表裏ダンガンロンパ ~共通とすれ違いの物語~   作:炎天水海

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 だいぶ遅れましたけどpixivのほうでは現在裁判前半まで出せてます。はい、ハーメルンはよく忘れる(言い訳すな)とりあえず私は生きてます



 石でいもりを4部屋目。標的は誰だ



第四章(非)日常編 石でいもりを4部屋目

 

 

 注意 

 

 これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。 

 本編とは異なる設定が多々あります。 

 あと主の文才は期待しないでください。 

 突然視点が変わることがあります。

 

 それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。 

 

 補足 

 渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。 

 例:直樹→ 直樹(トン)

 他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。 

 なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 わかってる

 

 

 守らなきゃならない

 

 

 主人を失った自分が

 

 

 今どれだけの罪を重ねているか

 

 

 情けない

 

 

 こんなことでいいはずがない

 

 

 早く主人を

 

 

 主人を取り戻さないと

 

 

 でなければ本当に自分は

 

 

 壊されてしまうのだから

 

 

 **********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 18日目

 

 

 アナウンスと一緒に目が覚めたら目の前に直樹がいた。えっ、もしかしてそのまま寝てた? 声を出そうとするとかすっかす。泣いたせいで水分が足りてない。

 …………未だに近衛の言葉を受け入れられてない自分がいる。本当はわかっていた。彼の気持ち。だって……………………だから。でも好きでしてるわけじゃない。だからたまに素が出る。向こうも同じ。

 淡い期待を持ちながら接していたらいつの間にか自分に迷いが生まれていた。本気になっていいのかを。

 あんなことになるなら……今になってそう思う後悔。でももしあのとき渡したのがこれじゃないとすれば……少しでも、期待を持っていいのかななんて。信じていていいのかなんて。

 別れたくない。離れたくない。一緒に居たい。わがままだけど、私は本当の普通を知らない。世間の普通のほとんどを知らない。

 でもそれより恐ろしいことは、近衛の本心を何も知らずすべてが終わること。聞くこと自体彼を抉る可能性は大いにある。でもさ……わかってるでしょ? 私の諦めは悪いって。

 ふと直樹のことを見てみると、どこか幸せそうな顔しながら寝ている。あんたって頑固だけどそういうところは子どもみたい。

 

 

 

 

 

 ねえ、あんたは知ってるかな

 

 ○○○○の●●●を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 

 ガバッ!!

 

 

 「わっびっくりした!?」

 「あれ、渡良部さん……!?」

 何か聞こえた気がして飛び起きたら渡良部に驚かれた。

 「……寝落ち?」

 「寝落ちだけど」

 私最近大丈夫かな大丈夫じゃないよねこれ。

 「突然起きるからびっくりしたじゃん……」

 それはごめん。…………顔色、まだちょっとだけ悪いな……

 「…………今日、近衛(このえ)来る……かな」

 「……わからない」

 無責任に来るなんて言えやしない。

 「だよね…………会ってみようかな……」

 「え?」

 まさか自分から?

 「多分、彼からすれば今一人なのって一番いけないことだと思う。それに……もう自分のこと伝えられないって考えると怖いから……どんな反応でもいいから……」

 震え混じりの台詞には恐れがあった気がした。

 「一度食堂行ってみよっか。いるかどうかはわからないけど」

 「…………うん」

 私たちはそれぞれ準備をして食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

ドーンッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 パラパラパラパラ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 アンタは知ってる

 

 

 表の世界と裏の世界を

 

 

 アンタはその裏を見てきた人だろ

 

 

 けど、裏の人も必ず表を見る

 

 

 いつかって?

 

 

 ………………大きな花が咲いたとき

 

 

 間違われて嫌気が差すより

 

 

 蔑まれて生きていくより

 

 

 何よりも惹き付けるのはそんなもの

 

 

 いつの間にか惹き付けてくれるもの

 

 

 一瞬でも心が少し晴れる気がするもの

 

 

 きっとわかるだろよ

 

 

 そんな人が現れるから

 

 

 俺はその道標でいい

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 あれ、なんで?

 

 

 今……なんか

 

 

 チクって頭の端が痛んだ気が…………

 

 

 気のせい?

 

 

 ……にしてもリアルすぎ

 

 

 私は何を忘れてるの……?

