表裏ダンガンロンパ ~共通とすれ違いの物語~   作:炎天水海

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 どうも。こんにちは、こんばんは、おはようございます。2部屋目です。相変わらずハーメルンに投稿するのが遅いです← pixivのが圧倒的に早いのが現実()忘れないようにします。ごめんなさい。
 ところで三章なんですけど、筆の進み具合が一章二章と比べて全然違います。とても早いです。書きたかった章だからこうなるんですかね


第三章(非)日常編 謎呼び2部屋目

 

 注意 

 

 これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。 

 本編とは異なる設定が多々あります。 

 あと主の文才は期待しないでください。 

 

 それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。 

 

 補足 

 渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。 

 例:直樹→ 直樹(トン)

 他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。 

 なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。 

 

 

 *****

 

 11日目

 

 

 ピンポンパンポーン!!

 

 

 『おはようであーる!! 今日もォ、あ張り切っていくであーる!!』

 

 

 目覚ましアナウンス。私思うんだ。モノヤギは元々特徴的な話し方してる。うん、わかるよそれは。けど前から気になってるんだ……

 

 

 その「あ」はなに「あ」って。溜めた感じのその「あ」。お前は歌舞伎役者か。コスプレイヤーギの次はカブキヤギか。

 センス!? 知らん!!

 

 

 ***

 

 ヨガ適当にやって食堂へ。朝だけれどダグラスはいない。昨日の夜に朝までカジノにいると言っていたからきっと今頃部屋で寝ているんだろうな。朝早くからいたのは巡間だ。

 「おはよう巡間くん」

 「おはよう」

 コーヒーを淹れてきて席につく。

 「ふぅ……」

 「君はコーヒー派か?」

 「いやどっちでもないよ。仕事で遅くまで起きてるときはコーヒー飲むけどね。カフェインは紅茶のほうが多いけど」

 「やはりコーヒーだよな。わかる」

 「朝夜に飲むのはコーヒー、昼間は紅茶みたいなところない?」

 「わかる。非常にわかる」

 お互い職業柄のせいかわかりあえるところが多いなこれ。

 「そういえば、巡間くんって医者だよね。どこが専門なのかっていうのはあるの?」

 「私の専門か? んー専門というかなんというか……医者に必要な知識はほとんど持っているから」

 「すごっ」

 「ほとんどの言語を翻訳できる君が言うか?」

 おっしゃる通りです。それ言われたら元もこもない。

 「強いて言うなら小児科側だな」

 「え、意外。なんか内科とかしてそうな感じあるけど」

 「まあそうだろう。しかし子どもで難病になる人はかなり多い。先天性もそうだが環境によっても変わる。世界にはそういう子たちがたくさんいるんだ」

 旅行してるからよくわかるけど、治安の良し悪しはかなり極端だなって感じる。そういう意味では日本って恵まれてる気もする。

 「テロや紛争の多い今、怪我人も病人も死者も非常にたくさんいる。学校に行きたくても行けない子は数えきれないほどだ。たくさん悩み考え、自分の意見をしっかり持つ。…………むしろ向こう側の方が頭がいいのではと思うよ」

 グサッて来ました。

 「確かに……勉強嫌だから学校行きたくないっていってる人は多いけど、実際学校に行けるのは恵まれたことだもんね……」

 「争わないのが一番だが……人にはその人なりの正義があり思想がある。歴史的な背景からもそれはよくわかる。誰もが宮原くんみたいな平和主義者とは言えない」

 「物事なんでも、思うようにいかないしね」

 全くだと巡間はコーヒーを飲み干した。

 「過去は過去、今は今」

 呟いては近くにあったコーヒーをカップに(ちょっと溢れそうになってたけれど)淹れてそのまま一気にまた飲み干した。

 「ふう…………熱い」

 「それはそうでしょ!!? 熱々をよく一気飲みできるね!!?」

 なんか、猫舌じゃなさそうなのは伝わった。

 

 *****

 

 ちょっぴりおかしな朝を過ごした。さて、今日はどうしようかな。やっぱりⅢ棟巡りかな。まだ全然わからないし。行っとくか。

 一階ホールの鍵が置いてあるところの番号また挑戦しようかな。

 

 

 【ヒント】

 ・あなたの数字も大事

 ・被せ加えて順序よく

 ・同じ数字は次の桁とまとめて

 ・並び方を複数挙げよ

 

 

