表裏ダンガンロンパ ~共通とすれ違いの物語~   作:炎天水海

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 捜査編です。結構難航してた上裁判もごちゃごちゃしちゃっているのでそこは、まあ、温かい目で見てくださると嬉しいです。

 獅子の舞踏と5部屋目
 あなたは何と踊り狂うのか?


第四章 非日常編 獅子の舞踏と5部屋目

 

 

 注意 

 

 これはダンガンロンパシリーズの二次創作となっています。 

 本編とは異なる設定が多々あります。 

 あと主の文才は期待しないでください。 

 突然視点が変わることがあります。

 

 それでも平気な方は次のページへどうぞお進みください。 

 

 補足 

 渡良部はモノヤギ以外の相手を麻雀の牌や役で呼びます。本編では度々麻雀について話すことがあるので彼女が他人を呼ぶときにはその人の名前にルビをふります。 

 例:直樹→ 直樹(トン)

 他の人が相手を呼ぶときはそのまま読んでください。 

 なおプロフィールに渡良部が相手を呼ぶときの呼び方を載せてありますのでそちらもぜひご覧下さい。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「こ、これって……」

 「っくそ!! っくそ!!!!」

 近衛が渡良部を引き上げたのか。二人は完全にずぶ濡れだ。燕尾服は窓近くに放り投げられていた。

 声が出なかった。ショックが大きすぎる。

 

 ガチャッ

 

 「……!! 直樹ちゃん!! 湊川ちゃん!! 一体どうしたんだい!! ……って近衛くん?」

 振り向くと矢崎がやってきていた。

 「実は渡良部さんが……」

 「渡良部ちゃんが? 近衛くんちょっといいかい?」

 「え、無駄だとは思いますが……」

 矢崎が渡良部の首で脈を計る。彼女は首を横に振った。

 「そんなっ」

 「相当冷えてるけど、多分一時間以上は経ってるよ」

 残酷なことを告げられて私は膝から崩れ落ちた。近衛も未だ項垂れたままだった。

 「とりあえずみんなに連絡しておかないと行けないね。湊川ちゃん放送室でアナウンスできるかい?」

 「た、多分」

 「それと」

 矢崎が湊川に何かを耳打ちしたあと、急いでこの場を離れていく。

 「矢崎……紫陽花……なぜそんなに冷静で」

 「冷静じゃないよ。冷酷なだけ」

 矢崎が冷酷だなんて思えないんだけど……

 「言ったはずだよ。あたいは他者の死にあまり関心を抱けない…………それにしても変だね。四人も来てて死体発見アナウンスが鳴らないなんて……」

 あれ? 本当だ。アナウンスはクロ以外の三人が死体を見たときにされるはず……それがないのは一体……

 

 

 

 

 ピンポンパンポーン…………

 

 

 

 

 『緊急事態発生、緊急事態発生!! 全員Ⅳ棟のプールに来て頂戴!! 繰り返すわ!! 全員Ⅳ棟のプールに来て頂戴!!!!』

 

 

 アナウンスが鳴り響く。これは湊川のアナウンスだ。これでちゃんと人が来てくれるかな。冷たい風が私たちの髪を煽る。

 しばらくしたときに2つの更衣室から湊川と灰垣が出てきた。一瞬カシャッと音がした気がした。

 「何があった!! っ!!」

 「見ての通りよ。アナウンスの仕方変えたけど何があったかはわかりやすくしたつもりよ」

 死体発見アナウンスと混じったらいけないと考えた湊川の配慮なのかな。

 「……渡良部さん…………」

 私たちは渡良部を見つめる。苦しそうなのに、とても綺麗な顔してるのは元からそうだったからなのか。苦しい世界で生きていても、そこで強く生きようとしていた君の表れなのかな……

 「もっと、早く気づいてあげられれば……私は気付けたはずなのに……」

 湊川はひどく後悔してる。気付けるチャンスがあったはずだったから。でもそれは私もそうだ。あのとき別れてからそんなに経ってないんだ。まだモノヤギファイルがないけれど、どうなんだろう。

