ええ実はすでに二章はpixivのほうでは完結しておりまして、現在三章を絶賛執筆中の身です(ハーメルンにはよ二章投稿せいやバカ)。
ハーメルンだとpixivとは違い改ページのシステムがないのでそれを直すのにどうしても時間がかかるという。それと文字数も多いゆえに端末が重くなるなんてざらにあるものでどうしてもこちらでの投稿が遅れる状態に……申し訳ないです。
ひとまず、今月中には二章をここでも完結させますので、何卒よろしくお願いしますm(_ _)m
……は
どうすればいい……
*****
注意
これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。
本編とは異なる設定が多々あります。
あと主の文才は期待しないでください。
それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。
補足
渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。
例:直樹→
他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。
なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。
*****
7日目
医務室で目を覚ます。昨日午後からほぼずっと寝ているから若干頭が痛い。いや昨日の夜も渡良部が持ってきてくれてともに食事をしたのだが。念のために熱をはかると36.5と平熱。昨日よりかは動けるし大丈夫だ。
ところで今は何時だろうか。時計を確認してみる。えっと………………4時半……早い、早すぎる。仕方ないか。しかし今さらまた寝るのもなかなかにキツイ。そうだ。探索しよう。二階の物理室、生物室、植物庭園、一階の美術室には一度も行ってなかった。この時間を有効活用しよう。
***
まずは二階。物理室から入ろう。小さい豆電球、それを繋ぐコード、モーター、反射装置などなど、まあそれなりにいろいろある。よく覚えていたな……文系の私は理系がからきし、物理は特に苦手だった。いつも赤点スレスレ。あーうん。よし忘れよう。特にめぼしいものがあった訳でもなかったし。
お次は生物室。虫の標本、小さなホルマリン漬け、植物、コルク他まあこちらもそれなりのものがある。顕微鏡もあるから細胞の実験とかまあいろいろ使うのだろう。よく見たら人体模型も置かれている。でも棚に仕舞われたまま。まあ使う機会はないんだろうけど。
植物庭園、入った瞬間どこかの花畑に行ったような錯覚に陥った。鼻につく香りがそうさせた。それだけ美しいものだった。ただひとつ気になるのがあそこの『danger』。どうやら毒草が植えられているらしい。まさかコロシアイに使えと? 冗談じゃない。そんなことする意味などない。dangerのところは放っておこう。関わったらろくなことにならない。
これであとは美術室の探索だけ。1から見てみよう。当たり前だが絵画や彫刻などが飾られている。ただ飾られているが道具は彫刻刀や鉛筆とかで染色系はない。ということはと思って2のほうへ行くと案の定だった。こちらも1と同じだが逆に絵の具や墨汁とかの染色系はあった。
ん? あそこにあるのは……? 近づいて見ると『触るな』と書いてあるのは一目瞭然なのだが、そこには藍色の布があった。これは阪本が藍染めをしたのかな? けどこんなところに藍染めするための道具が? と思ったけどすぐ近くのゴミ箱に捨てられているのを見て納得。でもこんなにきれいな藍染めは初めて見た。いやいつも服とかでは見るけれども、こういう風に作業工程のものを直に見られるというのはなかなか無い。
*****
さて、一通り探索は終えた。ざっと確認しているように見えるが実はこれでも結構時間は掛かっている。今は6時。彼が散歩している頃だろう。
「お? ミス直樹じゃないか!!」
ダグラスだ。
「おはようダグラスくん」
「Good morning!! ああでも、ユーはもう大丈夫なのかい?」
「うん、平気。またストレスでああなるかもだけど」
「それはもう勘弁だね」
肩を震わせてちょこっと困ったように笑う。
「さてと、じゃあ散歩する?」
「散歩するって、確か君5時起きじゃあ……」
「Ah……いや、何でもないさ。ちょっと落ち着かなくて」
何があったし
「起きたの5時半でさ。髪の毛とか整えて今から散歩ってところだったのさ」
なるほど。
「そういうことね。……いつも思ってるけど、散歩ってここそこまで広くないよね?」
するとチッチッと舌打ちをして首を横に振る。
