発明少女にとりちゃん   作:N-SUGAR

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解答編です。


第十作 ミステリード 解決編

第十作 ミステリード 解決編

開発責任者:河城にとり

 

にとり「ついにできたぞ!」

 

魔理沙「はいはい。決め台詞は判ったから。さっさと解決でもなんでもやってくれ」

 

にとり「うへぇ、ノリ悪いなーお前ら。そこはみんな一緒に唱和してくれるとこだろー」

 

阿求「そんな明るいイベントじゃないでしょう。これ」

 

にとり「ちぇ。分かったよ。じゃあちょっと待ってな。今検索結果を読むから」

 

文「その検索結果とやらは、どのように表示されるのですか?」

 

にとり「基本的には箇条書きだね。入力した情報を元に疑問点から順に判明した一番可能性の高い事実をあげ連ねていくんだ」

 

文「ほうほう。それで、具体的にはどの様な仕組みでその装置は―――」

 

魔理沙「おいおいやめろやめろ。こんな状況で取材始めんなよ」

 

文「あやや、失礼しました。ついいつもの癖で」

 

にとり「ふんふん、…ほうほう。…なるほどなるほど。……………………………はい!大体判ったよ!」

 

小鈴「ほんとですか!」

 

にとり「うん。…じゃあまずは、手っ取り早く、この鈴奈庵で『知りたがりエイトのエングラム図鑑』を隠した犯人から言っていこうか」

 

阿求「どうぞ。遠慮なく」

 

にとり「ああ、うん。それじゃあ遠慮なく。――て言うか、犯人はあんただよ。稗田阿求」

 

阿求「………………………そうですか」

 

魔理沙「はあ!?まじか!?私はてっきり………」

 

にとり「二ツ岩マミゾウか、あるいは()()()()()()のどちらかだと思っていた?」

 

魔理沙「げっ…」

 

文「…どういうことです?説明してください。にとりさん」

 

にとり「まず、この一連の事件の謎を解くには、事件捜査にありがちな物凄く基礎的な固定観念を取り外すことから始めないといけない」

 

小鈴「固定観念?」

 

にとり「そう。ごくごく基本的な因果の誤りだ。――三件の事件が起こる。その三件には関連性があり繋がっている。()()()()()()()()()()()()()()()()。この考え方は厳密には間違っている。つまり、三つの事件はあくまでも三つの別々の事件として考えることから始めないといけないんだ」

 

文「…なるほど。事件の概要が大体見えてきました。それでは、犯人は事件ごとに違う可能性があるということなのですね?では時系列を追って聞いてみることにしましょうか。一つめの事件。河城邸ヒッチハッカー盗難事件の犯人は、では誰なのです?」

 

にとり「一つ目の事件の実行犯は古明地こいしだ。但し確証は無いもののその犯行を唆したのが魔理沙であるという可能性は高い」

 

マミゾウ「ほうほう。なるほどのう。して、その根拠は?」

 

にとり「まず一つ目に、私に気付かれないまま監視を完全にくぐり抜ける為に採れる手段は三つしかない。ひとつ。遠隔から狙いのものだけを瞬間移動させる。ふたつ。カメラに偽の映像を映させる。みっつ。そもそも侵入されたことを物理的に認識させない手段を持つ。これだけだ。

まず前提条件として、私から発明品を盗むってことを実行しようと思うには、犯人は私のことをある程度知っていなきゃならない。ヒッチハッカーを狙い打ちにできるやつならなおさらだな。詰まる所、最初からお宝狙いではなく発明品狙いの奴だ。こんな奴はまず知り合いしかいない。てゆーかそもそも、妖怪の山は常に侵入者を見張っているから、ヒッチハッカーが盗まれたあの期間中に山にいた奴らは、山の連中と地霊殿組と、それから魔理沙くらいのものだと断言できる。つまり私のことを知っている奴がほとんどだ。て言うかほとんどが知り合いだ。

その中で、私が上げた三つの条件に一致する奴と言えば?」

 

文「古明地こいしくらいのものですね。条件の三に見事に当てはまります。…と言うか、あの時あの場にはこいしさんもいたんですか…。気がつきませんでした」

 