 

 

 眩しく夜に光る

 

 

 大きな大きな花に映ったのは

 

 

 確か………………近衛の好きな…………

 

 

 **********

 

 [newpage]

 

 食堂へ行ってみると灰垣がそこにいた。

 「おはよう。……なんだか少し前に似たようなことがあったな」

 「おはようっていや既視感はあったけども」

 ほぼ状況同じだよ。灰垣が椅子に座ってるか座ってないかの差しかないよ。

 「……ねえ、厨房に誰かいる?」

 「いるぞ…………もっとも、近衛ではなく金室じゃがな」

 そう……と渡良部は肩を落とす。なんとなく予想はしていたけど来てないのか。

 「昨日の今日ですぐに立ち直るのは難しい。じゃが、あやつの心の問題でもある。裏切り者とはいえ……甘い考えなどしてられんのも事実なんじゃ」

 「…………知ってるよそんなの」

 八つ当たりするように呟いて席についた。暗い表情が戻らない。

 「お前さんがどれだけ思っても無駄じゃ。ただ信じろ。信じてやれ」

 「そりゃ……ね」

 少ししんみりとした空気が漂う。それがあの臭いで消される。同時に厨房から金室が顔を出した。

 「皆さんおはようございます」

 おはようと挨拶したら、彼女は周りを見る。

 「まだ全員来ていないんですね。矢崎さんがいれば相談したいことあったんですけど」

 「呼んだかい?」

 噂をすれば矢崎がやってきた。他にもまだ来てない面子もぞろぞろと。挨拶を済ませ席につく。ただやっぱり近衛は部屋に籠っているんだろう。

 「金室ちゃんなーにかあったかい?」

 「ええ、今近衛くんがあの状態ではうちらで食事を作るのを回したほうがいいかなと思ったんです」

 「それもそうだね。ならお昼あたいがやるよ」

 「では夜はうちが。明日は逆にしていきましょう」

 どうやら食事担当の話みたいだ。確かにそのこと考えてなかった。

 「……ダメだなぁ……簡単に割りきれない……」

 「そう簡単に割り切れるものでもないですよ。特に今回は……」

 信頼の厚さゆえ、彼が裏切り者であることに未だ納得がいかない。

 

 

 __________________

 

 僕と同じ立場にさらされてたらどうなってた!? 僕みたいに、告発されていたらどうなっていた!?

 __________________

 

 

 …………確かにどうなっていたんだろう。

 なんだかもやもやした気分で朝食は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 晴れない心の中、外でぶらぶら散歩をする。するとザアアアアアアッとⅣ棟から音が聞こえた。もしかして今日はプールの清掃の日かな。定期的にやるとは言っていたし不思議じゃないか。ある一本の木に私は寄りかかった。

 ……近衛とは話せそうにないよね。出来れば話くらい聞きたかったけどあの突き放されかたされたら……

 「どうした」

 「!!」

 どこからか玉柏の声が聞こえてきた。辺りをキョロキョロしても見当たらない。

 「そのまま話をしたい。こちらを向かなくていい。ただ木に寄りかかりな」

 直感的に玉柏は木越しにいるとわかった。返事をしたら、また向こうから話した。

 「近衛のことどう思ってる」

 「それは……あまりよくない状態だと思ってるよ……渡良部さんも言ってた」

 「果たしてそいつがあってるか否かだな。…………悪いが、俺は逆だとも考えている」

 「逆……?」

 「もしこちらに立つ気でいながら突き放した場合、近衛はモノヤギからいろんな情報を手に入れるんだろうとな。脅されていようと、情報があるのとないのでは天地の差。意地でも持ったままだろうな」

