表裏ダンガンロンパ ~共通とすれ違いの物語~   作:炎天水海

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第二章 非日常編 弱震の8部屋目

 

 注意 

 

 これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。 

 本編とは異なる設定が多々あります。 

 至らぬ方言の表現があります。

 あと主の文才は期待しないでください。 

 

 それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。 

 

 補足 

 渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。 

 例:直樹→ 直樹(トン)

 他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。 

 なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。 

 

 *****

 

 「結論が出たみたいであーるなァ……」

 モノヤギがニッコリと不気味に笑ってこちらを見る。

 「オマエラァ!! 手元のボタンで犯人とおぼしき人をォ、投票するであーる!! 全!! 員!! 投!! 票!! であーるからなァ!!!!」

 ねえ、本当に信じたくないよ。手が震えて躊躇してしまう。

 「ほら。早くワタシに投票しないと」

 阪本はただ優しくそうみんなに呟いた。それは私たちを後押しするだけでなく、まるで無慈悲な女神の囁きのようにも感じられて。いつの間にか彼女のところを押していた。

 

 ルーレットがぐるぐると回る。

 嘘だと言いたくても、画面は阪本のところで残酷に光るだけだった。

 

 

 *****

 

 「なァはっはっはっはァ!! 連続大正解ィ!! 今回ィ、超高校級の大工ゥ、宮原匠を殺したのはァ、超高校級の藍染め職人ン、阪本莉桜なのであったァ!!」

 やっぱり……今回の犯人は阪本……

 「たァだしィ!! 満点じゃないであーる」

 「満点だと?」

 「湊川ァ……まさか自分に票を入れるなんてなァ……まあァ、別に自分自身に投票してはいけないルールなんてないんであーるがなァ……?」

 湊川が苦しそうに、手で拳を作って思い切り握りしめる。それだけ信じたくなかったんだ……

 「阪本……さん……」

 「ごめん湊川。ワタシ……」

 仲良かった二人の間になんとも言えぬ空気が漂う。否みんなも。

 「…………お前さんはいつも誰かの側にいつも寄り添っていたじゃろ。……特に、宮原と湊川と共にいる姿はよく目に焼き付いておる」

 その空気を破ったのは灰垣だった。

 「一体、二人に何が……」

 

 ***

 

 「簡単な話。ワタシは愚かだった。動機の秘密に怯えて、まんまとモノヤギの思惑(筋書き)通りに動いちゃった。もっと誰かに言えばよかったのに、相談すればよかったのに恐怖が勝ってワタシは罪を犯した。今も、昔も」

 「昔も?」

 「ヒィッヒッヒッヒッヒッヒィ……気になるであーるかァ? そんなに知りたくばァ教えてやるであーる!!」

 モノヤギはおもむろにマントから封筒を取り出し中身を開き読み上げる。秘密を読み上げられるというのに彼女はじっとしていた

 「阪本の秘密はァッ!! な、ななななァーんとォ!!!? 『遺体を藍染めの中に混入させたこと』であーーーーーーる!!!!」

 ……は? どういうことだ?

 「い、遺体を? 藍染めの中に???」

 「ふざけないで!!? そんなこと……そんなこと阪本さんがするわけッ」

 「んーん。違うよ湊川、みんな」

 阪本が首を横に振る。まさか

 「それは事実。ワタシは昔、お父さんの『命令』で遺体を、藍染めの釜の中に入れた」

 「!?!?!?!?」

 「な、なんだって!?!?」

 衝撃的な事実が裁判場内に響き渡る。なお嘘だと言う湊川の声すらそれに呑み込まれて溶ける。

 「怖かった……怖かったんだ……」

 袖をギュッと握りしめて彼女は苦虫を噛み潰したような表情で震えながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ________

 

 

 

 

 

 「おい莉桜!! こいつを始末せぇ!!」

 

 

 「っ……!? な、何をおげ言うの!? そ、そんなんしたらあかんけんな!?!?」

 

 

