発明少女にとりちゃん   作:N-SUGAR

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ミステリー風前後二話構成です。問題編と解決編。少し長いです。あくまでミステリー風なので読者の皆様が真相を究明するのは難しいと思います…。完璧に全ての謎を解いたら予知能力者の称号を与えてもいいかもしれません。ですが予想は十分に可能ですので暇な人は解決編までに犯人を予想してみると面白いと思います。犯人はこの話の終わりまでに登場した奴らの中にいます。
それではどうぞ。お楽しみください。


第十作 ミステリード 問題編

第十作 ミステリード 問題編

開発責任者:河城にとり

 

にとり「ついにできたぞ!」

 

小鈴「やっとですか!」

 

文「さて、…この発明で全てが解決すれば儲けものなのだけれど…」

 

マミゾウ「河童よ。…そのタブレットフォンで、この混沌とした状況を本当に解決出来るのかの?」

 

にとり「出来るとも!私の新発明、名探偵ミステリード様の手にかかれば解けない謎など何もない!」

 

魔理沙「そりゃあいい。ならさっさとしてくれよな。いい加減私も帰りたいぜ」

 

阿求「そうですね。私も色々と忙しい身の上ですので何時までもここに拘束されているわけにもいきませんし、まずはその機械を使うことからですかね。河城にとりさん。私達はこれから何をすれば良いのでしょうか」

 

にとり「うん。まずは情報の整理からだね。今からこのタブレットに、今の現状と、今に至るまでに一体何があったのかを正確に記入しなくちゃいけない。謎を解くにはまずその謎を明確にするのと、謎を解くのに必要な最低限の情報が必要不可欠だからね!だからまずは、情報の整理も含めて今までの状況を今一度言葉にしてみよう。この鈴奈庵で今日、一体何があったのかを」

 

小鈴「…そういうことなら、まずは私からですね!―――私は今日、お父さんが貸本の回収に向かったので朝からこの鈴奈庵で店番をしていました。しばらくはお客さんも全然来なかったんですけど、お昼頃、午の刻を少し過ぎたあたりにまず、マミゾウさんが来店されたんです」

 

マミゾウ「儂は小銭稼ぎに拾った本を小鈴に売りに来たんじゃ。売った本は確か、外の大衆漫画雑誌じゃったよな?」

 

小鈴「ええ、結構厚めの本で五冊あった本の題名は全部違いましたが、全て週間少年という部分は一致していましたね。かなり最近のものでしたので高めに買い取らせて頂きました」

 

にとり「なるほどなるほど。それで?」

 

小鈴「それからしばらくマミゾウさんと雑談していると、今度は阿求がやって来たんです。…文さんと一緒に」

 

阿求「私は借りてた本を返すついでに新しい本を見に来たのよ。なんでも新しい妖魔本が入ったとかいう話を聞いたから。それで、その道中に彼女と会って、行き先が同じだって言うんで一緒に来たの」

 

文「私は妖怪の山の上司からある仕事を頼まれていたのです。まあそれは先程も話したんですけど、もう一度簡潔に説明しますと、二日前に山で管理していた危険な妖魔本がいくつか、何者かに盗まれてしまったようなのです。恥ずかしい話ですがね。だからその妖魔本がもし万が一ここ、鈴奈庵に流れて来ているようなら回収させてもらおうと思っていたわけなんですけど、まあ、それがビンゴだったということです」

 

阿求「どうやらその新しく入荷した妖魔本っていうのが、彼女の言う「危険な妖魔本」の一つだったらしいわね。…確か、『知りたがりエートのエングラム図鑑』だったかしら?」

 

文「ええと、はい。確かそんな感じの題名だったように思います。この妖魔本は百年以上前に書かれたもので、色んな妖怪の『エングラム』と呼ばれる体組織が記録されているらしいのです。このエングラムと言うのは主に生物の記憶を暗号化して保存しておく機能があるらしくて、それをいかなる方法を用いてか本に移しとったのがこの本というわけなのです。それで、その記録の中にはかなりの大物の記憶も混じっていたらしく、その大物の記憶がある日自我を持ち独り歩きして、今も色んな妖怪の記憶を移しとっている、と。因みにこの移すと言うのは写本の写ではなく移動の移を使う方の移すですから、つまり移された記憶の持ち主はその記憶を失ってしまうというわけなのです。山の方では要管理対象としてこれとあと二冊の妖魔本をある倉庫に管理していたんですけど、それらが全て盗まれてしまったんですね。情けない話です。―――そして、その一冊がどういうわけかここにあったということなのですが…」