にとり「あいつの場合はそれが普通さ。かくいう私も気付いていなかったしね。…いや、その時は気付いていたけど後になって忘れたのかもしれないね。よく考えてみればそもそもあの宴会は、古明地こいしが私に迷惑をかけたお詫びってのから始まってるんだよ。本人がいない方がおかしい」

 

文「そうでした。確かにそういう話でしたね」

 

にとり「酒の席ではみんな気持ちがおおらかになって、そして大胆になる。魔理沙が古明地こいしを見つけてなんか面白そうなもんでもパクって来いとか言って唆した可能性は十分にある。いくら古明地こいしが無意識だとは言ってもさすがに理由もなく人のものを、それも保管されているものを無断で盗ろうとする可能性は低いからね。私から盗ったっていう発明品も、さとりさんの話では形ばかりとはいえ許可はとってたらしいし。何かしら外部からの切っ掛けがあったはずさ」

 

魔理沙「…そりゃあ、あくまでも可能性の話だろう?」

 

にとり「まあね。じゃあ根拠をだそう。魔理沙お前、さっきの会話中に私のヒッチハッカーが封印も破れるって話を聞いてこう言ったな?「は?お前のあれってそんな使い方もできるのかよ」って。おかしいよなぁ。魔理沙は確か、ヒッチハッカーのことは会話上でしか知らないはずだよなぁ。この言い方だと、まるで実物を見たことも使ったこともあって、その上で封印解除に使おうとまでは思い至らなかったかのような物言いに聞こえるんだが…」

 

魔理沙「い…いや、そりゃ言葉のあやってもんだろ…。今まで話に聞いてたものなんだから、そういう言い方になることだってあるさ」

 

にとり「後もう一つ。お前さあ、いくらなんでもちらっと見ただけで図鑑の内容と幻想郷縁起の内容がほとんど同じとわかるなんて、さすがに速読が速すぎるだろう。細かな違いや見落としがあるかも知れないじゃないか。見切りをつけて興味を失うのが、いつもの魔理沙に比べて早すぎる。これはどう考えても不自然以外の何者でもないだろう」

 

魔理沙「そ、そういうときだってあるわ!こじつけじゃねーか全部!」

 

にとり「粘るねぇ。ま、いいさ。話を続けよう。第一の事件を解くには、第二の事件に触れる必要があるんだ。――続いて、第二の事件」

 

文「第三種危険物管理棟妖魔本強奪事件ですね」

 

にとり「そう。結論から先に言うと、こいつの犯人も、魔理沙とこいしの二人組だ」

 

文「そこもですか」

 

にとり「そうだね。これも根拠がいくつか有るんだけど、一口で説明するのはむずかしい。ここら辺はかなり事情が込み入ってるからね。まず注目するべきは、文さんが『アカシックレコードの未完写本』の説明を聞いたときに魔理沙の発した台詞。「そりゃすげえじゃねーか!私はむしろその本の方が欲しかったぜ!」…あの時は聞き流したけど、改めて聞くとこれ、どう聞こえる?」

 

文「そうですね。その台詞ですと、まるですでに一度本を手にする機会があって、何らかの理由でその機能を確認しないまま本を手放したように聞こえます」

 

魔理沙「えっと、私、そんなこと言ったっけか?」

 

阿求「言いましたよ。間違いありません」

 

にとり「まずこの台詞で、魔理沙に疑いの目が向けられる。と言うか、第一の事件の犯人が古明地こいし以外にあり得ない現状、それを唆そうって奴も魔理沙くらいしか思い当たらないんだけど、じゃあ次は検証だ。魔理沙は光学迷彩スーツを所持している。更に犯行にはヒッチハッカーが使われている。しかしこれだけじゃあ、魔理沙に犯行は難しい」

 

阿求「それは、にとりさんと同様の理由からですね?魔理沙さんでは光学迷彩スーツだけでは警備員から姿を隠しきれない…」

 

にとり「そう。姿は隠せても移動するときの微細な振動までは隠せない。但しこれに関しても、共犯として古明地こいしがいるんだったら話は別だ」

 

文「魔理沙さん自体を隠すのは難しそうですが、最初から目に見えないものから警備の意識を逸らすことくらいなら、確かに古明地こいしの能力ならば簡単そうですね」

 

にとり「そう。ヒッチハッカー。光学迷彩スーツ。『無意識を操る程度の能力』。これら三つが合わされば、魔理沙でも十分にこの犯行は可能になるわけだ」

 

