死体発見編なんですがpixivで先に読んだ方からシロが意外すぎと言われました。なぜだ!? まあそれと同時にしてやった感があります。
注意
これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。
本編とは異なる設定が多々あります。
あと主の文才は期待しないでください。
それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。
補足
渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。
例:直樹→
他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。
なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。
*****
渡良部は親を見捨てた。あのとき渡良部が言っていたことと違う。でも私は渡良部が嘘をつく人だなんて思えない。この動機で殺人を起こそうとは考えられない。けれど彼女にも確認しないといけないかもしれない。
それよりも動機になりそうなあのスクリーンに映された動画。あの映像はノンフィクションと言っていたけれど多分それは本当だと思う。嘘ならあんなリアリティーのある映像は作れないと思うし、何より……
「……痛い」
体の節々が痛むから。私たちはあれに捲き込まれてしまったからそうなっているのかも知れない。一体、あれは何だったんだろうか。
さて悩むのはこれくらいにして、これからどうすべきか、適当に探索しよう。昼までまだ時間がある。Ⅱ棟か…………あ、化学室にちょっと寄っておこう。
***
化学室に行ってみた。まあ中身は変わってないけれど。あの個室、玉柏がタバコを吸っていたからどうにか出来ないのかなとか思ってみる。誰もそこにはなくて、ただただ閑散としている。けど個室が臭うことはなかった。むしろ香水というかそういういい香りがする。ふと横の棚に目をやる。
そこには
『ファ○リーズ』
「用意周到かよっ!!?」
芳香剤がちょこんっとおいてあったよ。そこまで配慮してたの。うんまあ彼成人してるからなぁ。
「なーにやってんだお前は」
「うわぁっ!?!?」
後ろから突然玉柏(あの声は絶対玉柏って確信があった)に話しかけられ驚いて足元にあった椅子だかなんだかいろんなものに足を引っ掛けて転びそうになる。
「っと。悪い、大丈夫か」
左手首を掴まれ間一髪で倒れずに済んだ。
「だ、大丈夫。はあびっくりしたぁもう!!」
「怒るな怒るな。つかここにあんまいるなよ。これから」
「没収」
煙草とライターを取り出し始めたからスッと取った。
「!? おいやめろ!!」
「やめろじゃないでしょ!! 体に悪いんだからやめなさい!!」
「お前は母さんかよ!! つーかここに来て禁煙ちゃんとしてたんだぞ!?」
「長続きしなかったら意味ないでしょうが!! はい!! また禁煙しなさい!!」
「うるさいなぁ!! 俺はお前たちと違って年齢上なんだぞ!? つーかまだ今日一本も吸ってないんだよ吸わせろよ!!」
「関係あるかぁっ!! 未成年多いんだからそこ弁えてよ!!」
「ああもう埒があかねぇな!! あっ」
「?」
突然玉柏は何かを思い出したように目を見開いて考えごとをしている?