 

にとり「なるほどなるほど。だが、その妖魔本が再び無くなってしまった、と。今はそれが問題になっているわけだ」

 

文「私としては何らかの理由で妖魔本をここに置いていった犯人が私の手によって回収されるのを恐れて再び妖魔本を隠したのだと思っているのですが…」

 

にとり「まあ、そこら辺の推測は追々やっていくとしてだ。たしか、最初に妖魔本が倉庫から盗まれたとき、その犯行に私の発明品が使われたんだっけ?」

 

文「ええ。危険物を保管していた倉庫には、にとりさんの発明品であるヒッチハッカーという装置が使われた痕跡がありました」

 

魔理沙「この前お前が没収されたとか言って愚痴ってたやつか?」

 

にとり「そうそう。でもあれ、そのあと返ってきたんだよ。第四種危険物認定ってのをされてね。椛が口利きしてくれて要監視ってだけで良くなったんだ」

 

文「まあそれも盗まれてしまったうえに犯罪の手段として使われてしまった今となってはまず間違いなく第三種に格上げでしょうがね」

 

にとり「ううん、やっぱりそうだよね。…便利だったんだけどなあ…。あれ」

 

文「犯行後に椛から指摘されて盗まれたことに漸く気づくような杜撰な管理をしているからそんなことになるのよ」

 

にとり「はあい。反省してまーす」

 

阿求「話が少しそれすぎじゃありません?話を元に戻しましょう。私と文さんがここに来てそれからのことですが――」

 

マミゾウ「それは儂から話すのが都合良かろう。その二人がここに来たとき、儂は偶然にも、小鈴との雑談の流れで例の妖魔本とやらを見せて貰っていたのじゃ」

 

小鈴「あの妖魔本は、昨日私の知らない間にここにおいてあったのを見つけたもので、あまりにも怪しかったのでマミゾウさんに相談にのってもらうことにしたんです。まあ、好奇心に負けて少しだけ読んじゃったんですけどね」

 

マミゾウ「儂が見た限り――ああ、読んではいないぞ?あくまで見た限りじゃが、ありゃあ相当なもんじゃな。妖魔本とは言うが、あれは妖気と言うよりはむしろ霊力を放っておった。…博麗の巫女の力とほぼ同じものを感じたぞい…。儂のような妖怪があれを開くのはちときつい。これは儂の想像じゃが、百年以上も前に作られたと言うあれの制作にはもしかすると、博麗の巫女も関わっておったんじゃないか?」

 

文「ええ。その通りですよ。私も詳しくは聞いていないのですが、担当の大天狗がそこだけは厳重に注意を促していました。あれの制作にはメインの著者でこそ無いものの、先々代の博麗の巫女が関わっていたそうです。ですので対妖怪の危険性は一級レベルだと。妖怪は絶対に開いてはいけない一品だそうです」

 

小鈴「へえー。やっぱりあの本はかなり危険なものだったんですか。私は人間だったから読んでも大丈夫だったんですね」

 

マミゾウ「ちゅーか、そこまで危険な本をちょっとした装置一つで盗まれるとか、山の危険物管理はどんだけゆるゆるなんじゃ」

 

文「あまり舐めないで頂きたいですね。もちろん管理は厳重に行っておりましたとも。第三種危険物管理塔。あの倉庫の警備は当然ヒッチハッカーひとつで盗めるほど安易なものではありません。ええ。私も一度あそこに侵入しようとして失敗しているので間違いありませんとも」

 

マミゾウ「いや、お主。何をやっとるんじゃ…」

 

