発明少女にとりちゃん   作:N-SUGAR

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第十八作 ナイトメアキャップ

第十八作 ナイトメアキャップ

開発責任者:河城にとり

 

にとり「ついにできたぞ!」

 

美宵「何ができたんですか?」

 

にとり「へへーん。これはらねー」

 

マミゾウ「こやつ、すでに呂律が回っておらんな」

 

美宵「随分と呑んでましたからねー。この河童のお客さん」

 

にとり「これは、ナイトメアキャップと言うんだ。ここの看板娘対策の新たなる発明品さ!」

 

美宵「私対策?」

 

にとり「そ。奥野田美宵ちゃんだっけ?おまえ、酔った客に悪夢を見せるんだろう?」

 

美宵「別に毎回悪夢を見せるわけじゃありませんよ?厄介なお客さんをちょぴっと懲らしめたいときだけです」

 

にとり「ハッハッハ!居酒屋の看板娘が酔った客に悪夢を見せるだなんて!たちが悪いにもほどがある!しかも聞けば酔っているなら神様だって殺してみせるそうじゃないか!」

 

美宵「殺しませんよ!ちょっと夢を見せるだけです!酔っているからってあらぬ風評被害を立てないでください!」

 

にとり「そうらんだ。まーなんれもいいけどー。私にそんなことをしようったってそうはいかないぞーってのを、この発明品で証明して見せよーと思ってねー」

 

美宵「厄介なお客さんだ……」

 

マミゾウ「じゃが、言ってることは興味深い。霊夢や山の神にすら問答無用で悪夢を見せる美宵ちゃんの酔魔としての力を防ぐと宣っとるんじゃからの」

 

美宵「それで?そのふわふわの帽子はなんなんですか?お客さん」

 

にとり「よそよそしいなー。まぁ、マミゾウさんに誘われての初来店なんだから仕方ないかー。私のことはにとりでいいよー。で?えーと?なんだっけ?」

 

マミゾウ「だめじゃな。こやつ、完全にできあがっておる」

 

美宵「まぁ、酔っ払いのお客さんの話を聞くには根気が必要ですからねぇ。でもこのくらいなら、まだお話できますよ。にとりさん。これです。この帽子は、なんなんですか?」

 

にとり「あー。これね!これはねー!ナイトメアキャップと言うんだ!」

 

マミゾウ「振り出しじゃな」

 

美宵「茶々入れないでくださいマミゾウさん。――ナイトメアキャップ?どういうものなんですか?それって」

 

にとり「これはねー。どんな悪夢を見るか、自分で選択できるようになるナイトキャップなんだ!」

 

マミゾウ「悪夢を選べる?なんじゃそら。悪夢なんぞ、そもそも見ないほうがええじゃろうに」

 

美宵「結局悪夢を見るなら、あんまり意味が無さそうよねぇ?」

 

にとり「チッチッチ。きみたちー。悪夢に関する見識が甘いなぁ」

 

マミゾウ「いらつくジェスチャーじゃのうこやつ」

 

美宵「まぁまぁ。それで、悪夢を選べると、どんないいことがあるんです?」

 

にとり「悪夢ってのはさ。不意に予想だにしない方向から見るから怖かったり恐ろしかったりするのさ。怪談話なんかもそうだけどさ。逆に言えば、先の展開を知ってしまっている怪談話なんか、そんなに怖くはないだろう?」

 

美宵「まぁ、そうですねぇ」

 

にとり「悪夢も一緒さ。先の展開をすでに知っていて、どうせ無事に済むと分かっているのなら、悪夢なんてのは一種のアトラクションに格下げされる。むしろ普段できない恐怖体験ができる分、楽しくすらあるかもしれない。お化け屋敷と一緒だね。故にこのナイトキャップで悪夢の方向性を事前に方向付けることで、悪夢を既に見知ったアトラクションへと変化させようというわけだ。見知った夢は明晰夢にもなりやすいしね」

 