 「くそっ……どうして……どうしてこんなっ!!」

 近衛も渡良部を抱えながら叫ぶ。

 「……つらいのはわかるが、くよくよもしてられんじゃろ」

 灰垣の言葉にみんなが振り向くと、近衛に向かって燕尾服を渡す。

 「さっさと着替えんか。そんな体じゃ風邪を引く」

 「……ありがとう、ございます……」

 服を受け取ったと同時に残りの三人もやって来た。

 

 

 

 

 

 

 ピンポンパンポーン……

 

 

 

 

 

 『死体が発見されたであーる!! 死体が発見されたであーる!!』

 

 

 

 

 

 そのアナウンスは、全員が揃ったタイミングで鳴らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヒッヒッヒィ、ついに出ちゃったであーるなァ?」

 渡良部のコスプレ姿で現れたモノヤギにもういい加減うんざりだ。

 「……モノヤギ、これは一体どういうことです。死体発見アナウンスはクロ以外の三人が見たら鳴るはずですよね?」

 「それなんであーるがァ……人数が減ってきている今ァ、そんなことしてたら犯人がすぐバレると思ったんであーるよォ!! だから今回は全員が来たタイミングでアナウンスを出したであーる!!」

 確かに、今ここにいるのは八人。クロ以外となると犯人が五人にまで絞られるのか……

 「なーるほどね。どーりで鳴らないわけだね」

 「しかしィ、運命ダイスはもう振られていないというのにィまだそれが動いているみたいであーるなァ? 渡良部の死は運命か必然かァ…………ヒッヒッヒィ、おもしろいことになるであーるなァ!!」

 どこもおもしろいところなんてない。特に友達……いや、親友だと思っていた人が、こんなになってるのは……正直見たくなかった……っ……

 「…………まァ、今回はワレもびっくりであったがなァ……このタイミングで、本当に動くとはァ……」

 「は?」

 「そんなことよりィ、いつものモノヤギファイルを持ってきたであーる!! 頑張って捜査するであーる!! あそうそうゥ、捜査時間中は男子更衣室も女子更衣室も行き来自由であーるからなァ!!」

 はぐらかした。けど、モノヤギがびっくりしたって一体どういうことだ……? そう思ってたらすでにモノヤギはいなかった。

 「直樹さん、これ」

 「あ、ありがとう湊川さん」

 ぼーっとしてたら湊川にモノヤギファイルを渡された。

 …………捜査開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      **********

         捜査開始

      **********

 

 

 

 

 「そういえば渡良部さんの検死、どうするのよ?」

 「だな。さすがに男がやるのは別の意味でよくない気がするしな」

 「そのことなんだけど」

 検死の話で矢崎が手を挙げる。

 「ここの検死、全部あたいに一任してくれるかい? それと見張りは立てないでほしいんだよね」

 「何でじゃ? 見張りは立てたほうが……」

 「いいぞ」

 それを答えたのは意外にも国門だった。

 「な、何を!? もし犯人だったら」

 「そんなこと考える必要もないと思うぜ。とりあえず、捜査は有限だ。さっさとやっちまおうぜ?」

 そういって国門はサウナのほうへと向かう。灰垣も同じように捜査を開始した。信用、していいのかな。でもそのほうが確実だと思う。

 「……うん。矢崎さんお願い」

 でも、まだ納得いってなさそうな人ひとり。近衛だ。彼は苦悶の表情で睨んでいたけれど……

 「…………わかった。あとはまかせた……矢崎紫陽花」

 「まかされました」

 折れたのか矢崎にすべてをまかせた。

 「ん、…………窓と渡良部ちゃんの丁度中央辺りに白髪発見」

 なんで白髪!? 金室が苦笑いしてるだけど。

 さてと、私も本格的に捜査開始しよう。とりあえずモノヤギファイル見る。

 

 

 

 