文「記事を書くのに必要だったんですよ!それもこれもにとりさんが椛と紅魔館の門番を殺しかけたとかいう危険物に快眠マフラーとかふざけた名前付けてるのがいけないんです!あのままじゃあ記事が緊張感に欠けるんですよ!」

 

にとり「私のせいかよ!?…いや、私のせいではないな!あくまで文さんが勝手に記事にしようとして失敗してるだけだもんな!あと、殺しかけてねーよ!動けなくなっただけだよ!」

 

阿求「また話がずれてきてる…」

 

文「ああ、そうでした…。とにかく!あそこの警備はかなり厳重でした。私が本気を出せば突破できないことはありませんが、しかしそうすると確実に私がやったということはバレてしまうでしょうね。マミゾウさん。たとえ貴女でもバレないようにあそこに侵入するのは不可能ですよ。なにしろあそこには厳重な施錠と共に、椛クラスの白狼天狗のツーマンセルが十組と、更に上位の烏天狗が五人、常時見張りに就いていますからね」

 

マミゾウ「じゃが、実際には侵入が果たされ、危険な妖魔本が三冊も盗まれておる、と」

 

文「それを言われると確かにそうなのですが、しかし私の言う不可能というのは、何も工夫を凝らさなかった場合のことです」

 

マミゾウ「と、言うと?」

 

文「そうですね。例えば私の場合ですと、ヒッチハッカーを持って挑めばかなり成功率が上がりますが、それだけではちょっと弱い。何か隠密系の道具を一つ持てば完璧ですね。にとりさんの光学迷彩スーツがあればまず、バレずに侵入可能でしょう」

 

にとり「光学迷彩スーツ?でもあれって結構バレるもんだよ?」

 

文「貴女がすぐバレるのは動く時に揺れを隠しきれていないのと、妖気が少し漏れているからです。私は妖気の扱いは完璧ですし、風を操る能力がありますから、どれだけ速く動いたところで揺れを外に漏らす心配もありません」

 

にとり「へえ、良いこと聞いた。私の姿くらましが完璧になる日も近いね」

 

文「おっと、これは余計なことを言ってしまいましたかね」

 

マミゾウ「白々しいのぉ…。そうやってわざと余計なことを方々に吹き込んで、マッチポンプ式に記事の種を増やす魂胆じゃろうて」

 

文「あやや、疑いますねぇ…。まあ、ノーコメントと言うことにしておきますか」

 

魔理沙「ああもう!変な陰謀をここで巡らすなよ!余計に話がややこしくなるだろうが!」

 

文「そういった準備さえすれば魔理沙さん。貴女にも犯行は可能なのですよ?」

 

魔理沙「ああ!?ここで私を疑うのかよ!?」

 

文「疑うもなにも、貴女は最初から筆頭容疑者の一人ですよ。職業盗賊でしょうに。貴女は」

 

魔理沙「魔法使いだよ!!本業は!!」

 

文「では訂正して、副業盗賊ですよね?貴女は」

 

魔理沙「そこは否定しない!ただこれだけは言わせてもらおう。私は他人のものを盗んでるわけじゃない!借りてるだけだぜ!死ぬまでな!」

 

にとり「そうか。じゃあ私の光学迷彩スーツも死ぬまで借りてるつもりなのか?」

 

魔理沙「うぇ!?」

 

文「え、…にとりさん。今とんでもないこと仰いませんでした?」

 

にとり「はっはっは!バレてないとでも思っていたか魔理沙め!確かに光学迷彩スーツは在庫が大量にあるから知らない間に一つくらい無くなったところで気付きゃあしないだろうが私だって馬鹿じゃない。大事な発明品を仕舞っておく場所には監視カメラの一つくらい付けておくさ!」

 

魔理沙「なっ!何だよその監視カメラってのは!」

 

にとり「泥棒に教える筋合いはない!大事なのはお前の犯行の一部始終がこちらにバレバレだという事実のみだ!」

 

魔理沙「バレてたんだったら何で私に文句言ってこなかったんだよ」

 