マミゾウ「ふぅむ。なるほどのぅ。悪夢のアミューズメント化か。確かに、それは逆に面白いかものう」

 

にとり「そう。そしてこのナイトメアキャップは、悪夢限定で夢を選択することができる。具体的には、寝る前にこれからこの夢を見るぞと頭のなかで想像した夢が、およそそのまま夢として現れるんだ!」

 

美宵「へぇ。それはすごいですねぇ。でも、その発明品には致命的な欠点があるように思えますけど」

 

にとり「欠点?へへーん!ほんなのあるわけないな!こうやってナイトキャップをかぶって、想像する!そうだなぁ。今日は鯢(めくじら)の怪物に飲み込まれる夢を見よう!鯢呑亭だけに!あっはっは!おやすみ!ぐぅ」

 

マミゾウ「おい!ここで寝るのかい!」

 

美宵「まぁ、呑み屋じゃわりとよくあることです。マミゾウさん。お連れさんは、責任持って引き取ってくださいね?」

 

マミゾウ「それはいいが……。美宵ちゃんよ、この酔っ払い河童に言いたいことだけ言わせといて良かったのか?」

 

美宵「別にそれは構いませんけれども、せっかく仕掛けてもらった得意分野での勝負に乗らないというのも、サービス精神には欠けるからね。ま、明日のにとりさんの反応が楽しみとだけ、私は言っておこうかしら?」

 

マミゾウ「クク。そうかい。じゃあワシも、翌朝の河童を楽しみに、儂のアジトに連れ帰るとするかの」

 

〜翌朝〜

 

にとり「うう……。ひどい夢を見た」

 

マミゾウ「お早うさん。なんじゃ。結局鯢に飲まれる夢は見られなかったのかい?」

 

にとり「いや、その夢は見たよ。おぼろげだけど、うん。そこまでは良かったんだ」

 

マミゾウ「そこまでは?」

 

にとり「そ(・)の(・)あ(・)と(・)に(・)、別の夢を見させられた。河に流されて、流された先で鬼の四天王全員に追いかけ回される夢を」

 

マミゾウ「あっはっは!そりゃあ、お前さんにとっては最悪の悪夢じゃのう!」

 

にとり「くそ!なんでだ!?私の発明品は完璧なはずだったのに!」

 

マミゾウ「ああ、それな。原因は簡単な話なんじゃよ」

 

にとり「なんだって?何だよ。原因って」

 

マミゾウ「儂も昨日帰り際に美宵ちゃんから聞かされて、そう言えばそんな話もあったと思い出したことなんじゃがな?夢ってのは一晩に複数個見るのが普通なんじゃよ」

 

にとり「はぁ?そんな何個も毎日見た記憶はないんだけど?」

 

マミゾウ「あぁ。夢なんて、すぐに忘れっちまうもんじゃからのう。だが、美宵ちゃんによると、しっかり寝てれば普通夢は一晩に4から6回は見るもんなんだそうじゃ。じゃから、そのうち1つをコントロールしたって、自分は他の夢を操るだけ、なんだと」

 

にとり「マジかよ!?しかも、回数固定されてないの!?」

 

マミゾウ「睡眠時間にもよるじゃろうしの。ま、夢のプロフェッショナルに一朝一夕で勝とうなんてのは、そう簡単な話ではないということじゃ」

 

にとり「チクショー!。酔っぱらった頭で夢を4個も6個も想像できるかってんだ!ていうか、内容知ってるとはいえ、流石に4個も6個も悪夢は連続で見たくない!」

 

マミゾウ「そりゃそうじゃ。内容知ってても、それは疲れるじゃろ」

 

にとり「はぁー。また発明失敗かー」

 

マミゾウ「まぁ、酔魔対策としては失敗かもしれんが、発明としてはなかなか面白いんじゃないか?悪夢とはいえ、毎日好きな夢を見れるんじゃから」

 

にとり「そう?じゃいっか!」

 

マミゾウ「立ち直り早っ」

 

第十八作:ナイトメアキャップ 商品化構想中

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