「……ははっ」
なんて思っていたら自嘲気味に笑った。
「これだから、お前は相棒なんだな……」
「どういうこと? 確かに裁判の前に相棒って言っていたけど」
「ああ。所謂コンビってやつな。俺は自分でも不思議だった。なんであのときお前を相棒と呼んだのか」
言われてみれば。でも自分はすんなりと受け止められた。確か……私に隣に誰かいて、玉柏の隣にも誰かいた…………いやまさかとは思うけど。もしそうなら宮原の言うことは本当……いや夢にまで出てくるくらいならもうこれは確信していいことだと思う。
「玉柏くん、私前まで気付かなかったことがあって。でもそれが今確信になったかもしれないんだ」
「…………それはなんだ?」
「________」
「………………________」
「!!!! ______!!」
「_____はは」
「ふふっ」
私たちは思わず笑っていた。そんなことあるんだなって。
「お互い相棒としてやるべきことをやろ? このあとのためにも」
「……距離感も大事にしないと今後誤解されるのも時間の問題だろうな」
「確か今日はこっちが……だよ。多分その話に少なからずなると思う」
「それはそれで任せる。そんじゃ」
玉柏は右手を差し出した。私は答える。
「これからもよろしく頼むぞ、相棒」
「こちらこそよろしく、相棒」
交わされた約束は固いもの。二人の約束。
「ところで返してくれないか」
「却下」
***
医務室へ金室の様子を見に行く。阪本はすでにいなかった。
「とりあえずこれで平気だろう」
「すみません。迷惑をかけてしまい」
「なんてことはない。医者として当然だ」
金室さんは元気そうにしていてホッとした。
「金室さんは大丈夫なんだね」
「ああ。間違いなく動機があの原因だろう」
「そうです。しかし不思議なことがあります」
不思議なこと……もしかして
「体の節々に何か異常があったりする?」
「……直樹くん、君もなのか?」
ここで巡間に君もと言われるとは思ってなかったよ。
「えっ巡間くんも?」
「ズキズキするというか、つったような感覚。ただ直接受けたような感覚でもある。あとは体が妙に熱い。熱を計っても平熱。おかしいだろう?」
「先ほど阪本さんもいたんですが、彼女も同じそうなんですよ」
「……もしかし」
「もしかしてじゃない。そうだと思っている」
まだ何もいってないって。
「あれがノンフィクションだと言われて信じる者は少ないが、私は少なくとも事実であると思う。ほぼ毎度私たちの身に起こる記憶、身体、精神などに関系する異常が証拠だろう」
細い目がさらに細められて眉間にシワがよる。
「私も金室くんもまだ見てはいないが、今回あの映像とは別のもう一つの動機が特に大きな火種となるだろう。どうなるかは私にもわからない。だがなぁ」
巡間は遠くを見るようにして椅子に深く深く座った。
「仮に今回事件が起きたとしたら、犯人は絞られやすい気がするんだ。Ⅱ棟が少し特殊だから。いやⅡ棟で起こるとは限らないが」
……巡間の言う通りだ。Ⅱ棟は誰かが入ればライトが付く仕組み。Ⅱ棟で犯行は難しい気がする。
「それゆえ恐ろしい。今こうしている中でも」
絶望への歯車は動いている可能性が高い
*****
昼過ぎ、少し手伝おうと思って食器の皿洗いをしている。
「ありがとうございます、直樹殿」
「いつもやってくれてるから、たまには手伝わないと申し訳ないし」
「わたくしも好きでこの職についておりますから。細かな作業も大掛かりな作業も好きなのでございますよ」
嬉しそうに笑っては皿を洗う。見てると一瞬で終わっているように見えてくる。必殺仕事人かな?
「よし、これで終わり。何人もの料理とか作るのすごいよね」
「ふふ。執事の仕事はそれだけに留まりません。掃除もそうですし、主のサポートを担うのも我々執事の仕事でございます」
「ああそっか。いつからやっているの?」
「幼き頃より両親から仕込まれましたので。それから今の主であるお嬢様のところにおりますから……お屋敷には執事メイドなど含め三十人ほど暮らしておりますよ」
「大家族かよ」
「いつもとても賑やかなので飽きないのでございますよ。さてと……」
棚の前へと立ちティーカップと一緒にあるものを取り出して台の上に置いた。なんて書いてるんだろう。バーベイン茶?