にとり「さっき言ったでしょ。在庫がいっぱいあるって。使い道がないくらいにさ。一つくらい無くなったってどうでもいいし、むしろ不要在庫になるくらいだったら魔理沙に使ってもらった方が道具も本望ってもんでしょ。だから言ってくれれば普通にあげたのに」

 

魔理沙「…じゃあなんで今更そんなこと言うんだよ。あれ盗んだの大分前だぞ。あ、ちがった。借りたの、な」

 

にとり「粘るねぇ。いや、せっかくの機会だから、ウチのセキュリティもザルじゃあないんだぞって教えておこうと思ってね。光学迷彩スーツはいいけど、あそこにはちゃんと盗まれたくない発明品もあるからね。ヒッチハッカーとか。あれ、行政から再生産止められてるから在庫が一つしかなかったんだよねー」

 

文「ちょ…、少し待ってくださいにとりさん。カメラを所有している私にはその監視カメラの役割が大体想像出来るのですが、それがあればヒッチハッカーを盗んだ犯人も特定出来るのではないですか!?」

 

にとり「ああ、それね。結論から言うと、それは無理だったんだ。あれの保管場所も勿論監視カメラの監視領域に入ってたんだけど、これが何故か本気で何も映ってなかったんだ」

 

文「…だとすればやはり魔理沙さんが光学迷彩スーツを着て…」

 

にとり「確かにその可能性は考えられる。なにしろ魔理沙はヒッチハッカーが盗まれたと思われる期間中にウチにきてるからね。ほら、文さんもちらっと来てたでしょ。河童たちと地霊殿組で宴会開いた日」

 

文「ああ、あの時ですか。確かにいましたね。ではやはり…」

 

魔理沙「おい!」

 

にとり「でも、魔理沙に犯行は不可能なんだよ」

 

文「なっ!どう言うことです?これだけ状況証拠が揃っているのに」

 

にとり「まずさっきも言った通り、ウチのセキュリティはザルじゃない。そして私は光学迷彩スーツの開発者だ。文さんなら私の言いたいこと、判るでしょ?」

 

文「誰よりも貴女が監視装置に光学迷彩スーツ対策を行っていない訳がない…と、そういうことですか…」

 

にとり「まさしくその通り、さ。ウチの監視カメラにはサーモセンサーが取り付けられている。例え光学迷彩スーツを着たってあれは使用者の体温までは隠せない。サーモセンサーってのはその体温を監視するための装置だ。故に、魔理沙では私の監視に気付かれないままヒッチハッカーを盗むのは無理だ」

 

文「うーむ、…事の真相に近付けたと思ったんですがねぇ…」

 

にとり「まあまあ、元気出しなよ。事の真相は全て、このミステリードが解いてくれるさ」

 

マミゾウ「今更じゃが…。そのミステリードとかいうのはまだ出来たばかりの試作品なんじゃろう?そこまで信用できるものなのかの?」

 

にとり「あったりまえじゃん!なにしろ私の発明品だよ?…しかもこいつは、今や語るのも忌々しいペレストロ烏賊からAIを受け継いでいるんだ。情報の分解、整理、再構築はお手のものさ」

 

マミゾウ「ぺれすとろいか?なんじゃい。革命でもしたのかい」

 

にとり「ああ、あれは確かに凄まじい産業革命を起こす可能性を秘めていた…。ソビエトどころか河童という種の存続すら危ぶまれるレベルで…。うん、これ以上は話したくないな…」

 

マミゾウ「なんじゃ、すごく気になる言い方じゃな」

 

文「ええ。新聞記者を前にしてその言いようは生殺しもいいところですね」

 

にとり「そんなに知りたいなら。私の他にも知ってる奴がいるよ。そいつに聞きなさい。私がいなくなった後に」

 

文「はあ、…それならそうさせていただきますが…」

 

にとり「あと文さん。聞いた話を記事にしたら私は文さんを嫌いになるよ」

 

文「うえ、…それこそ生殺しもいいところですね。…あー、分かりましたよ。聞くだけに留めておきますよ」

 

小鈴「あのー、私、あんまり話に付いて行けてないんですけど。今ってどこらへんまで話してましたっけ」

 