 ……あれ。ヒントちょっと変わってる? なんか最後のところ昨日と違うような。並び方を複数挙げる? その並び方ってなんだ。けどここで時間潰しすぎるのもよくないし。そろそろ別の階に移動しよう。

 

 *

 

 で、やってきたのが二階の控え室。なんでここかって? いやぁそれはもちろん服を見に来たかったんですよなんだこのテンション。いやいやいや、このテンションなのもしっかり理由あるんだ。それにしても……

 「また男装しろなんて言われたら髪切られそうだなぁ……」

 

 ガチャっ

 

 「…………」

 「…………」

 「今の話聞いてた?」

 「聞こえるわけないじゃありませんか。何言ってるんですか?」

 デスヨネー。でも正直心臓に悪かったよ金室。彼女は私にツッコミ……というか毒? を言ったあとにすぐ和服のところへ行った。そういえば金室は茶道部だっけ。

 「ねえ金室さん。君って和服とかは着るの?」

 「当たり前ですよ。……とはいえ、普段はそこまで着ません。部活動では使います。ですけどなんか窮屈なんですよね」

 「そうなんだ。あまり和服着ないからなぁ。最後に着たのいつだったかも覚えてないや……」

 「あらそうなんです? なら今着てみては? うち着付けできますから」

 「え、ホント? あ、じゃあお願いするよ」

 急遽和服の試着をすることに。薄紫の花柄の和服。

 「えっとこれをこうして……」

 「そうですそうです。はいしっかり押さえてじっとしていてくださいね」

 「ひゃっ!? ちょ、ちょっと!! く、くすぐったいってば!! ふっ、脇腹弱いんだってぇ!!」

 「我慢してください。これ大事なんですからっ!!」

 「ぐえっ!? こ、今度は苦し」

 「あ、すみません。わざとではないですから」

 「わかった、わかったからちょっとだけ緩めて……」

 なんかくすぐったかったり苦しかったりした。意外と大変なのねこれ……でなんやかんやで

 「はい。こんな感じです」

 「おおおお。久しぶりだこの感じ!! ありがとう金室さん」

 「どういたしまして」

 なんか新鮮。…………たまには、着てもいいかな。

 「あとは髪の毛をどうにかすればいいんでしょうけど、今はやめておきますね」

 「わかった」

 「……和服は見ていても日本を思わせます。そうそう、その関連で少し。着物ってかなり昔からあるにはあるんですが縄文とか弥生の時代は実態不明らしいんですよ。弥生は『魏志倭人伝』によって推測されているだけなんです」

 「推測なの?」

 「ええ。なのではっきりしたのは古墳時代からかと。ちなみにその古墳時代当時の服装を知る貴重な資料があるんですけどなんだと思います?」

 さらりと問題振ってきたな。え、でもそんな資料あったっけ。

 「わからないや」

 「埴輪ですよ。埴輪」

 「はにーわ!?!?」

 「はい。豪族たちの墳墓から発掘されたものです」

 埴輪マジかよ。変な言い方になったわ。

 「まあいろいろ見ても、少なからず中国はとても関連深いですね。ちなみに明治以降、洋服が出回ったこともありそれと区別するために『和服』と呼ぶようになったそうです」

 「あ、だからさっき着物から切り出したんだ」

 着物って結構すごいんだな。

 「ちなみに今直樹さんが着ている和服だと茶道界隈では少し不適切です」

 「派手すぎないやつ?」

 「ですね。無地のほうが着るのには便利です。季節感のある花が入ったやつとかあればそれはそれで良いかも知れません」

 このあと、和服系についていろいろ話してた。結構面白い。

 

 

 ***

 

 和服の話聞いてたらなんということでしょう。お昼になっていたではありませんか。時間早い。昼食食べた。特になにもなし!! はい。で、外で日向ぼっこしたくなった。だから外に出て適当にごろーんと寝転んだ。