魔理沙「待て。待て待て待て!それならそれと同じことがにとりと文とマミゾウの三人にも言えるはずだろう!?お前ら犯行当時のアリバイ無いだろうが」

 

にとり「私には動機がないよ。わざわざ自分でヒッチハッカーを第三種危険物扱いさせるような愚行を誰が起こすか。そんなに妖魔本には興味がないし、そもそも私が第三種危険物管理棟に入るんだったら妖魔本より快眠マフラーの方を盗むっての。あれは私のものだからな」

 

文「私の場合も盗むのなら快眠マフラーですかね。記事に必要でしたから。そもそも、私の場合は最近事件になった快眠マフラーならともかく妖魔本を盗んだとしてもそんなの記事にできないじゃないですか。さすがの私もそこまでのマッチポンプはしませんよ」

 

にとり「当時のアリバイの無い容疑者の中で妖魔本コレクターはお前だけなんだよ。魔理沙。

あと文さん。快眠マフラーの一件は事件じゃない。事故だ」

 

文「二人も行動不能にしておいてよく言いますね。まあその話は後でいいです。後で、じっくりとインタビューしましょうね」

 

マミゾウ「あー、儂の場合はそもそも、第二の事件のアリバイは無くとも第一の事件においてアリバイがあるのじゃが」

 

にとり「ほら、もう容疑者は魔理沙一人だ」

 

魔理沙「ぐぬぬ…。だが、第二の事件の時にこいしが山にいたって証拠が果たしてあるのか?」

 

にとり「証拠は確かに無いな。だが根拠ならある」

 

阿求「………なるほど。そういうことですか」

 

にとり「おや、何か気づいたようだね。どうぞ。遠慮なく言ってみな?」

 

阿求「ええ…。小鈴。あなた言ったわよね。『知りたがりエイトのエングラム図鑑』は昨日、知らない内にここにあったって」

 

小鈴「え…ええ。本当に気付いたらそこにあって、さすがに気持ち悪くなって今日マミゾウさんに相談したのよ。…阿求に知らせたのもそうだけど…」

 

阿求「疑問だったのは、犯人が盗んだ妖魔本を何故わざわざ鈴奈庵に置こうと思ったのか。しかもよりによって『アカシックレコードの未完写本』ではなく『知りたがりエイトのエングラム図鑑』の方を」

 

小鈴「えっと、どういうこと?」

 

阿求「いいこと?小鈴。『アカシックレコードの未完写本』は本から情報を盗む本。『知りたがりエイトのエングラム図鑑』は妖怪から記憶を盗む本なの。前者の方はここに置く意味があるわ。ここには情報を盗める本がいっぱいあるから。特に妖魔本が大量にあるというのはこの私をして魅力的であるとすら言えるでしょう。でも後者の場合はその限りではない。確かにここには妖怪もやって来るけど。ここに置くくらいだったら魔法の森辺りにでも捨て置いた方がよっぽど収穫が望めるわ。私だったらこっそり博麗神社の隅っこの方にでも置いておくかしらね。あそこは妖怪がいっぱい来るし、本の放つ霊力も周りの気配に紛れて目立たないから」

 

小鈴「うわあ、それはちょっと引くわ…。…え?でも、じゃあなんで『知りたがりエイトのエングラム図鑑』はここにおいてあったの?」

 

阿求「考えられる可能性はいくつかあるけれど、なかでもこの状況で一番高い可能性は、まず本人にその本を悪用する気が無く、手に入れたはいいがその本が自分や周りの人にとって何となく危険だと理解していて、そこら辺に捨てようにもそれはそれで人の迷惑になってしまうから、使い道に困った末に偶然通りかかった本がそこにあっても不自然ではない場所に捨てていったという可能性よ」

 

小鈴「本がそこにあっても不自然じゃない場所って…。まぁ確かにそうなんだけどさ」

 

文「成る程判りましたよ。つまり魔理沙さんは、こいしさんと妖魔本を盗んだ後、その妖魔本を山分けにしたというわけですね?」

 

にとり「盗んだ当時の状況から考えて、見たことある内容の本。見た目白紙の本。厳重に封印された本の三種類があったとして、魔理沙が一体どれから手放すかを考えると…」

 

阿求「見たことある内容の本でしょうね。白紙の本は、まだ何か秘密が有るんじゃないかと勘繰りたくなりますし」

 