 モノヤギファイル4

 

 

 被害者:超高校級の雀士「渡良部美南」

 死体発見現場:マンションⅣ棟二階プール内

 死亡推定時刻:3時半頃

 死因:溺死

 補足

 ・争った形跡なし

 ・抵抗していた模様

 

 

 

 

 争った形跡なし? ってことはまさか、犯人に不意討ちで狙われて殺されたってこと? でもいくらなんでもただ水に入れられただけじゃない気がする。それよりも抵抗ってまさか……

 「窓、閉まってるのな」

 「いたのかよ」

 「ずっとな」

 ごめん相棒、気づかなかった。ん? これは……

 「ビート板、なんでここに積まれてるの? 多少崩れてるけど」

 「誰かがビート板に乗って窓を閉めたか……或いは出たか……」

 「さすがに出るのは無理なんじゃない?」

 「どうだろうな。175くらいあれば簡単にここに手はつくしな。っいてて……ビート板、特に凹んでる様子もないんだな」

 いててってなにそのいててって。んーでもビート板の使い道……犯人は一体なにがしたかったんだろう?

 「窓の外ってどんな感じ?」

 「そうだな……」

 玉柏は窓から顔を出してキョロキョロする。

 「どうやら下は別館みたいだな」

 「別館……あそっか」

 別館はⅣ棟一階と同じ高さなんだっけ。

 「他に窓近くに手掛かりらしい手掛かりはこれ以上なさそうだな」

 「だね。今矢崎さん検死してるし他はなんだろう……」

 「サウナとかか?」

 「ああ~」

 何か手掛かりあるかも知れない。行ってみるしかないや。

 

 

 *****

 

 

 サウナには灰垣がいた。あれさっき国門いなかったっけ? ていうか蒸し暑っ

 「また同じメンツじゃな」

 ほんとよ。

 「何か手掛かりあったか?」

 「ふむ」

 そういうと灰垣は自分の羽織の袖から何かを取り出す。四角い見に覚えのあるそれ。えっ?

 「こいつが落ちとった。国門が最初に見つけて、持ちきれんからって押し付けられたんじゃよ全く」

 オツカレサマデス

 「でもそれって電子生徒手帳だよね……」

 「ああ。一体なぜなんじゃ…………?」

 「待て、普通持ちきれないってことはないんじゃないのか?」

 「あ、確かに。もしかしていくつかあるの?」

 「その通り。八個電子生徒手帳が見つかった。正確には向こうが七つ、わしが一つ見つけたんじゃが。まあちょうど半数分じゃな。どれもつけようとしてもつかんし、もうすでに熱暴走で壊れてしまっておる」

 つまり、誰が誰のかは確認できないってことなのか。…………あっまって

 「ねえ……私たちここにとどまってたら持ってる電子生徒手帳最悪壊れるんじゃ……」

 

 

 ……………………

 

 

 「さっさと出るぞ!!」

 「じゃなっ!!」

 うん知ってた!!!!

 幸い、自分たちの電子生徒手帳は壊れていなかった。

 

 

 

 *****

 

 

 

 電子生徒手帳…………関係あるとしたら更衣室くらいだよな……なら調べても損はない。異性のところに入れるとはいえ、なんか入りづらいから女子更衣室確認しよう。

 「おかしいわね……」

 「おかしいって?」

 「ええ。さっき金室さんが確認してくれたのだけれど、男子更衣室にカウントされた入った人数は17:50の一人だけ。そのあとには灰垣くんたちが来た分だから割愛するわ」

 「ちょっと待って、金室さんどうやって確認したの!?」

 「入り口から確認できるのよ」

 なるほどそれは納得だわ。

 「で、話戻すと女子更衣室だと私たちが来た分を除いてみるとね……」

 促されるまま湊川に女子更衣室の入った人のカウントを見てみると……

 

 

 

 女子更衣室

 

 09:49 1

 09:52 1

 11:22 1

 11:24 1

 15:00 1

 15:01 2

 15:02 3

 15:36 1

 

