ゼロの使い魔~天恵の忌み子と共に~   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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実はルーンの効果を既に知っているフラット君。当然チュートリアルさんは…


天恵の忌み子、その片鱗

私は、何を言っているのだろう。それでも、一度声に出したそれは、堰を切った水のように止まらなかった。

 

「私は、本当に一度しか魔法を成功させただけなのに、あんたみたいな天才の主人なんて、あり得ないわよね」

 

机に付いた煤が、いやに良く見えた。フラットは、困ったようにこちらを見ている。

気を遣われるくらいなら、罵ってほしかった。それで諦めがつく。きっと夢だったのだと。視界が歪んで、ルイズは自分が泣いていることに気づいた。

 

フラットは、慌てた様子でハンカチを取り出し、渡してきた。そして、一言。

 

「あの魔法は、ご主人の属性に合ってないんだから気にすること無いですよ」

 

嗚咽を漏らしながら、のろのろと、顔を上げた。何時も、この使い魔は突飛なことを言う。

 

「俺と同じ属性空なんだから、あ、こっちでは虚無って言うんでしたっけ」

 

普通は、慰めたりするのだろうか。そこを、なぜ魔法が使えないのかという根本的な理由を提示された。

 

「私が、虚無?」

「それに、あんな膨大な魔力を注いだらそりゃあ爆発しますって。魔力の属性が魔法に合ってないのにあんな冗談みたいな量注ぎ込むから」

 

さも当然の事のように、フラットは失敗の理由を羅列していく。今まで、高名な教師に何度教えられても解らなかった失敗の理由をだ。

衝撃だった。

 

「だから、そうですねー、もっと他の魔法を見れば、ご主人に合った錬金の魔法も作れると思いますけど」

「じゃあ、私にも普通に魔法が使えるのね!?」

 

その後も、フラットの解説が続いた。四属性が全く同様に魔力を注ぎ込んで動作する魔法を作った人間は天才だ、とか、流石に虚無は出来なかったみたいだとか、今まで勉強して習ったこともないような事を並べている。

 

「ねぇ、異世界ではあんたみたいなのが一杯いるの?」

「どうかなぁ、俺みたいに魔力が見えたりするのは会ったこと無いですね」

 

曰く、先生は才能がないのに天才だとか。どういう事かと問うと、魔術の才能はないのに、それを解析したり組み替えたりすることに関しては天才的で、しかも探偵のように推理も大得意だという。

多分先生とやらはこの男に頭を抱えているのではあるまいか。

 

「探偵って?」

「お金をもらって、憲兵に代わって事件を解決したりする人たちのことですよ」

 

平民の、傭兵のようなものが黒いローブを着ているところを想像した。

 

「なんだか胡散臭いわね」

「えー?でもすごくかっこいいですよ?」

 

フラットが残ったごみを纏めたところで、ルイズの腹が鳴った。

 

「なにも聞いてないわね?」

「はい、だれにもご主人のお腹の音がきゅるきゅるなんて言いません!」

 

拳を一つフラットにぶつけ、食堂へと向かった。自然と、口は弧を描いていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

食堂では、既に昼食が取れるようになっていた。フラットは厨房に直行し、またまたマルトーに捕まった。

 

昼の賄いは、ロマリアで良く食べられているらしいパスタに良く似た食べ物だった。マルトーは薄く伸ばされた小麦の生地に、トマトとひき肉、その他野菜に赤ワインの良いものを加え、ソースを作っていた。

 

「凄い!ボロネーゼですね!」

「ほぅ、お前さんの国ではそう言うのか。俺たちはボロネーズって呼んでるんだが」

 

より正確に言うなら、パスタはラザニエッテなのでボロネーゼソースのラザニアだろうか。

フラットは絶賛して食べたが、今度はちゃんとお代わりを断った。マルトーは、食べ過ぎは良くないと笑い、自分で食べてしまった。

 

厨房の食事も終わろうかという頃、シエスタがクロッシュをかぶせたお皿を運ぶために席を立った。

 

「それじゃあ、デザートを配りに行ってきますね」

「あ、俺も手伝いますよ。こんなにご馳走になっちゃったし」

 