 「そんなことできるのかな……」

 正直モノヤギが口を割るとは思えない。モノリュウの存在すら今危ういのに。

 「あいつは自分と向き合えてない。向き合えられない。苦しめている鎖がガチガチな限りな。近衛が自ら変わる努力をしないと……結局どうにもならない」

 「……ねえ君はどこまでわかってるの。ここについて」

 「そんなのわかっちゃないな。ここがどこかなんて」

 知ってそうではあるけどやっぱり知らないんだ。

 「俺からも聞いていいか」

 「どうぞ」

 「…………お前の感じた殺気、何か違いとかあったか」

 「っ……」

 殺気、そんなのどれも恐ろしいもので怖い。寒気がしてくるもの。あ、でも

 「……玉柏くんが才能を明かしたあの日みんな倒れたでしょ? あれのときも怖かったんだけど……なんか、怒ってるみたいだった」

 「怒ってる?」

 拍子抜けみたいな間抜けな声が聞こえた。

 「そう。誰かに対してとても怒ってて、けど……どこか悲しそうだった気がする。けど前のあれは違う。完全に殺気で溢れてた」

 「ずいぶんと差があるのか。……殺気で溢れていながら殺されなかったのは幸いというべきなのか考えるだけで阿呆だな…………」

 「まあね……」

 無事とはいえ全くその通り。

 「………………盗賊ってのはな、いろんなものを盗むもんだがな。…………ああいうものは盗みたくても盗めないものなんだよ。不を除き良を生む……簡単にできるもんじゃない。その人の心一つで変わるもんだからな……」

 「…………」

 「生きるための才能……俺にはこの才能なしではいられない。けど……どうも引っ掛かる。橘の言葉が」

 

 『才能に違和感がある』

 

 レコーダーに遺されていたあの台詞。仮にそれが本当だとしても、玉柏が盗賊でないのならば本当はどんな才能なんだろう。

 「例え才能があったとしてもなかったとしても、俺は模倣者ではない。そんなの盗みたくない。もしも別の才能と呼ばれても、俺はまだ賊でありたい。生きる目的も何も、まだ決めきれてない。ガンだって……あいつだって……まだ面倒見切れてないんだからな……」

 

 

        “賊でありたい”

 

 

 彼の本音なんだろう。けど賊である限り玉柏は世間に追われる。生きるための手段なのはわかるけど、それを肯定することは100%できるものではない。かといって私が否定するのもおかしい話だ。

 「自分の生き方にある程度の目処がついたところで俺は賊から外れる。いつになるかは全くわからないけどな」

 漂う煙草の煙が煽ってくる。どこか依存的なもの感じて、煙に慣れた自分もいる。

 「時間が掛かってでもやらなきゃならない」

 それは今まで賊として生きてきた意地なんだと察するのは簡単だった。

 「とかなんとか抜かしてるけどな、俺は俺で二人にしごかれてるんだよなぁ」

 と思った矢先にすごい爆弾。

 「しごかれてるの?」

 「そりゃな…………俺はマントとかマスクとかで誤魔化して入るけどな。演じるのはあんまり得意じゃなくてな」

 意外。てっきりそういうの得意そうなんだけど。

 「演じようとすると表情筋が死ぬんだよ。悪役に見えるってな」

 「いや悪役でしょ」

 「そうきっぱり言わなくてもいいだろ」

 なんか拗ねてる。思わず小さく吹いた。

 「だからよく言われる。笑うのが下手ってな」

 「最近結構表情豊かじゃない?」

 思えば最近になって表情柔らかい気がする。

 「昔はよく怖いって言われてたんだよ」

 「うんごめんそれはわかる」

 「ひどっ!?」

 少しは否定してくれとまた拗ねられた。

 「んっ、ンーー!!!!」

 「伸びてる?」

 「伸びてるッ……ふう……」

 ガサッと音がしてなんだろうと思わず振り向いたら……寝る態勢に入ってた。

 「またかよ」

 「いいだろ別に。それに最近昼寝してないんだよ」

 私も最近まともに昼寝した記憶ないや。おとといのは仮眠だし。

 「晴れた日にこうやって寝るとな、落ち着けるんだよ。んじゃ、昼まで寝てる」

 そういって即寝た。はやいわ。これ私起こすべきかどうかを悩むんだけど…………いっか。

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 まだお昼には早すぎる。少し放送室で音楽でも聞こう。

 

 

 ガサガサガサッ……

 

 