 

 

 …………犯人は午前から準備していた……? でも昼はみんないたし私午後会ってるし……しかも見た限りだいたい30分の間で犯行に及んだってことか。……でも、なんか…………

 「人…………足りなくない?」

 「そうなのよ……最初のほうにバラバラに三人が入って……それから出てきたのが一人っていうのがね…………この消えた一人は一体……」

 きっと一人は渡良部、一人は犯人。けれどもう一人が全くわからない。

 「もしかして共犯者とか……」

 「えっ、それ湊川さんすごく怪しく見えちゃうけど……」

 「わかってるわよ。きっと近衛くん以外で最後にここの前を通ったのは私。しかも見たのは4時前。怪しく見えるのも無理ないわ」

 うん、怪しいからなんか白く見えてきた。

 「でもそれならわざわざあの切り出しする意味もないのよね。今日はカジノとトレーニングルームにずっといたのよ」

 「トレーニングルーム行ってたの!?」

 え、意外。

 「カジノのほうはほら………………ダグラスくんの好きな場所だったし……」

 「…………」

 「筋肉痛だから動いたほうがいいかなって……ちょっと着替えてトレーニングマシンで走ってたのよ」

 「…………!! そ、そういう感じね。確かに筋肉痛はさらに動くと治りやすいみたいだしね」

 カジノのほうに引きずられて一瞬聞こえなかった。正直今私は太ももとさっきマネキンにぶつけた足が痛い。

 「そもそも玉柏くんとちょっとすれ違ったのよね。一人だけだったからトレーニングルームで着替えた。玉柏くんがその時間のこと証明してくれると思うわ。そうあとからトレーニングルーム入ってきてたわね……そういえばまた腰抑えてたような……」

 「またかよ」

 それぎっくり腰か何かだったら笑うよ。今日捜査で遅くなるのも無理ないや。

 「あ、そうそう。昨日くらいからⅡ棟の美術室、なぜかカツラとかなくなってたのよね」

 「カツラって……」

 まあありはしたけど必要か? 灰垣とかは使いそうだけど……いや使わないか。

 「しかもちょっと不思議なのよね……」

 カツラに不思議も何もあるの?

 「青のカツラ、白の髪染め、ネット……変装するのに充分なものがなくなっていたのよ」

 「し、白の髪染め!? え、それが一体」

 「わからないのよね……でも犯人が誰かに成りすましするなら可能なのよね……」

 ……白……ではないけど成りすますなら近衛だ…………押し付け? そういえばさっき白髪見つかったんだっけ……

 「変装というよりも、なんかコスプレみたい」

 「ここにそんな人いるとは思えないけれど、一番有り得そうな形ではあるのよね……コスプレやったことがある私が言うのもあれなんだけど」

 コスプレやったことあるの!?!?

 「髪の毛の有無に限らず、コスプレっていうのは誰でもできるものなのよ。だからハゲ……じゃなくて坊主の灰垣くん以外にも直樹さんとか私のように長い髪の毛の人でもできるのよ」

 今はっきりハゲって言ったよこの人。

 けど誰でもできるものなのか……だからレイヤーギもできるのか……謎の納得感が……じゃなーくてー!! とりあえず変装は誰でもできた、と。

 「……直樹さん、何もしゃべってないとき何か考えているのかはわからないけど、えらく一人で機敏に動くわよね」

 「ごめん」

 ごめんて。そういえば

 「湊川さん、さっき矢崎さんに何言われてたの?」

 「話反らしたわね?」

 ごめんてば!!

 「まあいいわ。チェキを取ってきてって言われたの」

 なんかすごいマニアックなもの頼んだな!? 