笑顔で背中を叩きまくるマルトーから逃げるように、フラットはシエスタに付き従って厨房を出た。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「なあギーシュ。お前、今は誰とつき合ってるんだ?」

「付き合う?はは、僕は薔薇だよ?僕が誰かのものになってしまったら、多くの女性が悲しみの余りに命を絶ってしまうじゃないか」

 

食事もそこそこに、一人の金髪の少年が、シャツのポケットに薔薇を刺して周囲に歯の浮くようなセリフを並べていた。丁度この時、効率よくいきましょう、というフラットの発案で、二人は食堂の両端からデザートを配りまわっていた。

そして、シエスタが丁度この取り巻きに囲まれたギーシュ少年の前を通りがかった時、事件が起こった、と言うより正確に言うのであれば、発端をこのギーシュ少年が起こした。

 

周りに取り囲まれ、このままでは最も懇意にしているミス・モンモランシーの耳に一年生の子女と馬で遠乗りしたことが露見しかねない。そこで、ギーシュは一計を案じた。唯一の物的証拠である、受け取った香水を隠してしまえばいいのだ。放り投げるようなことをすれば目立つので、後ろ手に毛足の長い絨毯の上に落とした。

音は無い。これで、二人の蝶の心は守られた。心中でガッツポーズを決めるギーシュ少年は、まさに年相応であるのだが、此処に誤算が一つ。取り巻きの居ない背後に、丁度シエスタがいたのである。

平民としては、貴族が落としたものをお返しするのは至極当然である。

以上の経緯から、後ろから声を掛けられた時ギーシュは心底驚いた。そして、かわいらしいメイドの手に置かれた香水を見て顔が引きつったのを自分でも感じていた。

 

これは非常にまずい。とにかく白を切らねばならない。

 

「何だね、それは。僕の物ではないな」

「そ、そうですか。それは大変失礼をいたしました。此方に置いておきますね」

 

ギーシュは心中で止めてくれと必死に叫んだ。しかし、シエスタは精神感応が出来るわけではなかったし、香水が拾われてしまった時点で作戦は実行の後失敗。東方の諺に曰く、覆水盆に返らず、である。

 

「おいおいギーシュ、それはミス・モンモラシーの香水じゃないか?」

「噂は本当だったんだな!」

 

モンモラシーの香水は、そのオリジナルの美しい色合いから有名であり、少し風聞に詳しい物が見ればすぐに解判ってしまった。ふと、視界の端にすらりとまるでカモシカのように美しい足取りでミス・モンモラシが近づいてきた。ギーシュのそれなりに豊富な女心のデータベースによると、それはいわゆる堪忍袋の緒が切れた状態であり、つまり非常にまずい。

なんとか言いつくろわなくてはならない。

 

「や、やあミス・モンモラシー。今日はいつもとまた違う香水を使っているんだね。良く似合っているよ」

「そう?ありがとう。そういうあんたにはこれがお似合いよ!」

 

眼が完全に据わっているモンモラシーは、ギーシュの頭に赤ワインを一瓶まるまるかけた。おまけに、右頬に赤い手形もついた。さらに、泣きっ面に蜂とばかりにミス・ケティまで現れた。

 

「誰とも付き合っていないと仰っていたのに!嘘つき!」

 

平民に最近出回っているという銃を鳴らしたような破裂音が鳴り響き、ギーシュの反対側の頬に手形が増えた。泣きながら走り去るケティを追いかけることも出来ず、周囲からは冷やかしの目線が多数向けられている。

これは不味い。想像した中でも最悪に近い。兎に角、体面を立て直さなくてはならない。そのために、僕は!