 「っ!! だれっ!!」

 何かがさがさ音が聞こえる。神経を尖らせて音がした方向に行く。そこには……思わぬやつがいた。

 「なっ……なんだ直樹であーるかァ……びっくりさせるなであーる」

 モノヤギだった。

 「びっくりさせるなって……それこっちのセリフだよ!! なんでお前がここに!!」

 「そうカリカリしないで欲しいであーる。ワレにだってェやることの一つや二つあるであーる。どうせェ、監視カメラの内容はワレにはわかっているであーるからなァ」

 私のことなんて見向きもせず、モノヤギはひたすら放送室にあった資料を漁っていた。

 「…………? どうしたであーる。オマエはやることがあって来たのではないんであーるかァ?」

 「いやっ、そうだけど落ち着かないでしょ」

 「まあそこは許して欲しいであーる。これでも考えているんであーる」

 そういいながらモノヤギはCDをプレイヤーに入れて音楽をかけた。ピアノのメドレーみたいだ。

 「…………何調べてるの」

 もういっそのこと当たって砕けてやる。モノヤギの企み。

 「……オシオキの内容を考えていた……とでも言えばいいであーるかァ?」

 「っ!!」

 「冗談であーる。もうそれは終わっているであーる。ワレの目的は………………」

 冗談キツイと思ったら今度は黙った。

 「『オマエラの思考を止めないこと』。それだけであーる」

 「は?」

 思考を止めないこと? なんだそれは。

 「忠実であればあるほど、悪いことをしたはずなのにそれを悪くないと認識させられるゥ……オマエはァその自覚があるであーるかァ?」

 「いやよくわからないんだけど……」

 「仕方ないであーるかァ。突然言われてもわからないものでもあーるしなァ?」

 結局なんなんだ。

 「…………昔、完全悪として公開裁判に架けられた人がいるであーる。それをォ見に行った人がいるゥ。そいつが見た光景はァ、完全悪と謳われた人が普通の一般市民と変わらぬ姿であったァ……」

 その話どこかで聞いたことがある。

 「同胞を失ってまで、自分が見たものを伝えた女性の話。知ってるよ」

 「なら早いであーるなァ。…………自分で考えることを忘れるなよ。自分で出した決断に他人の押し付けで簡単にペケをつけるなよ。オマエには、オマエラにはまだワレラに逆らえる。その気持ち、忘れるなよ」

 「えっ。ま、待って!? モノヤギそれどういう意味!!?」

 「…………『アイツ』はワレラに逆らう力を得たァ。この世界で、この空間で。証明されたからなァ。凡庸で、陳腐な悪党ゥ……ワレはまだそれでいいんであーる」

 ではではァッ!! とモノヤギはその場からそそくさと立ち去った。なんだあの意味ありげな発言は……

 ピアノの音は何もかも不協和音にしか聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 ゆっくり音楽を聞く気きもなれず、そのままお昼になって食事を取った。やっぱり近衛の姿はどこにもなかった。そのあと部屋に戻ってベッドに入った。……さっき玉柏も言ってたししばらくシエスタするのもいいかな。何もしないでゆっくり休む時間は欲しくなるし。

 もうすぐここにきて三週間になる。コロシアイが起きるのが早すぎて体が追い付かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わかってる

 私がどんな人なのかなんて

 こんな冷静になってるなんて、おかしい

 それは狂った自分の中身なのも

 変なところで冷静で、淡白で

 きっとこの中で一番異常なのは自分なんだ

 異常の泥濘に溺れてばかりで、

 私は結局追い詰めることしかしてない

 けど治らない

 見てきた世界が違う

 そんな認識が治らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鷹山みたいにこそあどで話してばかりな人

 

 

 江上みたいに努力してるけど不安になることもある人

 

 

 宮原みたいに傷付けることを望まない平和主義の人

 

 

 阪本みたいに弱さを隠し続ける人

 

 

 ダグラスみたいにトラウマ持ちの人

 

 

 橘みたいに伝えることに不器用になる人

 

 

 巡間みたいに歪んだエゴを持つ人

 

 

 

 ………………言っている意味がわからない人もいた。けど私の中でそんなの別に『そういう人もいる』で割り切れてしまう。そういう自分も抉られたりドッキリみたいな感じ以外なら特に冷静。いや、危機感がないんだ。感じてるはずなのに焦ってない。まだいいや、まだいいやなんて、テスト前みたいな状態。

 

 

 

 

 

 潜んだ影に光が射すとは限らない

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 ごちゃごちゃした頭で寝るのは難しいとはよく言う。一回外歩くかな。今2時くらいか。とりあえずⅡ棟に入ってみよう。

 ………………なんか、変な感じが……

 

 ギィィイ……

 

 目の前の扉が開けられた。そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  拳銃を片手に持った国門の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「く、国門くん!!?」