 日が温かい。このまま寝てしまおうか。そう思った。

 「なにしてるのよ?」

 「あ、湊川さん。ただの日向ぼっこだよ。寝る?」

 「寝はしないわ。けど少しくらい寝転がるのもいいわね。隣いいかしら?」

 「もちろん」

 湊川はそのまま私の隣に寝転んだ。

 「空はいいけど、海もみたいわ……」

 「そういえば湊川さんっていつもどこで仕事してるの?」

 「私はお父さんとお母さんが経営してるから、それの手伝いをしているわね。あと叔父さんも」

 「あ、家族経営なんだね」

 「そうよ。とはいっても、お父さん漁師なんだけどね。親と叔父さんが希望ヶ峰の卒業生なの」

 超高校級家族じゃん。

 「お母さん超高校級の経済学者だったのよ。それで貿易商を営んでいるの。肩書き持ってただけあってそれはもうずっと黒字だわ」

 「ってことはもしかしてお金持ち?」

 「そういうわけでもないわよ。確かにお金はあるけれど、基本的にそういうのは港に寄付してるのよ」

 「港に?」

 「船で商品が来るのよ。その船を直すのとか買うのとか大変で、私たちも大事にしてるからなら稼ぎに稼いだやつを寄付すればいいんじゃないかなってね」

 ああなるほど。

 「それに貿易商として懇意にしてるその港は赤字。お父さんは別の赤字のところで漁をしながらこっち手伝ってるから」

 「いろいろ事情があるんだね」

 「まあね。それでも私はこの仕事好きなのよね」

 私も翻訳は大変だけど好きだからなぁ。

 「ちなみに叔父さんも希望ヶ峰なんだよね?」

 「元超高校級の心理士よ。心理学もなんだかんだ重宝するのよね」

 「ああ確かに」

 「交渉するときとかも叔父さんと一緒にやってたわ。思えば叔父さんがいたから私の才能開花したのかもしれないわね」

 いろいろすごい家だ。

 

 ***

 

 湊川と話終えた。明るく振る舞っているように見えて、どこか寂しげな表情だったのは気のせいなのかな……言ったほうがよかったのかどうか

 で、日向ぼっこをやめにして、私はさっき控え室にしかいかなかったⅢ棟にもう一度寄ることにした。

 「ぶえっくしょんっ!!!!」

 「うえあ!? びっくりしたぁ!? 灰垣くん!?」

 入った瞬間響いたくしゃみに驚いた。

 「んお、直樹じゃないか。すまん、びっくりさせてしまったか」

 「いや、ノーモーションでいきなりくしゃみされたらさすがにびっくりするから」

 心臓止まるかと思ったわ。

 「でもなんでそんなくしゃみなんか」

 「寒いからじゃよ。ここⅢ棟はⅠ、Ⅱ棟と比べて寒い。冷房らしきものも見当たらんし何が理由でそうなのかさっぱりわからん」

 言われてみれば確かに、ここは随分冷えている。どこの部屋にも冷房とかはなかった。カジノに小さな換気扇がある程度だったはず。けれど換気扇でもここまで冷えるようなことはない。

 「寒いの苦手なの?」

 「苦手も苦手じゃよ。季節も冬は嫌いなんじゃい。なんでマイナス5度で平気な顔して『あ、今日暖かい!!』なんて言えるんじゃ!? わしにはわからん!!」

 「それ、『30度でまだ涼しい!!』って言ってる意味がわからないって言ってるのと同じだからね?」

 「暑さには慣れとるんじゃがな。動くし」

 「一応バレー部だもんね」

 「一応ってなんじゃ一応って」

 だってバレー部なはずが僧侶みたいな発言ばっかりで才能迷子してるんだもん。

 「運動っていうのは自分のストレスを発散させるのにも健康維持するのにもいいんじゃ。だからといってむやみやたらと行うものでもない。自分のできる範囲の力で適度に動くことは大切なんじゃ」

 「ヨガとかもそうだよね」

 「ヨガ!? そっち!? いや体にはいいと思うぞ!? いやしかし直樹がその趣味があるとは意外じゃ……」

 うん、まあ、今まで誰にも言ってなかったから。蛇足程度だけど、私は毎朝ヨガやってます。

 「趣味というかマイブーム? 最近はまってて」

 「……続けたらいいことあるぞ絶対」

 半分呆れた様子で言われているんですけど。

 

 *****

 