 「黙れぇ!! かんまん言うこと聞かんかぁ!!」

 

 

 

 

 ________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「重圧的なお父さんにワタシは逆らうことが出来なかった。その遺体はワタシのところで働いていたパートの人で、お父さんはその人を殺した。それをワタシに押し付けて始末させようとしたの。何でもいい。何でもいいから隠せ。バレない場所に隠せって。そのときワタシは咄嗟に入れてしまった。……………………大切な、大切なとっても大切な、藍染めの中に……けれど釜の大きさが足りなくて溢れて、さらに何倍もの釜に移されて……人の皮膚と血液と内臓と……その他、おぞましいものが入った染め物が出来上がった……それはもはや藍染めと呼べなかった。腐った気持ちの悪い『雑巾』でしかなかった……」

 想像するだけでも酷い(むごい)話だ。吐き気がしてきそうなほどに。

 「今まで黙ってたけど、ワタシはちょっと……男が怖いんだ。お父さんを見ているようで……またあの束縛に虐げられるんじゃないかって。考えるだけでも震えが止まらないの……」

 「……ユーは『Androphobia』……なんだね……」

 「アンドロ……フォビア?」

 「『男性恐怖症』って意味だよ」

 「阪本くん、君は……男性に対して恐怖心を抱いていたのか……? だが今までそんな様子見せたことなかっただろう」

 言われてみれば、阪本は普通に男女関係なく横に並んでいた。さっきの通り、宮原とは特に。

 「…………昨晩からだった。男に対して恐怖心を思い出したのは」

 「……記憶の欠如か」

 こくりと頷いて彼女は続けた。

 「誤魔化しても無駄だよね……怖いの……男がとても、怖くて……怖くて怖くてッッ……」

 頭を抱え席に肘をつき下を向いては叫んで。

 「……ッッ……こんなのっ!! 知りたくなんかなかったっっ!!!! 思い出したくなんかッ……なかったのにっっ!!!! もっと……普通でいたかったっ!! 普通にみんなといたかったっ!! でも……夜に手紙をもらって……気付いちゃったんだ……恐怖にまみれて、ワタシは……錯綜した中で、そして……怖いほど冷静に思考が動いて、行動して……宮原を、殺していた……」

 

 

 

 

 _______

 

 

 宮原に秘密の部屋を見せられてワタシもびっくりした。けど……犯行をするには絶好だった。なんでこの時毒殺ってやり方が浮かんだのかすら今じゃ全く覚えてないから。

 ワタシは宮原とお湯が沸くまでの間いろいろ話していた。ここでのことを話していた……殺意? そんなの全くなかった。けれどワタシはすでに後戻りが出来なかった。

 お湯が沸いて

 『紅茶飲むって言ってたよね。入れるよ……あっ、砂糖ある?』

 『ワタシ持ってるよ』

 『よかった!! じゃあ入れてくれるかな』

 このあと、宮原は自分が殺されるだなんて思ってなかったと思う。無邪気な子供のようだった。ワタシは計量スプーンで下から掬った砂糖を一杯自分に入れて、そのあと少しかき混ぜてから上から毒が混じった砂糖を宮原の紅茶に入れた。

 『ありがとう』

 一口、彼は飲んだ。青酸カリは致死率が高くて即効性があるからすぐに彼は異常を訴えた。

 『ウッ……カハッ!!!!!!??』

 彼は飲んだものを吐きそうになっていたけれどそれを寸でのところで抑えてワタシに言ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『もしかして……誤解……させたのかな……ごめんね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『!!!!』

 なんで彼はそんなに優しくいられたのか。分からなかった。本当にわからなくなって……やかんで彼を殴った。宮原なら逃げられたはずなのに逃げなかった。

 

 

 

 ゴッ!!!!!!