 思わず後退りして身構える。

 「……なんだお前か」

 「いやっそれっ……」

 「ああこれか? 安心しろ。これはただのBB銃だ」

 そういうと近くの空き缶に向かって引き金を引く。パンっという音と共に空き缶が飛び跳ねる。

 「びっくりさせて悪い。これから戻しに行くんだ」

 「……Ⅰ棟にあったやつ?」

 「そうそう」

 自嘲気味に笑って、どこか悲しそうにうつむく。すると部屋に戻ってソファに腰かけた。私も続いて反対側に。

 「…………昔、僕は裁判でミスを犯した」

 彼は唐突に昔話のように語り始めた。

 「一度だけ、たった一個の証拠を見落としたがために、僕は依頼人を守ることができなかった。その証拠は被告人の有罪無罪を大きく左右するものだった」

 重苦しい話なのに、なんでか国門は穏やかに語ってる。いや穏やかなんじゃなくて……

 「本当は見落としなんてしてなかった。嵌められたんだ。依頼人に、被告人に……」

 諦めてるんだ。目に光が見えない。まるで別人のよう。

 「そのときはなんでかわからなくて、判決が出た後に調べあげた。結果、びっくりするくらい計画的で周到で僕を嵌めるためだけに行われた犯行なのがわかった。当時はその界隈じゃ有名だったせいかな。厄介者だったんだよ」

 「厄介……者」

 「すべてに裏切られたのを知って僕はドン底に落とされた気分になった。真実を知るのがこんなにもおぞましく思えたのも初めてだった。誰かのためとかそんなの中途半端で、実際求められるのは真実に隠されたおべっかな『裏』だって。おせっかいなうわべ真実なんていらなかったんだって。けど……察しがついたときには既に僕は自我を保ってなかった」

 「……どういうこと?」

 「嵌めたやつらに詰められそうになった。穏やかそうな顔の裏に貼り付いた不気味な笑顔が、今も僕の頭から離れやしてくれない!!!!」

 弱ったかな、と震える声でそう呟いた。

 「心の底を……そいつに覗き込まれている感覚だった。全て見透かされて言いたいこと全部そのまんま言われた。忘れもしない……僕の頬を撫でた手の感触を。あの後何されたのは……思い出したくない記憶だ」

 少なくとも良くないってことは伝わってくる。鳥肌が立ってきた。

 「狂いそうになって、法を求めた自分が段々と消えかかってきた。法律ってなんだろう、従うべきものはなんだろうと」

 そういえば法に厳しいはずの国門があまり法に触れなくなってる気がする。もしかして…… 

 「侵食する人格がさらに自分をさ迷う。そのとき自分がどうしていたかの記憶が消えていく。人格に支配されていってるのがよくわかるよ」

 いつの間にか組まれた指先に落ち着きがない。と思ったらおもむろにポケットから何かを取り出した。よくよく見るとそれは小さな小さなカレンダー付きのメモノートだった。

 「そんなときに目に入ったんだよ。カレンダーが……普段何気なく使ってるそれが。毎日が誰かにとっての特別な日。そんな特別を……楽しみたいと思うようになった。それで現実から逃げたいとも」

 それはまるで『麻薬』みたいで、国門は小声で言った。

 「もちろん勉強でもある。けどそれに執着していたら、もはやそれらに依存してる。それらが悪いとは言わない。そうでなきゃ生きられない人がいるのも知ってる」

 わかってる。でも意見が分かれたりするってことか。

 「毎回される現実から逃れたいからカレンダーを見る。何も書いてないならどんな日かを想像すればいい。そして後から調べてどんな発見があるのかを楽しむ。拠り所になってったよ。いつの間にか。でもそう甘くなかった。だからこそ僕はこんなことになってるんだけど」

 「……日にちが今わからないけど大丈夫なの……?」

 「別に。その日その日の特別を探せばいいだけ。いいか」

 うおっ!!? 私の顔におもいっきり指をさしてきた。

 「毎日が同じだとは限らない。昨日はプールに行って遊んだ。一昨日は資料探した。それだけでもある種の『特別』ってやつなんだ。そんな些細なことでいい。語呂合わせだってドンとこい。ここまでの思い出も、みんなのおかげなんだ。侵食されるまでに……やれることをやるだけだ」

 決意を表すようにそう言う。けどやっぱり目に光がないのに不安が募る。

 いやいや、信じてあげなきゃダメだって私!!