「近衛くんこれは」
「バーベイン茶でございますよ。少々苦いですが如何でしょうか?」
「あ、飲んでみたい」
かしこまりましたと言うと同時にお湯を沸かしてお茶の用意をする。
「バーベイン茶は、精神的疲労からくるイライラ、不安、緊張、憂うつなどの不調や、ストレスが原因での頭痛、食欲不振、不眠など、神経性が原因である心身の不調に効くハーブティーでございます。また消化を促す作用や肝臓の働きを強化する作用もございます」
「うわぁ今の自分に欲しい作用が」
「他にもストレスに効くハーブティーはございますからそのときはまた」
そんなことを話しているとお湯が沸いた。お茶を淹れてもらってそれを飲んでみる。ああ確かに少し苦いかも。どこか渋い味だけれど
「後味がさっぱりしてるね」
「お気づきになられましたか。バーベインは昔から万能薬として取り扱われていた植物なのでございますよ」
「良薬は口に苦し、なんていうからね」
「花言葉は『魔力』や『魔術』。古くから『聖なる草』などと呼ばれ、神聖な植物として神事に利用されてきたのです」
「キリストっぽい」
神霊的なものも感じたよ。
「他にもいろいろ言い伝えがあるんですよ。紅茶やハーブティーの類は本当に奥深い」
紅茶を飲んでいるときの近衛はダグラスと渡良部とゲームをしているときと同じくらい幸せそうな顔をしている気がする。それだけ好きなものなんだな
***
お風呂の時間になった。今日は女子が使うって言ったから着替え(といっても同じ服のストックだけど)とかタオルとかまあ必要なものを持って風呂場に行く。こうしてみるとみんな結構スタイルとかいいんだな。
「そういえば金室さんは大丈夫なの?」
「はい。長湯だけはするなと念押しされましたけどね」
まあそうだよね。
髪の毛と体を洗い湯船に浸かる。ちょうどいい感じの温度。シャワーよりもずっといい
「ふぅ……」
「良いお湯。コロシアイの空間でなければさらによかったんだけど」
「尤もね」
全員が入る。ここのところ疲れが溜まっていたからこういうところでみんなで疲れを癒すのもいいな。
「さぁて!! 女子みんなで集まるのって何気に初めてじゃない?」
「言われてみれば」
「いやなんとなく何だけど、今渡良部が何をしたいのかわかる」
「さすが
「女子だけの集まり……つまり」
「恋バナでしょ」
出た定番中の定番。女子の秘密のトーク。そうガールズトーク
「だって今日動機配られたって言ってしんみりするのイヤじゃん」
「それもそうだね」
「まずは誰から?」
「言い出しっぺの法則でいいと思います」
「私から? んー
割りと素面で答えたな。
「
「あたいはいないよ。頓着はしない主義なんだ」
なんとも彼女らしい。
「
「……!! ちょっと渡良部さん!! あれは忘れてよ!!?」
お湯のせいかそれとも湊川自身の熱なのかわからないけど顔が赤くなってる。
「湊川、抵抗するのはやめたほうがいいよ。渡良部もワタシも見える位置だったし。あの中で気づいてない人いないと思う」
「も、もうやめてよ!! 恥ずかしいじゃない!!」
「ヘブッ!?」
「うわっ!?」
バシャッ!! っと阪本と渡良部にピンポイントでお湯を弾いた。三人の間で何があったんだ。
「私だけずるいじゃない……阪本さんはどうなのよ」
「ワタシ…………何だろう、宮原のことは結構気になってるかも」
「よく一緒にいますよね。息が合うというかそんな感じがしています」
「こう細かい作業とか好きでしょ。親近感みたいなの湧くの」
なんか納得。湊川とも一緒にいるところよく見かけるから仲いいんだなって思ってる。渡良部もダグラスと近衛のトリオみたいなのが出来上がってるし。
「金室さんはどう?」
「うちはまだ特に気になる人はいないです。これからそういう人が出てくるかわかりませんけど」
偏見で申し訳ないけど、金室さんは女子の中で一番厳しいと思います。ズバッて言うこと言うし。
「直樹さんは彼よね」
「うんうん」
「彼しかいないでしょ」
うんうんと全員頷いてる。
「え、確認のために聞くけど誰?」
「「「「玉柏くん」」」」
わお
「息ピッタリで答えられたよ!! そんなに私たち一緒だっけ!?」
「結構一緒よね」
「裁判前後とか」
「外でもいたし化学室にもいなかった?」
なんでそこまで知ってるんだって思ったけどここにいる以上ある程度筒抜けだったわ。
「二人の関係気にならない?」
またみんなしてうんうん頷いて今度は近くまで寄ってきた。
「で、結局のところどうなの!?