「わかってないなぁ~何も歩くことだけが散歩じゃないさ。ここを回って気持ちをrefreshさせる。新たな発見もできるかもしれないからね」
「そうなの?」
「そうさ。ならぐるっと回って行こうよ」
私はダグラスとともに散歩する。こうしてのんびり歩いてみると今まで単純に見えた世界が少し複雑に見えた気がした。それと同時に複雑な世界が私たちが生きている、存在証明とも思えた。
歩を進めるごとに自分が本当に生きていることを理解できる。そのことを踏みしめながら一歩一歩、また一歩と進める。
「どうだい?」
「うん、普通に歩いているはずなのにちょっと満たされた気持ちになるね。少し気持ちが軽くなってきた」
「ふふん、そうだろ? そして」
彼は足元に視線をやりしゃがみこむ。そこに咲いている、一輪の花に手でそっと優しく撫でる。
「こういう小さな発見が心を穏やかにするのさ」
この空間にも花あるんだなぁと思いつつ、言われたことを焼き付けた。
彼の見えぬ瞳は今どんな風になっているのだろう。トラウマになってしまったことで外されることのない奥。そこにはきっと優しい目が写されているのかなと密かに期待した。
*****
「お前さんたち何しとるんじゃ?」
ふと近くにいたのかはたまた今来たのか、灰垣に声をかけられた。
「ミスター灰垣じゃないか。いやただの散歩さ。ミーの日課」
「散歩じゃったか。直樹も大丈夫なんじゃな?」
「うん、まあね」
「体調はしっかり整えんといかん。あんなことが起きれば……まあ倒れても無理はないじゃろうが」
「ははは……」
苦笑いしかできない。結局私はみんなに迷惑をかけたのだから。
「ところで今何時?」
「Now……おっと、もう三十分か!!」
嘘だろはやっ
「これからミスター近衛とミス渡良部とちょびっとトランプやる予定なのさ。また後で!!」
タッタッタッと走ってマンション内に入って行った。灰垣と顔を見合せベンチで座るかとなりそこに行く。彼はよいしょとじじ臭く腰を下ろして深く息を吐いた。
「お前さん」
「なに?」
「お前さんは自分の命と他人の命、どちらが大事だと思ってるんじゃ?」
…………
「へ?」
「そのまんまじゃい。どちらの命が大切か」
「そ、そんなの選べるわけ」
「じゃろうな」
わかりきった風に言われた
「じゃが直樹、それじゃあいけないということはわかっておるのか」
「どういうこと?」
「わしらは危機的な状況下におかれておる。人は何かしらのきっかけで他人の命を投げて己を保護しようとする。それがもし、絶対的に決められた定めだとしたならばどちらをとる?」
「え……」
二択、どちらかしか選べない、その時どうするべきか、ってことなのかな? その状況に立たされている、いやさらに追い詰められてしまったとしたら、私は一体どうするのか? 悩んでもその答えは出そうにない
「選べんか」
「急過ぎて」
「わしはそう言われたらこう答える」
背もたれに背を預け空を見上げるように放った
「両方捨てる」
二択とはなんだよ
「両方捨てるってそれ意味ないんじゃ」
「違う、この状況だからこそなんじゃ。そうでないならわしは自らの命をお前さんたちに投げるわい」
冗談に聞こえないなんとも恐ろしい発言。
「それにわしは
驚いて私は彼の方を目を見開いて見つめた。いつでもということは
「何も今とは言っとらん。だがその気になればそうすることも辞さんわい」
「ど、どうしてそんな」
「…………わしはバレー部じゃが、その前に別院の息子じゃ。浄土真宗のわしらは特に食事の制限もしておらん。ただ日々生きていられることに感謝するのみじゃ。じゃが生にすがるだけでは人は生きているとは言わん。人は例え長生きしたとしても、生きて生き甲斐のない生活なら本当に生きたとは言えないのじゃ。生き甲斐を感じてこそ真に生きたと言うんじゃ」
言葉一つに重みを感じる。
「生命は量よりも質。生きている中でどれだけ自分が胸を張って生き甲斐のある人生だったといえるかが大切なんじゃ」
「…………」
「そういう意味でお前さんはどうじゃ?」
「……まだ生きなきゃいけない。私はまだ生き甲斐のある人生って呼べる生活をしたのかわからない。それにやっぱりさっきの質問に対する答えは見つかりそうにないよ」
「それもまた選択じゃ。悩むことはそれだけ『おもうことがある』ということ。悩みを持つことを恐れてはならん。いくらでも葛藤せい。それで導きが出した答えがその人の選択なんじゃから。だってわしは一度も二択だなんて言っとらんかったからな」
思えばそうだ。誰もそんなこと一言も言っていなかった。盲点。
灰垣との会話で自分の生き方を少し考え直すのもありかなって思った。バレー部であり別院の息子でもある彼は今もなお何かを悟っているのかもしれない。
ところでバレー部ってなんだっけ