阿求「私と文さんがここに来たとこまでよ。…つまり話はまったくと言っていいほど進んでないわ」

 

文「う…、すみません。話の脱線が多くって…」

 

マミゾウ「確か、お主達が来てすぐに一瞬口論になりかけたんじゃったかの?」

 

文「ええ、そうですね。貴女が盗んでここに持ってきたものだと思いましたので」

 

マミゾウ「悪びれんのう。まあそこはいいわい。誤解は解けたことじゃしの」

 

文「解けたのではなく保留になったんですよ。貴女も事件当日妖怪の山にいたことは確認されてるんですから。容疑者にならないわけがありません。…それで、その口論が一段落ついた辺りで、にとりさん達がやって来たんですよね」

 

魔理沙「ああ、そうだったな。私達が入ってきたとき、お前ら若干険悪な雰囲気だったもんな」

 

にとり「私は前々から作ってたミステリードの参考になりそうな本を探しに来たんだけど、その途中でばったり会ってね。そのまま一緒に来たんだ」

 

魔理沙「私はアガサクリスQの新作が出たってんでそいつを借りに来たんだ。最近外れの本ばかり引くが、あのシリーズは確実に面白いしな。真っ直ぐ来たわけじゃなくて、一度博麗神社に寄ってからここに来てる。新作の話を聞いたのもそこでだな。霊夢のやつが今度こそ解答編までに謎を解いてやるってイキってたんだ。なら私が先に解いて答えを教えてやろうと思ってな」

 

にとり「さすが魔理沙。何ともえげつないことを考える」

 

魔理沙「尊敬してくれていいぜ。なんなら師匠と呼んでくれてもな」

 

にとり「そこに痺れもしないし憧れもしないよ」

 

魔理沙「そうか。いやしかし、推理小説を借りに来て、まさか本物のミステリーに遭遇することになるとは流石の私も予想外だったぜ」

 

阿求「あら、なんだったらこの謎も、推理小説のように解いて行ってくれて構わないのですよ?」

 

魔理沙「そうしたいのは山々だし、実際少しは考えてもみたが謎は解けそうにないな。その上あんまり興味も沸かないんだよなー」

 

文「それは、貴女が犯人だからなんじゃないんですか?答えを知っているから、興味もない」

 

魔理沙「違う。その盗まれたっつー本に興味が無いからだ。『知りたがりエイトのエングラム図鑑』とか言ったか?さっきパラッと見てみたが、本の危険性のわりに中身は幻想郷縁起に書いてあったようなことばかりだったぞ。なんならあっちの方が内容が整理されていて読み易いくらいだ」

 

阿求「あら、それは嬉しいですね。私の、或いは先代達の妖怪に関する考察やまとめが正確だという事の証明になりますから」

 

文「おや、小鈴ちゃんならともかく魔理沙さんがあれの中身を読めたのですか?てっきりあれの中身は暗号化されているとばかり思っていたのですが…」

 

魔理沙「いや?普通に読めたぜ?…まあ暗号化された組織とやらを記録時に自動で翻訳するってんなら、確かに生はかじゃない技術が詰まっているんだろうが、それも話を聞く限りじゃ魔法じゃなくて霊術の一種っぽいしな。ちょっとした参考にはなるが興味が沸くって程でも無いぜ。…しかも、謎を解いても本が私の物にならないってんだから、本気で興味が沸かない」

 

にとり「どちらにしろ最低だね。もう魔理沙が犯人ってことでいい気がしてきたよ」

 

魔理沙「おいおい滅多なことは言うもんじゃないぜにとり。やったことを責められるんなら甘んじて受け入れるのも吝かじゃないが、やってもないことで責められるのは道理に合わない」

 

にとり「まあね。…さて、今の話でやっとここにいる全員。つまりは『知りたがりエイトのエングラム図鑑』窃盗事件の容疑者が揃ったわけだけど、ここにいる面子以外で誰か容疑者になりそうな奴っている?」

 

阿求「そうですね…。八雲紫なんてどうです?彼女ならここで起こった事件に限らず、全ての犯行が可能なように思えます」

 