 なんやかんや。そろそろ夕食。食堂で適当に食事をしている。

 「そういえばなんですけど」

 金室が口を開いた。

 「皆さん、うちの電子生徒手帳知りませんか?」

 「金室(イッパツ)何なくしたの?」

 「なくした……まあそうなりますね……ですが今朝ポケットに入れたっきりどこかに出した覚えもないんですよ」

 電子生徒手帳が行方不明、か……私も前にやらかしてるからなぁ。

 「寝転がったとかは?」

 「いいえ。していません。座りはしましたけれど。少なくともお昼の時点では所持してました」

 「いつからないって気づいたんじゃ?」

 「ついさっきですよ。ここに来るちょっと前のことです。なにか……軽さを感じたのでまさかと思ってみたら」

 嘘だろ。

 「これでは時間とか校則とかの確認もできませんよ」

 「ならわたくしが今の時刻を………………おや?」

 「どうしたの?」

 「…………なぜでしょうか。ここに来たときにはしっかり所持していたはず……」

 近衛も手帳がない様子。

 「まさか……っ!!? ない!! 私のもないわ!!?」

 「なに!?」

 湊川もないといい、さすがにこれはおかしいとみんなで自分の生徒手帳を確認する。しかし誰も持っていなかった。否、私も同じだ

 「なんでんなことになんだよ……」

 一斉に何かをなくすのは異常過ぎると橘は苛立つ。

 「異常も異常。僕らは普通に過ごしていただけ。そうだろ?」

 確かに特に変わったことはしてない。普通にみんなと会話したりして探索とかしてただけ。特に変わったことはしていないはずなんだ。

 「……電子生徒手帳は一体どこにあるんだろう」

 「あれその前に一人足りな……」

 

 

 

 

 ブツン…………

 

 

 

 

 「んな!?」

 「電気が!!」

 「!?!?」

 「ちょっと!?」

 「停電か!?」

 突如、私たちを暗闇の中へと放り出された。混乱して周りがわからなくなってしまう。ガタガタという物音、バサリと服の靡く音、足音。不安を煽る。

 しばらくしてパッと明かりが戻った。特に変わった様子はなかった。なんだ今の。

 「電気の使いすぎか?」

 「いえ、すでに必要のない電気は落としておりました」

 停電の理由がわからない。

 

 

 フワッ……

 

 

 「……? なによ、これ?」

 何かが天井からふわりと落ちてきた。大量に。これって……

 「鳥の羽……かい?」

 「っ!! 見覚えがある。昨日これを見たよ!?」

 「直樹くんどういうことだ!?」

 「昨日、噴水のところで……ペストマスクの人がばらまいていったやつ……」 

 「!! 今朝見た!! これと同じ、ピンクっぽいような白っぽいような感じのやつさ」

 「私も見たよ……」

 「目障りだから全部回収したっつの……なんでまたんな目に遭わなきゃなんねぇんだよ」

 ダグラスと渡良部と橘は見た様子。橘が回収したからか他の人は見ていなかったらしい。

 「ってこいつ、俺が回収したやつと同じじゃねぇか!? おいっ!!?」

 「よくわかるねそこ!?」

 「大事にする必要ねぇだろ。だから普段使わねぇⅡ棟の自分の個室に入れたんだよ。Ⅱ棟の個室はその人の電子生徒手帳がない限りそこには入れねぇから」

 何気に入ったの一回だけだから詳しくなかったわ。そんな感じだったのか。

 『それを可能に出来たんだ』

 「可能に出来たって……一体どうやって……」

 !!!!?!?!?

 「ど、どこから声が!!?」

 「誰もおらんぞ!!」

 不意に私たちの会話へと混ざる声。どこか聞き覚えがあるはずなのに、声色が違うせいかわからない。

 「おい!! 隠れてないで出てこい!!」

 国門の声でみんなは静かになり、しばらく食堂に静寂が訪れる。

 「……聞き間違いとかはないよね」

 「まさか」

 

 

 『全く近くにいるというのに気付かないとは随分盲目なもんだな?』

 

 

 「は?」

 全員が一斉にその声のした方へと向いた。そしてあのマントにペストマスクの人が私たちの前に現れた。

 「だっ誰っこいつ!?」

 『フックックック……』

 不気味に笑うそいつの口元はやっぱり嘴部分でうまく見えない。帽子を左手で深々と被る。ちらりと羽が見えた気がした。

 「やつが誰かなんてわかりきってるだろうが」

 橘がそいつの方へと歩を進める。

 「今ここにいねぇ、誰にも明かそうとしない『それ』、信じたのは己の勘。何もわからねぇやつが遂に自分から姿を現すたぁな?」

 今ここにいない人……っまさか!!