 

 

 

 鈍い音がした。宮原の頭からは血が出ていた。けれどそれで死ぬことはなくて……ゆっくりと毒に蝕まれながらソファに横たわった。そして……彼は満面の笑みでワタシに向かって微笑んだ。

 『ごめんね』

 最期までワタシに謝りながら。ゆっくり、ゆっくりと彼は死んでいった。

 

 _______

 

 

 

 

 「宮原は自分が呼び出した手紙でワタシが誤解するって思わなかったんだと思う。それだけ信用してくれていたんだと思う。今となってはわからないこと」

 「そんな……」

 「ワタシは勘違いしたんだ。そして血を浴びようとした」

 「阪本は……勘違いを起こしてさらに男性恐怖症による恐怖の増大で殺人を……ということなのか?」

 「…………もう一つある。その前にワタシ不思議だった」

 不思議?

 「ワタシを呼び出したのって信用していただけなのかなって。そこから導きだしたワタシなりの答えが『みんなの秘密の封筒』。宮原がワタシの封筒を見たんじゃないかって……そう思った」

 秘密の封筒。昨日モノヤギから受け取ったあの動機か。

 

 

 

 

 ………………動機

 

 

 

 ……震えが

 

 

 

 止まらない

 

 

 

 けれど

 

 

 

 言わなくちゃ

 

 

 

 

 「……阪本さん。あなたは宮原くんが自分の動機を持っているって思ったんだよね?」

 「そうだよ。そうでな」

 「ごめん」

 私は阪本に向かって頭を下げた。

 「えっ? な、なんで直樹が頭を下げるの? 下げる理由は」

 「あるんだっ!! 私にはあなたに謝らなきゃダメなんだっ!!」

 だって宮原の持ってたあの封筒は……

 「あの封筒の中身は阪本さんの秘密のやつじゃない……私の(・・)なんだ……」

 「……なお……きの……? うそ……そんなわけっ」

 「私はっ!! 今手元に二つの封筒を持っている……一つは渡良部さんの……もう一つは私の……」

 「私の秘密持ってるのあんただったの?」

 ハイソウデスゴメンナサイ

 「これが証拠だよ……」

 私は自分の動機を阪本に渡し見せる。それを見た阪本は驚愕しポロポロと泣いた。

 「……ワタシは……最後まで……勘違いしたまんまだったんだね……ごめん……」

 宮原の優しさが生んだまさかの悲劇。こんなことになるだなんて思わない。

 「あのときあの場から逃げ出されたのは……」

 「そういうことだったんだな」

 私はゆっくり頷いた。

 「宮原がワタシのやつを持っているって……ずっと思ってた……違ったんだ……ごめん……ごめん……!!」

 こういうところで、まさか自分が絡んでくるとは思っても見なかった。申し訳ない上に罪悪感も襲う。

 

 ***

 

 「俺からもいいか阪本。お前絶対男性恐怖症とその勘違いだけの犯行じゃないだろ?」

 玉柏の言う意味がわからない。どういうこと? 阪本は一瞬身震いして隣の彼のほうをみた。

 「お前は『宮原の秘密の封筒をもらっていた』……違うか?」

 「………………半分正解。宮原の……秘密。それをみた。……はは、思えばそれからだったなぁ」

 自嘲気味に笑い、ポケットから封筒を取り出した。

 「モノヤギ。いい?」

 「好きにするであーる」

 「ん。宮原はね……過去に『仕事場の人を高いところから突き落とした』んだ」

 宮原が? 突き落とし……えっ? 衝撃が私たちを襲う。

 「宮原くんが!? あんな優しくてみんなの……お父さんみたいな存在の宮原くんが!?」

 「そう。でも宮原はきっと何かあってそうなったんだと思う」

 阪本はまるでさもそうであるように言った。

 「どうしてんなことがわかんだよ」

 「……昨日のお風呂のときだよ。女子はわかると思うけど、あんなこと言われて恥ずかしかったよ? それでも彼って他人をどこまでも信用して自分のことを犠牲にできる人なんだって思った」

 そうでなかったらあんなことしないとまた自嘲気味に、でもどこか穏やかに笑いながら言う。

 「こういうこと言うのおかしいけど、なんか宮原って可愛げあるんだよね。だからかな? さっき言ったことを合わせても、宮原は自分が望んでやってしまったことじゃないんだって思った。……今の玉柏のやつに半分正解だって答えたのは、手紙をもらって恐怖症を思い出してそれでこっちも思い出したからなんだ。でもあまり意識していなかったし、手紙と恐怖症がやっぱり大きいかな」

 そういうと彼女は私のところ来た。手をギュッと握手するように掴まれた。

 「ごめん」

 そういうと一言私に囁いては彼女は戻っていった。……………………?