文「それはありませんね。彼女には動機がありませんし、何よりアリバイがありますから」

 

魔理沙「アリバイ?」

 

文「彼女は今冬眠中です。つい先日に春告精が来たばかりですし、あと数日は寝ていると思いますよ」

 

魔理沙「あー、成る程な。そう言えばそうだったぜ。…因みに動機がないってのはどういうことだ?」

 

文「彼女は賢人の一人ですから、妖怪の山でもある程度権力を持っていますので、普通に申請すれば本を借りることができます。自分で読めもしない本を妖怪の山と敵対する危険を犯してまで盗むとは思えません」

 

魔理沙「そうやって自分が疑われない為のカモフラージュかもしれないぜ?確か、本は後二冊盗まれてるんだろ?」

 

文「ええ、『アカシックレコードの未完写本』と、『可能性空間移動論入門』の二冊ですが、二冊のどちらも、八雲紫が盗む様なことは絶対にありえません」

 

魔理沙「ほー?どうしてそう言い切れる」

 

文「まず『アカシックレコードの未完写本』ですが、こちらは大昔ある妖怪が、まあぶっちゃけ八雲紫ですが、彼女が是非曲直庁で管理されているアカシックレコードという本を写本しようとして失敗したとされる作品です。より正確に言えば、写本自体は可能でしたが、する前に当時のヤマザナドゥに止められた作品です」

 

魔理沙「その本は一体どう危険なんだ?アカシックレコードとやらは写せなかったんだろう?」

 

文「アカシックレコードがどうと言うよりは、それを写すために作られた本の性質がヤバいのです。あの本は周囲十メートル以内にある書簡の内容を写し取る性質が有りまして、詰まるところどれだけ厳重に保管されたデータでも、その本がそばに有るだけで内容が盗みとられてしまうのです」

 

魔理沙「そりゃすげえじゃねーか!私はむしろその本の方が欲しかったぜ!」

 

文「こういう奴がいるから、厳重に管理されていたわけです。まあ、保管当時ではあの本はほぼ白紙だったらしいので犯人にその価値が判るとは思えませんが…」

 

にとり「成る程ね。制作者がそもそも八雲紫なら、わざわざ盗みに入る必要もないってことか。欲しかったらまた作ればいいんだもんね」

 

文「そういうことです。ついでに最後の一冊ですが、実はこれが今回盗まれた本の中でも一番ヤバい代物なのです。と言うより、一番緊急性が高い代物と言うべきですが…」

 

にとり「どういうことさ?」

 

文「『可能性空間移動論入門』。我々はこのような本をトラップブックと呼んでいます」

 

魔理沙「トラップブック?」

 

文「そうです。一言で言ってしまうと、異変の種なのですよ。あの本は」

 

にとり「どういうことだい?私は可能性空間移動なんて言葉、寡聞にして聞いたこともないけど」

 

文「その通り。可能性空間移動などという概念はこの世界には存在しません。架空の概念どころか、異世界の概念とさえ呼べるものです。―――しかし『可能性空間移動論入門』は、読者を通してその概念をこの世界に伝え、適応させてしまうのです。そうなるとどうなるか。にとりさんなら判るでしょう?」

 

にとり「可能性空間移動という言葉から考えるに、異世界からの来訪者が来る可能性が出てくるということかい?」

 

文「可能性どころか確実性が出てくるのです。異世界からの来訪者などと言うと一見異界からの来訪者と同一視されがちですが、規模が全く違います。可能性空間移動なんてその最たるもので、最悪同一人物と出会うなんてことになりかねません」

 

魔理沙「ドッペルゲンガーかよ。そりゃあ確かにヤバいかもな。ドッペルゲンガーに会えば殺し合いになるって話だしな」

 

マミゾウ「可能性世界の自分…。要するに分岐世界の自分か。まるで()()()()じゃの」

 

文「その本の作者。岡崎夢美教授と表紙には記載されていましたが、彼女の狙いその物が、本をポータルポイントとした異世界への侵入なのです。もしそれがなされてしまったならば、きっとろくなことにはなりません」

 