 

「君!少し待ちたまえ!」

 

丁度ルイズにデザートのケーキを渡していたシエスタは、何か不味い事でもしただろうかと怯えた顔で振り返った。非常に申し訳ないが、この場には罪を擦り付ける人間が必要だった。

 

「君が僕の落とした香水を拾ったせいで二人の女性が不幸になってしまった…どう責任を取ってくれるんだね?」

「そ、そんな!私、貴族様の香水を拾っただけなんです!お許しください!」

 

必死に謝っているが、何らかの目に見えることをしなければこの場が収まらないだろう。しかし、ツッコミが入る。

 

「見てたけど、全部あんたが悪いじゃない。そもそもあんたが浮気しなきゃ済んだ話でしょ?」

 

そうだそうだ、などなど、周りを囲んでいた人間も同意の声を上げる。恐らくルイズや数名は別にしても、殆どは娯楽としてギーシュを野次っているだけなのだ。そういった人間のために、やらなくてはならない。

 

「いいや。このメイドには身の程を教えてやらなければならない。さあ立ち給え!」

「ううっ」

 

涙を浮かべるメイドを掴もうとした手が、つかみ止められた。

 

「止めましょうよ。私刑なんてのはやり過ぎですって」

 

掴んだのは、先日召喚されたルイズの使い魔だった。あまり力が強いわけではないが、眼には断固とした光がある。その瞬間、ギーシュの頭に閃きが舞い降りた。

 

「では、そのメイドの処遇を巡って、決闘をしようじゃないか!」

「決闘、ですか?」

 

ゼロのルイズに召喚されているのは、どうせ平民と言われていたし、実際マントも着けていない。ここでギーシュが華々しく勝利すれば、メイドは痛めつけられずに済み、もしかしすると二人の心も自分の元へ戻ってくるかもしれない。

 

なんて完璧な作戦だろうか。やはり自分は軍人の名門グラモン家の子である。

 

ふと見ると、使い魔の少年はルイズとこそこそ話をしていた。しかし、すぐにこちらに向き直る。

 

「はい、マスターからもOKが出ましたので、よろしくお願いしますね!」

「ふふん、良いだろう。ではヴェストリの広場にて待とう!」

 

颯爽とマントを翻し、先にヴェストリの広場に向かう。一時はどうなる事かと慌てたが、これでどうにかなりそうだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

シエスタは恐怖に震えながらも、フラットを止めようとした。

 

「だ、ダメですフラットさん!私なんかのために!」

「大丈夫ですよ!だってあの人魔力の制御があんまりうまくないみたいだし!魔力を伝導率が悪い素材の杖で流してるからだ!教えてあげなきゃ!」

 

シエスタが言いたい事は伝わっているのだが、フラットの言いたいことは伝わっていないようだ。シエスタは、茫然とした面持ちで形の良いまつ毛をぱちくりと二度ほど瞬いた。そして、再噴火した。

 

「そんなこと言っても怒らせるだけじゃないですか!ダメですよ!」

「そ、そうだったんだ…それで先生は呆れてたのかな…」

 

怒られて酷くしょげているのだが、やはり視点がずれているとしか言いようがないだろう。それでも、ルイズがとりなしに来たことで話は進んだ。

 

「大丈夫よ、シエスタ。そいつは多分そうそう負けないわ」

 

無論、ルイズの発言の裏にも打算が多分にある。まず、この使い魔がどれほどの物かという事の検証。これは、ギーシュはどうせ殺すまでは出来やしないだろうという悪い意味での信頼から。そしてもう一つ。単純にギーシュが気に食わないのである。

モンモラシーとそう変わらないと発言した時のあのすまし顔を、ルイズは心の復讐帳に書き込んでいる。

 

「いい?なるべく顔を重点的に狙うのよ?」

 

どうやら心配いらないようだとは分かっても、どこか案じているという心情が顔に現れているシエスタをよそに、ルイズは勝利よりも大事な事があるとフラットに教え込むのだった。

 

「分かったわね?じゃあ行くわよ」

 

すたすたと、広場へと歩を進めるルイズに、フラットはにこにこと笑いながら着いて行った。途中、噂を聞きつけた生徒たちがざわざわと集まり、遂にはルイズを先頭とした大行列が出来た。

大きな出口から外へ出ると、既に人垣が出来ており、中心にはギーシュが突っ立っていた。手には造花の薔薇を持ち、まるで懲りていないのか周囲の女性達へ手を振っている。

 

「逃げなかったことは誉めてあげよう。だが、貴族に喧嘩を売った愚かさはしっかりとその体に刻んであげよう!」

 

こちらを向いての一言に、ルイズは失笑した。

 

「痛い目に会うのはあんたよ、ギーシュ。やっちゃいなさいフラット!」

 