文「しかしこいしさんはその本を持っている内にどこかでその本の危険性に気が付いてしまったと。…まぁ、あの子の場合は、すべてを無意識のうちにやったという可能性もありますが…」

 

にとり「私はむしろその可能性の方が高いと思うよ。無意識のセルフ危機察知。…まぁ、どちらにせよあんなもの地霊殿に持って帰ったって百害あって一利無しだもんねー」

 

小鈴「『無意識を操る程度の能力』かー。誰も認識できないんじゃあ、確かにいつの間にかそこにあっても気づけないよねー」

 

文「私達天狗としては、そのまま返してくれたら尚良かったんですがね。というか、そここそが有るべき場所でしょう」

 

にとり「いつの間にか盗まれて更なる厳戒態勢の中いつの間にか戻ってきたんじゃあ、流石に容疑者が絞り込まれちゃうでしょ。共犯である魔理沙に迷惑がかかるとでも思ったんじゃないの?無意識に」

 

文「始末に困ります。良い子なんだか悪い子なんだか」

 

にとり「無邪気な子で良いんじゃないかな。要は付き合い方次第さ」

 

文「成る程。では今回の場合悪い子は魔理ちゃんだったということですね」

 

魔理沙「おい!なんだよその呼び方!」

 

文「では、霧雨魔理沙被告と呼んだ方がいいですか?山の方で正式に裁判にかけても良いんですよ?この場合外部の者が山の危険物を盗んでいるので判決は死刑だと思いますが」

 

魔理沙「あー、…魔理ちゃんちょっとポンポン痛くなってきたかも。いや、でもワンチャン証拠不十分で…」

 

にとり「でも家にあるだろ?『可能性空間移動論入門』」

 

魔理沙「オイオイオイ。死ぬわ私」

 

文「素直に返却してくれれば私の方で不問に伏してあげますよ。魔理ちゃん」

 

魔理沙「わーいありがとうあやおねーちゃん。ってか。…人生が辛いぜ」

 

文「これに懲りたら限度というものを弁えることですね。………ん?『可能性空間移動論入門』……だけ?『アカシックレコードの未完写本』の方はどうしました?」

 

魔理沙「ああ、それなら――」

 

にとり「ここにあるよ」

 

文「そうなのですか!?」

 

魔理沙「へぇ、ここにあんのかよ。それははじめて知ったぜ」

 

文「どういうことです!」

 

にとり「さっき言ったでしょ。魔理沙は一度『アカシックレコードの未完写本』を手にして既に手放している様な発言をしているって」

 

文「そう言われればそうでした。…では、『アカシックレコードの未完写本』もこいしさんが?」

 

にとり「いいや違う。『アカシックレコードの未完写本』は、魔理沙が目撃者の口を封じる為の賄賂として手放したんだ」

 

文「目撃者、ですって!?」

 

にとり「そう。どのタイミングでかは分からないが、魔理沙とこいしの犯行は目撃されていた。…恐らく、犯行が終わって、戦果を確認しようとしたときじゃないかな。その時ちょうど山にいた()()()()()()()という人物が、それを目撃して魔理沙に脅しをかけた。恐らく、天狗にばらされたくなければ儂にも分け前を寄越せとか、そんなことを言ってね」

 

文「そ、そこでマミゾウさんが出てきますか!」

 

マミゾウ「ほーう。ばれてしもうたか。…まぁ魔理沙が自白した時点ですぐにばれるとは思っておったがまさか既に判っておったとは…。参考までに、儂は一体何処でボロを出したのか聞いてもよいかの?」

 

にとり「まず、さっき言った魔理沙の発言がヒント一。次に魔理沙とあんたのいがみ合いがヒント二さ。魔理沙があんた相手に突っかかる理由が他に思い当たらないし、あんた自身言ってただろ?魔理沙は自分と違って目当ての妖魔本をスマートに手にいれる手腕もないって。これ、ネクロノミコンの写本のことじゃなくて、『アカシックレコードの未完写本』のことを言ってたんでしょ?魔理沙は目当ての本も見分けられない阿呆だって」

 

マミゾウ「ばれたか」

 

魔理沙「あーそれ聞いたらまた腹立ってきたなー。どつきまわしたろうかな。ほんとにな」

 