「近い近い近い!! なにこのデジャブ!? しゃべりづらいってば!! ていうか私
…………………………………………
一瞬どころか、普通に時間が止まった気がした
「はああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?」
風呂場に響く驚きの声。
「えっ……え?????」
「待ってください」
「これ耳疑っていいわよね???」
「それ本当かい?」
「嘘も何も……本当……だよ。うん、今なら確信できる。事実だよ」
そしてまた時間が止まった。
「ちょちょちょちょちょ!! ちょっとそれ誰なの!?!? 教えなさいよ!!」
「いやいやいやいや!! そう簡単に教えるわけないから!! ていうかここにいないし!! どっちにしろ教えないよ!!」
「ここにいる人みんな言ってるんだから教えなさいよ!! えぇい!!」
「ひあっ!?」
自分に向かってお湯が弾かれた。
「なにを~!!」
私もそれに乗るように渡良部に向かってお湯を弾く。その間にそろそろという風に阪本と金室は先にお風呂からあがる。湊川と矢崎はそのまま残っていつの間にかお湯掛け合戦になっていた。
***
「あっつい~……」
「バカじゃないですか」
「あはは……」
すっかりのぼせてしまった。そりゃあんなにはしゃいでいたらそうなるか。けどこうしたガールズトークも悪くない。他愛もない何気なく交わされる会話。どこか落ち着いた気分になる。
「あれ阪本ちゃんは?」
「今宮原くんを柱に移動させてます」
なるほど宮原を移動させ、はい???
「え?」
「宮原くんを柱に移動させて……」
「いやそこはわかったけども!! 宮原くんどうしたの!?!?」
「阪本さんが体にタオル巻いた状態で出入り口のところのスペースに行ったんです。その時宮原くんがたまたまやって来て自分で自分を殴って気絶したそうで」
「自分で自分を殴った!?!?」
「そうですよ。というかうちそのために待ってたんでした。早く着替えてください手伝いに行きますよ」
「そういう大事なことこそズバッて言ってよ!!」
急いで着替え阪本のいるところへと行くと確かにそこには宮原が気絶しているようで、必死に引き摺りながら大柱に寄せている。
「手伝うよ」
「ありがと。やっぱ男子って重い……」
確かに少なくとも10cm以上高いし。体重もそこそこあるんだろうな。柱に寄せて目覚めを待つ。動機の封筒らしきものがポケットから垣間見えた。
***
「大丈夫?」
「う、うう………………? !? うわわわわ!?!? っ!! いったぁ!?」
落ち着けお父さん
「そんな驚かなくても」
宮原はぶつけた頭と腰を抑えて顔をあげる
「とりあえず、大丈夫?」
「いやうん、大丈夫。そしてほんっとごめんね…………」
宮原が柱に寄り掛かって顔を手で覆った。なんというか、どっちに非があるのかわからない。
「とりあえず宮原くんは何をしようとしたのか確認してもいいですか?」
「……ああ。ほらそこの板あるのわかる?」
指を差した方向に目をやればそこには倒された折り畳み式の板があった。これもしかしてボード?
「あれを設置しようとして誰もいないかなって思ってこっち来たんだ。そしたら予想外にもみんながいたってわけ……」
「それって何なの?」
「男子か女子か、どっちか入浴中だって示すために作った特製のボード」
流石すぎるお父さん。
「これわざわざ作ったの? 一から?」
「俺が好きで作っているものだし。こういう日曜大工も楽しいんだ」
「なんというか、こういう場で言うのもおかしいかも知れないけど。宮原ありがと」
「素直に受け取っておくよ」
だからって自分を殴らなくてもいいような。
「けどなんで
「そうできなかったんだよ!!」
少しだけ怒鳴るように言ったかと思えばまた顔を覆って悶えた。心なしか顔とか耳とか赤くない?
