な一面が知れて嬉しいかも」
「Roseliaだけではなくゲームでも頂点を目指していたのね」
「ち、違います!! いや違わないですけど! ほ、本当に初めは軽くプレイするだけだったんですよ? でもだんだん楽しくなってしまって……その分ギターの練習も増やしていたのですが」
「なるほどね〜、だから最近は目にクマが出来てたのね」
「しっかりギターの練習もするのが紗夜らしいわね」
そこで燐子が頭に引っかかっていた何かを思い出す。
「あ、そっか。
「ふ、フルガー、なに??」
「あー! 最近NFO内で話題になっていた人だね!! たしか……HPがイエローゾーンに入ったのを見たことがないっていう噂の」
「やめてください恥ずかしいですから!!」
この二つ名の由来は名前の通りである。
あまりに紗夜がジャストガードを決めるので、それに感嘆した周りのNFOプレイヤーが紗夜に名付けたものだ。
紗夜が自らの名を名乗らない(Roseliaのみんなにバレたくないため)ので周りも自然とそう呼んでいると、いつのまにかNFO内に広まっていた。
「あれは周りが勝手に呼んでいた名前で、私は関係ありません」
「またまたー、そんなこと言ってから。本当は嬉しかったんじゃないの??」
「い、今井さん怒りますよ!?」
リサがニヤニヤしながら紗夜をイジる。普段は怒られたりする側なので、滅多にない機会を目一杯楽しんでいた。
「はぁ、まったく……。まぁ何はともあれ、無事にクリアできて良かったです」
「そうですね。ほんとによかったです」
「うんうん、クリア報酬も手に入ったし、めーっちゃ楽しかった!!」
「そうだね、私も楽しかったよー! またみんなでしたいね!」
「ええ、たまには悪くないわね」
最後にはトラブルが起きてしまったが、みんなゲームを楽しむことが出来たようだ。
「けれど、ゲームはほどほどにね、紗夜」
「湊さん、さすがに私も、夜更かししてゲームする危険性を学びましたから大丈夫です」
そこはさすがと言うべきか。犯した失敗は修正を行い、しっかり自分のペースは守る。ギターでも日常生活でも真面目な紗夜らしい改善だ。
「えー、楽しみだったのに、フルガードガールさんが活躍するの」
「い、今井さん!?」
「またお願いしますね、フルガードガールさん」
「出会うのを楽しみにしてます!! 全てを守る少女さんに!」
「くっ…!!
も、もう二度としません!!!!!!」
ここから3日間ほど、紗夜は友希那としか口を開かなかったという。
ロゼリア第一章完結
次はハロハピの日常を書きたい……
近いうちに書きたいとは思っています…
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