マミゾウ「魔理ちゃんは黙っとれ。今話が佳境に入ろうとしとるんじゃ」

 

魔理沙「お前に魔理ちゃん呼びを許した覚えはねぇぞコラ!喧嘩売ってんのか!」

 

文「それはつまり、私だけの魔理ちゃんということですか?これはきていますかね。きていて私だけのですかね」

 

魔理沙「ちっがああああああう!!そうじゃない!!」

 

にとり「魔理沙、そういう発言は今墓穴しか掘らないから止めとけ」

 

魔理沙「それは今身をもって体感している。畜生、どーしてばれちまうかなー」

 

マミゾウ「お主、全然全く反省しておらんの…。まぁいい。それで?河童よ。いや、にとりよ。お主、一体何処までわかっておる?」

 

にとり「そりゃあ、全てさ。ミステリードに死角はないからね。お前は、今日何しにここに来ていたと言っていた?」

 

マミゾウ「そりゃあ、外から流れ着いた漫画雑誌を売りに来た。じゃろ?」

 

にとり「そう。そう言っていた。だけど本当の目的は、それじゃない」

 

マミゾウ「じゃあなんじゃ」

 

にとり「小鈴ちゃんはさっきこう言っていた。「五冊あった本の題名は全部違いましたが、全て週刊少年という部分は一致していましたね」と。ここがまずおかしい。私がこのタブレット端末を拾って改造したのも結構最近でね。そこにはネットを介さない辞書アプリなんかも入ってたりしたんだが、それを見る限り、2018年現在において、週刊少年という名称を冠する漫画雑誌は、日本に四種類しか無いはずなんだよ。ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンだったかな?それは最近拾ったものなんだろう?残り一冊、外の世界に存在しない漫画雑誌が混じってるんだけど。それ、何?」

 

マミゾウ「なんだと思ったんじゃ?まぁ、今更じゃが」

 

にとり「確かに今更だ。答えは一つしかないもんな。それは、『アカシックレコードの未完写本』を変化させたものだ。目的は鈴奈庵の妖魔本を全てコピーすること。そうだろ?」

 

マミゾウ「お見事!よくぞ見破ったもんじゃ!」

 

にとり「それほどでもあるよ。何しろ私の発明品の力だからね」

 

文「成る程。…これがそうですか。確かに、『アカシックレコードの未完写本』で間違い無さそうです。これは、回収させてもらいますよ?マミゾウさん」

 

マミゾウ「ああ、好きにせい。ばれてしまった計画に何時までも固執するほど儂は小物では無いつもりなんでな」

 

文「ふう…。これであと所在の判らない妖魔本は『知りたがりエイトのエングラム図鑑』のみですね。…隠した犯人は、阿求さんという話でしたが…」

 

にとり「そう。第三の事件。だね。但し、より正確には阿求さんは犯行の計画者であって、実行犯じゃあない。実行犯は、別にいる」

 

魔理沙「へぇ!そりゃ一体誰だ?」

 

にとり「なに、勿体振るようなことじゃない。そいつは始めっからここにいる奴で、尚且つずぅーーーーーーーーっと、我々の会話に参加してなかった()()()のことさ。

 

おい!()()()()()()()()()!犯人はお前だろうが!」

 

 

 

 

 

霊夢「…………………んあ?何。もう話は終わったの?」

 

魔理沙「お前……。よくもまあこの状況でぐーすか寝てられるもんだよな…。しかもお前、犯人らしいじゃねーか」

 

霊夢「なんだ。結局ばれたのか。阿求。あんたも意外と大したこと無いのねえ」

 

阿求「今の今まで寝ていた人に言われたくはありません。私はほんのちょっと言葉選びを誤っただけです」

 

霊夢「だってかったるかったんだもの。犯人の判ってる推理小説くらい退屈なものってないわよね。だって犯人、私なんだもんね」

 

魔理沙「だからってずっと寝てるって、そんな犯人聞いたことねぇよ」

 

文「そうですよ。私としたことがちっともマークしていませんでした。にとりさんが帰った後にペレストロ烏賊とやらのことを聞くまで出番なんて無いものかと」

 

霊夢「ぺれ………?何それ?」

 

にとり「うおおい!?もう忘れたのかよ!いや、あれに関しては全然忘れてもらって構わないんだけどさー!なんっだかなー!釈然としないなー!」

 