*****
7時になったところで食堂に行く。さっきダグラスがいった通り、ゲームトリオは(いつも料理を置いているテーブルとは別の)テーブルでトランプをやっていた。どうやらババ抜きのようだ。近衛がすでに1抜けしていて渡良部とダグラスがラストを握っている。
「…………んんん、どっちにあるの……」
「ふっふっふっ、さあ一体どっちかな?」
「……こっち!! ……ああああジョーカーっ!!」
「ミス渡良部はわかりやすいのさ」
「そうなのでございますか?」
渡良部はカードを誰も見えないようにシャッフルしてダグラスの前に出す。
「どっち!?」
渡良部の目はダグラスを睨むように見つめるがダグラスはけらけらと笑った。
「こっちだね。finish!! 2抜けさ」
「んえええ!?!? なんでわかったの!?」
「なんでってそれは秘密さ。こういうのはディーラーならではの特技だったりするのさ」
そういうとまたトランプをかき集めて手早くシャッフルするとポケットにしまいこんだ。
「じゃあこれくらいにしておこうか。ミスター近衛、準備しよう」
「ええ」
「うう、私も手伝う」
トリオ三人はそれぞれ食事の用意をする。灰垣はいつも自身が座るところに座って、私も私で席について待っている。運ばれてくる間にみんなもぞろぞろとやって来て食事が始まる。
「今日はどうする?」
「そうだな。また各々自由にしていればいいんじゃないか? まだ調べきれてないところがあるかも知れないしな」
「おっと、少しわたくしからお尋ねしたいことがございます」
控えめに手を挙げて近衛は話す。
「本日、Ⅱ棟でお休みになられた方いらっしゃいますでしょうか?」
その質問に宮原、阪本、湊川が手を挙げた。
「なるほど。すみません、大したことではないのでございますが、何分寄宿スペースがⅠ棟Ⅱ棟ともにございましたから」
確かに。なんかいろいろおかしいけれど、それでもここはマンションだ。住むという意味でそれが無くては成り立たない。
「うちからも一つ確認を」
今度は金室が手を挙げた。
「昨日Ⅱ棟についていろいろ調べたと思います。それで寄宿スペースにライトが点くことを矢崎さんと宮原くんが試してくれました。ですが、玉柏くんによると電子生徒手帳ではどの部屋も誰かが部屋にいるとその部屋のライトが点灯するみたいなんです。ですよね玉柏くん」
「そうだ。化学室にいるときにな」
「さらにそれには履歴が残るようなのです」
履歴が残る? なんで残す必要があるのかな
「履歴が残るってことはいつでもそこに人の行き来した跡が残るのと同じか」
益々モノヤギたちの意図が読めない。一応電子生徒手帳の中身確認してみよ…………ん?
「あれ……」
「どうしたの?」
あ、これは、あれだ
「電子生徒手帳医務室に置いてきた……」
「ええ何やってるの
「ごめん」
朝食を終えて私たちはまた医務室へ行くことになった。
*****
「あったあった!! ふう、よかった」
「ホントよ……」
布団の中を探ればしっかりそれはあった。盗られてなくてよかった。もっともそんなことをする人はいないと思うけど。渡良部にも心配をかけてしまった。でもそんなことより一つ気掛かりなことがある
「そういえば何で渡良部さんは私についてきたの? 特に何かあったわけじゃないよね」
「昨日みんなでまとめたⅡ棟の資料。あんたに見せ忘れてたしついでにと思って。ほらこれ」
そういってⅡ棟の簡単なメモをくれた。朝にも確認したけれど、ほぼほぼ変わりない。同じだっていうことを知れただけでもいい収穫だ。
「それと……前っていうか昨日言ってたでしょ。私の昔のことについて話そうかなって」
両親がギャンブル依存症のやつか。
「私の家、元々借金ばかりでそんな中でも親はギャンブルに走っていた。そして私は小学何年だったっけ。高学年ぐらいだったはずだけど、まあその時私は両親にやくざが経営する闇金融会社に連れていかれた」
子ども連れてやくざのところに行く親がどこにいるんだ
「で、そこでいろいろ言われたの。『お前の親は何十年掛かっても借金を返せないクズだ』って。『そろそろ返してもらわないと困る』って。そのときの私はわからなかったけれど、少なくてもあまりよくない空気になっていたことはわかった」
借金まみれでよく育てたな
「でもそのときやくざは何かで莫大な資金を手に入れていたから少し潤っていたらしいんだ。そして向こうから借金を帳消しにする提案を出した。もちろんただじゃなかったしそれが私を呼び出した理由だった」
「その提案って」
「『
「いや親は子ども守ろうよ」
「そうもいかなかったらしいの。何でも、ずっと前から私が呼び出されることは決まっていてずっとそれを先伸ばしにしてもらっていたんだって」