人垣が割れ、フラットは丸く囲まれた中央に押し出された。少しよろめいて起立するフラットを見て、これはギーシュの醜態は期待できないかと観客がつまらなそうな顔をする。シエスタも、そんな空気を察してか再び怯えた顔でルイズを見ている。

 

「まあ見てなさい。多分、あいつそれなりにやるわよ」

「えっと、遠い外国の貴族様、なのですよね」

 

二人の視線の先では、二人の金髪の少年が向かい合っていた。方や、造花の薔薇を咥え、もう片方は興味深そうに造花の薔薇を見ているのだった。

 

「紳士淑女の諸君っ! 決闘だ!」

 

勝鬨のように声を上げて、ギーシュは周りの喧騒に火をつける。

 

「そうそう、僕はメイジだ。だから魔法で戦うよ。よもや文句はあるいまいね」

「もちろんっすよ!」

 

無手で構えるフラットに、ギーシュはふっと笑い、短く詠唱して剣を錬成した。

 

「使いたまえ。これくらいは良いハンデだと思うよ」

 

じゃあ遠慮なく、と剣を掴んだフラットを見て、ギーシュはニヤリと笑った。観客も、これは面白くなるかと身を乗り出している。そして、ギーシュが口火を切った。

 

「では始めよう!イル・アース・デル、ワルキューレッ!」

 

錬金の呪文の詠唱の後、薔薇の花びらが落ちた地面から青銅製の戦乙女が作り出されていく。二体作り出されたワルキューレは非情に精巧であり、使い手の練度が垣間見える。

 

「なるほど、そうやって使うんですね!確かに効率的です」

 

一方のフラットは右手の甲に指で触れ、何やら呟いた後に、もう一度同じ言葉を呟いた。

 

「――干渉開始(プレイボール)

 

ワルキューレの動きが、片方だけ止まった。そして、もう片方のワルキューレに攻撃を始めた。ギーシュが、驚きのあまり一瞬動きを止める。

 

「なっ!コントロールできない!?」

「同じ詠唱でも効果が違う、のかな」

 

必死にワルキューレの制御を取り戻そうとするギーシュだが、制御を奪われたワルキューレは鏡写しのように同じ動作を繰り返し全く勝負がつかない。遂に、ギーシュはワルキューレを土に戻した。

 

「まさか、メイジだったとは…マントを着けていないので油断したよ…しかし、これならどうかな!?」

 

今度こそ、まぎれもないギーシュの全力だった。七枚の花弁が地面に降り、七体のワルキューレに姿を変えた。確かに、一体を操っても残る5対で圧倒できるが…

 

「じゃあ今度はこっちで行きますよ!」

 

そう言って、フラットは再び右手の甲に触れた。そして、ルーンが強く光り始めた。フラットは、まるで達人のように堂に入った構えで両刃の青銅剣を両手で掴んだ。そして、接近した一体のワルキューレに、青銅剣を一閃する。

ワルキューレは、金属特有の甲高い音を鳴らして胴に当たる部分から両断された。軽快に足を送りながら、次々とワルキューレを粉砕していくフラットに、汗で全身を濡らすギーシュは確実に恐怖を抱いた顔をしていた。

遂に最後のワルキューレが唐竹に両断され、フラットが目前に迫った時、ギーシュは小さく悲鳴を漏らした。全身を疲労が襲い、魔法に精神力を吸われ息も絶え絶えであるというのに小さくしか漏らさなかったのは、軍人の家系としての誇りからか。

汗とで濡れた額と、今にも座り込みそうな姿勢で座り込むことだけは堪えていた。

いつの間にか、周囲はすっかり静かになっていた。

 

「ギーシュさん」

「僕は…屈しないぞ」

 

嬲られると思っただろうか。今回のギーシュの行いは当初見せしめを目的としており、その想像は当然と言える。だが、フラットの性格は緩いことで有名だった。

 

「シエスタさんに謝りましょうよ。確かに平手は痛かったと思いますけど、それでメイドさんをいじめちゃいけませんよ」

 

ちなみに、フラットには仲の良いメイドがいる。かなり整った容姿と体格をしているが、水銀製である。

予想外の回答だったのか、ギーシュは一瞬惚けた顔になったが、直ぐに笑いだしてしまった。

 