霊夢「どうでもいいわよそんなの。それで?私はこれからどうすればいいわけ?「ふっ、馬鹿馬鹿しい。何か証拠でもあるのかね」とか言えばいいの?」

 

にとり「いいよそんなの。もう半分自白が取れてるもん」

 

霊夢「そ。じゃあ後処理は阿求に任せるわ。私は―――そうね。そもそもここに来た目的だった新刊小説でも読もうかしら。小鈴ちゃん。アガサクリスQの新刊ってどこにあんの?」

 

小鈴「あ、はい。それはこっちにありますが、…えっと、その、良いんでしょうか」

 

にとり「ああ、いいよいいよ。そいつに聞きたいことなんてあと一個くらいしかないしね。まずは阿求さん。あんたの番だ」

 

阿求「はい。御随意にどうぞ。ふふ、いつも何だかんだで私は謎を解く側の人間でしたから、こうして犯人側として取り調べられるのは、何だか新鮮ですね」

 

にとり「そうかい。それなら存分に今の状況を楽しんでくれ。…さて、まずは本を隠した手段の確認からだ。霊夢がスキマを繋げて鈴奈庵の外に出した。これで間違いないね?」

 

阿求「ええ。間違いありません。そもそもこの場において、あの本を瞬時に隠すことの出来る能力者は三人しかいませんでした」

 

にとり「博麗霊夢。二ツ岩マミゾウ。そして私の三人だね」

 

阿求「ええ。ですが、私があの本を隠そうと思ったときに、協力を仰げる人はこの中だとやはり霊夢さんしかいません」

 

にとり「だね。人里代表と言ってもいいあんたは、気軽に妖怪に頼み事は出来ないだろう」

 

阿求「貴女が、いえ、正確には貴女の発明品が私を怪しいと思ったきっかけは、やはり私の迂闊な発言が原因ですか」

 

にとり「…やっぱりすごいなあんたは。他の犯人達と違って、自分の掘った墓穴の位置を正確に把握してるんだからね」

 

阿求「伊達に完全記憶能力を持っているわけではありませんよ。私は」

 

にとり「記憶力といい洞察力といい、本当に探偵向きだね。そう、でもだからこそ、そんなあんたの()()()()は、とても聞き逃せるものではなかった。求聞持の力を持つ稗田の書記ともあろう人間が、『知りたがりエイトのエングラム図鑑』という()()の名前を最初に『知りたがりエートのエングラム図鑑』と言い間違えるなんてアホみたいなミスを素でするなんてとても思えなかった」

 

阿求「しかし、もしそこに何らかの意図があったとするなら―――」

 

にとり「そう。場面を考えて、尚且つあんたが犯人だと仮定するなら話は簡単だ。私はこのマシンを使い始めるときに確かにこう言った。謎を解くためにはミステリードに正確な情報を記入する必要があるって。だからあんたはその言葉を受けて、早速ミスリードを敷いたんだ。実際にそれで、直後文さんはうまく騙されたみたいだしね」

 

阿求「しかしそれから暫く経って、本を最初に盗み出した真犯人である魔理沙さんが、きっちり正しい名称を覚えていて、正しい名称を口にしてしまう」

 

にとり「そう。そこで初めて、機械に入力した情報に明確な齟齬が生じたんだ。『エート』と『エイト』で本の名称が食い違った」

 

阿求「しかしこの場の全員が一度目にした書物の名前です。一度正しい名称を言われてしまえば、あとはもう正しい方に従うのみ」

 

にとり「正しい本の名称は、『知りたがりエイトのエングラム図鑑』。これに関してはもう間違いがなくなった。…では、何故一番最初に完全記憶の持ち主が本の名称を間違えるようなことをしたのか。それが稗田阿求の敷いたミスリードだとするならば、偶然か否か、『エイト』という単語には実に聞き覚えがある。百年以上前に作られた書物だと聞かされればなおさらだ。…だってそれはまさしく御阿礼の子の転生周期と同じなんだから。それに書物の作成に当代の博麗の巫女が協力しているんだとすれば、当時その協力を仰げる立場にいた『エイト』と名乗る人物なんて、もう一人しかいない」

 

阿求「稗田阿弥。八代目サヴァンにして先代の阿礼乙女」

 