守っていたけど守りきれなかったってことなんだ
「話を戻して、今言った通り提案っていうのは完全に選択権がこっちにないやつでどうにもこうにも私が勝たないとダメだった」
「まだ麻雀をやっていなかったときの話だよね?」
「そ。けど試合を始めるまでわからなかった。私に雀士としての才能が宿っているなんて。結果はどうなったかだけど私が国士無双十三面待ちで上がったことでやくざの点数を全部ぶっ飛ばした、つまり勝っちゃったわけ」
それ相当の才能だよ
「まあそれで終われるわけない。向こうからしてみれば、麻雀のルールさえわかっていないたかだか小学生のガキに大の大人のやくざが負けるなんて恥晒しにもほどがあるもの。もう一戦することになった。でも何度も何度も繰り返してもやくざは一度も点数を私から得ることは出来なかった。遂に向こうはキレた。逆ギレだよ? まあそこのやくざの頭? で合ってるかな。その人がちょうど戻ってきて約束したことは守れって言って私の家にあった借金が帳消しになった。」
「理解のある人だったんだ」
「けどそれもそれでただじゃなかったけど。んじゃ、ここで問題」
「え」
「このあと
渡良部がどうなったか? もしかして両親と離れたとかそんな感じ? にしても気が軽い。じゃあなんだろ……
「普通に過ごした……っていうのじゃない?」
「そう。答えは施設に行くことになった、でした」
嘘だと言ってほしい事実だ。扉の前に行く彼女の後ろ姿を私は眺める。
「仕方ないって割りきれたけど親がいなくなって清々したわけじゃないよ。それまで育ててくれた親に失礼だから。それに才能開花きっかけをくれたのはある意味親なんだし。やくざもやくざでいい人いたし。けど」
渡良部は振り向いた。そこには
「幸せってどんなのだろうね。幸せはどうやって手にいれるんだろうね。幸せになりたいからその一本を手にいれるためにどれだけ辛い目に遭うんだろうね。今こうしてコロシアイ生活をしているけど、これって私たちに対する何かの試練なのかな」
まだ何も知らない、無知な少女の姿があった。
*****
医務室を後にして、今のところおそらく資料が豊富にあるⅡ棟のカフェへ行く。それらしきジャズ音楽が流れている。
「…………」
そこに阪本がいる。本を読んでいるようだがそれは何かの作品集のようで。
「ん、直樹じゃん。どうしたの?」
「どうしたのというか、阪本さんが何読んでいるのかなって」
見た限り美術系のやつでないことはわかる。
「これ? 評論文」
「へ?」
「評論文」
「いやわかるよ!? えっでも意外」
「よく言われる。けどこういうのってワタシからすればとても面白いよ」
そういうと阪本は立ち上がって資料を棚から取り出し私に見せる。有名どころの彫刻や絵画などの資料。
「今広げた作品のほとんどは評論家によって評論されてる。それは単に自分の憶測じゃなくて客観的に物事を捉えられるからこそできる。もちろんそれができる人はたくさんいる。けど伝わる伝わらないは分かれる」
ページをめくる。度に表情がやわらかくなっていく
「絵だって藍染めだって同じ。その人の想い描いたものをそのまま描く。難しいけど、それはどこの職についても同じ。自分の良さを伝えようとしても、相手に伝わらないかもしれない。ワタシもそう。でも問題はそんなことじゃないよ。『自分がどれだけ想いを伝えようとしているか』、これが大事なの。気持ちを込めて込めてたっくさん込めて作る」
職人は楽じゃないのと微笑んで、また手元の評論文を読み始めた。職人魂ってそれぞれ思うことがあるんだなぁ。自分の気持ちが左右するのはあるかもしれない。翻訳中でかっこいいとか思った文章があとから読んで切ないとか普通にあるし。
「『人は人生を描く画家』だから」
呟かれたセリフは彼女という職人から出る有名なセリフの中の名セリフだった。
評論文
あれ
その作者
見覚えが…………?
__
カッカッカッ!!
__
着物姿一人
__
何かフラッシュバックした気がするのに何も思い出せないからいいやと投げ出す。そういえば植物庭園に藍はあるのかな? ふとした疑問を解決しに行こうすればそこには矢崎がいた。さらに私が求めていたものの目の前にいた。
「へえ、ここにもあるんだ藍って」
「んー? そうだね~」
相も変わらず緩く答える。彼女らしいといえば彼女らしい。グルリと見渡しちょっとおかしなことがあるように思えたがそれに気づけない。何か、何かが違うのにそれが何かわからない。
「あんまり気にし過ぎるのはよくないよ」
そういうと彼女は立ち上がって別の植物のところへと向かう。後を追ってみるとそこには様々な種類の紫陽花が咲いていた。矢崎の名前と同じ『紫陽花』。
「紫陽花の花言葉を知っているかい?