 「アナウンス終えて戻ったらすぐにプールの写真撮れってね。でも今はまだ写真浮かんでないわ」

 「裁判の最中にわかるかもしれないってことだね」

 「ええ。でも不思議なのが、なんでチェキにしたのかなのよね」

 普通のカメラだったらダメなのかな? ああでもビデオカメラだとちょっと大きいし、普通のデジタルカメラも水に落とせばいけないか……チェキなら本体を落として壊しても写真そのものは残るし。結論

 「……保険じゃない?」

 「ああ~」

 やっぱ納得しなするんかい!!

 

 

 *****

 

 

 一旦更衣室から出たら玉柏が湿布貼ってた。うん、嘘じゃないなこれ。

 「なんでまた?」

 「いやっ……ダンベルに気づかないで寝転がって痛い目みた……」

 「ドジかいっ!!!!」

 それはそれで拍子抜けなんだけど。

 「……さっき湊川さんから聞いたけど、今日会った?」

 「んあ? ああ会ってるな。少なくとも俺と湊川には犯行は無理だろ。俺転けてこんなだし、ついでにあいつが着替えたあとトレーニングルーム入ってる」

 そのドジもう少し直そうよ

 「心の声漏れてるぞ」

 「あっごめん」

 「全く、そうなんで何回も腰を打つんです」

 後ろから金室が呆れながらやってきた。

 「仕方ないだろ……」

 まあいいです、と金室は話を続ける。

 「今日はずっと別館の自室にいました。そのとき……なぜかわかりませんけど上から振動が起きたんですよね……」

 防音どこいった。

 「それいつ?」

 「渡良部さんが亡くなった時刻は過ぎていたと思います。ただし4時よりも前であることは覚えてます」

 ってことは犯行後に何かを別館の上でした? けど何ができるんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 !?

 「な、なんですか!?」

 突然響く叫び声……この声は……っ!! 私は急いでタッタッタッタッと一階に降りた。

 そこには頭を抱えうずくまった国門がいた。けど……普通の悶えじゃないのは見てとれた。

 

 「ッッダメだって言ってるだろ!!? いやっ、だっ!!!! ふざけんなッッ!! いまの貴様に何ができる!? だめ、……だめ!! 出させて、くれ!! おね、がい……ッッッッ!!!! 貴様が耐えられるものか!!!! まだ癒えちゃないだろがっ!!? てめぇに指図される筋合いねぇよバカタレがぁああ!! 黙っ、て!! 違う、違う違う違う!!!!!!」

 

 なにかを訴えるように……いや自問自答? 一人で(・・・)めちゃくちゃに叫ぶ。その内容は正直わからない。内容は聞き取れるのに、一人で喚いているせいで何が何だかこんがらがる。

 「大丈夫ですか!?」

 後ろから金室が国門に近づいて背中を撫でる。

 「わ、悪い……」

 「いいから深呼吸してなさいバカ。これでおあいこです」

 叱責されながら国門は言う通りにする。

 「はっ……はっ……はっ…………はっ」

 「国門くん……」

 「もう、限界だ……あの場に立てばもう僕は戻れなくなる……だがもうそれは仕方ない……腹括るしかない……」

 大きく息を吸っては吐いて。しばらくしてから落ち着きを取り戻した国門がまた口を開いた。

 「そうだ……そこマネキンの首に紐引っ付いてるぞ」

 紐? 指差すところを見るとそれは確かにあった。そこまで長くはないけれどなんとなく1.8、9mくらいかな。玉柏が確認しにいく。その様子を見てると頑丈に結びつけられていてきっと引っ張ろうとしても簡単にはほどけなくなってる感じに見えた。

 「マネキンを利用する意味、いったいなんだろうなぁ……?」

 いやそもそもマネキン使う場面なんてあるの? 