にとり「そういうこと。つまりは文字通り、あんたの前身だってわけだ。魔理沙が本の内容が幻想郷縁起とほぼ同じって言っていたのも当たり前だ。恐らく先代の阿礼乙女は、そいつを使って妖怪の情報を手に入れてたんだろうからな」

 

阿求「きっとそうなんでしょうね。当時はまだ所謂「昔の幻想郷」でしたから、今じゃあ考えられないような危険なものが大量に出回っていたし、作るのにも抵抗がなかったと聞きます。妖怪からインタビューなんて当時は難しいどころの話じゃなかったでしょうから、そんなことをするくらいだったら妖怪から直接記憶を抜いてしまった方が手っ取り早かったんでしょう」

 

にとり「それに気づいたあんたは現代を生きる稗田家の人間として、そんな黒歴史を内包した書物は是非とも回収しておきたかった。そうだろう?」

 

阿求「ええ。全くもってその通り。訂正のしようもありません。付け加えるのなら、その考えは同じく協力者の子孫である現在の博麗の巫女も同じだったってことですね」

 

にとり「時系列に行動を並べるとするなら、まず文さんと一緒に鈴奈庵に来る。妖魔本を見て自分の先代が作ったものだと気づく。私と魔理沙と霊夢さんの三人が来る。みんなが雑談している内に霊夢さんに協力を仰ぐ。そして回収するってところかな?」

 

阿求「はい。その通りですね」

 

にとり「よし!これで謎はすっかり解けた!実に清々しい気分だ!やはり私の発明品は完璧だった!」

 

文「成る程。ならば霊夢さんにする最後の質問とはこれですね?「あの妖魔本、どこやった?」」

 

にとり「イグザクトリー。…で?どこやったんだい?霊夢さん」

 

霊夢「ちょっと待って。今二件目の殺人が起こって凄く場面が盛り上がってるの」

 

文「誰が待つものですか。早くしてください。小説なら帰ってからでも読めるでしょう」

 

阿求「文さん。あの本を回収したら、上司の大天狗に私の書簡を渡してもらえませんか?本を稗田家で管理出来るよう交渉したいのです」

 

文「ええ。それくらいなら構いませんよ。なんなら私からも口利きしておきましょうか」

 

阿求「有難う御座います。そうしていただけると助かります」

 

霊夢「そんな面倒なことせんでも私が博麗の巫女として異変の素だとか言って回収しちゃえばいいのよ。実際危険なんだし。あと本なら入口出たとこのすぐ脇っちょに人払いの札を貼って置いてあるわよ」

 

文「そういうわけにもいきませんよ。妖怪の山には妖怪の山の社会秩序がありますから。……………えっと、どこにも見当たりませんが…」

 

霊夢「はあ?そんなはずは………あれー?どうしてないの?確かにここに置いたはずなのに」

 

にとり「…ねえ、文さん」

 

文「何です?」

 

にとり「確か文さんさっきこう言ってなかった?本に封じられたある大物の記憶が自我を持ち独り歩きしてるって…。その独り歩きってさあ、どの程度の規模で起こってんの?」

 

文「………さあ、そこまで詳しいことは…」

 

にとり「…じゃあ、阿求さん」

 

阿求「…何です?」

 

にとり「確か御阿礼の子っていうのは、代々求聞持の力を受け継ぐにあたって、幻想郷縁起に関わる記憶のみを受け継ぐんだよね?つまりは情報記憶を受け継いで経験記憶の方はきれいさっぱり忘れている」

 

阿求「そうですね。それがなにか…」

 

にとり「あくまでもこれは根拠のない妄想みたいなものだから全然聞き流してくれて構わないんだけど、仮にだよ?稗田阿弥の経験記憶があの本のなかに入っていたとして、それが自我を持ち独り歩きした場合、一体あの本はどういう動きをすると思う?」

 

阿求「それは、なんとも面白い妄想ですね…。そもそもあの本は妖怪の記憶を盗む本だって判って言ってます?」

 

にとり「勿論。根も葉もない空想だってのは判るんだよ?でも…、でもさ……」

 

阿求「あはは!ちょっと止めてくださいよ縁起でもない。そんなミステリードをちらちら見ながらしゃべったら、まるでそれがその完璧な機械が導きだした一番高い可能性みたいじゃないですか…。でもそうですね…。あくまでも余興としてあえて答えるなら、伝え聞いた稗田阿弥の性格から考えるに、「知識欲のまま何処までも突っ走る」が、回答になりますかね…」