 「そうだろが、『盗賊』野郎っ!!!!」

 『……フフフっ』

 盗賊野郎というセリフにみんながお互いを確認する。盗賊なんて人はいない。ただし、一人だけその可能性がある人物。

 『ご名答』

 帽子とマスクを外してそれらを床に落とした。そしてその顔をしっかりと認識した。それが

 

 

 「玉、柏……くん……?」

 「そう。俺がこのペストマスクの正体だ」

 玉柏……

 「待て。君は橘くんの言う盗賊なのか? ということは才能は……」

 「落ち着け。ちゃんと説明してやる」

 なんだこの大人な余裕に振り回されている気分は。玉柏は落とした帽子を拾って丁寧に挨拶をした。

 「改めて、俺は『超高校級の盗賊』玉柏朱鷺だ」

 

 

 “超高校級の盗賊” 玉柏 朱鷺(たまがし とき)

 

 

 「盗賊じゃと?」

 「ああ。俺は今までたくさんの物を盗んできた。その証拠にお前ら、ポケットの中確認してみろよ。なくしたはずのものがあるはずだ」

 そういわれてみんなで一斉に確認し始める。するとポケットにはなくなったはずの電子生徒手帳がしっかりと入っていた。

 「電子生徒手帳!!? さっきまでなかったのに」

 「お前らが停電最中に慌ててたろ。そのときに返させてもらった」

 「ちょ、ちょっと待って!!? 校則には電子生徒手帳の貸し借りは禁止って……」

 「あくまでも『貸し借り』。俺はお前らから借りたんじゃなく『盗んだ』、『奪った』となる。それにお前らは貸してない。貸し借りじゃない。俺は盗んだものを使って橘のⅡ棟の部屋に侵入し羽を取り戻しここにいる。それだけだ」

 校則を逆手にとったうまい作戦だ。確かにそれなら校則に引っ掛かることはない。ただひとり黙ってはいなさそうな人がいるけれど

 「窃盗の現行犯で逮捕されるだろ。僕が弁護士のほうでよかったな」

 「警察にあれこれ言われるよりもマシだな、と言いたいがお前もお前で口うるさいからどっこいどっこいだな」

 あれ。そういえば……

 「玉柏くん、その左の包帯は……」

 「あ? ああやっと外せたんだよ。今まで外せなくてもどかしくてな」

 「でもその……」

 玉柏の左手には黒い羽の模様があった。タトゥー

 「タトゥーシールのことな。取り外し可能だし不便してない。てかタトゥーするほどの金ないな」

 「タトゥーシールかよ!!」

 二十歳とはいえ高校生。本当にタトゥー入れてたらビビるわ。シールだったけれども。

 「けど、なんで盗賊になんか」

 「っ…………」

 その質問された瞬間玉柏はそっぽを向いて黙った。それと同時にとても傷付いた表情をした。触れてはいけない内容なのか……

 「俺は……そう生きるほかなかった。三人で………………………………それだけだ。………………それだけ……」

 「…………」

 このとき、誰ひとりとして触れなかった。聞かずともわかった。彼には仲間がいると。私はその二人を本人から少しだけ、聞いたことあるし。

 「詳しくはなかったが、ちょっと気になるなら医務室に行くといい。断片だけはある。それじゃ」

 彼は足早にその場から去ろうとした。

 

 

 

 ガタッ……

 

 「グッ……!?」

 突然玉柏は倒れた。いや膝まずいたのほうが正しい。

 「玉柏くんっ!!?」

 

 どさっ……

 

 「あ、ああ、あああ゛?」

 「なに、なにが……えっ?」

 

 どさどさどさッッ

 

 「えっ、どうなっ……て?」

 

 あれっなにこれ……?

 

 背中がゾクゾクする

 

 ぞわぞわする

 

 足が震える

 

 立ってられない

 

 がたっ……

 

 おかしい

 

 寒い

 

 寒い

 

 怖い

 

 まるで殺気

 

 ひどく凍るような殺気

 

 知らない

 

 こんなの知らない

 

 しら、ない……?