 「国門くんがどうにかなったら私たちがなんとかする。それしかない、よね」

 「少なくとも僕の力では何もできないし、そこは任せるよ」

 二人で肩をすくめては苦笑した。

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 国門の話を終える。……こんなことなんてありなのか。多分まだわかってない。一度噴水の目の前に座ろう。目の前のザアアアッという音がよく聞こえる。

 

 

 

 

 ドンッ!!

 

 

 

 

 「わ!??」

 ビックリした!? 誰かが突進してきたのか? 首だけ振り向いてみると渡良部がそこにいた。

 「わ、渡良部さん!?」

 「……とりあえず、伝えること、伝えたから」

 その声は少しだけ震えていた。って伝えた? まさか

 「近衛くんに会ったの?」

 「……うん」

 彼女はコクンとゆっくり頷いて、顔を上げた。

 「全部、伝えた…………やっと、やっとすべてわかったんだ……」

 私はそれにどう反応するべきか悩んだ。下手に聞くのも野暮だと思ったから。けど振り向きはしないとと思って体ごと振り向いた。

 「向こうは……私のこと、嫌い(・・)だったみたい」

 「え?」

 「……そのまんま」

 待って待って待って? え? 近衛は渡良部が? 嫌い?

 「でも……別に悪い意味とかそういうのじゃなくて……それが形っていうか……」

 なんか一気に不安になってきたんだけどドユコト

 「理解できてないでしょ」

 ハイデキテナイデスゴメンナサイ

 「いや、なんか……今までまともに喧嘩とか争いとかってしたことなかったみたいで……」

 「平和かよ。ていうか近衛くんは一体何を期待してたの?」

 「……もともと不自由も疑問も何もなくて、ただそれが本当だって信じて疑わなかったんだって」

 箱入りかっ。

 「けどそのときどうしても、気になったんだって。どうして周りはあんなに争うのに、自分は恵まれすぎているんだろうって」

 恵まれすぎ、なんて言葉が出せるのは彼の生まれなのか。

 「けどお嬢様は違ったみたい。常に同じ立場でいたからむしろ背中預けてて。でも好きにまではならなかった。理由はわからないけど……でもそういうのがあったからお嬢様と約束したみたい。その内容まではさすがに教えてくれなかったけど」

 まあ、そうだろうね……

 「少し脱線した。私のこと嫌いっていうのは、……まあ変な呼び方してるからなんだけど」

 ごめんなんかわかっちゃったわそれ。

 「でも近衛(このえ)に渡した押し花は大事にしてるって。使った花がやっぱり近衛の好きなやつだったのもあって、あのとき本心で喜んでてね……」

 渡良部は嬉しそうに微笑んで話してる。それはまるで幼い少女のよう。

 「まだあんたらみたいな関係になるのは無理かもだけど、近いうちにでもそうなれたらなって言ったらさ……抱き締められて」

 大胆だなおい。

 「今はまだ自分の問題があるから後で答え言ってもいいかだって。……それが今夜とかね……なんて、期待しすぎかな!!」

 へにゃっと笑いながらちょっと泣いてる。そんな姿を見てられなくて、自分から抱きついていった。

 「な、直樹(なおき)!?」

 「…………二人は……ちゃんと一緒になる思うから……」

 仲良く過ごす姿はみんなが見てる。たとえそれが真の告白でなくとも、伝えたいものは案外伝わってるものだから。そんな保障はどこにもないけれど、失ったあとで気づいて欲しくないから。

 「……大丈夫、だよね……」

 「うん、大丈夫、大丈夫だから……」

 渡良部が小さく泣いてる。不安なんだって。それで一杯なんだって。

 無責任なセリフばかりでごめんね。でも私は心から君のことを心配してる。近衛の答えがどうなるかは気になるけれど、報われるって信じてるから。

 近くにいたってすれ違いが起きるのは、私はよく知ってる。だけどそれが解決しないまま別れれば、絶対後悔する。だから……後悔しないでね。

 

  

 

 **********

 

 

 

 あの後特に何かしたいこともなくて、Ⅱ棟に戻ってカフェで本読んだりコーヒー飲んだりして時間を潰した。そんなことして6時になる前に、少し早めに食堂に行った。そこには矢崎が先にいた。けれど他には誰もいなかった。