「知らないよ。花言葉はあまり強くないんだ」
なるほどねとゆっくり頷いて花の方に目をやる。
「一般的に移り気とか冷淡とか辛抱強さとか、いろいろあるんだよ。まあマイナスな意味が多いのかって言われたらそうかもね。でもなーんでもそうとは限らない」
そういうとある一色の紫陽花を指差した。白のそれに。
「色事に花言葉が変わる植物もあるんだよ。この白い紫陽花にはどんな意味があると思う?」
白の紫陽花に込められた意味、か。マイナスなイメージがあるかもしれない。でもそうとは限らない。それを示唆するためにそういったなら、今矢崎が示そうとしているのはきっとプラスの方。
「それらしい人がちゃあんといるよ。二つの意味でね」
ポロリと呟かれたヒント。二つの意味って何だろう。もしかして白い人がいるとか? いやいる。彼がいる。あっそうか。じゃあこういう意味か
「『寛容』だね?」
「大正解。宮原くんってそんな感じするよね。だから今そういうヒント出したんだよ」
宮原くんみたいな人なら別の花言葉のほうが合うけどと彼女は目を瞑って困ったように笑った。なるほど。確かにあんなお父さんみたいな優しい人を寛容と呼ぶに相応しい。マイナスのイメージの花言葉がいるかと言われたらまあいらないか。
「たとえマイナスな部分が出ても構わない。長所と短所はイコールでなーんでも結ばれているからね。弱みなくして強みなし、なーんてね」
屋内で吹くはずのない風が吹いてるのかと思った。
*****
昼になったので昼食を食べる。このあとどうしようと思ったら近衛が橘と何かを話しているようで二人はそのまま厨房へ向かった。一体なんだろうと思って行ってみると
「時間内には終わらせる。しばらくここは使わせてもらう」
「かしこまりました。それではまた後ほど伺わせていただきます」
なんというか、珍しい光景。しかも普段誰かと関わることのないあの橘がだ。っと思ったら彼らは厨房のまな板やらボウルやら量りやら何やらを取り出し始めた。さらにそれだけでなく砂糖やら小麦粉やら卵やらいろいろ取り出して。
冷蔵庫からも何やら丸い生地を取り出すとそれを広げては型を取る。そして鉄板に乗せてオーブンに入れてまわし始めた。いや、まさかだけど
「た、橘くんたちは今何しようとしてるの?」
「……菓子作ろうとしてんだよ。文句あっか?」
恐る恐る聞いてみたが意外や意外。まさかの菓子作りとは。
「いやそういうわけじゃないけど、意外で」
「フンッ、このあとそこの執事とやり合うんだ。糖分ぐれぇ欲しくなる」
近衛も相づちを打って準備だけしてそのまま厨房から出ようとした。それを止めて彼に聞いてみる。
「やり合う? ってどういうこと?」
「ええ、実はわたくし昔から剣道を嗜んでおりまして、中学生の頃もほんの僅かな間ではござましたが部活動に入っておりました」
「剣道やってたの?」
後ろから阪本に話しかけられたかと思ったしかも国門もいるどっから沸いて出てきた。
「意外でござましょう? 橘殿ならいい対戦相手になるのではと前々から存じてまして、その折を伝えたところ今の状況になったというわけでございます」
なんだろう。今日いろいろみんなの意外な一面を見ることが多くてすごい、新鮮というか、なんか、感動してる。
「橘が作っている間に近衛がその試合の準備をするのか」
「すぐに済むことではございますが、素早く準備しておいて損などありませんよ」
クイっとモノクルを上げてこれからのことを考えているのか少し嬉しそうに笑う。
橘は黙々と作業を進める。量りで材料の分量を量ったり、それらを混ぜたり。とても手際がいい。
「近衛からみて橘の動きっていうのはどうなんだ?」
「そうですね……」
腕を組んで少し考え橘の動きを吟味するように一つ一つの動きを見極める。
「ふむ。やはり手際がよいです。無駄のない動きでかつ丁寧でございます」
「やっぱりそう思うのか」
「わたくしはプロではありませんから確実とは程遠いとは存じておりますが、それでもそのように感じられるかと」
さすが。私からしてみればプロのようにしか見えないけれど、100%完璧かと言われたらそうとは言えないのかもしれない。
途中近衛は準備のためにキッチンを出て、私たちはしばらくずっとそこにいた。橘に邪魔とか言われても何とか粘って最後まで見る。
混ぜたり入れたりまた混ぜたりの繰り返し、出来上がったそれをさっきとはまた別の型に生地を流す。その時焼上がりの音がする。焼上がったものを取り出してオーブンとともに冷まし、オーブンがそれなりに冷めたところでさっき型に入れたそれを入れて焼く。あとは待つだけというように彼は背伸びしては軽く腕を回す。
暇そうにしてると思ったら今度は計量スプーンの入った瓶と粉末コーヒーと砂糖を出してはそれをコーヒー、砂糖の順で瓶に入れて下から掬うようにして混ぜる。
「もしかしなくても橘って甘党?」
「あ? なんでんなもん聞くんだよ」
「普通に甘いもの嫌いかと思ってたから」
「………………」
顔をしかめて橘は黙ってさっきのやつを混ぜ始めてしまった。これは触れちゃいけないやつだったのかな。
混ぜ終わったと同時にカップにそれを入れてお湯を注ぎ煽る。熱くないのか
「…………」
何か考えているのかな? どこか遠い目をしてぼおっとしてる。
「…………生クリームどっかにあったか……?」
「いやそっちかよっ!!」
国門と阪本は拍子抜けというようにずっこけた。
***
2度目の焼き上がりの音がして橘はそれを取り出した。冷ますついでに、生クリームを手早く作ってはそれをタッパーに入れた。
いろいろやっていた影響もあってか気づいたら
「美味しそうな匂いするわね」
「何?