 

 

 ていうか……刻々と、時間の流れとともに彼は侵食されていってる気が。そのセリフだけで私はすぐに理解できる。まかせれたとはいえ、どうすればいいのかはまだわからないままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コツコツコツ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふとこちらに向かってくる靴音がする。近衛が着替えてやってきた。

 「お待たせ─」

 「近衛く…………」

 その形相は凄まじかった。なんか、この短時間でとんでもないくらいの隈が出来てる。自分の背中がゾワッてしたのがわかった。

 「捜査してない場所は─?」

 「えっ……えっと……あっ動力室ってまだ誰も見てないよね?」

 「多分調べてないぜ。調べてこいよ」

 「……了解─」

 「あとこれ、つっこんでいいのかわからなかったんだが……すごい中途半端に返事するんだな?」

 「これが僕の素、─」

 素だ、と言っているようにとれた。常に敬語だからたまに気になりはしたけれど……あとそっちが素なんだ……玉柏はふーんと近衛をじっと見ていた。

 「一応男子更衣室も確認しておくな」

 「了解─。それでは─」

 何も最後まで言わずとも伝わる。私も一応確認のために彼について行くことにした。

 

 

 ***

 

 

 「……………………」

 「…………」

 今までのなかで一番気まずさが半端ないんだけどこれどうすればいいんだ? タスケテ。で動力室の扉開けて中を見てみた。

 「…………中は変わった様子はなし─」

 「パッと見でわかるようなもの……なさそうかな……」

 「…………」

 周囲をじっと確認して見る。でも特に何かおる様子は……

 「……た」

 「えっ?」

 「ここは動いたみたい─」

 動いたんだ? でも動かすようなことがあったのかな? ていうか

 「よく動いたってわかるね」

 「どうやらこのレバーで渦を作れるようで─。そのレバーがしっかり下まで下ろされてない。つまり─」

 そういうこと、ね。

 

 

 *****

 

 

 そろそろ検死もいい頃かなって流れでそのまま矢崎のところに向かう。あとプールサイドに金室が歩いているのが見えた。

 「矢崎さん、そっちはどう?」

 「うん……溺死で間違いないね……即死じゃないから……だいぶ苦しかったんだと思うよ……でも、やっぱり、なーんでそんなきれいな顔したままでいられたのかなぁ……ねえ、近衛くん。どうしてずぶ濡れだったか、教えてくれるかい?」

 「…………」

 近衛は言葉に詰まる。苦い顔をしながら、ゆっくり口を開いた。

 「…………っ忘れ物を取りに─。でも、そのときプールのほうも確認しておこうと─清掃の過程、僕は執事。どんなやり方をすれば綺麗になるか参考になるかと─でも入った瞬間に見つけた。プカプカと浮かんだ渡良部美南の姿を─。そこからは必死─。上を脱ぎ捨てて、飛び込んで引き上げた。………………もう、手遅れだった。気づけば直樹空と湊川鈴音が─」

 …………近衛は拳を作って苦い顔を。突然目に飛び込んだあられもない姿に怖くなったんだ。

 「あの……失礼します……」

 ふと金室の声が聞こえた。

 「どうしたんだい?」

 「お話し中すみません。網か何かありますか?」

 「網?」

 「お待ちを」

 そういって近衛は動力室の横側から網を取ってきた。ありがとうございます、そういって金室はプールの中に網を突っ込んで何か拾おうとしている。しばらく経って拾い終えたのかそれを私たちに見せてきた。

 「これ、誰かが落としたものかと思ったんですけど皆さん違いますか?」

 それは丸いビーズみたいなものだった。私はこういうの持ってないんだよなぁ……

 「いえ僕のでは─」

 「あたいは頭についてるからね~」

 うん、はっきりわかんだね。

 「他の方にも聞いておきますね」

 で、そのまま出ていった。しばらく沈黙が訪れる。

 「ねえ近衛くん。今の口調、絶対素じゃないよね?」

 「は?」

 それは突然の切り出しだった。私もびっくりしてそっちを見る。

 「ずーっとイライラしてて疲れないのかい。あたいは君から焦りしか見受けられないね」

 「黙れ」

 「でも切れてるのはみんなに対してじゃない。なーんにもできなかった自分への苛立ち。面倒だからって最後まで言うことをしない。………………はっきり言って惨めだよ。今の近衛くん」