「できなかった?」
「………………言わなきゃダメ?」
「言ったほうが多分誤解云々晴れるし」
「こんなことまさか女子に暴露することになるなんて……」
覚悟を決めて、けど戸惑いを交えた表情で震えを抑えながら語り始める。背中に手をついてしっかりと座り直して
「…………きだよ」
「え、今なんて?」
「性癖だよッッ!!!!」
………………
ふぁ!?!?!?!?
「せ、性癖!?」
「え宮原くんまさか……」
「待って!! 何想像したか知らないけど誤解だよ誤解っ!!」
あっこれ女子絶対聞いちゃいけないやつだわ
「莉桜がこっちにきたときにバスタオルで巻かれた状態できたでしょ……ボードを置こうとした拍子にうっかり見ちゃったんだよ……」
あっもしかして
「…………見た?」
静かにコクンと頷いた。うん、ごめんホントごめん。
「俺さ、親父がなんというか何とは言わないけどデカイの好きなんだ。それを半ば押し付けられるように見てきてて……自然とそれが定着しちゃって……おかげで見た瞬間に変な考えが脳裏を過ったんだ……それでダメだって思って自分を殴ったってわけ……」
なんか納得しちゃいけないこと納得した。けど、けどこれは
「ああもう公開処刑死ねるよこれ……」
スッゴい申し訳ない。阪本も赤くなるのもそりゃ無理ないし。
「こんなこと、あいつ知ったら絶対怒られる……半径一キロ以内の人に申し訳ない……」
「待って」
「半径一キロ以内の人ってどゆこと!?」
「怖いんだってそれぐらい!! 比喩じゃないからね!? あいつっていうのは俺の親友なんだけど、ホント、怒るとめちゃくちゃ怖いんだ!! 半径一キロ以内で『軽傷で済むけど交通事故百件以上発生する』わ『子どもは恐ろしくて熱出して寝込む』わ『怒られた人は寒気と悪感と恐怖心で腰が抜けて立てない』わで!! 」
「恐ろしすぎない!?!? 何その状態!!?」
「ううっ考えるだけでも寒気が……」
宮原の顔が恐怖にまみれている。そんなに怖いのか……
「よし切腹してこよ」
!?
「いや早まるなぁ!!!!!!」
このあと切腹しようとする宮原とそれを止める女子との戦い(?)が始まることになった。状況がおかしいなこれ。
*****
なんかいろいろとあったがまあよしとしよう。まだ平和ってことなんだから。……まだ、なんだよなぁ。今朝動機は出された。その動機に触発されて殺人を犯すこと、あり得ない話じゃないんだし。
………………………………
私毎回こんなこと考えるから倒れるんじゃ
もういい
寝よう
その方が早い
***
9日目
朝。適当にヨガやって、目を覚ましては食堂へ。特に何かあったわけでもなし。灰垣はそこへ残って、あとのみんなは好きなところへと。
売店また寄ろうかな。行けば国門も同じ方向へと行っていた。なんとなく何を調べるのかってわかるけども一応はね。
「またカレンダー?」
「もちろん。まあそれだけじゃないが」
そういうと手持ちサイズの日常で役立つかもしれない的な感じの小ネタ本を取り出してきた。
「少し料理のネタをと」
「国門くん料理するの?」
「いやいや僕はできないよ。得意じゃない。ただ昨日橘がお菓子を作っていたときにどこか手抜きさを感じたから」
ああなんかわかる。そうする術を理解しているというか
「ま、楽な道なんてないけど」
弁護士の道って険しいんだっけ。
「弁護士って相当難しくない? いくつもある法律を覚えるの」
「語学も同じようなものだろ」
論破された。
「たまたま系統が俺に当てはまっただけだ。スッと体に入ってきた感じでね。電気が流れた感じ」
「ビビッときてこれだっ!! ってなるやつ?」
「それそれ。適性にあったんだ」
懐かしむように国門は微笑んだ。
「昔、推理が全くできてない裁判を見たんだ。無罪を訴える被告人の権利も尊重せず、まるでその人の運命がすでに決まっていたかのようで。僕は、不思議と聞いていた内容をすべて覚えていた。そこから思考を廻らせて犯人を暴いたんだ」
才能ありすぎだろ。
「結果的に被告人を犯人だと通報した人が犯人だったよ。ただこのときは完全にたまたまだった気がする。そもそも」
ビシッと私に指を向ける
「弁護士があそこまで大活躍できること自体珍しい。有罪判決受けた人が無罪になるってことも。それまでの過程でどれだけたくさんの証拠、事実を取り揃えなければならないか。それに」
ポケットに手を入れて私を睨んだ。
「あの裁判はまだ
終わって……いない?