 「はやいね」

 「やることなくなっちゃったからねぇ。ま、もう少ししたら夕飯の時間だから先に居ようと思って」

 「……あ、夜は金室さんか」

 「そう。今まで近衛くんに任せていた分、あたいたちでうまく調節しなきゃならないからね。未だあたいは彼に会えてないし」

 ……今日近衛と会ったって話を聞いたのは渡良部だけ…………

 「下手に首を突っ込めばまたおかしなことになっちゃうから、そういうのは避けておきたいからね。ちょっと厨房で飲み物取ってくるかい?」

 「今はいいや。ありがとう」

 「わかったよ。じゃあ、あたいは取ってくるから」

 そういって厨房に矢崎が入っていった。それと同時に湊川が食堂に入ってきた。

 「あ、湊川さん」

 「はやいわね」

 このやり取りさっきもしたよ。

 「今矢崎さんが自分の飲み物取りにいってるよ」

 「ちょうどすれ違ったのね」

 湊川は私の目の前の席に座る。しばらく湊川は考えるように腕を組んだ。なんだか真剣そうに

 「……ねえ直樹さん。ちょっと気になること聞いていいかしら」

 「え、どうしたの改まって」

 唐突でなんか怖い

 「……今日ってプール清掃の日?」

 「え?」

 プールの清掃の日? 一体なんのことだ?

 「いや私は、わかんないや……あ、でもそうなんじゃないかな?」

 「……理由聞いていい?」

 「清掃の日って水抜きしてたの覚えてる? あれの音が外からでも聞こえていたから」

 「…………だとしたら変なのよ」

 変? 疑問に首をかしげる。

 「今思えば余計に変に感じることがあるの……だって4時前にプールのほうちょっと見たけど清掃中って看板なかったのよ?」

 「そういえば清掃中は看板置くって言ってたけど」

 清掃中に私たちは入ることはできないし………………まさか……

 「……ねえ、一回プール寄ってみよう。そのほうがいいと思う」

 「ええ」

 私たちは一度プールに寄ることにした。どこか嫌な予感が私の脳裏によぎっていた。少し走るように向かう。

 時刻は6時を指していた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 Ⅳ棟内に入った瞬間、自分の体が強張った。感じてはいけないことを感じている気分で。カッコつけてあとから怖くなる愚か者のような感覚。けどそんなこと考える暇はないと思って走って階段を昇ろうとした。

 突然それは襲った。足が何かに引っ掛かって躓く。同時に引っ掛かったものが音を立てて倒れた。

 「うわっ!!? えっなに!?」

 「直樹さん大丈夫!?」

 倒れたものに目を向けるとそれはマネキンだった。一階はマネキンやら写真やらで特にこれといったものはなかったけど、マネキンに引っ掛かるとは思わなかった。とりあえずマネキンを立たせて二階へ。

 プールのほうは特に何の変哲もなかった。でも、妙に、誰かいると、漠然とした直感がよぎる。二人で電子生徒手帳をかざし更衣室へ、そしてプール内へ入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   そこには目を疑う光景が広がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理解出来なかった

 

 

 ねえ

 

 

 これなんの冗談?

 

 

 お願い

 

 

 どうして?

 

 

 どうして今そんな風になっているの?

 

 

 起きて

 

 

 ざっと水の音が聞こえる

 

 

 ねえ、……説明してよ……

 

 

 お願いだから…………

 

 

 目を……さましてよ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぴちゃぴちゃとこぼれ

 

 

 床に水面が浮かぶ

 

 

 濡れた全身が冷やされた

 

 

 だらけた体

 

 

 否、それは支えられていた

 

 

 それは濡れていた

 

 

 ずぶ濡れ道化が顔を伏せる

 

 

 その先には…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねえ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな(一瞬)で死ぬなんてこと……

 

 

 

 

 

 

 ないって……ねえ…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ごめっ……んなさい……っ……」

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 “超高校級の執事”近衛陣が濡れた体で動かぬ“超高校級の雀士”渡良部美南を両手で抱えて呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

      枝は垂れても嘘をつく

 

 

 

       芝に潜んだ臆病さ

 

 

 

       重さ8とて教育上よ

 

 

 

     山の綺麗に見とれるべからず

 

 

 

         冬の寒さは

 

 

 

       冷たく静かで笑ってる

 

 

 

        1人のソナタ

 

 

        彼岸を見届けん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      そうわたしは刺客だ

 

 

        刺客の七だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    あなたは気付けず地に埋まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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