 「湊川」

 今度は湊川の方へと向かうと私と同じようにしたあと抱きついて背中を優しく叩いた。

 「大丈夫、大丈夫だよ。湊川なら、みんななら乗り越えられるから」

 「っさか……もとさんっ……っ!!」

 湊川も離したくないとばかりに抱き締めて泣き喚いた。

 

 *****

 

 「そろそろ時間にしたいであーる。そんなに長い長話はァ好きじゃないのであーる。オマエラの友情を否定するつもりはないであーるがなァ……」

 モノヤギが口を開く。つまり

 「うそ……いやっ、いやよ!! 私はまだっ……あなたとはまだっ」

 阪本は湊川から離れてモノヤギの近くに行く。

 「それではそれではァ、おしおきの時間であーる!!」

 言葉を遮り、残酷で冷酷な宣言。

 「モノリュウ様ァッ!!!!」

 

 パッ

 

 『クックックッ。おしおき。今回超高校級の藍染め職人に相応しいおしおきを用意した』

 モノリュウが現れこれからお楽しみが起こるのを今か今かと待ちわびている。

 「バカだよね……ワタシの中じゃ、藍染めはいつも『愛』染めだった。けど『愛』情を注いできた『あい』染めを二度も苔にしちゃったんだもん…………」

 「それではァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやよ……いやっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「湊川、みんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おしおきタイムゥ!!!!」

 『スタートだ……ふふふ、ふーはっはっはっはっはっ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「また、地獄でね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 阪本はそう言って上から降りてきた鎖に首を掴まれそのまま引っ張られていった。

 

 

 

 湊川が腕を伸ばそうとしたがそれは虚しくも空を切るだけだった

 

 

 

 ____

 

 

 GAME OVER

 サカモトさんがクロに決まりました

 オシオキを開始します

 

 

 ____

 

 『さかちゃんそめつくり』

 “超高校級の藍染め職人”阪本莉桜、処刑執行

 

 

 

 

 

 

 

 上に引っ張られた阪本は下を向くと

 

 

 

 

 

 大きな釜があることに気がついた

 

 

 

 

 

 そのまま首輪が外れて釜の中へ

 

 

 

 

 

 阪本は落とされて腰をうつ

 

 

 

 

 

 腰を擦りつつ、釜からの脱出を試みようとすると

 

 

 

 

 

 突然上から大量のお湯が降り注ぐ

 

 

 

 

 

 火傷しそうになるくらい熱い熱いお湯

 

 

 

 

 

 出ようと思って手を伸ばすも

 

 

 

 

 

 体がそれを拒んでしまう

 

 

 

 

 

 次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 ボッ!!

 

 

 

 

 

 

 釜に火が着いて茹でられる

 

 

 

 

 

 お湯がさらに熱を持って

 

 

 

 

 

 阪本は溺れながらもがく

 

 

 

 

 

 水分を含んだ服

 

 

 

 

 

 お湯を飲み込んでしまったならもう終わり

 

 

 

 

 

 だんだんと抵抗する力などなくなる

 

 

 

 

 

 モノヤギが棒状のモノを取り出すとグルグルグルグル掻き回す

 

 

 

 

 

 どれくらい経ったか

 

 

 

 

 

 モノヤギが掻き回すのをやめて一枚の布を釜の中に入れる

 

 

 

 

 

 またしばらくして布が持ち上げられるとそこには

 

 

 

 

 

 阪本印の『赤い染め物』が出来たとさ

 