「え、それってどういう……」
「そのままだよ。鷹山の謎が解けていない」
鷹山の謎?
「君は言った。鷹山は『ただでここから出られると思っていなかった』と。それはあのメモ帳から推理したんだろ」
「そうだけど」
「仮に鷹山がそう思っていたとして、なぜそう考えたんだろうなぁ? メモ帳から推理するにしたって情報が少ない気もするだろうぜ」
口調が裁判のときのになってる。正直このときの国門は苦手なことこの上ない。
「た、確かにそうだけど」
「少ないからこそ、そこからの俺の勝手の推理をするが。この中にこのコロシアイを起こした黒幕がいるんじゃあねぇか?」
「黒……幕」
いや、まさかそんなことが。けれど彼の言うことも有り得ないわけじゃない。遠隔操作なんて今のご時世あるし。
「ここにいる以上推理できる材料は確保しておいて損はぁねぇ。あくまでも俺の推理だ。真に受ける必要はない。留めておくだけで結構だぜ」
……彼は、盲点を付く天才かもしれない
*****
少し経ってすることもないと思ってⅡ棟を回ってる。物理室に適当にいると扉が開いて湊川が入ってきた。
「直樹さんじゃない。ここに何かあるのかしら」
「特にないよ。ただの探索。……正直ここは頭が痛くなる場所だけど。物理ちんぷんかんぷん」
「物理もわからないけどそっちよりも化学のほうがわからないわ」
お互い理系科目苦手だ。
「そういえばあまり話したことないわよね」
「機会少なかったからね……」
何を話そうか。
「前々から気になってたけど、湊川さんって海賊服とかそういうの好き?」
「ええ。結構気に入っているのよ。だってこうロマンがあるじゃない」
「わかる。かっこいいよね」
眼帯つけていたり義手だったり、格好そのものもかっこいい。
「海賊といえば、
「もちろん」
かつての強国として恐れられたエジプトを破った有名な海賊。
「彼の活躍は同時のイギリスからしてみればとても素晴らしかったわ。現代の教科書に載ってるくらい。けれど本来海賊は恐ろしいものなのよ。人々の脅威だった」
アニメとかだと美化されているから実際は、だからなぁ。
「人々からの評判はよくなくても、王女、エリザベス一世から高い信頼を得たからこそあの戦争に勝ったんだと思う。けど信頼を得るのって簡単じゃないのよね」
信頼、か。
「お客さんに平等に、対等に向き合うのも楽じゃないの。始めから信頼を得るだなんて甘ったれでしょ? 努力の積み重ねが必要なのよ。何事もね」
商売が仕事の彼女にとって、信頼関係を築くのは大切なこと。それが容易でないこともわかっている。だからこそ努力しなきゃいけないんだ。
「さぁて、そろそろ行こうかしら」
「どこに?」
「カフェよ。これからちょっとダグラスくんと話をするの」
「へえそうなんだ。宮原くんとか阪本さんとかは?」
「宮原くんはまた小物作るみたいなこと言ってたわ。そのあと何かするとも言っていてお昼は少し遅くて来ることになるかもって」
「相変わらずだなぁおい」
「阪本さんは美術室のほうに行ってからふらふらするって言ってた。まあ二人の行動を制限する権利なんて私はないから」
それにしても湊川は嬉しそうにしているな。もしかしてダグラスくんと何か進展したのかな? ……なんて、聞くのも野暮だよね
*****
はい
現在渡良部に連行されてます