 

 あれ

 

 おかしい

 

 おかしい

 

 いやだ

 

 怖い

 

 こわい

 

 こわい

 

 

 

 

 ズキンッ……

 

 

 

 ______

 

 

 突如襲う殺気と悪寒。いつの間にかほぼ全員がその場で腰を抜かしたり倒れたりしていた。

 「な、何よ……これっ……」

 「体が……動かない……」

 「魔法でも、あるまいてっ……なんの、これ、しきぃ……!!」

 灰垣は無理やり自身の体をテーブルや椅子を使って起こした。汗はだらだらで、息も荒い。

 「ここで膝まずいてられるかっ!!」

 「そうだね……!!」

 続いて国門と矢崎、さらに無言ではあるが橘も立ち上がった。

 しばらくすると、殺気も悪寒も消えた。ただ冷えた背筋は妙に残り逆に不気味にすら思えた。

 「さっきよりも、動けるわ……何だったのよ、一体……」

 「わかりません……」

 「…………誰かの気配がしたわけでもない。それなのにおかしいだろ……」

 謎で仕方がない。恐ろしく、夜であることがさらにそう思わせた。

 

 だがまだ終わらないことを知らない。

 

 ……叫び声が聞こえるまでは

 

 

 

 「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 直樹の叫び声が聞こえると同時に、彼女は暴れだした。頭を抱えふらふらになりながら叫び散らしながら。

 

 

 _____

 

 痛い

 

 痛い

 

 こわい

 

 こわい

 

 助けて

 

 ……は触らないで……!!

 

 忌々しい手で……やめてっ!!

 

 _____

 

 

 

 「直樹さんっ!!」

 「直樹っ!!」

 みんなが直樹に近づこうとする。だが

 「触るなぁっっ!!!!」

 直樹はそれを拒む。普段のあいつならそんなことはしない。けど今の殺気で狂ったか……っ。

 「やめてっ……やめてっ……っ!!」

 くそっ、面倒なことになりやがって。だが渡良部とかダグラスとか、そいつら全員に任せられるようなことじゃない。

 「落ち着け直樹っ!!」

 「いやっ!!!!」

 「っ!!」

 伸ばした手をバシンと振り払われた。結構痛いなこいつは。

 「やだっ、やだやだやだっ……思い出したくないっ!! いやっ!!!!」

 …………あの手紙の中身本当だったのかよっ!! くそっ、ダメだどうすればいい。こいつを止められなきゃ直樹を含めて全員が危険だ。

 「直樹殿っ!!」

 かといって下手に女に攻撃して傷を付けるだなんてこともしたくない。(俺が__に怒られるのもあるが。)直樹を止められる術はあるのか!? あいつの○には触れない。触ったらさらにこいつは混乱する。彼氏がどんなことして直樹を落ち着かせてきたかなんて知らない。知ってたとしてもそれを俺を思い出せない。誰よりも記憶がないからなおさら。なにかないのかっ……!!

 「あいつの顔をふさげぇえええ!!!!」

 「!?」

 顔をふさげだ!? なにいってるんだよ橘は!!

 「っ玉柏くん!! いいから早くしてっ!! 直樹さんを止めて!!」

 言われてもどうやって塞ぐんだよバカたれ!! 手で覆うのはまず不可能だし、……って残る選択肢が…………ああ、できる。できるじゃないか。

 「こわいっこわいこわいこわいっ!! いや、いやだっ!!」

 俺は未だに囚われた直樹の前へ行く。

 「直樹っ!!」

 「っっ!!!!」

 怯えた表情でまた俺の伸ばした手を振り払おうとする。けどな直樹。二度も同じそれにはまらない。振り払おうとした手を掴み

 「いやだっ、はな、せ!!」

 「いい加減落ち着けっ!!!!!!」

 俺はマントを素早く引き抜いて直樹を包むように、且つ、こいつの背中にマントがかからないようにする。

 「っっ!!!!」

 こいつが態勢を崩したところを引き寄せるように、俺に全体重がかかるように、俺は後ろに倒れた。

 「はなせっ……はなっせぇええ!!!!」

 「抵抗すんな!! 誰もお前を一人にしない。させてたまるか!! お前が生きてなきゃ俺たちの約束はどうなる!!? 互いに愛すべき人間いんだろが!! 会わなきゃいけない人いんだろが!! 生きてここからみんなで出るんだろ!? それまで守ってやる言ったはずだろっ!!!! 忘れるんじゃない!!」

 「あっ…………ああっ……!!」

 「そうだろ? 相棒(・・)…………」

 全て、事実。俺はそのまま背中を優しく叩く。ぽんぽんと。

 「信頼しろ。背中は、まかせろ」

 「…………」

 抵抗する力が徐々に失せる。小動物のように直樹はうずくまった。肩の力が抜けるのがよくわかった。

 「ふう……落ち着いたか?」

 「……はい……ごめん」

 「俺だけに謝んな。みんなにも言いな」

 ゆるゆると立ち上がりみんなのほうを向いて頭を下げた。

 「みんな……ごめん。また迷惑かけて」

 「あたいは君が大丈夫な様子で良かったから」

 「わしもお前さんにら前も何もしてやれんかったからの。お互い様じゃよ」

 みんなが直樹を許していく。俺は脱力したままその場に倒れた。はあ疲れた。

 