「負けた!僕が悪かったよ!」

 

倒れそうなほど疲労困憊していたギーシュは、どうにかフラットの腕を持ち上げた。そして、フラットの傍に駆け寄ってきたシエスタに最上級の角度で頭を下げた。

 

「すまなかった。身から出た錆とはこの事だ。謝罪を受け取ってもらえるかい?」

 

一方のシエスタは、完全に想像の外の出来事だったのか、泡を食ったように慌てていたが、謝罪を受け取り、自分も悪かったと述べた。

 

そして、全身の筋肉をガンダールヴの力で酷使したフラットは見事な勢いで倒れた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

保健室のベッドで、フラットは目を覚ました。

 

「やっと起きたのね!」

 

ベッドの傍にはルイズが座っており、丁度シエスタが切ったリンゴを運んできたところだった。

 

「いやぁ、フラットだけにふらふらふらっといっちゃいました」

「別に上手くないわよ、それ」

 

愕然とするフラットに、ルイズはリンゴの乗った皿を手渡した。

 

「あんた、あんなに上手に剣を使えたのね。正直そんなタイプには見えなかったんだけど」

「あれですか、あれはご主人の刻んだルーンの効果ですよ。体力を使ってどんな武器でも使いこなせる…みたいな効果ですね」

 

あっという間に立ち直ったフラットは、簡潔にルーンの効果を述べた。シエスタは感心したような様子なのだが、ルイズは頭を捻る。

 

「そんな効果初めて聞いたわよ…」

「そうなんですか?ガンダールヴって書いてありますけど、結構特別なんですかね」

 

今度は、全員が頭を捻る番だった。ルイズは、聞いた事こそあるようなものの、何時なのかさっぱり思い出せない。最初に頭から手を離したフラットがリンゴに手を伸ばした所で、三人目の訪問者が現れた。

 

「ふむ、意外と元気そうじゃの」

「オ、オールド・オスマン!」

 

朗らかな顔で現れたオスマンは、何事か呟き軽く杖を振った。一瞬シエスタの目が焦点が合わなくなったように揺れ動き、もう一度オスマンを見て仰天した。

 

「すまんが、この二人に話があるのじゃ、席を外してくれんかの」

「は、はい!今すぐ!」

 

シエスタが出て行ったことを確認したオスマンは、更に呪文を唱え杖を二回振った。

 

「さて、ここからの話は色々と聞かれては困ることなのでな、いくつか魔法を掛けさせてもらった」

「記憶の改竄と防音ですか」

 

フラットの言葉に、オスマンは悪戯っぽく笑った。

 

「さて、ミス・ヴァリュエールが君を召喚した時は碌に話も出来なかったが、今度はきっと実りのある話ができるじゃろうて…すでに、王宮の馬鹿共と話すときよりは楽しませてもらっておる」

「えっと、その、私」

 

普段、会話を交わすことの無い人間は意外と会話の糸口をつかむことが出来ない。しかし、令嬢であるだけにルイズは無事鯉口を切った。

 

「フラットがずっと私たちを見ているって言っていました。そのことと何か関係があるんですか?」

「おお、おお!その事はワシも驚いておったのじゃ。まさかその年でワシの魔法に干渉するほどの腕とは思わなんだ」

 

もちろん、着替えの時などは切っていたと茶目っ気たっぷりにウインクした。どうにも、年を取った子供の様にしか見えない人物である。しかし、世間話もそこまでとばかりに、本題が切り出される。

 

「ふむ…既に教室の一件で先に言われてしもうたようじゃが、君の属性に関することじゃ、ミス・ヴァリュエール。そして、フラット君の腕に宿ったルーンについても」

 

細められたオスマンの目には、二百歳を超えるという噂を信じようと思えるほどの知性の光があった。

 

「ガンダールヴとは…詠唱中の始祖を守り、千の敵を前に退かず守りぬいたという神の盾の名前じゃ」




それっぽいところで終了。
続きは復刻セイバーウォーズ以外も忙しいので少々時間を頂きます。

追記
香水メーカーはモンモラシーですね。
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