物理室出たあとなぜか渡良部に捕まって連行されている。なんでやねん。Ⅰ棟の渡良部の部屋へ。思えば他の人の部屋に行くの初めてかもしれない。
「お邪魔します」
「いいいい、硬っ苦しいから。適当にその辺に座って座って」
とはいえ座るところもそこまであるわけでもなし、ベッドに腰をおろした。渡良部は紙コップにお茶を入れて私に出した。一口飲んで一度近くの机に置いておく。
「……で、話って?」
「…………昨日の夜に女子みんなで話したでしょ。誰が好きかって」
した。渡良部から切り出した内容だった。
「えっと、それがどうしたの?」
いつもの渡良部とは思えないほど挙動不審。強気が弱気になっている。言おうとしては言えずを数回繰り返した。
「落ち着いて。ゆっくり聴くから」
[newpage]
「胸が……苦しいの……」
「苦しい?」
「
持っているコップにかかる手の力が強くなる。水面をじっと見つめて
「こんな気持ちに一度もなったことないの。だって私は生活を追われたから親を見捨てざるを得なくなって、それからずっと監視されるように生きてきた。……牢獄じゃない。そんなの嫌なのに、ここでも同じって私はどれだけの『大罪』を犯したっていうの?」
時々震えながら儚げに言う。
「けどその中で……私は一つ、光を見つけた。あの優しい笑顔を見る度に嬉しいというか落ち着くというか、今までの心の鎖が緩むようなそんな気持ちになって。一昨日の
無知な少女に課せられた罪のような束縛。渡良部が確実に知るのは少し遅いかもしれない。それを導く役割は私は持っているのか。
____
ふと光る、眩しいあの笑顔
____
……なら……
「そばにいることは、罪じゃない。居たいんだもの。心からあなたが望むなら溺れてもいいと思う」
「
「私もね、なんか寂しいんだよね。ぽっかり空いた穴があるんだ……」
何だかいつも隣にいた人が突然いなくなったみたいに
「別に玉柏くんがその埋め合わせだなんて思ったことなんかない。彼も彼で抱えている同じ問題だから、お互い相手のために距離感を大事にするって約束したんだ。また会うそのときまで、私たちは背中を預けて立ち向かうって決めた。
「……それなら、あんたたちの距離感に納得がいく。そんな事情があったんだ」
「うん」
慰めなんていらない。埋め合わせなんていらない。ただ私たちは信頼し合っていくだけだから。
「渡良部さん、質問を質問で返すことになるけどあなたはどうしていたい?」
「私は……」
目を閉じて手の力をまた少し強めて。バッと目を開けてコップをテーブルに置く。
「みんなの……そばに居たい。一緒に居たい!! ……そっか。私は難しく考え過ぎただけなんだ」
彼女は自身の頬をバシッと叩いてッシャアッッ!! と気合いを入れた。
「今はまだ悩んでみる。それでこの気持ちと向き合う」
*****
お昼になった。渡良部と一緒に食堂へ向かう。と……なぜか座禅を食堂の隅にいる灰垣がいた。
「意味わかんないよ!!!?」
「む? なんだ直樹と渡良部か」
「なんだじゃないでしょ!? なんでここで座禅なんか」
「座禅というか瞑想じゃな。さっきまでモノヤギも居ったぞ」
「何でレイヤーギまで!!?」
「気まぐれじゃよ。気まぐれ。とにもかくにも、そろそろ時間じゃとおもっとったし、座って待つことにしようじゃないか」
なーんでこんなにペース乱されるんだろう???