 

 

 

 

 

 ____

 

 な、なんだ……これは……? 鳥肌が止まらない。

 「なァーーーーッはっはっはっはっはァァァ!!!!!!!! アドレナリンがァ全ッッッッッッ身に染み渡るんであーーーーーーる!!!!!!!!」

 こんな、こんなのって……なんでここまで残酷なんだ? たとえ殺人を犯したとはいえ、ここまですることはないじゃないか

 「あ、……ああ…………ッ!!!!」

 「湊川さん……」

 湊川はまた膝をついて、さらに手もついて震えに震えている。

 『ふっくっくっくっ……その顔ぞその顔……っ!!!! さて、更なる絶望を期待するぞ。モノヤギ。余はこれで失礼しよう』

 ブツリと途切れ、モノリュウはいなくなった。

 「? 今日は早いであーるなァ? まァ別にいいんであーるがなァ。ではではおさらばさいならァッ!!!!」

 モノヤギもそそくさと出ていって、また私たち生徒だけの空間となった。

 「……わた……しは…………」

 ふらふらした状態で湊川がその場から離れエレベーターに乗ろうとする。しかしとてもあのままにしてはおけなかった。

 「…………」

 「ダグラスくん?」

 ダグラスは湊川の元へと行き彼女を支えようとする。

 「あとは任せてほしい。一人にさせたら……彼女はいけない」

 それだけいって先に二人は出ていった。

 「湊川さん……大丈夫……じゃないか……」

 「……今は、ダグラスくんに任せるのが懸命だろう。彼なら湊川くんを支えられるだろう」

 宮原と阪本。湊川はよくあの二人といた。それが、突然こんな形で散るとは誰も思いもしなかった。

 「面倒なことになったなぁ?」

 しかし一人だけまるで空気を読まないやつが口を開いた。

 「っ……ふっざけんじゃねぇぞ!!!? てめぇっ」

 橘がキレて国門の胸ぐらをガッと掴んだ。

 「何がふざけるなだ? 事実だろ? これからその隙に漬け込んで、どんな事件があるかわかったもんじゃねぇぜ? 俺ぁな、お前ぇよりもそれをわかってんだぜ? たかだか杖を振り回すだけのお前が、実際に度重なる無数の裁判を経験したことのある俺に何が言える?」

 しかしそれに動じることもなく、国門は淡々と冷淡にいい放った。

 「お前みたいな他人を見捨てることも厭わないやつに、ふざけるなだなんて言われる筋合いn」

 そこから先は聞こえなかった。それは橘が国門の腹にストライクで蹴りをかまし吹き飛ばしたからだ。

 「た、橘殿!!? いくら腹を立てているとはいえそんなことは」

 「黙ってろっっ!!!!!!」

 橘はその場から動かなかった。荒く息をしては国門のほうを向いている。

 「やめなよ。ここは喧嘩をする場じゃないよ。喧嘩するなら他所行ったほうがいいんじゃないかい?」

 矢崎が冷静に制する。

 「……てめぇらは、どこまで分からず屋なんだよ……」

 そう吐き捨て彼はそこから離れていった。

 「国門くん大丈夫?」

 「カハッカハッ!!!! す、すっごい痛い……」

 「でしょうね。まあ自業自得です。お灸だと思えばよいのでは?」

 金室がさらりと毒を吐いて国門はお手上げと言って素直に世話されていた。

 「……でようか」

 みんながそれに同意して全員でエレベーターに乗った。

 「ねえ玉柏くん」

 行きに玉柏に話しかけられたように、私も彼に話しかける。彼は目で何かと訴えてきた。

 「……阪本さんの秘密は、誰かが持っているんだよね。結局、あれって」

 「それは俺だ」

 えっ。思うと同時にポケットからこっそり出されたそれの隙間に、確かに阪本と書いてあった。

 「君が、持ってたんだ……」

 「あの場で言ったら混乱するだけだろ。だから言わなかっただけだ。お前も……無理すんな」

 また言われた。けれど涙は出ていない。その言葉がどういう意味かはなんとなく理解できた。

 