阿求「少し待ってください。本を開けば概念が適応され異世界を繋ぐ入口になるという話でしたが、だとすれば貴女、なぜそこまでその本の内容を知っているんですか?」

 

文「鋭いですねぇ。流石は稗田家の人間と言ったところですか」

 

阿求「いえ、普通の疑問だと思いますが…」

 

マミゾウ「いやいや、流石。()()()をしておるだけのことはある。まるでアガサクリスQの小説のような、見事な着眼点じゃわい」

 

阿求「貴女は私をからかっているだけでしょう…。やめてください」

 

マミゾウ「ふぉっふぉっふぉ。儂ぁ妖怪じゃからな。ついついいたずら心が働いてしまうんじゃ。稗田の書記なら、それこそよく知っておるじゃろうに」

 

阿求「はぁ…。それで?結局どうなんですか?」

 

文「その本を最初に見つけたのが香霖堂の店主だった。これで答えになりますかね?」

 

阿求「成る程。読まないままその本の使用用途だけが、店主の能力によって判明したということですか」

 

文「はい。その通りです。その時偶然私も現場に居合わせましてね。危険なので回収させていただき、山の方で管理することになったのです。あと、香霖堂の店主によれば異世界へのポータルポイントが本の形になっているのは―――」

 

阿求「異世界の選別の為でしょうね。恐らく何百何千と同じ本をランダムにいろんな可能性世界に飛ばして、その本を開いて内容を理解できるような知的生物がいる世界を絞っているのでしょう」

 

文「あやや、当てますねぇ。本当に探偵のようです。今回の事件の犯人も、同じように当てられないものでしょうか」

 

阿求「幾つか候補はあるけれど、絞り込みが厳しいと言ったところですね。断定が出来ない以上、お役には立てないでしょう」

 

文「残念ですねぇ…。まあ、とりあえずは判っていただけたと思いますが、『可能性空間移動論入門』は幻想郷にとって異変の種にしかならないし、博麗大結界にすら影響を及ぼしかねない代物です。そんなものをあの八雲紫がわざわざ盗むとは思えません」

 

魔理沙「まあ、そうかもな。それでもあいつは何を考えているか分からんとこがあるが、冬眠中ってのがとどめだったな」

 

にとり「いや、それよりも誰が盗んだにしろ、そんなものがよく知りもしない馬の骨の手元にあるのって結構やばくないか?」

 

文「確かに、緊急性が高いことは間違いありません。しかしあれに関しては、万が一に備えて封印が施されています。かなり強力な封印で、そう簡単には解けない仕様になっています。これに関しては以前私が直接確認していますので間違いありません」

 

にとり「でも、犯人は私のヒッチハッカーを所有しているんだろう?封印の種類によっては余裕で解かれてしまうよ?」

 

魔理沙「は?お前のあれってそんな使い方もできるのかよ」

 

文「…一瞬ヒヤリとしましたが、多分大丈夫だと思います。あの封印はそもそも解除する予定がないので鍵とかは設定されてませんから」

 

にとり「そっか。それならひとまず安心だね」

 

阿求「…しかし、八雲紫が無いとなると…。あと容疑者になりそうなのは、壁抜けの邪仙くらいでしょうか」

 

文「それもどうですかね。八雲紫にも言えることですが、そういう壁抜け系の能力者の場合、そもそもにとりさん家からわざわざヒッチハッカーを盗んで使用する必要も無いですから」

 

にとり「スキマ妖怪にも壁抜け仙人にも言えることだけど、その程度のステルス性ではうちの監視体制は崩せないよ。盗めはしても隠せはしない。必ず何らかの形で粗が出るさ。―――盗んだときの手が映るとかね」

 

文「そもそもあの人達の性格上、全体の計画はともかく一つ一つの細かい所業を一々隠すようなことはしないと思うんですよね。賢者のプライドとでも言いますか、こういう小物臭い犯行は、やっぱり魔理沙さんやマミゾウさんのイメージと言いますか」

 

マミゾウ「おい。どういうことじゃそれ。まるで儂が小物のような言いぐさじゃあないか」

 