「なんじゃなんじゃ」
「あらシフォンケーキとクッキーではないですか」
「Wow!!」
「めんどくせぇ…………」
いろんな人来た。匂いにつられたようだ。それと準備が終わったらしい近衛もやって来た。
「紅茶でも淹れましょうか?」
「あ欲しい」
「うちには緑茶でお願いします」
「かしこまりました」
「ていうか食べて大丈夫?」
「……ッチ、勝手にしろ。ただし、食うなら残すんじゃねぇぞ」
近衛が用意してくれた紅茶を飲みながら、橘の作ったやつに手を伸ばし含めた。
「おいしい……」
うん、おいしい。ほどよい甘さと固さのクッキー、ふんわりとしたシフォンケーキ、生クリーム。近衛の淹れた紅茶とよく合う。
「妙に中毒性あるよこれ」
「中毒性は言い過ぎじゃないかな!?」
「でも意外だ。君が料理上手だったなんて」
「フンッ、お袋が寝込んでりゃ自然と俺が作ることになんだよ」
お母さんのことかな? お袋って呼ぶんだ。
「黙ってそのまま食ってろ。」
「ミス金室は生クリーム使わないのかい?」
「ええ。嫌いなんです。そのままいただくのが良いのですよ」
「こだわりがあるってことか」
「人それぞれにこだわりはあるものです。例えばサラダにはドレッシングをかけるかどうかとか。かける派もいればかけない派もいるでしょう?」
言われてみれば。私は特にそこにはこだわらないかな。ドレッシングはかける時とかけない時あるし。
「こだわらないって言い張っている人ほど実はこだわりが深いんですよ。常に自分のあり方を貫くから。まあこだわってる人でも追求しますけれど」
意表を突かれた。こだわらないことにこだわる。ある意味優柔不断な考えと言えるのかな。
「橘殿、一つ確認を」
「あ?」
「試合をするにあたり服装はどうしましょうか。まだジャージすら手に入れられておりませんので」
一瞬その空間だけ時間が止まった。
「…………めんどくせぇからこのままでやらせてもらう」
「かしこまりました」
そこなんにも決めてなかったんかいっ!!
***
さて、二人は(?)集会室へと向かい試合の用意をする。その最中に橘は大きな溜め息をついた
「見せもんじゃねぇっつの……」
悪態をつくのも無理もない。だって
「日本古来からの武道、しっかり見させてもらいますよ」
「そうじゃい。隠すなんてもったいないじゃろが」
「ミーこういうの好きなんだ。間近で見られるならみたいものなのさ」
「ある意味ゲームだし見ておきたくて」
「何となく気になったのよ」
「うるせぇ!! てめぇらその菓子でも食ってろ!! んでもって黙ってやがれ!!」
さっきおやつを食べていた金室、灰垣、ダグラス、渡良部、湊川の5人も
「まあまあ、観客がいらっしゃっても特に支障などございませんよ」
「俺はお断りだ」
そっぽを向いて杖を構える。構えるというか右手に持っているというか。
「彼らがいること自体にそもそもの問題があるとおっしゃいますか? まさかとは存じますがあなた様は誰かの目の前で試合をしたくないと?」
丁寧に言っているように見えるが実際は違う。煽っている。竹刀を構えて、見定めて。
「誰がんなこと言ったよてめぇ」
挑発に乗るように橘は本格的に杖を両手で持ち始めた。これまずくない? 大丈夫? 近衛の口が僅かに動いたけどほんの小さな声で呟かれたと思うその言葉には私も含めて誰も気づけず橘はジリジリ近衛の方へと向かう。
刹那、近衛が面を打とうと足を踏み込んで竹刀を振り下ろした、と同時に橘の杖がそれを抑えた。二人の武器が重なった音は置き去りにされ、私はそれらが重なったのを見た瞬間バアァン!! となったのに気づいた。マンガで言えばこうなんていうか二人の周りに波紋が起きてる感じ。
「さすが、でございますね」
「煽ってんじゃねぇよッッ!!」
杖が竹刀をかわして互いに構え直した。
「杖術ってのはッッ!!」
「おっと!?」
高速で振られた杖を竹刀で往なすが近衛のバランスが少し崩れる。さすが杖術家、早い。
「捕手術、護身術だけじゃねぇ!! 遥か昔に刀への対抗として編み出されたもんでもあるんだ!!」
「ふふ、案外マニュアルに従う主義なのでございますかっ!!」
「うるせぇ!! 本来ならこんな物使わなくてもいい、使わねぇようにすべきだったんだよ!! 刀にしろ!! 銃にしろ!! 何にしろなっ!!」
すぐに体勢を立て直して二人は更なる攻防を続けた。
それは長く長く続き結果的に時間の関係で引き分けとなった。それなのにも関わらず、二人の息はそこまで切れてなくて、切れていてもほんの数秒だった。