 「黙れって言ってるでしょうが!!」

 「そんなことに黙れと言われて、簡単に引き下がれるほどあたいはできちゃいないよ」

 矢崎は一歩も引かない。

 「その怒りあたいたちじゃない別のものにぶつけるべきなんじゃないのかい? 近衛くん、前にキレたときの感情と今のキレている感情とじゃ天地の差がありすぎる。けどそれを面倒という理由で自分を見失うやり方をするのは、みんなに失礼だよ」

 「何が……一体なにがわかる!!? 人の感情に首を突っ込まないでくれませんかね!?」

 「ほーら戻った」

 「!!?」

 「焦らないほうが、ミス減るよ。君はいつも通りに過ごせたほうがいい。たとえ困難だとしても、心構えはしておいたほうがいいよ」

 「は? 矢崎紫陽花!! それは一体……」

 途端、矢崎は私たちに背を向けた。顔を合わせようとせずに。

 「この事件は……あたいも無関係じゃない。むしろ……いや、なんでも、ないよ……」

 その言葉は、明らかに震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピンポンパンポーン…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ヒッヒッヒッ、そろそろいいであーるなァ? 捜査時間終了であーる!! オマエラァ!! 噴水前に集まるであーる!!』

 

 

 

 ブツッ……

 

 

 

 捜査終了のアナウンス。このタイミングで……もうやらなきゃいけないのか…………

 「……来ましたか」

 「…………」

 これで4回目。引き下がれない領域。冷や汗が頬を伝うのがよくわかる。

 

 

 

 ガチャ……

 

 

 

 灰垣がこちらへとやってきた。渡良部の前にしゃがみこみ手だけ合わせて祈る。この光景を見るのも何度目だろう。みんなで……渡良部を見つめる。私は胸の苦しさを訴えられてる気がして自分の手を握りしめた。

 「…………やらねばならんな」

 「うん……」

 当たり前なことを言うのも煩わしい。けれど、そうでもしないと事実が受け入れられる気がしなかった。そうとは限らないのが事実なんだけれど。

 

 

 *****

 

 

 全員が揃うと噴水の水は減る。なんか慣れた気がするこの過程。

 「なーんかなぁ」

 珍しくこういう場で矢崎の声が聞こえてくる。

 「どうした?」

 「んー……こう、ねぇ~ヒントがそこそこある割りに、斬新な気がしてね~」

 「ざん、しん…………?」

 待って矢崎の言うことが全くわからない。斬新? 何が!?

 「まあ今あたいが言うことでもないし、それにみんな知ってることだからね~話すときがくれば言うよ」

 …………さっきのセリフと何か関係あるのかな。矢崎はこの事件に関して無関係でない、なんて自分からそんなこと普通言うのかな。何か、狙ってる……?

 そうこうしてる内に噴水の水はなくなりいざ足を踏み込もうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし

 

 

 「!!?!?」

 

 突然、私は吐き気を覚えた。口を手で押さえてそれを堪える。

 「な、なんだこれ……」

 「うっ……」

 そこにあった光景。それは……『刺客の七』と書かれた紙が大量に噴水に沈められペタりと貼り付いていた様子だった。そのせいで、本来なら乾いているはずの噴水エレベーターも乾かない。

 字は殺意を持っているみたいに荒れ狂っているものばかり、たまに一到きれいな字があるのも不気味に映る。

 「いたずらにしては……限度があるのでは……」

 「もはや宣戦布告みたいなもんだろうな……刺客の七……一体なにが目的なんだ……?」

 …………そもそも、こんなことできたタイミングがあったのか疑いたくなる。少なくとも、私と渡良部があったときにはこんなものなかった。渡良部を殺したあとに? 死亡時刻と発見までの時間は長い時間あいている。でも大量の紙をどうやって……

 「なぁ……これ、なんじゃ……?」

 灰垣の指差すところをみんなで見てみると……謎の文……いや、詩みたいなものがご丁寧に書かれた紙が一枚にまとめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******************