 

 ***

 

 裁判が終わり。夕方といったところか。あんなの見せられて私たちは食事どころではなかった。あまりにも残酷過ぎて、食事は喉を通りそうになく幾人かは吐き気を催した。苦しい。苦しい。苦しい。

 今日は寝れそうにない。寒気がする。寒いのは、好きじゃない。怖い、怖い。助けて。私たちみんなを、助けて。

 

 

 

 『これ、宮原が渡すの忘れてたって言ってたもの』

 

 

 

 

 そういえば、阪本からあのとき受け取ったこの手紙はなんだろう? 開いて読んでみた。

 

 

 

 

 『空へ

 

  俺はお前の秘密を知っているだけじゃなくて、お前の彼氏のことも思い出した。

 俺がやった【間違い】を、その人だけは受け入れていることも。

 何があったかまではわからない。

 けれど俺はみんなの味方でずっとありたいから、困ったら相談して欲しい。

 俺はまだ、自分のことを思い出せそうにないから

 

              宮原より』

 

 

 …………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねえ、宮原。ねえ、阪本。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人はどうしてそんなに

 

 

 

 

 

 

 

 優しくいられたのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────

 

 

 風呂場。そこで玉柏が宮原の作ったボードを男子使用中の状態にして待っていた。そして呼び出した本人がやってくる

 「お前から、呼び出すなんてな」

 「……どうしても、気にならざるを得なかったんだよ。てめぇ」

 口調よりわかるは橘。彼が玉柏を風呂場へと呼び出した。

 「んで、何のようだ? ここで俺を殺すわけでもないんだろ」

 橘は玉柏と一定の距離を保っては睨み付ける。

 「てめぇ、どうして裁判のとき『ゴミ箱に何かが捨てられた形跡がない』ってわかったんだ? 捜査のときはずっと現場に居たじゃねぇか。んなことわかるのは意味がわからねぇよ」

 玉柏は黙った。じっと睨みため息をついた。

 「さあな。別にお前に教える義理なんてないだろ。俺は俺のやり方でやるだけだ」

 「……それがてめぇの才能に関わっていると言ってもか?」

 「なに?」

 才能。玉柏は才能を忘れている。ただし、彼は自分の勘だけを信じて検討をつけていた。

 「てめぇの才能はここに書いてあった。……信用もクソもしてねぇよ。あんなやつからもらった動機なんざ信用できやしねぇ」

 「まあ、だろうな……」

 二人に不気味な空気が流れる。

 「だがこれを知った上で聞く」

 

 

 

 

 「てめぇはなにをした?」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 カランっ……

 

 

 まだそのときじゃないな

 

 

 *

 

 

 苦い

 

 

 ……割れなければよかったのに

 

 

 *

 

 

 お願いするね

 

 

 あとは頼んだよ

 

 

 湊川

 

 

 *****

 

 

 

 “~友の証~あい染めのスカーフ三枚セット”を手に入れた

 

 阪本が『愛』を込めて作った『藍』染め。それぞれに模様があり、それを繋げると一つの丸が浮かび上がる。友だちに渡すと一生友情が続くとか

 

 

 

 ***

 

 第二章

 『せんじょう』あるも『せんし』なし、『せんし』あるも『せんじょう』なし

 

 

 終

 

 

 

 

 

 

 

 

 next→第三章「消えた雁追う者共」

 

 

 

 




こんにちは、こんばんは、おはようございます。炎天水海です。
 遂に二章が完結しましたね。二章は地味ですからそこまで被害はないかと。ただおしおきに関してはほぼ初期から変わっておらず、さらに非常に残酷となってしまいました。ごめんよ。恨みはないんだ。あの子はとてもいい子です。ホント。
次回は魔の三章ですね。もし二章でメンタルぼろぼろにされた方いらっしゃいましたらすみませんが、三章はもっと残酷ですので。
それでは次回をお楽しみに
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