 

にとり「そっか、…ははは。なんか、ごめんね。私の冗談に付き合わせちゃって」

 

阿求「いえいえ、…そんな謝るようなことではありませんよ。…ええ。ほんとに…」

 

霊夢「ちょっと意見、いいかしら?」

 

文「…どうぞ」

 

霊夢「阿求と文には悪いんだけど、あの本の回収は二人とも諦めて頂戴。あの本は、私が破壊するから」

 

阿求「………ええ。構いませんよ。お好きになさってください」

 

文「私の方からも、むしろ依頼しようかと思っていたところでした。手間が省けて助かります」

 

魔理沙「こりゃあもしかすると、異変になるかもだな!霊夢!私も手伝ってやるぜ!」

 

文「いえ。魔理沙さんはその前に盗んだもう一冊の本の回収ですよ。割りと緊急事態なのでちょっぱやで行かせて貰います」

 

魔理沙「あっ!まてこら服をつかむな文てめぇ!人里のど真ん中で翼なんか出して良いとおも、って、…うわあああああああァァァァァァ――――――――――――っ!!」

 

にとり「おお、もう消えた。流石幻想郷最速…。果たして魔理沙は無事で済むのか」

 

マミゾウ「あの速さじゃと空気抵抗とやらで凄いことになりそうじゃのう…」

 

霊夢「ちょっと、そこのボンクラ妖怪二人組。あんたらも手伝いなさい。手分けして探すわよ」

 

にとり・マミゾウ「「ボ、ボンクラって…」」

 

阿求「私達は人里の中を探します!霊夢さん達は外を探してみてください!小鈴!いくわよ!」

 

小鈴「え、えー…。私もー?」

 

阿求「当たり前よ。私は体力がないんだから。むしろあんたがメインなのよ」

 

小鈴「そんな!店番はじゃあ誰がやるのよ!」

 

阿求「鈴奈庵は本日の営業を終了致しました」

 

小鈴「あんたが勝手に決めるなー!!」

 

 

第十作 ミステリード 解決編

未解決。

にとり印

 




後日談
筆者 二ツ岩マミゾウ

⚫️月⚫️日、今日は一昨日魔理沙の奴を脅して手にいれた素晴らしい妖魔本を使って鈴奈庵の妖魔本の完全コンプを目指そうと思い立ち実行に移した。が、山から本を回収しに来た妖怪どもに本の正体がばれてしまった。結果的に本は回収されたのだが、その後に面白い異変に立ち会えたので良しとする。…まさか一冊の妖魔本からあそこまで壮大な異変に発展するとはさしもの儂も当時は想像だにもしておらんかった。
結局その異変もいつも通り、博麗の巫女と、後から合流した霧雨魔理沙によって解決を見せた。異変中、山の河童、河城にとりとともに変則的なダブルス弾幕ごっこをすることになったのだが、その時偶然決まった河城にとりとの「分福茶釜スペシャル」は、弾幕史上の歴史に残る奇跡の一発だと思う。そして、先代の阿礼乙女、稗田阿弥が何故本のなかに自分の記憶を封じ込めたのか、どうして妖怪の記憶を集めるのか、それらことの真相にたどり着いたときは、歴史の重さというものを文字通り肌で感じることができた。非常に貴重な体験だ。だから儂も、彼女を見習ってこうして今日から日記をつけようと思った次第である。


PS.それはそうと、あの『アカシックレコードの未完写本』とかいう妖魔本。魔理沙の奴が見たときは白紙だったんだか知らんが、儂が中身を見たときは他の二つの妖魔本の中身がコピーされておった。『知りたがりエイトのエングラム図鑑』の方は、まあいい。ありゃあ外から本自体に掛けられた霊力が危険なのであってコピーされたのはただの文字であるからなんの問題もない。
ただもう一冊の方、『可能性空間移動論入門』の方はあれ、どうなんだろうか…。読んで中身を理解してしまったんだが、可能性空間移動論は果たしてこの世界に適応されてしまったのか。異世界からの侵入者がやって来てしまうのか。なったらなったでまあ、なるようにしかならないのだろうが、ちょっと不安な今日この頃である。


二ツ岩マミゾウの日記より抜粋。継続中。
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