 

 

 

      枝は垂れても嘘をつく

 

 

       芝に潜んだ臆病さ

 

 

       重さ8とて教育上よ

 

 

     山の綺麗に見とれるべからず

 

 

        冬の寒さは

 

 

      冷たく静かで笑ってる

 

 

       1人のソナタ

 

 

       彼岸を見届けん

 

 

 

 

       わたしは刺客だ

 

 

        刺客の七だ

 

 

 

 

 

 

 

 

       汝ら常に狙うもの

 

 

 

 ******************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ね、ねえ……なに、これ……!?」

 「一種の脅迫か……? いや、でも脅迫文でこんな書き方するやつなんて見たことない……」

 「あたいたちを、狙ってる……」

 背筋がぞわぞわしてきた。それくらい怖い。なんか、最近感じたことのある寒気…………

 「き、……なおき……? 直樹!!」

 「!!」

 「大丈夫か……?」

 「あ、う、うん。一応……ありがとう」

 「さっきから声掛けても反応ないからびっくりしたぞ」

 全く聞こえてなかった……ダメだな……

 「……進まないといけないのよね」

 「こんなたくさんの紙を取ってる余裕はないし」

 よくわからないままやっと乗り込んだ。

 

 

 *****

 

 

 エレベーターが緩やかに降りていく。いつもと違うのは刺客の七と書かれた紙がペタリと貼られたままなところ。正直気持ち悪い。水が靴に染み込んできてるのが、紙が歩く度に擦れて靴の裏にくっついて邪魔してくるのが、よくわかる。

 いつもより落ち着かない。常に誰かに狙われているような感覚がする。どこからともなく。上から、下から、右から、左から、背後から目の前から。逃げ場のない檻の中に閉じ込められて、これからまるでサーカスでもするみたいで。操られた動物たちのように。火を無理やり潜らされている感じがする。

 そんな幻影のサーカスを浮かべていれば、ガコンっと音がしてエレベーターが裁判場に着いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 謎の人物『刺客の七』

 

 

 

 大胆に私たちに襲ってくる

 

 

 

 いったい、なにが目的なんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 もうやめよう

 

 

 ごめん

 

 

 今度立たせてやれるかな

 

 

 そっちのが得意なのに

 

 

 こっちは単なる傀儡でしかない

 

 

 戻れるように

 

 

 努力しなきゃ

  

 

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      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

      枝は垂れても嘘をつく

 

 

       芝に潜んだ臆病さ

 

 

       重さ8とて教育上よ

 

 

     山の綺麗に見とれるべからず

 

 

         冬の寒さは

 

 

      冷たく静かで笑ってる

 

 

        1人のソナタ

 

 

        彼岸を見届けん

 

 

 

 

 

 

 

 

      そうわたしは刺客だ

 

 

        刺客の七だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       …………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  いいじゃんー!! なりたいならね!!

 

 

   え? 否定する理由ないじゃんー!!

 

 

   大丈夫大丈夫ー!! 口固いから!!

 

 

     誰にも言わないであげる!!

 

 

  もちろん約束だよ!! 絶対だよー!!

 

 

        …………………………

 

 

      だって信用できるもん

 

 

       何よりも、誰よりも

 

 

   知ってるのは、一人でいいでしょー?

 

 

      秘密は誰にも言わない

 

 

     だから!! ひ・み・つ!!

 

 

       そう言うんだよ!!

 

 

       …………………………

 

 

      でも、ちょっと寂しいや

 

 

    んーん!! なんでもないよ!!

 

 

   じゃあね!! いってらっしゃい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ちゃんと…………生きて帰ってきてよ?

 

 

 

 

 

 

        待ってるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       いつか僕以外にも

 

 

 

     明かせる人があらんことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

        嗚呼理解者

 

 

 

      わたしの唯一の理解者

 

 

 

 

    わたしはあなたを裏切るんだ……

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 次回

 狐の正6部屋目

 

 

 

 

 

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