 あのやり方で良かったのか? 正直こいつの彼氏すごいなとしか思えない。よくこの状態を止められるな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところで直樹(トン)玉柏(ツモ)にすごーーーーーーーーく聞きたいことあるんだけど……」

 「え、なに?」

 「なんだよ」

 渡良部がすごい顔でこちらに向かってきた。

 「なにじゃないでしょ!!? 何よあんたたち!! ホントにどういう関係なの!!? すごい見せ付けられてる感半端なかったんだけど!?」

 「それはもちろん」

 「相棒だけど」

 「相棒の距離感独特過ぎない!?!?」

 いやそれはどこの相棒も独特な距離感じゃないか? というか起き上がろっと。

 「抱き締めるとかなんなの!? ていうか玉柏(ツモ)玉柏(ツモ)で彼女いたの!? え!? なに!? 二人して浮気とかそんな感じじゃないよね!?!?」

 「いやこいつはただの相棒だ」

 「お互い約束があるからそれを果たすまでは背中預けてるんだよね」

 「とても信頼してるな」

 そりゃ、こいつはとても信頼できるからな。

 「でも本当はどう思ってるの? 相手のこと」

 「好きみたいな感情とかないのか?」

 「「いや好きとかなったことないし、こいつとは付き合えないよ/な」」

 「君たちさらりと互いをディスったな?」

 「え、だってね?」

 「な?」

 「何その当たり前みたいな顔」

 当たり前に決まってるだろ。

 「わたくしどもは直樹殿にお相手がすでにいらっしゃることに驚いております」

 「え、玉柏くん伝えてなかったの?」

 「あとから気づいたんだけどな? 左手に包帯してて今日まで外せなかったから、伝えようにも伝えられなかったんだよ」

 「これ夫婦漫才かよ!!」

 「違うって!!」

 ……ふふっ。全くどいつもこいつも、飽きない連中ばかりだな。

 「あ、ところで玉柏くん?」

 「なん、だっ!?」

 「昨日一服してくるってどういう意味だったのかなぁ~???」

 「ぐお!? し、絞まる絞まる!!」

 笑顔で胸ぐら掴むのやめてくれマジで絞まってる!!

 「早く言いなさい」

 「さ、裁判終わりのっ、噴水に乗ってる時、だ!!」

 「禁煙しなさいって言ってんでしょうが!!」

 「ぐおはっ!?!?」

 ちょ、待て、こいつの膝蹴り尋常じゃないくらい痛い。腹にもろに食らった。

 「やっぱ夫婦漫才じゃん」

 「だから違うって」

 なんでもかんでも夫婦漫才にしないでくれ……

 「……俺はもう戻る。頭がいてぇんだよこっちは」

 ああ、すっかり騒いでしまった。今が夜であることも忘れていた。橘が出ていったのを皮切りに、みんなも出ていくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 「玉柏くん」

 「なんだ?」

 「……ありがとう」

 「はっ、なにかと思えば」

 「違う。そうじゃなくて……」

 「?」

 「触らないでくれて、ありがとう」

 「…………お前は繊細みたいだしな」

 「私は壊れ物か」

 「俺は少なくともそう思ってる」

 「おい」

 「けど、さらに混乱させるわけにはいかなかった。だからああした。ああするしかなかったんだ。多少強引ではあったけどな」

 「んーん。いいよ、あれで。本当なら胸に顔を埋めればいいんだけど。さすがに記憶取り戻した今じゃ二度もできない」

 「だろうな。俺も相手に怒られる」

 「……もう寝ようか」

 「ああ。だな。おやすみ」

 「おやすみなさい」

 

 ***

 

 

 あの忌まわしい記憶は

 

 

 二度と思い出したくない

 

 

 だから私は

 

 

 まだ、奥に仕舞い込む

 

 

 自分を抑えられる気がしないから

 

 

 ***

 

 ______

 

 

 

 カランっ…………

 

 

 運命は『50』か

 

 

 ______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         →To be continue……

 

 

 

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