灰垣の言う通りまだ全員揃っていないみたい。適当に席について待っている。ダグラスと湊川もすでに食堂にいるみたいで手伝いをしているらしい。15分、巡間が食堂に。30分に阪本が。まだ来ていないのは金室、国門、宮原、矢崎、橘、玉柏の6人か。宮原は遅くなるみたいなこと湊川が言っていたっけ。そういえば電子生徒手帳見ればⅡ棟にいる人ならわかるはず。そう思って見てみると、植物庭園に誰かいるのがわかった。まあしばらくすれば来るだろう
プルルルル!!!!!!
「わわわ!?」
突然手元の電子生徒手帳が鳴った。びっくりした。けれどそんなことよりとりあえず出てみる。
「はい」
『翻訳家!! 今どこだ!?』
「!?!?」
橘の大きな声が電話にも関わらず食堂に響いた。
「た、橘くん!? え、いや、食堂だけど」
『!! てめぇら、そこにいるんだな!? 誰がそこにいる!?』
「灰垣くんとか渡良部さんとか……これからご飯だし」
『バカ野郎!! 呑気に飯食ってる場合かッッ!!』
え、なに、どういうこと? 何が起こってるの? 湊川がこちらに来たのが見え、こちらの様子の異変に気づいて立ち止まった。
「な、なにが起こってるの!?」
『一回しか言わねぇぞ、耳ほじくってよくきけ!!
…………が死んでいる』
「は?」
『詳しい話はあとだ!! 執事はそこにいんのか!? やつに握り飯作れって言っとけ!! いいか!! Ⅱ棟にさっさとこい!!』
「え、ちょ」
ブツッ…………
途切れた通話。これはどういうこと? また起きたの? いや、今やるべきことは
「渡良部さん!! 今の話聞いていた!? ダグラスくんと近衛くんに伝言お願い!! 私たちはⅡ棟に急ごう!!」
一刻もはやく橘の言う真意を確認すること。今その場にいない人はとりあえず気にしないで、急いでⅡ棟へ向かう。
その場にいた私、湊川、阪本、灰垣、巡間は急いでⅡ棟へ。ダグラスと渡良部は残って近衛の手伝いに回ることに。
「お前らどうしたぁあ!!」
奥の木の上……ではなく下から玉柏の叫びが聞こえた。何か腰擦ってる!? けど
「おい何で腰擦ってるんだ!? 説明ついでだ。直樹くんたちは先に行っててくれ。玉柏くんには私が」
止まる暇はないから巡間にまかせる。
走れ
走れ
止まる暇なんてない
Ⅱ棟へ入ると同時に待っていたというように橘がそこに立っていた。
「………………来た」
「ねえ、本当に起きたの?」
「今からそれを証明すんだ……開けるぞ」
そういってⅡ棟特有の大きな柱に手をついた。いやいやそこには何もないでしょ……
キイィィ…………
ゆっくりとそこは開く。プロペラの用に。おいここ柱じゃなかったのかよ。どこのカラクリ屋敷だよ。
中へと入る。
***
初めてみる白い白い空間
小さなキッチンと
ベッドとテーブルとソファ
そして2つの監視カメラ
こんな部屋があったのかと思った
と同時に私は……私たちは……
落とされた
ソファの下の
小さな
静寂に包まれた
動くことすら許されず
横たわるそれは
優しく微笑む
まるで
眠るように
否、すでに
………………
ピンポンパンポーン!!!!
……ああ
また起きてしまったのか
『死体が発見されたであーーるっ!! 一定の捜査時間のあとォ、学級裁判を開くであーる!! なァーっはっはっはっはァ!!!!』
“超高校級の大工”宮原匠は頭に傷を作っては、永い眠りについていた。
_______
嗚呼なんということだ
『引っ掛かっている人』はもういない
自らの謎から解放された
けれど別のものに引っ掛かってしまった