第十四作 マッチ針
開発責任者:河城にとり
にとり「ついにできたぞ!」
アリス「誰よあなた」
にとり「ひどいな!全く会ったことないって訳じゃないだろう!?何度か会ってるじゃないか!宴会の席とかでさあ!」
アリス「いや、そりゃ知ってるわよ。祭りとかでよく出店出してる河童でしょう?」
にとり「そう!その通り!河童の河城にとり!河城にとりを宜しくお願いします!」
アリス「うん、知ってる。ただ私は人ん家にノックもベルも無しに押し入る粗忽者が知り合いにいると思いたくないだけ」
にとり「それはごめん!だけどそれなら魔理沙とかどうなんだよ!あいつよくアリスの家から本借りてきたとかなんとか言ってるよ!?それって盗んだってことだろ!?あれは粗忽者じゃないのか!?」
アリス「魔理沙ならそこの壁に手配書が貼ってあるでしょう?」
にとり「ああ、知り合いじゃなくて指名手配なの。じゃあ、いいや」
アリス「それで?ついにできたとかなんとか言ってたけど、何の用でうちに来たわけ?」
にとり「ああ、そうそう。今回は裁縫が得意だっていうアリスさんに私の新しい発明を見てもらおうと思ってね」
アリス「発明?」
にとり「そう!私の今回の発明はズバリこいつ!マッチ針だ!」
アリス「まち針?…普通の針に見えるけど」
にとり「うん。まち針ではない。マッチ針さ」
アリス「なんなのよ。そのマッチ針っていうのは」
にとり「よくぞ訊いてくれた!こいつはね。名前の通り、どんなものにでもマッチする針なのさ!」
アリス「マッチってそういう?火でもつけるのかと思ったんだけど」
にとり「そんなことしたらろくに裁縫も出来ないじゃないか。こいつはね。何にでもぶっ刺せる針なのさ」
アリス「なんにでも?」
にとり「そう。なんにでも。布でも鉄でもアダマンタイトでもすいすい刺せる」
アリス「それは…。無駄にすごいわね」
にとり「無駄とかいうなよー。単純に凄いんだよ。これさえ使えば、アリスさんの人形作りの幅も広がると思わない?」
アリス「ん…、まあ、そうかもしれないわね」
にとり「だろう?じゃあ、試しにちょっと暫くの間この針を使って性能をプロの目から見て試してみてくれないかな。性能検査をクリアしたら、私はこいつを大量生産して里の金物屋に卸す予定なんだ」
アリス「相変わらず河童は商魂逞しいわね」
にとり「まあ、それほどでもあるよ」
アリス「ま、いいわ。この針が使えるものだったら、それが里の金物屋で手に入ると便利だしね。協力してあげましょう」
にとり「助かるよ!じゃあ、ここに試作品を二十本ばかし置いていくから、使いやすさとかをまとめてレポート五枚くらいで検査結果を報告しておくれよ」
アリス「急に仕事臭くなったわね!別に構わないけど、そんなこと言われるとこちらとしては賃金を求めたくなるわよ?」
にとり「マッチ針の完成品二十本でどうだ」
アリス「うーん…。まあ、それでいいわ」
にとり「契約成立だね!ノリ的にはここで契約書にサインと押印でもしてもらいたいところだけど、残念ながらそんなもんは持っていないので今回はなしだ」
アリス「次回以降も無くていいわよそんなもの。やる気が削がれるだけだわ」
にとり「あはは、じゃあ、この針はここにぶっ刺しておくからねー」
アリス「ちょっと、変なところに刺さないで。………って、嘘…。針が浮いてる?」
にとり「ふはは!浮いているんじゃない!刺さっているのさ!空中に!」
アリス「また…。無駄にすごいことを…」
にとり「無駄じゃあない!ピンクッションが要らなくなるという画期的なアイディアに基づく機能の有効活用だ!」
アリス「でも、おかしいわね」
にとり「ん?なにが?」
アリス「この針は今何を刺してるの?空気中に刺さっているのだとすると、空気は流体だから、針が一ヶ所に固定されるのはおかしいわよね?」
にとり「ああ、それはだね」
アリス「それは?」
にとり「確かにおかしいね。そんなこと考えたこともなかった。何でだろ?」
アリス「おい」
にとり「そういう事象に関する研究や考察はアリスさんみたいな魔法使いや科学者の仕事でしょ?私は技術屋だから、そういうのは最低限だけ調べて、後は使えりゃいいかってスタンスなんだよねー」
アリス「無責任な…。そんなんだからよく発明に失敗するんじゃないの?」
にとり「うっ…。それは確かに否定出来ないかも…」
アリス「はあ、…ま、今回は私がそこら辺の役割を請け負ってあげるから、あなたは私のレポートでも参考にして次回からはしっかり原因と結果の究明をしながら発明することね」
にとり「はーい。参考にさせていただきまーす。それじゃあ、また一週間後くらいにまたここにくるねー」
アリス「はいはい。それまでに私はレポートを書き上げておけばいいのね。分かりましたよ」
一週間後。
にとり「おひさー。アリスさん!で?どうだった?」
アリス「………ひどい目にあったわ」
にとり「ひどい目?針が指に刺さっちゃったとか?」
アリス「まさか。あなた、私を誰だと思ってるのよ」
にとり「プロの人形製作師ですね。すみません。…じゃあ、何があったのさ」
アリス「異世界に飛ばされた」
にとり「は?」
アリス「異世界に、飛ばされたの!私が!」
にとり「ちょちょちょっ!待って!話についていけない!」
アリス「あんたが空中に刺した針だけどね。あれ空気に刺さってたんじゃなくて空間に刺さってたのよ」
にとり「く…空間に?」
アリス「そう。しかもあなたが一気に二十本も刺して空間の穴を広げたせいでとんでもない空間歪曲が生じた結果、私が異世界に転移してしまいました 、と」
にとり「それはなんというか…。ごめんなさい?」
アリス「そうね。存分に謝って頂戴。あなたのお陰で私は経験しなくていい一大スペクタルを経験するはめになったわ。まさか幻想郷より非常識なとこがあるなんてあなた、予想できる?」
にとり「できない」
アリス「新世界は絶対もう二度と行きたくないわね。前半の海を楽園と表現した人間は本当にセンスの塊だわ。あそこが楽園なら、ここはさしずめ天国ね」
にとり「うん。ぜんっぜん意味分かんない。ただ苦労したんだなってことだけは伝わってくる」
アリス「そうね。詳しいことは後でレポート5000枚くらいで提出させてもらうわ」
にとり「なが!」
アリス「………足りないかもしれないくらいよ」
にとり「アリスさん、その異世界にどんだけ長い間いたんだよ。一週間でそれは流石にないだろ?」
アリス「二年から先は日にちを数えるのを止めたわ」
にとり「うわ…。なんか、ごめんなさい。…えっと、じゃあ渡した試作品はどうなったの?」
アリス「全部あっちに置いてきた。あんな危ないもの、もう二度と作らないで」
にとり「あ、えっと。はい。すみません。以後気を付けます」
第十四作 マッチ針 異世界漂流。
にとり印
本編とは全く関係のない二次小説「アリス イン ワンピースランド」連載けってい!そのうち投稿します!見てね!