「お見事でございました。お疲れさまです」
「ハンッ、動きはいいと言っとく。ただ無駄が多い。一瞬の隙が命取りだバカ野郎」
あの時間でそこまで見極めるか。
「…………なりたくて俺はなったわけじゃねぇ。阿呆みてぇに強引に振り回してぇわけじゃねぇ……」
何だか少し震えた声で橘は言いそそくさと出ていってしまった。…………やっぱり何か隠してる。
「しっかし橘と近衛の立ち姿見事じゃったなぁ」
「日本武道はいいですね。形が美しいんですもの。ある種の美学、最高です」
「竹刀っていうのがまたいい。僕はそこまで運動得意じゃないしこういうのできる人は素直に尊敬する」
いろいろ感想等言い合ってみんなでその場を後にして食堂へ行った。
*****
「中学にやっていたって本当だったんだ」
「ええ今回のでよくわかったことでござましょう」
「あら信じてなかったの?」
「ちょっっとそう見えなかったんだもの。
「人は見かけによらないものよ渡良部さん」
「それは見たかったなぁ。今度機会があったらその時に見よう」
「また戦うかわからないけどね」
なんというか、近衛とダグラスと渡良部の三人はわかるとして。阪本と宮原と湊川もよく一緒にいるところ見かけるなぁ。トリオ同士が会話してる。これはあれか、同盟か何かなのかな。それに心なしかダグラスと湊川の距離が縮まっている気がする
とかまあその他今日もいろいろあったなと思いつつ、夕食を食べて片付けに入る。
「そういえばお風呂どうする? 結局昨日あそこのお風呂誰も入ってないよね?」
言われてみれば。私は医務室でほぼずっと寝てたけど。
「今日は男子でいいんじゃないかしら? 直樹さんのことも考えると明日女子にしておいたほうがいいと思うわ」
「そうだね。そこの判断はミス直樹次第だ。どうする?」
まあまだ完全に治ったかと言われたら、と考えれば今日よりも明日のほうがいいことは確実。
「明日でいいよ。大丈夫」
「じゃあ決まりだね」
「では先に失礼する」
男子は早めに食堂を出て風呂の準備を進めて行った。
「昨日誰も入ってないの?」
「入ってないよ。一人だけ仲間外れなんてかわいそうじゃん」
「ほんとごめんね、っていったぁ!?!?」
渡良部にデコピンされた痛いなんで!?
「
…………砕けていい、か。
「そうだね。ご……ありがとう」
「今言いかけたでしょ」
「ふふ、何のことかな」
渡良部にいたずらっぽく笑ってやった。
*****
今日は早めにシャワーを浴びよう。そして寝よう。
いろんな新しい発見があったなぁ。みんなのことをよく知れた1日だった。明日はどうだろう。嫌な予感がする。そろそろ、順当にいけば明日動機が出される。
覚悟を胸に潜めつつ、私はベッドに体を投げた。
*****
8日目
アナウンスとともに目を覚ます。あれ、もしかして今日じゃないのかな。まあそれならそれでいいや。食堂行こう食堂。
いつもと変わらないのかな。それならそれでそのままでいて欲しい。
「もう一週間、過ぎ経ったんだっけ……」
***
食堂へ行って朝食へ。食べてる最中そういえばあまり気にも止めなかったことにふと気づく
「巡間くんって左利き?」
「ん? ああいや両利きだ。仕事柄忙しさに身をおいてるから両方使えたほうが便利だと思ったんだ」
私と同じだった。なんかシンパシーを感じた
「わかる。翻訳作業って思いの外大変だから、両手使わないと間に合わないっ!! とかざらにあるし」
「お互い大変だな」
「左で書いたら大惨事になるわ」
「地獄絵図状態」
「うわーわかるすごいわかる」
ほらあれだよ。迷子になるんだよ。伝われこの気持ち
「最近は左を使うように心がけてるが、やはり癖とは治りにくい。右も出てしまう」
「慣れだもんね。他に左利きとか両利きはいるの?」
「左使ったことないよ。あ、でも利き足は右」
「わしは利き手が右で利き足が左じゃな。基本的に利き手と利き足は逆になるんじゃが、渡良部みたいにたまに利き手足が同じなやつもおるから」
それは初耳。ああでも走り高跳び思い出したらそうかも……結果は忘れた。よかったようななんか、疲れて保健室送りにされた記憶しかない
「けど案外左利きはいないんだ」
「へえ。左だけはいなくて両利きが二人。あとみんな右利きってことなんだ」
「あれダグラスくんも右利き?」
「右だよ。ずいぶん昔に左でやってたときもあったけど合わなくてさ。それ以来ずっと右なんだ」
やっぱりそういうのって慣れなんだなぁ。
ピンポンパンポーン!!!!