魔理沙「いやどうだろうな。私はともかく、お前が小物臭いってのは、意外と的を射てるんじゃないか?この前も華仙の手玉に取られたっつー話だし」

 

マミゾウ「なら魔理沙はそれ以上の小物じゃな。儂の百鬼夜行絵巻などのように目当ての妖魔本をスマートに手に入れる手腕も無いんじゃし…。ネクロノミコンの写本とやらは、結局死ぬまでは借りられなかったんじゃろう?」

 

魔理沙「なんだと!」

 

小鈴「ちょっとマミゾウさん!本の窃盗を煽るような発言は止めてください!」

 

マミゾウ「おっとっと、これはすまなんだ。そこの二人の発言についついかちんと来てしまっての」

 

魔理沙「ちぇっ、性悪狸め。いつか一泡ふかせてやるからな」

 

マミゾウ「ふぉっふぉっふぉ、いつでもかかってくるがいい。返り討ちにしてやろう。楽しみにしとるぞい」

 

阿求「はいはい、罵り合いはそこまでにしてください。なんの生産性もない。大体話もいよいよ佳境だって言うのにそんなんじゃ、何時までたっても話が終わりませんよ」

 

文「そうでしたね。全員が揃ってからすぐに事件は起きましたからね」

 

にとり「そうだねー。私達が来て、例の妖魔本を見せてもらいながらてんでんばらばらに雑談してたらいつの間にか無くなってたんだもんね」

 

魔理沙「それから一時間も犯人探しでこうやって拘束されてたわけだ。…勘弁して欲しいぜ」

 

文「問題は、簡単なボディチェックを全員に行っても誰も本を持っていなかったということですよね。つまり、如何なる方法を用いてか犯人は本を我々の目から隠し通すことに成功している…」

 

にとり「まあ、そういう手段を持っている奴ならこの場に何人かいるけどね。私や魔理沙は光学迷彩スーツを被せれば良いし狸は化かせば良いし、妖魔本を隠すのにこの場ほど都合のいい場所はないからね」

 

文「他の妖魔本の妖気で紛れてしまいますからね。例えそれが霊気であろうと…」

 

にとり「…さて、大体の情報が出揃ったところで、改めて解くべき謎を整理してみようか」

 

阿求「あら、もういいんですか?」

 

にとり「うん。これだけあればミステリード様なら多分きっと解いてくれるさ。情報の入力が終わったから、あとは解くべき謎を検索するだけさ。タブレット端末だけにね」

 

マミゾウ「検索って…。いんたーねっとか何かか…」

 

にとり「幻想郷に電波は届かない。インターネットが使えれば、確かにもっといろいろ捗るんだけどねぇ」

 

マミゾウ「まあこんな原風景溢れる場所にWi-Fiが飛んでたら、それはそれで興醒めじゃがのう…」

 

にとり「そこら辺の機敏は私には判らないなぁ。便利に越したことはないと思うんだけどね。…まぁ私達の存在を脅かさない範囲ならだけど…。

さて!今回私達の前に立ちはだかった事件は大きく分けて三つだ。

一、河城邸ヒッチハッカー盗難事件。監視カメラに映らずヒッチハッカーを盗んだ犯人のトリックとは一体!?

二、第三種危険物管理塔妖魔本強奪事件。ヒッチハッカーが用いられたことはわかるが、厳重な警備をくぐり抜けた手法などは一切がわからないまま一級危険物の妖魔本を三冊も盗まれた厄介な事件!

三、鈴奈庵妖魔本失踪事件。前の事件で盗まれた本の一つ、『知りたがりエイトのエングラム図鑑』をやっと見つけたと思ったらまたなくなった!本を隠した犯人とその行方とは!?

まあ、ざっとこんなところだよね」

 

阿求「そのまんまミステリー小説にできそうなくらい綺麗に纏めましたね」

 

にとり「これくらい纏めないと検索してもわやくちゃになっちゃうからねー。…はい。入力完了!あとはこの検索ボタンを押して、―――それではみなさんご一緒に。

せーの、

ついにできたぞ!」

 

 

第十作 ミステリード 問題編

完成。

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