『なァっはっはっはァ!!!! オマエラァ!!!! 朝食が済み次第ィ、あ集会室へ集まるであーーる!!』
……………………
フラグ回収しました。本当にありがとうございました。
「ねえこの呼び出しって」
「十中八九、俺たちが考えている『それ』だろうな」
逃げ出す選択肢はもとよりないも同じ。
「逃げるな。逃げるは一生の恥じ。行くぞ」
玉柏のその勇気は、一体どこから出てくるのやら。怖いもの知らずというかなんというか。どこからあふれでるんだろう
*****
集会室へと足を運ぶ。相変わらず何の変哲もない。けれど、あの頃に行ったときと同じ気持ちがある。けど
「集まったであーるなァ」
憂鬱だ。動機が公開されるのか。ついでにレイヤーギは江上のコスプレ。嫌味かよ
「またろくでもないものを……」
「ろくでもないィ??? 違うであーるなァ。ろくでもないわけではないであーるがァ、それに触発されるのはオマエラであーる。まァァ、今回もコロシアイを起こしてくれるとォワレは信じているであーるからなァ!!」
その手にはまるもんか。
「で、何なんだ。ここにただで呼び出したわけではないんだろう?」
「よくわかっているであーるなァ」
ギラリと目を光らせて私たちを見下ろす。
「集まってもらったのは他でもないィ、動機を与えるためであーる!!」
うん知ってたそんな気はしてたよ
「今回ィ、オマエラに与える動機はァ~、こいつらであーる!!!! ノン!! フィク!! ション!! であーる!!!!」
……こいつら? って思ってたらステージのスクリーンが下がる。集会室が暗くなり映像が流される。
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燃え盛る炎
瓦礫の山々
崩壊した建物
赤い空
煙たいとても煙たい
モノクロの群衆
倒れている人々……
え、私たち?
その中で
ただ三人挑む者
………………見覚えがある
その前に立ちはだかる
謎の影
口が動く
刹那消える影
倒された三人を見てそいつは嗤う
そしてはっきり聞こえた
聞こえたのか?
あれ
ま、待って
***
熱い
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い
……………け………………て………
「カハッ!?!?!?!?」
えっ?
何……これ?
血?
「金室さんっ!?!?」
***
金室が突然喀血した。
「な、何ですか、これは?」
本人も驚いている。まさかあの映像に何か?
「ちょっとあんた大丈夫なの!?」
「至って健康……なはずなんですが、あれを見たら痰が詰まった感じがして……そうしたら血が……」
……もしかして記憶のどこかにこれを知っているのか?
「ヒィッヒッヒッヒィ…………オマエラはァまだ思い出せないィ。その時がくるまではなァ!! あそーれーとォ!!」
コツンっ!! っと蹄を響かせ手というか前足か、をこちらに向けた。
「Ⅱ棟のオマエラの部屋にィ、それぞれの秘密の封筒を用意したァ。中身はランダムゥ。開けてみてからのォお楽しみなのであーる!! なあァっはっはっはっはァ!!!!」
そういっていつもの如くさっさといなくなった。なんというか無責任にも程がある。いやそれよりも
「何がどうなって……?」
「呑気にしてるんじゃない!! すぐに医務室へ行くぞ!! 他にも体調悪い人はいるか!? 私が見てやるから!!」
「え、はい……」
混乱したままの集会所。巡間に連れられ金室は出てまた阪本もついて行った。集会所に残る人の中でただ二人、冷静な人がいる
「おい謎野郎」
「なんだ橘……いや、言いたいことはわかる。
……そう、あの三人のうち二人は橘と玉柏。
「お前は記憶にあるのか」
「わりぃがねぇ。もう一人のやつは見覚えがあるはずなのに思い出せやしねぇし。くそったれが」
そんな二人に、話しかける人がいる。
「…………ねえ二人はどういう関係なんだい? あの様子を見る限りなーんにもないわけがないのは明白だよね。けど少なくともあたいたちの味方だとは思ってる。ただ玉柏くん、キミが別の視点から関係している可能性は充分にあり得る。とはいっても才能ぐらいしか関係性を見出だせないけどね」
玉柏は顔を歪ませ視線で訴える。
「別にそれだけで信用しないだなんて言わないよ。気になっただけ」
「……あんまり触れてくれるな。俺だって確証があるわけじゃない」
「まあそうだろうね。これ以上は突っ込まないよ」
あっさりと引いて、それを皮切りに解散することになった。
*****
…………何だろう。体の節々が痛いような……とりあえず部屋にある秘密の封筒とやらを見てようじゃないか。
部屋に入ると、確かに机にモノヤギのいう封筒があった。これも一応動機の一つ。誰の秘密なのか。唾を飲み込んでゆっくりとそれを開いて見た……
『渡良部美南は親を見捨てた』
to be continue……